日雇い派遣とは? 禁止される理由や単発バイトとの違い、例外的に許される条件と注意点を紹介
日雇い派遣とは、「31日未満の派遣期間」の仕事のことを指します。2012(平成24)年の労働法改正により、日雇い派遣は原則禁止となりましたが、一部の例外があります。本記事では、日雇い派遣が原則禁止となった理由、日雇い派遣を雇用する条件、日雇い派遣の例外業務など解説します。
日雇い派遣とは
日雇い派遣は、31日未満の派遣期間で契約期間が短いのが特徴で、「スポット派遣」や「スポット」とも呼ばれています。
過去、2012(平成24)年には7万人近くが日雇い派遣労働者として就業していたほど、企業にも派遣スタッフ側にも求められる働き方でした。
しかし、2012(平成24)年に改正された労働者派遣法(第35条4項の1)で定められている「30日以内で雇用保険の対象にならない契約」に基づき、日雇い派遣は原則禁止となりました。
原則禁止となってからは、派遣会社と派遣スタッフが雇用関係を結ぶ際は、原則「31日以上の雇用期間」の契約を結ぶよう義務付けられています。
《参考サイト》
厚生労働省|日雇派遣の原則禁止について 日雇派遣労働者数の推移について(事業報告)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000644420.pdf
日雇い派遣が禁止されている理由
日雇い派遣は、「31日未満の雇用期間」であるため、労働者は社会保険の加入ができず、賞与や昇給なども期待できません。また、日雇い派遣が終わってから新たな仕事先を見つけるまでに時間がかかってしまうこともあり、就業が安定しないケースがあります。
このような日雇い派遣の特徴である「非正規社員」や「有期雇用」待遇の労働者を減らすために、日雇い派遣を原則禁止とする改正がおこなわれました。
また、2007~2008(平成19~20)年の社会情勢も日雇い派遣を原則禁止するきっかけとなりました。
当時、世界的な金融不安を理由に、不安定な経営に危機感をもった企業が多くの派遣スタッフを雇い止め(派遣切り)をおこないました。その結果、仕事や住まいを失った人たちが多く生まれてしまい、自宅で年が越せない方を保護する活動も報道されていました。
このように、働く期間が短期間という理由で、雇用環境の整備がなされず労働災害につながったこと、また、不適正な日雇い派遣が社会問題化したことから法改正がおこなわれた経緯もあります。
単発バイトと日雇い派遣の違い
働き方として類似している「単発バイト」と「日雇い派遣」の比較をしてみましょう。大きく分けて2つの違いがあります。
・雇用主の違い
1つ目は、雇用主が異なるという点です。単発バイトは就業先の企業が雇用主となりますが、日雇い派遣の場合は就業先ではなく、派遣会社は雇用主になります。
・労働契約を結ぶ条件の違い
日雇い派遣とは異なり、単発バイトの場合は労働契約を結ぶだけで特別な条件はありません。雇用保険の適用外となる昼間学生(※)も、単発バイトなら問題なく就業できるでしょう。
(※)昼間学生:昼間は学校に通っていてアルバイトをしていない学生、あるいは昼間に学校に通い、授業終了後、あるいは休みの日にアルバイトをしている学生のことをいいます。
一方、日雇い派遣には、原則禁止の中で例外的に対応できる条件があります。詳しいポイントを次の章で紹介します。
日雇い派遣を雇用する条件
日雇い派遣を雇用する条件としては、下記6つがあります。この条件をクリアしている場合は日雇い派遣スタッフとしての雇用が可能です。
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① 年収の総支給額が500万円を超えている
本人の年収総支給額が500万円あって副業として日雇い派遣で働きたい場合は、日雇い派遣として雇用ができます。これは改正当時、下記のような基準で判断されているためです。
“標準生計費の2倍程度の年収があれば、「生活のためやむを得ず日雇派遣の仕事を選ぶことのない水準」であるとの認識のもと、この水準を年収500万円としており、「副業として従事する者」と「主たる生計者以外の者」については、年収500万円以上の者に限り、例外的に日雇派遣に従事することができることとされている。” |
《引用》
厚生労働省|日雇派遣の原則禁止について 日雇派遣労働者数の推移について(事業報告)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000644420.pdf
② かけ持ちはNG
ただし、①の本人の年収総支給額が500万円の場合でも、かけ持ちの合計額であった場合は日雇い派遣としての雇用は認められません。雇用の安定性が保持されているとは考えない方針のルールであることがわかります。
③ 世帯収入の総支給額が500万円以上あり、主たる生計者ではない
