採用手法のトレンドは?
従来の採用手法は、受け身の採用手法が一般的で、自社が求める人材の確保に苦労する企業がありました。その状況を受け、近年では新卒採用と中途採用のどちらも「個別採用」がトレンドとなっています。
トレンドの採用手法を知り、自社に取り入れることにより、自社が求める人材を獲得できるかもしれません。この記事では、従来の主な採用手法と新卒・中卒採用のトレンド、採用手法を選ぶ際のポイントについて解説します。
目次
従来の主な採用手法
従来の採用手法では、以下のものが一般的でした。
・ ハローワーク
・ 自社サイト
・ 求人誌
・ 転職サイト
これらの手法は、求人をだした後は応募が来るのを待つ「受け身の採用手法」のため、自社が求める人材がなかなか集まらないというリスクを抱えていました。ここでは、従来の採用手法についてそれぞれ解説します。
ハローワーク
ハローワーク(職業安定所)は、国が運営する職業紹介機関です。ハローワークの専用ページに求人情報を登録し、応募が来るのを待ちます。各自治体に設置されているため、その地域の住民を採用するのに向いています。
求人情報を無料で掲載できることや、全国ハローワークに求人を公開できることがメリットです。ただし、求人情報の作成は企業側でおこなう必要があります。また、専門性の高い求人や大手企業の求人は少ないため、これらの求人を探している人の利用率は高くありません。
自社サイト
自社ホームページで採用ページを作成し、募集が来るのを待つ採用方法です。掲載できる情報量に制限がないため、自社の業務内容や、社会貢献への取り組み、従業員のインタビューなどの情報をすべて開示できます。
自社サイトを見たうえで応募してくる人材は、自社の業務内容や雰囲気を理解しているため、入社後のミスマッチが発生する可能性が少ないでしょう。自社が採用したい人材とのマッチ度が高いことが、自社サイトで採用活動を行うメリットです。
ただし、自社サイトは会社名で検索しない限り、応募者の目に留まりません。応募者の母数を集めるには向いていない採用手法といえます。
求人誌
地域限定の雑誌や求人誌に求人情報を掲載し、応募が来るのを待つ採用手法です。その地域の住民を採用するのに向いています。ただし、求人の掲載には掲載料が必要です。また、雑誌を手にしなければ求人情報を確認できないため、求職者の目に留まる機会は多くありません。
近年ではインターネットによる求人検索が当たり前になっているため、応募者の母数を集めるのには向いていないでしょう。
転職サイト
転職サイトに求人情報を掲載し、応募が来るのを待つ採用手法です。転職サイトは、業種や職種を問わず求人情報を掲載する「総合型転職サイト」と、特定の業種や職種の求人情報を掲載する「特化型転職サイト」の2種類に分けられます。
インターネット上に求人情報を掲載するため、求職者の目に留まりやすく、応募者の母数を集めるのに向いている採用手法です。ただし、掲載費用がかかることや掲載社数が多いサイトでは自社の求人情報が埋もれてしまうことはデメリットといえます。
新卒採用のトレンド
近年の新卒採用は、学生一人ひとりに適した方法でアプローチする個別採用がトレンドとなっています。主な個別採用手法には、以下のものが挙げられます。
・ ダイレクトリクルーティング
・ オウンドメディアリクルーティング
・ 会社紹介(採用ピッチ資料)
ここでは、それぞれの採用手法について解説します。
ダイレクトリクルーティング
自社が求める条件に合致した人材に対し、直接アプローチをかける採用手法です。就職サイトのスカウト機能やSNSを利用してメッセージを送り、候補者に直接コンタクトをとります。
応募者のプロフィールやSNSでの発信を確認し、応募者のことを把握したうえでアプローチをかけるため、自社にマッチした人材を獲得しやすいことがメリットです。知名度が高くない企業でも、応募者とのアプローチ次第で人材獲得につなげられます。
また、自社のことを知らなかった人材や、応募する気がなかった人材を獲得できる可能性があることもメリットです。ただし、アプローチをかけることができる人材数には限界があるため、候補者の母数を増やすのには向いていません。
関連記事:ダイレクトリクルーティングとは
https://www.staffservice.co.jp/client/contents/management/column156.html
オウンドメディアリクルーティング
自社で保有しているメディア(ホームページやブログ・SNSなど)にて、企業風土や理念、制度を発信し、共感を得られた人材の採用を狙う採用手法です。前述した「自社サイト」での募集と比較すると、自社サイトを利用する点では共通している部分があるものの、発信内容が異なります。
求人情報だけでなく、自社の企業風土や取り組みを発信することにより、入社後の姿をイメージしやすくなります。入社後の姿をイメージできれば、採用後のミスマッチが発生する可能性も少なくなるでしょう。
また、SNSも活用しながら情報発信すれば、認知度や好感度の向上も期待でき、潜在層へのアピールにもなります。
会社紹介(採用ピッチ資料)
会社紹介の資料を自社サイトや就職サイトに公開し、共感を得られた人材の採用を狙う採用手法です。従来の企業説明会での資料のような自社のポジティブな面だけを掲載するのではなく、ネガティブな面も公開することにより、自社の魅力を伝えます。
サイト以外にも、応募者との情報交換の機会として実施する「カジュアル面談」やスカウト時に、資料をみせるケースもあります。
中途採用のトレンド
中途採用でも、新卒採用と同様に、個別採用が注目されています。中途採用でトレンドになっている採用手法は以下のとおりです。
・ リファラル採用
・ アルムナイ採用
・ ミートアップ
ほかにも、小売業や外食業といった定期的に大量の人材を求めている業界では、リクルーティング特化型の動画プラットフォームに自己PR動画を投稿し、採用につなげる方法もでてきています。
