
業務委託とは?企業が知っておくべき基礎知識と活用ポイント

近年、専門性の高い人材の活用やコスト最適化を目的に、業務委託の導入を検討する企業が増えています。一方で、「雇用との違いがよく分からない」「契約の結び方に不安がある」といった声も少なくありません。本記事では、業務委託の基礎知識から契約・運用の注意点、導入の流れや成功のポイントまで、実務担当者が押さえておくべき内容を詳しく解説しています。業務委託の導入や見直しを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
業務委託とは

業務委託とは、企業が雇用契約を結ばずに、特定の業務を外部の企業や個人に依頼する契約形態です。社内の人手や専門性が不足している業務をアウトソーシングし、必要な期間・範囲だけ外部リソースを活用することで、柔軟な人材戦略が可能になります。
「業務委託契約」に法律上の定義はなく、実務では民法上の請負契約・委任契約・準委任契約のいずれかに該当するものを指しています。以下に、雇用契約との違いをかんたんにまとめました。
<業務委託契約と雇用契約の主な違い>
項目 |
業務委託契約 |
雇用契約 |
法的性質 |
民法上の契約(請負・委任など) |
労働基準法や労働契約法に基づく |
指揮命令関係 |
なし(受託者は独立した立場) |
あり(勤務時間・業務指示など) |
報酬の性質 |
業務の成果や遂行に対する報酬 |
月給制や時間給など |
社会保険・労働保険 |
原則として各自で手続き・負担 |
会社が加入し納付手続きを担う |
業務委託の3つの種類
業務委託には、民法上の以下3つの契約が該当します。それぞれ契約目的や責任の範囲が異なるため、内容に応じて適切な使い分けが求められます。
請負契約
請負契約(民法第632条)とは、「一定の仕事の完成を目的とし、その成果に対して報酬を支払う契約」です。成果物の完成が前提となるため、完成しない限り原則として報酬は発生しません。請負契約の多い例としては、Webサイトの制作や建築工事、ソフトウェア開発などが挙げられます。
請負契約では、成果物の完成が報酬支払の条件となるため、契約内容によっては受託者側に契約不適合責任が課せられる可能性があります。これは、成果物に何らかの不具合などがあった場合、納品した成果物に「契約不適合」があると判断され、受託者が修正や損害賠償の責任を負うというものです。
【参考】:e-GOV法令検索 民法第9節 請負
委任契約
委任契約(民法第643条)は、「法律行為の代理・代行を目的とした契約」を指します。具体的には、弁護士に訴訟代理を頼むことや税理士に税務申告を依頼するといったケースが該当します。本人に代わって法律行為を遂行することが目的で、委任には成果物等の完成責任はありません。
【参考】:e-GOV法令検索 民法第10節 委任
準委任契約
準委任契約(民法第656条)とは、「法律行為以外の事務処理を目的とした契約」です。請負契約とは異なり、成果物の完成ではなく業務の遂行自体に対して報酬を支払います。そのため、準委任契約にも成果物の完成義務はなく、あくまでも業務遂行そのものを契約の目的としています。実務では、コンサルティングやシステム保守、事務処理代行といった契約に対して、工数や時間単価ベースで報酬を支払うといった事例が多く見られます。
【参考】:e-GOV法令検索 民法第10節 第656条 準委任
企業が業務委託を活用するメリット

業務委託の活用は、単なる「外注」にとどまりません。自社の経営資源を効率よく配分し、競争力を高める手段として、企業規模を問わず導入が進んでいます。
本章では、業務委託を導入する主なメリットを4つに整理して解説します。
コストの最適化
業務委託を活用することで、社員の採用や育成にかかる時間的・金銭的コストを大幅に削減できます。例えば、正社員を雇用する場合には、求人や書類選考・面接対応などの採用活動そのものに工数とコストが発生し、採用後も育成のための時間的投資が必要です。また、社会保険料の会社負担、交通費・有給休暇・福利厚生制度なども含めた継続的な支出も避けられません。
業務委託であれば、このような費用を抑えながら、自社の求める成果に応じた専門性のある人材を柔軟に起用できるため、特に短期プロジェクトやスポット対応ではコスト最適化の効果が大きく期待できます。
即戦力となる専門人材の活用
