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採用条件の作り方とは?条件を決定する手順やポイント、注意点を紹介

採用条件の作り方とは?条件を決定する手順やポイント、注意点を紹介

「採用できてもすぐに辞めてしまう…」「いい人がなかなか採用できない」そんな悩みをお持ちの採用担当者は多いのではないでしょうか。求める人材を採用したり、早期離職を防いだりするためには、「採用条件」を定めることが重要です。
採用条件を作ることによって、自社にマッチした人材を採用し、定着率を高めることが期待できます。本記事では、採用条件の基礎知識、作り方の手順、重視したいポイント、注意点を紹介します。

採用条件とは

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採用条件とは、企業が求める人材を採用するための判断基準のことです。スキルや経験だけでなく、人柄や考え方なども含まれます。採用の基準となる具体的な条件を設定することによって、将来のリーダーや即戦力の採用、ミスマッチによる離職率の低下、採用力や定着率の向上などが期待できます。

採用条件を定める目的

採用基準を定めることには、大きく分けると3つの重要な目的があります。

・採用基準を公正に保つことができる
企業には、差別のない合理的な基準による採用選考をおこなうことが求められています。厚生労働省では、採用選考の基本的な考え方として、次の2点を挙げています。

・応募者の基本的人権を尊重すること

・応募者の適性・能力のみで採用すること

公正な採用選考をおこなうことは、家族状況や生活環境といった、応募者の適性・能力とは関係ない事柄で採否を決定しないということです。採用条件を定めることで、採用基準を公正に保つことができます。

・面接担当者の主観的な判断ではなく、企業が求める人材を客観的に評価できる
採用条件を定めていない場合、面接担当者が主観的な判断で採用をおこなうことになります。その判断が経営層の求める人材や、現場の求める人材と一致するとは限りません。

また、面接担当者の知見や経験によって採用の精度が左右されてしまうこともあります。そのため採用した人材のミスマッチ、それによる早期離職などが起こりやすくなります。採用条件を設定することによって、面接担当者の主観的な判断ではなく、企業が求める人材を客観的に評価しやすくなります。

・採用スピードが速まり、選考を効率化できる
採用選考は、時間や手間など、非常に労力がかかる作業です。採用の業務フローは、経営課題や事業戦略、採用人数、採用予算などをもとに、採用活動の内容やスケジュールを策定していきます。

そして採用活動に向けたより具体的な準備として、自社の求める人物像の明確化、自社の魅力の言語化、採用フローの構築、利用する採用媒体の選定、面接担当者の人選や教育をおこない、募集、書類選考、面接、内定者決定、内定者が入社するまでのフォローなどをしていきます。

採用条件を作り、一定の基準を設けることによって、採用スピードが速まり、選考業務を効率化することができます。また、それによって選考にかかる人件費などのコスト削減も期待できます。

採用条件を定める手順

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では、どのように採用基準を定めたらいいのでしょうか。採用条件は、以下の4つの手順で作成します。

①求める人材像を社内で調査

まずは社内でヒアリング調査を実施します。経営層はどのような人材を求めているか。各部署のリーダーやメンバーは、どのような人材を欲しがっているのか。必要なスキルや能力、経験、望ましい性格など、詳しくリサーチし、自社が求める人材像について多くの意見を集めます。

② ①の調査結果をもとに採用ターゲット像を洗い出す

次にヒアリング情報をもとに、採用ターゲット像を洗い出します。会社の成長ビジョンや今後の経営戦略に向けてどんな人材が必要なのか、生産性や競争力を高めるためにどんな人材が必要なのか。ターゲットを絞り、「20~30代の業界経験者」「変化に対応できる柔軟性があり、高いコミュニケーション能力を有する」「向上心を持ち、常に挑戦しようとする」など、できるだけ具体的にイメージします。

③ 求人情報のトレンドを調査する

求人倍率や選考スケジュールなど、新卒採用や転職市場の最新のトレンドも調査します。2024年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象におこなわれたアンケート調査では、7割弱の学生が「企業がSDGsに取り組んでいることを知ると志望度が上がる」と回答していました。

「SDGs」「テレワーク 」「Web面接」など、採用市場でトレンドとなっているキーワードを盛り込むことで求職者の志望度を高め、自社にマッチした人材と出会う可能性を広げることが期待できます。