ここでは、中途採用でトレンドになっている採用手法について、それぞれ解説します。
リファラル採用
従業員の知人を採用する手法です。従業員から自社が求める人材要件に適した人材を紹介してもらいます。ただし、紹介されれば必ず採用するわけではありません。選考基準に則って合否を判断します。
転職サイトや求人広告よりも採用コストを抑えられるだけでなく、人柄や考え方を知っている人材にアプローチできるため、入社後のミスマッチが発生する可能性が下がることがメリットです。
関連記事:リファラル採用とはどんな採用方法? メリットや報酬、トラブルを避けるポイントを紹介
https://www.staffservice.co.jp/client/contents/work/column023.html
アルムナイ採用
自社を一度退職した人材を、再度雇用する手法です。「ジョブリターン制度」「カムバック制度」とも呼ばれます。自社で働いていた人材を採用するため、入社後にミスマッチが発生するリスクが低いことや、教育コストを抑えられることがメリットです。
ただし、制度を利用できるルールや入社後の条件を整備しない場合、安易に退職する人を増やしたり、既存従業員から待遇面に対する不満がでてきたりする可能性があるため、注意が必要です。
ミートアップ
求職者とリラックスした雰囲気で交流し、自社の雰囲気を理解してもらうことにより応募を促す採用手法です。求職者をオフィスに招待し、カジュアルな雰囲気で従業員と交流します。交流会ではなく、勉強会形式で開催する企業も存在します。
採用手法選びのポイント
採用手法選びのポイントとして、以下の4つが挙げられます。
・ 採用方針を決める
・ 採用課題を把握する
・ 複数の手法を取り入れる
・ 定期的に振り返りをする
ここでは、それぞれのポイントについて解説します。
採用方針を決める
トレンドとなっている採用手法には、なんらかのメリットがあるため、自社にも取り入れたくなります。しかし、どんなに良い採用手法でも、自社の方針に合っていなければ意味がありません。
そのためには、採用方針を決めることが大切です。採用する目的や求める人物像を定め、採用に使える予算を確認します。採用方針を定めることにより、適した採用手法を選びやすくなるでしょう。
関連記事:
採用戦略のフレームワークとは? 種類や利用するメリット、注意点を紹介
https://www.staffservice.co.jp/client/contents/knowledge/column124.html
採用条件の作り方とは?条件を決定する手順やポイント、注意点を紹介
https://www.staffservice.co.jp/client/contents/knowledge/column130.html
採用ペルソナとは? 採用戦略に重要な理由やメリット、作り方とポイントを紹介
https://www.staffservice.co.jp/client/contents/management/column155.html
採用課題を把握する
適した採用手法を選ぶには、採用課題を把握する必要があります。課題を把握するには、抱えている問題を洗い出さなければなりません。例えば、募集時の問題であれば、応募者数が少ないことや、スキルを持った人材の応募が少ないことが挙げられます。
選考時の問題では、ミスマッチが発生する人材を採用してしまうことや、内定辞退をする人材が多いことが挙げられます。採用担当者の負担が大きく、採用活動が円滑に回っていないケースや予算が少ないケースもあるでしょう。
問題を把握したうえで、取り組むべき課題を定めることにより、自社に適した採用手法が見えてきます。上記の問題であれば、以下のようなものが課題になるでしょう。
・ 応募者数を増やす
・ 質の高い母集団を作る
・ 採用コストを減らす
・ 採用担当者の負担を軽減する
自社の採用課題を把握し、その課題を解決できる採用手法を選びましょう。
複数の手法を取り入れる
どんな採用手法にもメリットとデメリットが存在します。ひとつの採用手法にこだわるのではなく、複数の手法を取り入れることも大切です。複数の採用手法を取り入れ、併用することにより、お互いのデメリットを補完できます。
自社が求める要件によっては、従来の採用方法の方が適しているかもしれません。自社の採用方針を基準に、求める人物像に合った人材を獲得するには、どのような採用活動が良いのかを検討しましょう。
定期的に振り返りをする
採用活動を定期的に振り返ることも大切です。採用手法だけではなく、採用活動を開始する時期によっても応募者の数や質に違いがでます。定期的に応募状況や選考状況、採用後の様子を振り返り、問題や改善点を抽出することにより、採用活動の質が高まります。
振り返ることにより、採用手法を変更する必要がでてくることもあるでしょう。せっかく決めた採用手法を変更することに対し、ネガティブな感情を持つこともあるでしょう。
しかし、採用手法は、自社が求める人材を獲得するための手段にすぎません。採用手法を変更することをネガティブに考えるのではなく、どうすれば採用活動の質を高められるのかといった視点で、採用活動の改善に取り組むことが大切です。
まとめ
従来の採用手法では、ハローワークや求人誌といった求人をだした後は応募が来るのを待つ「受け身の採用手法」が一般的でした。近年では新卒採用と中途採用のどちらも「個別採用」がトレンドとなっており、ダイレクトリクルーティングやオウンドメディアの活用、リファラル採用、アルムナイ採用が取り入れられています。
しかし、トレンドの採用手法が自社に適しているとは限りません。自社の採用方針や求める人物像を整理し、その人物像に近い人材を採用するには、どのように採用活動を進めればいいのかを考えましょう。
《ライタープロフィール》
田仲 ダイ
エンジニアリング会社でマネジメントや人事、採用といった経験を積んだのち、フリーランスのライターとして活動開始。現在はビジネスや教育関連の分野を中心に幅広いジャンルで執筆を手掛けている。