週休3日制とは?メリット・デメリットや導入ポイントを解説
大手企業や自治体を中心に「週休3日制」の導入が増えつつあります。本記事では、週休3日制の特徴や導入の動向、メリット・デメリット、導入手順について解説します。
目次
週休3日制とは
週休3日制とは、1週間のうち必ず3日間の休みを設ける制度のことです。労働基準法では法定休日は「1週間の1日または4週間の4日の休日」と義務づけられているのみで、まだ週休3日制は一般的ではありません。中小企業においては、完全週休2日制よりも少ない週休制はまだ約半数もあります。
(厚生労働省/令和5年就労条件総合調査より)
日本で週休3日制を導入しているのは、大手企業や自治体の一部のみです。現在、完全週休2日制よりも休日日数の多い企業の割合を見てみると、企業全体のうち7.5%(厚生労働省/令和5年調査)しかありません。まだまだこれからの制度と言えるでしょう。
日本で週休3日制が注目されている背景
そもそも、なぜ週休3日制の導入が注目されているのでしょうか。2021年に内閣府が発表した「経済財政運営と改革の基本方針2021」にて、選択的週休3日制度の導入により従業員の休みを増やすことで、育児・介護、ボランティアでの活用、地方兼業・副業での活用などが考えられると言及していました。
また、日本では生産年齢人口(15歳~69歳)の減少によりどの業界においても労働力不足が叫ばれる中、労働力を確保していく上で週休3日制の導入は、まだ実施している企業が少ないため、これまでにない魅力的な制度になってきます。こうした背景から、この週休3日制が注目されるようになりました。
各業界・企業の週休3日制導入の動向
各業界・企業では週休3日制の導入はどのようになっているのでしょうか。
国家公務員
これまで育児や介護などをしている国家公務員に対しては、選択的週休3日制が認められていました。今後2025年4月からの実施に向けて、一般の国家公務員にも広げられることを検討しています。
地方公務員
各都道府県や市町村などで、導入の検討が模索されています。例えば、次のような事例があります。
千葉県では、週休3日制が可能なフレックスタイム制を2024年6月から導入。全職員を対象に週に1日、平日に休日を設定できる、週休3日制の選択を可能にしました。こうした全職員を対象とした本格的な導入は全国でも珍しいケースです。
宇都宮市では、2023年より管理部や窓口部門を対象に週休3日制度を試行しています。フレックスタイム制の活用の1つとして導入しています。
前橋市では2023年8月~9月の期間限定で、週休3日制を全職員に試行しました。平日に休日が取れる代わりに、1週間のうち9時間45分勤務を3日間、あと1日を9時間30分の勤務を設定。利用者向けのアンケートでは、55%の職員が満足との結果が出ています。
企業
働き方改革に積極的に取り組んでいる企業では、この週休3日制をいち早く導入しています。
大手電気メーカーでは、総労働時間や給与を維持して従来と同じ待遇のまま、週休3日制を導入しています。
大手損保会社では、育児・介護をおこなっている社員を対象に、1週間のうち希望する曜日を育児・介護の休みに充てられる制度を設けました。年収が従来の約8割に減額したものの、それでも育児・介護の時間をしっかり確保したいという従業員が利用しているようです。
大手アパレルメーカーでは、変形労働時間制を用いて1日10時間×4日勤務として週休3日制を導入。この企業は地域正社員のみ対象ですが、給与も従来と変わらず勤務できる仕組みを採用しています。
週休3日制の運用タイプ
週休3日制には、4つの運用タイプがあります。適用対象者が限定されていることもあり、他の従業員への負担や、待遇面での大きな差が生まれないように、運用タイプを選択されることが多いです。
給与維持型
1日休日を増やして、週の労働時間は減るものの、給与は維持するタイプです。給与の減額がないため、1日8時間・週40時間/週5日の労働時間でやっていたことを、週32時間/週4日で行うため、従業員には生産性向上が求められます。そのため、業務プロセスの見直しやDX(デジタルトランスフォーメーション)による省力化なども同時におこなわれることが多いです。
給与減額型
休日が1日増えて労働時間が減少した分、給与を減額するタイプです。これまで完全週休2日制の場合、週40時間労働だったのが、週休3日制になると週32時間労働に変わります。それに伴い、給与は従来の2割減となります。このタイプだと従業員からは不満の声が上がる可能性があるため、事前の説明が大事になってきます。
労働時間維持型
休日が1日増える分、1日の労働時間を増やして週の総労働時間を維持する方法です。たとえば、従来であれば1日8時間×週5日=40時間だったとします。週休3日になった場合は、総労働時間が変わらないので1日10時間×週4日=40時間になります。つまり1日の労働時間が長くなるわけです。もちろん総労働時間が変わらないので、収入も維持できます。
フレキシブル型
週ではなく、月・年単位で上限の労働時間を定め、その範囲内で労働時間を調整できる働き方です。業務の繁忙期・閑散期に合わせて自分で調整できるので、柔軟な働き方が可能になります。また、月もしくは年単位の労働時間を守っていれば、給与が減額されることもありません。自分の裁量でワークライフバランスが保てるメリットがある一方で、労働時間を調整する責任やマネジメントが他の運用タイプよりは求められます。
週休3日制が生むメリット・デメリット
企業、従業員それぞれにとってのメリット・デメリットはどんなところにあるでしょうか。
企業側のメリット
企業運営のコスト削減
会社の休日が増えることになるので、オフィスや工場に出社勤務の場合には、1日分の光熱費を削減できます。また従業員の生産性を高めるチャンスでもあり、人件費ダウンを実現できる可能性もあります。
離職率の低下
