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準委任契約とは

準委任契約とは

準委任契約とは、法律行為ではない業務の遂行を目的として締結される契約です(民法656条)。労働の現場では、委任契約や請負契約と同様に、業務委託契約の一種として扱われています。

準委任契約を正しく理解するには、委任契約や請負契約、労働者派遣契約との違いを知る必要があります。「準委任契約」を締結しているにもかかわらず、実態は「労働者派遣契約」であった場合には、偽装請負として罰則が課される可能性もあるため注意が必要です。

今回は、準委任契約とは何か、他の契約形態との違いなどに触れたうえで、準委任契約のメリット・デメリット、注意点についても詳しく解説します。本記事を準委任契約や請負契約などの契約形態を正しく理解するのにご活用いただけると幸いです。

準委任契約とは

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準委任契約は、当事者の一方が法律行為以外の業務を相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって成立します(民法656条)。

準委任契約の目的は、相手方の自由な判断を信頼して業務の遂行を任せることで、業務の完成自体は目的とされていません。そのため、相手方が業務を遂行さえすれば、業務の完成義務は負いません。この完成義務を負わない点で請負契約と異なります。

準委任契約は、相手方の自由な判断を信頼して業務の遂行を任せる契約なので、委託者に指揮命令権限はありません。ただし、受託者は、職業や社会的・経済的地位などに応じて一般的に要求される善管注意義務を負います。そのため、受託者が注意義務を欠いたことで委託者に損害を与えた場合には、契約の解除や損害賠償が問題となります。

一般的な準委任契約の具体例としては、医師の診療行為や多くのコンサルティングサービスなどが挙げられます。

準委任契約の種類

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準委任契約には、履行割合型の契約と成果完成型の契約の2種類の契約形態があります。それぞれの違いは、報酬が発生するタイミングです。

履行割合型の準委任契約は、業務を遂行していれば業務が完成していなくても報酬が発生します。報酬が発生するタイミングは、業務時間や業務遂行の工数に応じてなど、当事者間の契約内容で決まります。

成果完成型の準委任契約は、業務が完成して初めて報酬が発生する契約形態です(民法656条、同648条の2)。成果完成型の具体例としては、成功報酬型のコンサルタント契約が挙げられます。

労働者派遣の現場で準委任契約が締結される場合には、履行割合型になるケースがほとんどです。

準委任契約と請負契約など他の契約との違い

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準委任契約を正しく理解するには、委任契約、請負契約、労働者派遣契約との違いを明確にしておく必要があります。

労働者派遣の現場では、これら4つの契約形態の違いを理解していなければ、労働者とのトラブルだけでなく、法律違反として処罰される可能性もあるため注意が必要です。

労働者派遣契約との違い

準委任契約や請負契約などの業務委託契約と、労働者派遣契約との大きな違いは、発注者の側に指揮命令権限があるか否かです。

これまでに解説した、準委任契約や請負契約などには、発注者の側に指揮命令権限は認められませんでした。受任者や請負人は、自分自身の判断で業務を遂行します。

一方、労働者派遣契約では、発注者が労働者に対して指揮命令権限を持ち、労働者は発注者の指示に従って業務を遂行します。

労働者派遣契約を締結するには、労働者派遣の許可や届出が必要です。準委任契約や請負契約の形式をとっていても、実態が労働者派遣契約といえる場合には、労働者派遣法の脱法行為として処罰される可能性があります。

準委任契約で発生する責任と権利

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ここでは、準委任契約で発生する具体的な責任と権利について解説します。

善管注意義務

準委任契約の受任者は、善管注意義務を負います(民法644条、656条)。

受託者は、業務を完成する義務は負いません。しかし、業務を遂行する過程では善管注意義務を負うため、注意義務を欠いたために委託者に損害を与えた場合には、損害賠償などの義務を負います。

善管注意義務の具体的な内容は、受託者の職業や社会的・経済的地位などに応じて決まります。準委任契約では、専門家が受託者となるケースが多いので、その場合は善管注意義務の程度も重いものとなるでしょう。

報告義務

準委任契約では、受託者は作業の報告義務を負っています(民法645条)。受託者は、委託者からの指揮命令は受けませんが、作業の状況について報告を求められたときには、その状況を委託者に報告しなければなりません。