業務委託では、高度な専門性をもつ人材を、必要なときに必要な分だけ活用することができます。自社で採用・育成するには時間がかかる分野でも、即戦力の外部パートナーを迎えることで、スピーディかつ的確な対応が可能です。
<業務委託の活用が多い職種例>
● 技術系エンジニア(ITシステムの開発や保守など)
● Webマーケター(SNS運用や広告戦略など)
● 経営コンサルタント(財務分析や戦略立案など)
● 社会保険労務士(労務管理や助成金申請など)
● 税理士(決算業務や会計処理など)
こうした専門人材を外部に委託することで、短期間でも質の高いアウトプットが得られるうえ、社内にノウハウがない分野にも対応しやすくなります。
従業員のコア業務へのリソース集中
業務委託を活用することにより、定型業務やルーティンワークを外部に任せ、社員が本来注力すべきコア業務に専念できる体制が整います。
例えば営業職であれば、事務処理や資料作成といった周辺業務を外部に委託することにより、顧客対応や提案活動など本来の業務に集中できるようになります。また、管理部門においても、給与計算や経費精算などの定型業務を委託することで、業務改善や社内制度の企画・整備という、より戦略的な業務にリソースを振り分けることが可能です。
このように業務を切り分けて最適化することは、社員一人ひとりの生産性を高めるだけでなく、モチベーションやエンゲージメントの向上にもつながります。
業務量の変動への柔軟な対応
繁忙期やプロジェクトの立ち上げ時など、一時的に業務量が増加する局面では、社内リソースだけでの対応が難しいケースも少なくありません。
このような場面で業務委託を活用すれば、必要なときに必要な分だけ外部人材を投入することができ、繁閑に応じて契約内容を調整する柔軟な人材戦略が可能です。また、正社員を採用する場合と異なり、社会保険料や人件費といった長期的な固定費を抱える必要がないため、経営のスリム化にもつながります。
特に、中小企業やスタートアップのように限られたリソースで成長を目指す企業にとっては、業務委託は非常に有効な手段といえるでしょう。
企業が業務委託を活用するデメリット・注意点
業務委託には多くのメリットがありますが、安易な導入や運用ミスがトラブルや非効率につながるリスクも存在します。ここでは、導入前に押さえておくべき代表的なデメリットと注意点を解説します。
<業務委託の際のデメリットおよび注意点>
1. 委託先の選定コスト
2. 情報共有・連携の難しさ
3. 社内にノウハウが蓄積されにくい
4. 専門人材は報酬が高くなる傾向がある
5. 偽装請負のリスク
6. フリーランス保護新法への対応
7. インボイス制度への対応
8. 業務委託契約書の作成をおこなう
1. 委託先の選定コスト
業務委託の成否は、委託先選びに大きく左右されます。しかし、優良な外部パートナーを見極めるためには、実績やスキルの確認、面談、見積もり比較など一定の調査・検討プロセスが必要です。
特に初めての委託や専門外の業務を任せる場合は、「適正価格かどうか」「自社の業務にフィットするか」といった判断材料を集めることに時間と労力がかかるため、かえって負担に感じる場合もあります。
また、契約後に「思っていた品質と違った」「納期が守られない」などの問題が発生すれば、再委託や業務の巻き取り対応が必要になるなど、間接的なコストが発生するリスクもあり、注意が必要です。
2. 情報共有・連携の難しさ
業務委託契約では、雇用契約と異なり業務の進め方や作業時間などに対して、直接的な指揮命令をおこなえません。そのため、情報共有や業務連携には工夫が必要です。指示が自在に出せない分、あらかじめ業務範囲・納期・対応フローを明確にしておくことが極めて重要となります。特に社内業務と密接に関係するタスクを外注する場合は、事前のすり合わせと進捗管理体制の構築が欠かせません。
3. 社内にノウハウが蓄積されにくい
業務を外部に任せることで短期的な成果は得られる一方で、その業務に関する知識やノウハウが社内に蓄積されにくいという側面もあります。継続的に同じ委託先と関係を築くのも一つの方法ですが、可能な範囲でナレッジを社内に引き継ぐ工夫(マニュアル・レポート提出・共有会の実施など)が有効です。
4. 専門人材は報酬が高くなる傾向がある
高いスキルや経験を持つ専門人材は、当然ながら報酬単価も高めに設定されていることが一般的です。特に短納期の対応や、希少性の高い分野では市場価格が高騰するケースもあります。