こちらも同様に500万円以上が基準となっていますが、自分自身が「主たる生計者(※)」ではない人が日雇い派遣で働くという場合は働くことが可能です。
(※)主たる生計者:世帯年収のうち50%以上の収入を担っている人のこと。
また、夫あるいは妻の収入の総支給額が500万円以上あって、その配偶者である場合や、親の収入が500万円以上あって、昼間学生ではない子供が日雇い派遣として働く場合も問題ありません。
④ 満60歳以上である
60歳の誕生日を迎えれば、例外として日雇い派遣の仕事が可能です。
(数え年ではなく、満年齢が適用)
⑤ 雇用保険の適用を受けない学生
昼間学生は、学業がメインで日雇い派遣の仕事が生活の中心にはならないことから、例外として認められています。ただし、雇用保険の適用を受けている昼間学生は適用外となります。たとえば、就職先の内定が出て、雇用保険(※)に加入することになった場合、日雇い派遣では働けません。
(※)雇用保険:「31日以上の雇用(見込み)がある」「1週間のうち、労働時間が20時間以上」という2つの条件を満たす場合は加入。
また、夜間学部や通信教育で学んでいる人、休学している学生など、日中に働くことが可能な場合は昼間学生とはいえないため、日雇い派遣の仕事は禁止となります。
⑥ 例外事由に該当する業務である
日雇い派遣スタッフが従事する業務が例外業務に当てはまる場合は、日雇い派遣として雇用が可能です。例外業務については、次の章で紹介します。
日雇い派遣の例外業務
日雇い派遣の例外業務としては、下記の18業務があります。下記の業務は“「いわゆる26業務から、特別な雇用管理を必要とする業務及び日雇派遣がほとんどみられない業務を除外したものをリスト化」(平成20年9月24日労働政策審議会建議)”したものです。
自社で31日未満の派遣期間で派遣スタッフに働いてもらいたい場合は、下記業務に当てはまっているかどうかを確認する必要があります。
・ソフトウエア開発 ・機械設計 ・事務用機器操作 ・通訳、翻訳、速記 ・秘書 ・ファイリング ・調査 ・財務処理 ・取引文書作成 ・デモンストレーション ・添乗 ・受付、案内 ・研究開発 ・事業の実施体制の企画、立案 ・書籍などの製作、編修 ・広告デザイン ・OAインストラクション ・セールスエンジニアの営業、金融商品の営業 |
《引用》
厚生労働省|日雇派遣の原則禁止について 日雇派遣労働者数の推移について(事業報告)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000644420.pdf
日雇い派遣の導入で企業が注意するポイント
日雇い派遣を検討している場合、下記3つのポイントを押さえておきましょう。
・例外業務に該当するか事前に確認をする
先に紹介したように、日雇い派遣は原則禁止となっています。そのため、禁止されている日雇い派遣の契約形態に該当しないよう、注意が必要です。
自社でお願いしたい業務が例外業務に該当しない場合は、日雇い派遣の範囲外となるように長期間の派遣契約、もしくは、直接雇用のアルバイト・パートを検討しましょう。
・働いてもらう派遣スタッフが日雇い派遣の雇用条件を満たしているか確認をする
自社が依頼したい業務が例外業務に当てはまらないと確認できたら、次は求職者が日雇い派遣の条件を満たしているかどうかの確認が必要です。
派遣元である派遣会社側で事前に確認しているはずですが、「よく調べてみたら実態が異なった」という事態を招かないためにも、再度の確認をしておくことをおすすめします。自社側の責任になる可能性を排除して、派遣スタッフを迎え入れる準備を進めましょう。
・例外条件に当てはまると確認できる書類を回収する
就業決定後は念のため、日雇い派遣スタッフが派遣会社の雇用条件を満たしていることがわかる書類を回収しておきましょう。派遣スタッフ側が働きたいと考えて、虚偽の申告をしている可能性もあります。年齢や現在の属性(昼間学生ではないかなど)、年収の総支給額の証明となる書類、その書類がかけ持ちではないことなどを確認しておきましょう。
後々問題になることを避けるため、最初の段階で書面上の確認を挟んでおくと安心です。派遣会社側としても禁止事項に加担すると大きな問題になるため、協力的に対応してくれるでしょう。
まとめ
原則禁止となっている日雇い派遣の例外業務や、例外となる条件を紹介しました。原則禁止という文言でもわかるように、日雇い派遣の制度を利用できる業務と条件は限定的です。31日未満の日雇い派遣範囲内の業務を頼みたい場合、まずは18の例外業務に当てはまるか、その後に例外条件に当てはまるスタッフかどうかを確認することが重要です。
《ライタープロフィール》
高下真美/ライター
人材派遣・紹介会社、求人広告会社での営業を経てフリーランスのライターとして活動中。派遣・新卒・中途の就職関連メディア、企業採用ホームページの取材・執筆、人事コンサルティングを行う。