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労災~発生の原因について~

労災~発生の原因について~

労災をはじめとする災害は、人だけ、あるいは物だけが原因として発生する場合もありますが、大部分は「物」の不安全な状態(=「物的要因」)と「人」の不安全な行動(=「人的要因」)が異常接触して発生すると言われています。今回は労働災害のうち、その原因について取り上げます。

労災発生モデルについて

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かつては人的要因が労働災害の主要因といわれていましたが、最近では作業環境や管理条件の不備が最大の要因となるケースもあり、上記の二要因に加え安全衛生管理体制の不備などの「管理的要因」が取り上げられることもあります。

原因が不安全な状態の場合

労災~発生の原因について~_2

不安全な状態とは、事故や災害を起こしそうな状態または事故や災害の要因を作り出している状態を指します。「機械の設計不良」「荷物の積み方の欠陥」「作業手順の誤り」などがそれにあたります。そして不安全な状態があった物を「起因物」とし、直接人に触れて危害を加えた物を「加害物」とします。起因物と加害物は同じ物の場合もあり、異なる場合もあります。

不安全な状態の例

●物自体の欠陥
設計不良/工作機械の欠陥/老朽や疲労/使用の限界/故障の未修理/整備不良

●防護措置・安全装置の欠陥
無防備/防護不十分/絶縁無し・不十分/遮蔽無し/表示の欠陥

●物の置き方
通路が確保されていない/作業箇所の空間不足/機械の配置の欠陥/物の置き方が不適切/物の積み方・立てかけ方の欠陥

●保護具や服装の欠陥
履物を指定していない/手袋の使用禁止が不徹底/保護具が自由/服装の指定が無い

●作業環境の欠陥
換気が不十分/その他作業環境の欠陥

●作業部外的・自然的不安全な状態
作業場外の物自体の欠陥/作業場外の防護措置の欠陥/交通の危険/自然災害の危険

●作業方法の欠陥
不適当な機械・装置の使用/不適当な工具・用具の使用/作業手順の誤り/技術的・肉体的な無理/以前の安全の不確認

原因が不安全な行動の場合

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不安全な行動とは、災害の要因となった「人の行動」を指します。その行動の中には「知らなくて不安全な行動をした」「知っていても出来なかった」「故意にやった」という場合があります。また、ここで表現している「人」とは、その本人の場合もあれば、第三者の場合もあります。

不安全な行動の例

●防護・安全装置
安全装置を外す/防護具を外す/安全装置の調整を誤る

●安全装置の不履行
不意の危険に対し何もしない/機械を不意に動かす/確認無しに車両を動かす/合図無しに物を動かす

●不安全な放置
機械を運転したまま離れる/機械を不安全な状態にして放置する/工具・用具・材料くずを不安全な場所に置く

●危険な状態を作る
積荷の積み過ぎ・載せ過ぎ/組み合わせては危険なものを混ぜる/所定の物を不安全な物と取り替える

●機械の指定外の使用
欠陥のある機械・工具・用具を用いる/機械・工具・用具の選択を誤る/指定外の方法で使う/不安全な速さで動かす

●機械の掃除など
運転中に掃除・注油・修理・点検する/加圧されているのに掃除する/加熱しているのに掃除する/危険物が混ざっているのに掃除する

●保護具や服装の欠陥
保護具を使わない/保護具の選択・使用方法の誤り/不安全な服装

非定常作業

労災~発生の原因について~_4

非定常作業とは、日常的に反復・継続して行われることが少ない作業で、「保守点検作業」や「トラブル対応」のための作業をいいます。
非定常作業は、通常の作業と異なり、作業頻度は少ないが作業項目が多岐にわたったり、作業を行う者が作業に未習熟だったりして、労働災害の発生頻度が高くなっています。 たとえば、卸売・小売業の現場では、普段は使うことがないフォークリフトや食品加工用機械の取り扱い時の災害、トラブル処理等の非定常作業時の災害が発生しています。

派遣先の機械設備及びその取扱い方法に熟知していない派遣労働者が危険な機械設備のトラブル処理など非定常作業に従事する機会はそう多くないと想定されますが、作業補助者として従事することはありえますので、機械設備にトラブルや不具合が発生したときは、「責任者に連絡する。待つ。自分で勝手に処理しない。」ことなどを教育しておくことが重要です。また、派遣労働者の災害の中には、労働者派遣契約にはない作業に従事した場合のものも少なくないので、派遣先は、安全衛生教育の機会に契約外の作業を行わないことを徹底するなどの対策が必要です。

最近では作業環境や管理条件の不備が最大の要因となっており、施設や設備についての定期的な安全検査安全確保のための施設・設備の設計・配置、安全教育訓練の徹底、作業マニュアルの作成と励行、肉体的・精神的不適格者の発見、危険有害物質の除去、整理整頓の励行、安全作業法の開発などの、労働災害防止のための労働安全管理の役割が大きくなっています。

平成25年10月1日施行の改正労働安全衛生規則(通称:安衛則)

労災~発生の原因について~_5

平成25年4月12日に労働安全衛生規則(通称:安衛則)が改正され(平成25年10月1日施行)、事業者は、機械(刃部を除く)全般のそうじ、給油、検査、修理の作業に加え、「調整の作業」を行う場合も、労働者に危険を及ぼすおそれがあるときは、機械の運転停止義務の範囲に追加されました。
この場合の「調整」の作業には、原材料が目詰まりした場合の原材料の除去や異物の除去等、機械の運転中に発生する不具合を解消するための一時的な作業や機械の設定のための作業が含まれます。
また、事業者は、機械の運転を停止したときは、当該機械の起動装置に錠を掛け、当該機械の起動装置に表示板を取り付ける等同項の作業に従事する労働者以外の者が当該機械を運転することを防止するための措置を講じなければなりません。
上記に違反した場合は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。

まとめ

労災が発生する原因は、人的要因とともに管理的要因や作業環境や管理条件の不備など様々です。事前に備えておくことで労災発生を抑制することも可能ですので、対策を進めましょう。