また、「費用を抑えたい」といった理由で相場より安い価格で依頼しようとすると、品質面に不安が残ったり、対応スピードに差が出たりするリスクもあります。委託費用は“人件費の代替”ではなく“プロフェッショナルのアウトプットに対する投資”と捉える視点も大切です。必要な品質とコストのバランスを見極めながら、適切な予算設定をおこないましょう。
5. 偽装請負のリスク
業務委託契約の形をとっていても、実態が雇用契約と同じような働き方になっている場合、「偽装請負」と見なされる可能性があります。これは労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)に違反する行為であり、行政指導や企業名の公表など、重大なペナルティの対象になることもあるため、特に注意が必要です。くわしく見ていきましょう。
偽装請負の典型例
以下のようなケースは、偽装請負と判断されるおそれがあります。
<偽装請負と見られる可能性のある事例>
● 受託者が、委託元企業の社員と一緒に決まった席に常駐して勤務している
● 始業・終業の時刻、休憩などを発注側の担当者が指示している
● 日々の業務の指示・指導を発注側が直接おこなっている
● 勤怠管理を委託元がおこなっている
このような状態は、「労働者性」があると判断される可能性が高く、契約が無効になるだけでなく、未払い残業代などの請求リスクも生じます。
労働者派遣契約との違い
労働者派遣契約では、指揮命令をおこなうことが認められており、派遣元企業が派遣先企業に人材を提供する仕組みです。一方、前述のとおり、業務委託は指揮命令をしてはならず、成果や業務遂行に対して報酬を支払う契約を指します。
この違いを曖昧にしたまま契約・運用すると、違法性が問われる恐れがあるため、委託契約における実態と役割の線引きを明確にすることが必要です。詳しくは、下記の解説記事も参考にしてください。
【関連リンク】採用お役立ちコラム|偽装請負とは? 判断基準や問題点、罰則と準委任・業務委託との違いを解説
6. フリーランス保護新法への対応
2024年秋に施行された「フリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」は、個人で業務委託を受けているフリーランスを保護するための法律です。
これにより、企業がフリーランスと契約する際には、以下の義務が発注者側に課されています。
<発注側の義務(一例)>
● 契約内容の書面または電磁的方法による明示
● 報酬の支払期日の設定
● ハラスメントへの対応体制の整備 など
違反した場合には行政指導の対象となる可能性があるため、契約書の整備や報酬支払いのルール、社内体制の見直しをおこない、適切に対応していきましょう。
【参考】:公正取引委員会 厚生労働省|特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方
7. インボイス制度への対応
2023年10月から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、業務委託先が「インボイス発行事業者」であるかどうかにより、消費税の仕入税額控除に影響が出るようになりました。そのため、委託先がインボイス登録をしていないフリーランスや個人事業主だった場合、発注側は消費税分を控除できず、実質的なコストアップとなることがあります。
業務委託先の選定や契約更新時には、インボイス登録の有無を確認することや契約条件(報酬や税込か税抜かなど)の見直しをするといった対応が求められます。
8. 業務委託契約書の作成をおこなう
業務委託をトラブルなく運用するためには、内容を明確に定めた契約書の作成をおこなうことが不可欠です。口頭やメールのやり取りだけでは、後々のトラブルや誤解の原因になります。契約書には、次のような項目を明記しておきましょう。
<契約書に記載する項目例>
● 業務内容・業務範囲の明確化(何をどこまで依頼するかを具体的に記載)
● 成果物の定義と納期(中間成果物がある場合はそれも明示)
● 報酬額と支払条件(税込・税抜の表記、支払日、振込手数料の扱いなど)
● 再委託の可否と条件
● 成果物の著作権や使用権などの権利関係の帰属
● 秘密保持義務(NDA)と守るべき情報の範囲
● 損害賠償やトラブル時の責任分担
● 契約解除の条件と方法(中途解除、やむを得ない事由など)
