閉じる

ユニークな社内制度の効果とは?事例も紹介

ユニークな社内制度の効果とは?事例も紹介

企業からの待遇面で不満を感じ、転職を決意した人は年齢・性別を問わず少なくありません。平成29年度の厚生労働省の調査によれば、直前の勤め先を離職した主な理由は「労働時間、休日の労働条件が悪かった」「給料等収入が少なかった」であることが明らかになっています。

そのような状況もあり、近年では社員に仕事の楽しみを見つけてもらう、成長を実感してもらう、企業を好きになってもらうといった目的のもと、「社内制度」を導入する企業が見られます。社員ひとりひとりが信頼できる仲間と仕事ができれば、仕事へのモチベーションはさらに高まり、企業側としても業績アップや効率化につながります。

そして社内制度は働きやすさのアピールにもつながり、企業の採用にも有効です。今回は、社内制度のメリットや導入時の注意点、事例を紹介します。

社内制度とは

ユニークな社内制度の効果とは?事例も紹介_1

社内制度とは、社内コミュニケーションの不足や社内満足度の低下など、企業が直面している課題を解決するために導入される仕組みや取り組みのことです。導入は義務づけられておらず、内容も企業の経営課題によって異なります。

たとえば社員同士のコミュニケーションを活性化させる、帰属意識を高める、社員のスキルアップの実現をはじめとする目的に向けて作られていたりします。社内制度は福利厚生と類似しており、求職者の心を掴むものは「こんな会社で働きたい」と応募の決め手になることも考えられます。

これまでの日本は、終身雇用・年功序列で働くことが当たり前でした。しかし、仕事に対する価値観や結婚・出産といったライフスタイルの変化により、社員は自分の望む条件や待遇を企業に求めて転職することに抵抗感がなくなりつつあるのです。

どれほど活躍が期待される人材であっても、企業に対する愛着心や思い入れである「エンゲージメント」が低ければ流出してしまうのも時間の問題です。

人材の流動化が進むと同時に、日本では少子高齢化により社会全体の労働者人口の著しい減少が見込まれています。求職者にとって魅力的な企業であることをアピールできるか、そしてエンゲージメントを維持できるかは、激化する人材獲得競争を勝ち抜くために不可欠です。

派遣社員と福利厚生の関係

同じ企業で働く正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指すべく、2020年4月より労働者派遣法が施行されました。そして労働者派遣法の改正により、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間で待遇差は禁止となります。

同一労働同一賃金の実現による賃金での格差はもちろん、福利厚生による待遇の格差も今後は無くなっていくことが見込まれています。

社内制度がもたらす効果

ユニークな社内制度の効果とは?事例も紹介_2

独自の社内制度には、さまざまなメリットが期待できます。

1.社内満足度の向上

給与などの待遇面が十分だったとしても、その企業で働く満足度、つまり「社内満足度」が高くなければ、社員の流出は避けられません。

社内満足度が高い企業では、金銭報酬とともに、非金銭報酬を社員に提供しているケースが多いです。給与を上げれば一時的に社員を企業に繋ぎ留められても、その金額に上限はあります。さらに他社が高額の報酬を提示すれば、社員は離職してしまうかもしれません。

その反面、非金額報酬である仕事のやりがいや自信の獲得、スキルアップするための環境は社員がその企業で働くモチベーションアップを叶えます。社内制度はそんな非金額報酬を独自の方法で与え、社内満足度を上げられます。

2.社員同士のコミュニケーションの活発化

企業に属している限り、周囲とのコミュニケーションは必須です。もしも人間関係に問題があれば、モチベーションの低下につながり、離職のきっかけに発展します。平日の大半を職場で過ごす社員にとって、良好なコミュニケーションは必須といえるでしょう。

配属や年齢、性別に関わらず同じ企業で働く社員とのコミュニケーションを活発にする社内制度があれば、働くことへのモチベーションアップにもつながります。

3.企業のイメージアップ

インパクトのある社内制度はメディアからの注目を集めやすく、報道を通じた社外へのアピールにもつながります。企業のイメージアップにもつながるため、優秀な人材が集まりやすく、採用力の強化を叶えられます。

そして社内制度は企業の個性が色濃く反映されるため、求職者にも社風を判断させる指標にもなり、ミスマッチを事前に防ぐ効果もあります。

社内制度の注意点

ユニークな社内制度の効果とは?事例も紹介_3

社内制度はメリットが多い反面、注意点も存在します。本当に効果が期待できるものを導入できるよう、意識しましょう。

1.社内のニーズ調査

当然ながら、社内制度は社員の希望を叶えるものでなければ意味がありません。ただ企業側が社内外からの注目を集めるために導入しても、利用されなければコストを浪費して終わってしまいます。特に社員が多い企業は、社内制度を利用できる人とできない人に偏りが生まれ、かえって不満が生じる状況にも陥る可能性もあるでしょう。