報酬請求権

準委任契約で報酬請求権が発生するタイミングは、履行割合型と成果完成型で異なります。

履行割合型では、決められた時間や工数の作業を終えた段階で報酬が発生します。一方、成果完成型は、作業が完了しない限り報酬は発生しません。

どちらの形態を選択するかは契約当事者の自由となりますので、契約の目的と実態に合った形態を選択するようにしてください。

再委託の禁止

準委任契約では、受託者が受託した業務をさらに他の者に委託する再委託は禁止されています。これに対して、請負契約では、仕事の完成を目的としているので再委託は制限されていません。

準委任契約のメリットとデメリット

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ここでは、準委任契約のメリットとデメリットをそれぞれ3つ紹介します。準委任契約と他の契約形態を選択する際の参考にご活用ください。

準委任契約のメリット

準委任契約のメリットとしては、次の3点が挙げられます。

・   契約期間の制限がない
・   専門家に業務を委託できる
・   委託業務の内容を柔軟に設定できる

準委任契約には契約期間の制限がありません。労働者派遣契約では、最短31日、最長3年の期間制限があるため、自由な契約期間を設定できるのは準委任契約を締結するメリットの1つといえるでしょう。

準委任契約は、受託者の専門的な能力を信頼して受託者に業務の遂行を任せる契約です。一方、労働者派遣契約では、労働者を教育しなければならないケースがほとんどです。専門家に業務を委託し業務の遂行過程で発注者に負担がないのは準委任契約のメリットといえます。

準委任契約は、請負契約と異なり業務の完成を目的としていません。そのため、委託する業務の内容を柔軟に設定できます。

準委任契約のデメリット

準委任契約のデメリットとしては、次の3点が挙げられます。

・   仕事の指揮命令権限がない
・   いつでも契約を解除できる
・   成果が得られなくても報酬が発生する可能性がある

準委任契約では、委託者に指揮命令権限がありません。業務を遂行する過程で、細かい指示を与える必要がある場合には準委任契約は選択できません。

また、準委任契約は当事者双方がいつでも解除できるのが原則であるため、委託者の望まないタイミングで契約が解除されてしまう可能性もあります。

さらに、履行割合型の準委任契約では、想定していた成果が得られなくても報酬を支払わなければならない場合があります。

準委任契約の注意点

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準委任契約を締結するうえでは、契約書を作成して契約の内容を明確にするとともに、偽装請負とならないように注意が必要です。

準委任契約書の作成における注意点

準委任契約書を作成する際に、最低限記載すべき項目は次のとおりです。

・   委任する業務の内容、業務の範囲
・   報告義務の内容
・   報酬の発生するタイミング、支払期日、支払方法
・   費用の負担
・   知的財産権の所在
・   損害賠償の有無・範囲
・   契約解除の方法

準委任契約では、報酬を請求するタイミングでトラブルになるケースが多いです。業務の内容と範囲を決めるだけでなく、履行割合型なのか成果完成型なのかに応じて報酬が発生するタイミングも明確にしておきましょう。

偽装請負とならないための注意点

契約書のタイトルが「準委任契約」や「業務委託契約」となっていても、契約の実態が労働者派遣契約である場合には、偽装請負として罰則の対象となります。

準委任契約と労働者派遣契約の最も大きな違いは、指揮命令権限の有無です。準委任契約を締結している場合でも、受託者が注文者から細かな指示を受けて業務を行っていると偽装請負となる可能性があります。

契約を締結する際には、契約書の形式ではなく業務遂行の実態に応じた契約形態を選択するようにしてください。

まとめ

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準委任契約は、請負契約と同じく業務委託契約の一種として多く活用されている契約形態です。

準委任契約と請負契約は、契約の目的に応じて適切に使い分けられるようにしましょう。契約の目的が成果物の納品にあるにもかかわらず、準委任契約を締結している場合には、余計な報酬を支払っているかもしれません。

また、偽装請負の問題には十分に注意が必要です。偽装請負か否かを判断するのは契約書の形式ではなく、業務遂行の実態です。契約書の内容と業務遂行の実態にずれがないかを確認し、ずれがある場合には、速やかに実態に合わせた契約書を作成するようにしてください。

この機会に、業務の実態と契約形態にずれがないかを確認し、健全な業務体型を実現しましょう。
 


《ライタープロフィール》
てん@法律関係ライター(佐藤孝生)

元弁護士としての経験を活かし、法律問題をわかりやすく伝える記事を中心に執筆活動を行う。
弁護士時代には、企業法務、労働問題、離婚、相続、交通事故などを幅広く経験。
現在は「読者の困りごとに寄り添う記事」をモットーに、法律問題をわかりやすく伝える記事を中心に執筆に取り組んでいる。