また、自然災害や病気、家庭の事情などにより、受託者が業務を遂行できなくなった場合の対応についても、契約時点で取り決めておくと安心です。その場合は、以下の事項を参考にするのも一案です。
<契約書類等に盛り込むとよい事項例>
● 業務中断が発生した際の速やかな報告義務
● 納期延長やスケジュール変更の取り扱い(事前通知の期限など)
● 業務の中断期間中に報酬を支払うかどうか
● 中断期間が一定以上に及んだ場合の契約解除の可否・手続き
● 代替人員や再委託の対応方法
明確な契約書を交わすことで、両者の認識を揃え、不要なトラブルを防止します。
業務委託導入までの流れ

本章では、企業が業務委託を導入する際の基本的な流れを整理して解説します。導入までには、委託先の選定から契約交渉、業務開始後の進捗管理といった、段階ごとに押さえるべきポイントがあります。
業務委託先の選定
まずは、自社の業務を任せられる適切な委託先を探す必要があります。近年では、委託先を探す際の選択肢も多様化してきました。
<選定方法の具体例>
● 業務委託・副業マッチングサービスの活用
● エージェントやコンサル会社を通じた紹介
● SNSやポートフォリオサイト(企業や個人の実績等をオンライン上で紹介するウェブサイト)を通じた直接営業
● 求人サイトを活用した募集
目的や業務内容に応じて、「スキルマッチ」「信頼性」「柔軟性」などの観点から最適な方法を選ぶことが重要です。
業務委託契約の条件交渉
続いて、業務委託契約の具体的な条件を双方で交渉・確認していきます。
契約形態の明確化
請負・委任・準委任のいずれに該当するかを明確にし、それに応じたリスク管理・責任範囲を整理しましょう。
業務範囲・内容の具体化
依頼する業務の範囲、納品物の仕様、進行スケジュール、成果物の定義などを、できる限り具体的に文書化します。
報酬
報酬金額のみならず、計算方法(固定報酬・時給・出来高など)、支払条件、支払時期を明確に定めます。
権利の帰属の明確化
制作物や成果物の著作権・使用権・データ所有権などがどちらに帰属するかは、後々のトラブルを防ぐためにも、必ず明確にしておきましょう。
秘密保持義務の設定
業務上知り得た情報を漏らさないようにするため、秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)を結ぶか、契約書に明記することが重要です。対象情報・秘密保持の期間・違反時の責任なども決定します。
業務委託契約の締結
条件交渉がまとまったら、契約書の締結に移ります。契約書は可能な限り書面または電子署名付きのデータで作成し、双方で保管することをおすすめします。この際、以下をチェックしておくと安心です。
<契約書締結時に確認すべき事項例>
● 契約当事者の名称(会社名・個人名)
● 押印・署名・契印に漏れがないか
● 契約期間・解約条件・損害賠償の条項が明記されているか
● 印紙の要否(請負契約の場合など)
業務の開始と進捗管理
業務の開始後は進捗状況を可視化し、定期的に確認・共有する体制をつくることが重要です。
実務では、定例ミーティングやチャットツールでの進捗報告や中間納品やレビューのタイミングを事前に設定することで、適切に管理していきます。
任せきりの姿勢ではなく、「業務の外注先」として信頼関係を築くことが成果と継続的な連携につながります。
契約内容に関する注意点
業務委託契約は、契約締結後に想定と異なる事態とならないよう、前段階でのすり合わせが極めて重要です。繰り返しとなりますが、特に以下のポイントは、契約前に必ず明確化しておきましょう。
● 業務の具体的な範囲とゴール
● 双方の責任範囲(遅延時・不具合時の対応含む)
● 報酬の金額・支払時期・支払条件
● 成果物の定義と納品形態
● 突発的な変更や中断が発生した際の対応ルール
何か問題が起こってからの対応では後手に回ってしまいます。トラブル時にも慌てることがないよう、基本的には、書面で合意しておくことが重要です。
業務委託が成功するポイント

以下に、業務委託を成功させるための具体的なポイントを紹介します。
明確な目的設定をおこなう
業務委託を検討する際に最初のステップとして重要なのが、委託の目的を社内で明確にすることです。
● なぜ業務委託が必要なのか?(リソース不足、専門性確保、コスト削減など)
● どの業務を任せるのか?(定型業務、専門業務、戦略業務の一部など)
● 期待する成果やゴールは何か?