社内制度を導入するには、社内のニーズを把握することが重要です。コストの問題により全員の希望を叶えることは難しいものの、「要望に答えようとしてくれている」という事実は信頼獲得につながります。

また、ニーズは時代の変化や社員の増減により絶えず変化しています。導入後も利用率を調査し、地道なアップデートや、場合によっては廃止、反省点を踏まえた新しい社内制度の導入を検討しましょう。

2.時間的・金銭的コストを踏まえた検討

社内制度によって多額の手当や報酬を得られるようになれば、社内満足度の向上は短時間で叶えられるでしょう。その反面、長期的に続けることは難しく、社内制度の廃止を決めれば社員からの不満は避けられません。

社内制度は報酬面だけでなく、利用希望者の申請書類の作成や処理、社外ツールの導入など管理が求められます。独自性ばかりに気を取られるのではなく、維持するために必要なコストも踏まえて検討しましょう。

3.副次的な効果

コストに制限があるため、社内制度は副次的な効果が得られる形での導入が望ましいでしょう。たとえば出産を予定している社員に手当てを支給する社内制度は、ワークライフバランスの両立を促すと同時に、女性の求職者に対して魅力的なアピールが可能です。ひとつの制度で得られるメリットが多い社内制度を導入できるよう、さまざまな視点による検討が重要です。

4.制度の定着

社内制度は、導入直後だけでなく継続的に活用を促していく必要があります。社内報やチャットツールなどを通じ、社内に広く知ってもらうようにしていきましょう。「実は対象だったが、制度そのものを知らなかった」「知っていたら使っていたのに」という社員がいるかもしれません。

ユニークな社内制度の事例

ユニークな社内制度の効果とは?事例も紹介_4

実際に導入され、活用されている社内制度には、どのようなものがあるのでしょうか。

ピアボーナス制度

社員同士で報酬をやり取りする「ピアボーナス」。仲間や同僚を意味する「peer」と報酬を意味する「bonus」を組み合わせた言葉で、感謝の気持ちや成果に対する称賛をポイントや社内通貨でやり取りすることが一般的です。

ピアボーナス制度は、それまで表面化しづらかった活躍や協力が可視化され、コミュニケーションの活発化を促します。お互いの良いところを評価する雰囲気が生まれ、ポジティブな変化をもたらすでしょう。

金額こそは少額でも、成果や貢献度に比例してボーナスは多くなるため、モチベーションアップも期待できます。

エンタメ補助制度

アニメや映画、ゲームなど娯楽に携わる企業では、感性を磨くことを目的に「エンタメ補助制度」を導入しているケースも見られます。

新たな発想を得られるよう、映画やライブなどを目的とした特別休暇とともに、一定額の補助を行う制度は、社員もリフレッシュできるというメリットも。また、同じものを好きな社員同士のコミュニケーションが生まれやすく、副次的な効果も期待できます。

健康応援制度

ヘルスケア商品メーカーや健康促進アプリを運営する企業では、社員の健康を応援する独自の社内制度を導入しています。運動に必要な備品を提供する、ダイエットの成果をもとに手当を支給するといった社内制度により、自然な形で社員の健康をサポートしているのです。

社会人になると仕事によって食生活の乱れや、運動時間の確保が難しくなります。企業のサポートで健康になれば、イキイキと働いてもらうことも可能です。

飲み会・ランチ制度

コミュニケーション促進に向け、ランチや飲み会の費用を、一部条件を満たした場合に支給する社内制度を導入する企業も少なくありません。別部署の社員とのランダムでグループを組ませ、ランチ会を行う「シャッフルランチ制度」のほか、「同じ都道府県出身の人」、「同じ星座の人」といった条件に沿った人を誘わせるランチ会など、ルールはさまざまです。

普段は業務で関わりがないメンバー同士のランチや飲み会を対象に、一定額を支給し、気軽にランチや飲み会に誘うことを促すことが可能です。

特別休暇

2019年4月から「働き方改革関連法案」により有給休暇の取得が義務付けられ、社員は休暇を取得しやすい環境となりました。企業によってはさらに独自のルールで特別休暇を付与しています。

失恋休暇や記念日に使えるアニバーサリー休暇、自分磨きに使える自分休暇、二日酔いなどさまざまな条件による休暇があり、社員もリフレッシュすることで仕事の生産性向上につながっています。

まとめ

ユニークな社内制度がメディアで取り上げられるようになり、各企業が独自性のある社内制度の導入を検討することも珍しくなくなりました。奇抜な社内制度はたしかに大きな注目を浴びやすいですが、実際に使われなければただコストや手間を浪費するばかりとなり、かえって逆効果となるでしょう。

だからこそ、社員が本当に望んでいる社内制度の導入が求められています。そうすれば、エンゲージメントの向上や離職率の低下、生産性の向上など企業にとってもメリットが得られるはずです。

まずは社内でのニーズを把握し、社内制度に割けるコストと時間を踏まえたうえで導入を検討するところから始めてみてはいかがでしょうか。