また、求人広告や人材紹介、自社採用サイト、就職フェア・会社説明会、ハローワーク以外にも、自社に適した人材に直接アプローチする「ダイレクトリクルーティング」や、社員自身がリクルーターとなって知人や友人を紹介する「リファラル採用」など、採用手法も多様化しています。自社が求める人材を獲得するには、どのような手法が適しているのか。採用の方法も、改めて検討する必要があるでしょう。

④ ②と③を考慮して、最適な採用条件を決める

求める人材像と採用手法を絞り込んだら、経営層や各部門のリーダーなどにフィードバックし、認識の相違がないかを確認します。過不足があれば見直しをおこない、最適な採用条件を決定します。

採用条件で重視したいポイント

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新卒採用と中途採用では、人材採用における重視すべき点が異なります。以下のポイントにも留意して、それぞれの採用条件を決めていきましょう。

新卒採用の場合

新卒採用の場合
新卒採用は、社会人経験のない学生が対象となるため、スキルや経験を問うことにあまり意味はありません。これからの成長に期待する意味で、人間性を重視すべきです。以下のポイントに注目しましょう。

・コミュニケーション能力
・主体性
・協調性
・チャレンジ精神
・誠実性

どんな業種・職種においても、「コミュニケーション能力」は不可欠です。ビジネスで必要されるコミュニケーション能力は、「伝える力」「聞く力」「非言語的能力(ノンバーバルコミュニケーション)」の3つに大別できます。「伝える力」は、“話す”と“書く”、どちらの場合でも伝えたいことを相手にわかりやすく伝えることができる力。

「聞く力」は、相手の話をよく聞き、理解を示し、信頼を得られる力。「非言語的能力」は、明るい笑顔や表情、発声、姿勢など、相手に好印象を与えられる、言葉を使わないコミュニケーションを指します。コミュニケーション能力は、この3つのポイントに注目しましょう。

自ら考え行動できる「主体性」と、チームワークに不可欠な「協調性」も重要です。この2つは対照的な能力ですが、組織で働く以上、どちらも持っている必要があります。上の指示を待たず、自発的に行動できる。メンバーと協調し、他者に積極的に協力できる。この2点にも注目してみましょう。

新卒採用の場合、本人が希望した部署に配属されるとは限りません。そのため、どんな職種や業務に対しても積極的に取り組める「チャレンジ精神」が必要です。新しいことや苦手なこと、困難なことにも挑戦できる。好奇心があり、向上心や成長意欲がある。こうしたポイントも重視する必要があります。

謙虚に振る舞い、周囲から信頼される「誠実性」も大事なポイントです。尊大な態度をとる人や、人に対して不快感を与える人は、他の従業員にもストレスを与えてしまいます。周囲の人々や顧客に感謝できる、ちゃんとお礼が言える、ミスをしたら素直に謝ることができる。新卒採用の場合は、誠実な人柄であるかどうかも重視したほうがいいでしょう。

中途採用の場合

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中途採用の場合は、即戦力として活躍できることが求められます。また、将来リーダーシップを発揮できるかどうかにも注目して、以下のポイントを重視すると良いでしょう。

・スキル、知識、資格
・経験
・仕事への熱意
・コミュニケーション能力
・人間力

即戦力として活躍してもらうためには、「スキル、知識、資格」と「経験」は非常に大事なポイントです。必要となるスキル・知識・資格・経験は、部署や業務によっても異なります。社内で調査をする際、各部署のリーダーやメンバーに具体的に列挙してもらい、採用条件の評価項目に反映させましょう。

ただし、スキルや知識、経験があっても、「仕事への熱意」がなければ、自社で活躍することは期待できません。自社のどのような部分に魅力を感じているのか、自社でどんな活躍をしたいと考えているのか、キャリアにおける明確な目標はあるか、そこに向かって能力を伸ばそうと努力しているかなど、具体的な志望動機や自社における具体的なキャリアビジョンについても質問し、仕事への熱意を確認しましょう。

また、中途採用においても「コミュニケーション能力」は重要なポイントです。社会人経験のある中途採用の求職者に対しては、多くの人々に理解と共感を得られる「プレゼンテーション能力」や、部下やメンバーに仕事の目的や意味を伝えられる「動機づけ」、価値観の異なる相手や自分より経験の少ない人の話でもしっかりと聞き、理解しようと務める「傾聴力」などのスキルが必要となってきます。

さらには、社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な「人間力」も重要です。基礎学力や専門的な知識・ノウハウ、論理的思考力、創造力、リーダーシップ、公共心、規範意識、他者を尊重し切磋琢磨しながらお互いを高め合う力(相互啓発力)、忍耐力、自分らしい生き方や成功を追求する力(自己受容・自己実現力)などにも注目すると良いでしょう。