これらを曖昧なまま依頼を始めてしまうと、委託先との認識のズレや、成果に対する不満の原因になりかねません。社内で「業務委託の目的と対象業務」を言語化・共有しておくことが、成功の鍵といえるでしょう。
適切な委託先の選定
業務委託のパートナー選びは、プロジェクトの成否に直結します。その際に重要なのは、スキルや実績の確認だけでなく、目的・現状・評価基準のすり合わせを事前におこなうことです。
委託前の段階で以下を共有し、詳細な契約内容に落とし込んでおきましょう。
● 自社が目指す方向性や課題感
● 委託する業務の具体的な範囲
● 成果物の品質や納期に関する期待値
● 報酬や契約条件の透明性 など
これらを合意したうえで契約を締結することで、「想定と違った」というトラブルを防ぐことにもつながります。
委託先との良好なコミュニケーション
契約を結んだ後も、業務を任せきりにしないことが重要です。実務では、社内での窓口担当者を明確にしておくことや定期的な報告・相談の機会を設けることで、委託先とのスムーズな連携が可能になります。
成果物の評価とフィードバックをおこなう
業務が完了したら成果物の評価をおこない、必要に応じてフィードバックを伝えることも重要です。評価の際は、以下のような観点で客観的に確認しましょう。
● 契約で定めた納品物の品質・内容・期限が守られているか
● 途中の対応やコミュニケーションに問題はなかったか
● 今後も継続的に依頼したい相手かどうか
納品後にしっかりとしたレビューとフィードバックをおこなうことにより、次回以降の改善点が明確になり、長期的な信頼関係の構築にもつながります。
よくある質問

ここでは、企業が業務委託を導入・運用するにあたって、特に多く寄せられる疑問をQ&A形式で解説します。
Q1:どのような業務が業務委託に適していますか?
A:以下のような業務が、業務委託に適しているとされています。
● 定型的なノンコア業務
例:経理処理、データ入力、資料作成など
● 専門性の高い業務
例:IT開発、Webマーケティング、法務・労務の支援など
● 一時的に発生する業務やプロジェクト単位の業務
例:新規サービスの立ち上げ支援、イベント運営など
社内リソースではまかないきれない業務や、短期間で成果が求められる業務において、コスト・スピードの両面で効果を発揮するのが業務委託の特長です。
Q2:業務委託契約はどのように更新しますか?
A:契約更新には「自動更新」と「再契約」の2つの方法があります。
● 自動更新型
契約書に「契約満了日の◯日前までに申し出がない限り、同一条件で契約を更新する」といった条項を盛り込んでおくことで、自動的に継続されます。
この場合は、毎回の契約手続きが不要になる反面、条件変更がしにくくなる点に注意が必要です。
● 再契約型
契約満了の都度、改めて契約書を作成・締結する方法です。報酬や業務内容を見直したい場合、双方の合意のもとで柔軟に調整できます。
業務の性質や継続性、報酬の安定性などを考慮し、自社に適した方を採用しましょう。
Q3:業務委託者に自社オフィスで作業してもらうことは可能ですか?
A:可能ですが、一定の注意が必要です。
受託者に自社オフィスで作業してもらうこと自体は問題ありませんが、常駐させて日々指示を出すような体制になってしまうと、「偽装請負」にあたるリスクがあります。
【偽装請負を避けるためのポイント】
● 作業場所が自社のオフィスであっても、指揮命令(業務指示や勤怠管理)を直接おこなってはならない
● 合理的な理由(セキュリティ、機器環境等)がある場合に限定し、契約書で「指揮命令は発注者がおこなわない」旨を明記する
● 業務の内容・成果に対する評価や連絡調整は認められるが、労務管理的な指示はしてはならない
自社での作業が発生する場合は、上記のポイントに留意して対応します。
まとめ
業務委託は、目的や業務内容に応じて適切に活用することで、企業の生産性や社員のエンゲージメントを高める有効な手段です。単に任せるだけでは、効果的な活用にはつながりません。本記事で紹介した目的設定や進捗管理などのポイントをおさえて、自社に合った形で導入・運用していきましょう。
<ライタープロフィール>
川西 菜都美(監修兼ライター)
結喜社会保険労務士事務所代表。お母さんと子どものための社労士。自身の経験から、子育てと仕事の両立に悩む女性の相談にもあたっている。金融、製造、小売業などさまざまな業界を渡り歩いた経験を活かして、クライアントごとのニーズにあわせたきめ細やかな対応を心がけている。