採用条件を決める注意点

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採用条件を決める際には、いくつかの注意点があります。採用後のミスマッチや早期離職を防止するためには、以下のポイントに留意して、採用条件を策定しましょう。

社内の声を取り入れる

現場の意向を反映せずに採用条件を決めてしまうと、ミスマッチや早期離職が起こりやすくなります。経営層や人事担当が求める人材像と、実際に現場で働くスタッフが求める人材像は異なる場合があります。

新入社員のよくある早期離職の理由は「思っていた仕事と違った」です。現場の声を無視して採用条件を決めてしまうと、こうしたギャップが生まれやすくなります。
実際にどのような業務をするのか、大変なのはどんなポイントなのか、どのような人材が適しているのか。現場で働く従業員のリアルな声を活かして採用条件を作ることが、自社にマッチした人材の採用や離職率の低下につながります。

経営方針に合った条件を定める

採用条件は、経営方針に合った基準を定めることが必要です。人事に関する施策は、経営目標の達成や業務に必要な機能、それらを実行する組織・予算・人件費・人員数などを決めることから始まります。

10年先の企業のあるべき姿を踏まえたうえで、どんな人材が必要なのか、どんな配置にするのか、現状はどうなっているのかを確認し、単年度の配置・採用・異動などを決めていきます。
このような企業が必要とする人材を確保するための長期的な視点での計画を「人員計画」といいます。人員計画に基づいた採用条件を定めることで、ミスマッチを防ぎ、組織のパフォーマンスを最大化することが期待できます。

職業差別に該当する要因は取り入れない

採用条件は、企業ごとに自由に設定できます。ただし、職業差別に該当する要因を取り入れるのはNGです。厚生労働省では、採用選考時に配慮すべき事項として、次の14項目を挙げて注意を促しています。

就職差別につながるおそれがある14項目
本人に責任のない事項の把握 ①本籍・出生地に関すること(注1)
②家族に関すること
③住宅状況に関すること
④生活環境・家庭環境などに関すること
本来自由であるべき事項の把握(思想・信条にかかわること) ⑤宗教に関すること
⑥支持政党に関することの把握
⑦人生観・生活信条などに関すること
⑧尊敬する人物に関すること
⑨思想に関すること
労働組合(加入状況や活動歴など)、
学生運動などの社会運動に関すること
購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
採用選考の方法 ⑫身元調査など(注2)の実施
⑬本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用
⑭合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施

(注1)「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します。 
(注2)「現住所の略図等」は、生活環境などを把握したり、身元調査につながる可能性があります。

引用:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「公正な採用選考を目指して」

求職者から「本人の適性・能力以外の事項を把握された」と指摘されている不適切な採用選考では、「家族に関すること」の質問が約半数を占めているといいます。 面接の空気を和らげるために聞いてしまうケースが多いようですが、採用条件にNG質問も明示し、面接担当者に注意を促しましょう。

評価基準に曖昧な表現は使わず、明確にする

採用条件は、曖昧な表現は使わず、具体的であればあるほど、ミスマッチを避けることができます。たとえば「コミュニケーション能力」という表現は、人によって解釈が異なります。「自分の考えを相手に伝える力」「筋道を立てて説明したり文章にできる力」「感じの良さを意図的に表現できる力」「相手の意図や感情を理解し、配慮できる力」などと具体的に言い換えることで、面接担当者にも求職者にも求める人材像が伝わりやすくなります。曖昧な表現ではなく、できるだけ明確な評価基準を設けましょう。

まとめ

売り手市場による採用難が続く昨今、若手の早期離職や人手不足が多くの企業で深刻な問題になっています。こうした問題の解決に役立つのが「採用条件」です。採用基準を具体化し、採用活動の足場としてしっかり固めることで、採用のミスマッチを防ぎ、企業が求める理想の人材の獲得につながります。

また、採用条件を明確にすることによって、自社の社員から採用条件にマッチした知人や友人を紹介してもらう「リファラル採用」など、採用方法の拡充も図れます。採用条件を定めることは、採用活動の第一歩です。明確な採用基準を作り、採用力を向上させていきましょう。

ライタープロフィール
鈴木にこ(ライター)
求人メディアの編集者を経て、フリーランスとして活動中。派遣・新卒・転職メディアの編集協力、ビジネス・ライフスタイル関連の書籍や記事のライティングをおこなう。