育児や家族の介護などを理由に、本人の意思とは別に離職せざるをえない状況に陥る場合があります。休日が1日増えることで、よりプライベートの時間を持つことができるので、仕事を続けられる可能性が高まり、離職率の低下にもつながります。
採用活動に貢献
まだまだ週休3日制を導入している企業はそれほど多くありません。中小企業においては週休制や隔週休2日制のところが大半です。その中で、先駆けて週休3日制を導入すれば、「働きやすさ」のアピールになり、新卒・中途問わず、人材の確保に貢献できます。
従業員側のメリット
可処分時間の増加
可処分時間とは、生活に必要不可欠な睡眠、食事、トイレ、仕事といった時間を除いた自由な時間のことです。週休3日制になることで、この可処分時間を増やすことができます。それによって、リフレッシュする時間がつくれるので、心身の疲労やストレスを軽減することが可能になります。
育児や介護と仕事を両立できる
週に1日もしくは2日しかなかった休みが3日になることで、個人の時間だけでなく家族との時間を増やすことができます。特に育児や介護と仕事との両立をしている従業員にとっては、時間の余裕が生まれるので、気持ちのうえでもゆとりを持って取り組めるようになるでしょう。
企業側のデメリット
すべての業種・労働者に適しているとは限らない
週休3日制にすれば、企業によって給与が減額される場合もあり、労働者全員が望んでいるかといえば、決してそうではありません。また、週休3日制が適さない業種もあります。たとえば、公共交通機関や救急サービスなど、日常生活に欠かせないインフラサービスはすぐの導入は難しく、じっくり検討していく必要があるでしょう
機会損失のリスク
企業にとって週休3日制の導入は、離職率の低下や労働力確保などができるメリットがあります。しかし自社サービスを拡大する上では、顧客への提案・営業の機会損失になるリスクも存在します。それだけでなく、お客様からの問い合わせへの対応の遅れからクレームに発展する恐れも少なくありません。
コストが増加する可能性がある
週4日の勤務になっても、週5日でおこなっている業務量が変わらない場合は、従業員の1日あたりの労働時間が増加してしまいます。それによって残業手当が増えたり、現状の従業員の残業だけでは対応できない場合は、新たに人材を採用する必要が生じてきます。そうなると、コスト増になる可能性がでてきます。
労務管理コストが増える
従業員の希望により週休3日を選べる場合だと、従業員によって働き方が異なってきます。そうなると他の従業員とのシフト調整などが必要になるため、労務管理に手間とコストがこれまで以上にかかってしまう可能性があります。
従業員側のデメリット
1日の業務量が増加する(週労働時間維持型の場合)
休日が増えても、1週間あたりの総労働時間を維持する場合であれば、必然的に1日の労働時間が増え、業務量も増加します。従業員にとっては長時間労働がストレスになるデメリットがあります。
収入が下がる(給与減額型の場合)
1日の労働時間が変わらないと、月間の総労働時間が従来よりも少なくなるため、収入を減額する場合があります。従来の働き方でもらっていた給与が減ることになるため、従業員にとってはデメリットに感じる人もいるでしょう。
コミュニケーションの低下
単純に他の従業員と会話する時間が少なくなるため、コミュニケーションの低下による弊害があらわれる可能性があります。仕事ではスピードが求められることが多いため、会話したい時にできない。こうしたコミュニケーションロスが蓄積すると、人間関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
週休3日制の導入手順・ポイント
これから週休3日制を導入しようとしている企業は、どういうふうに進めていけばよいのでしょうか。具体的に導入手順について解説します。
週休3日制を導入する目的を明確化する
週休3日制を導入する場合には、まず何を目的にするか明確にしましょう。週休3日制を導入すると、運用タイプによっては給与が減額されたり、1日の労働時間が長くなったりと、従業員に対して何らかの負担がかかり、それが職場への不満につながります。企業としての収益を確保しながら、どういう運用タイプが最適なのかを考える上でも、目的を明確にする必要があります。
週休3日制の適用対象となる従業員の選定
週休3日制を導入する目的が明確になったら、適用する従業員を決めます。全従業員なのか、育児や介護をしている社員限定なのか、会社の人事戦略などとも合わせて考えなければなりません。特定の従業員のみを対象とする場合、他の従業員に入ってもらうなどシフト調整も必要になります。全従業員の満足度を下げない対策も合わせて考える必要があるでしょう。
取引先企業との調整
取引先企業から担当者に連絡が入った場合に、週休3日制で、平日1日休みになれば、返事をするのに1日のタイムラグが発生してしまう恐れがあります。それにより顧客離れなどが発生してしまうリスクがあるため、得意先への周知徹底も忘れずに行う必要があります。
各書類の作成
週休3日制の導入が決まったら、就業規則に定め、社内の従業員に周知する必要があります。休日の規定は、就業規則に必須の記載事項のため、必ず定めなければなりません。さらに適用対象者になれば、雇用契約書も合わせて、内容変更を行なければなりません。
また、週休3日制を活用して従業員が副業・兼業を行いたいという申し出があるかもしれません。副業・兼業を認める場合は、就業規則への反映が必要になります。
社内の業務負担の調整
週休3日制を対象とする従業員を限定した場合などは、休みの日には、その従業員の担当業務を他の従業員が負担しなければなりません。その場合、各部署内、または他部署と協力して調整することが求められます。
週休3日制労働以外の働き方について
週休3日制の働き方と同様の、充実したワークライフバランスを得られる制度や働き方は他にもあります。代表的な働き方や制度を紹介しましょう。
在宅ワーク
新型コロナウイルス感染症拡大を機に、急激に多くの企業で導入されるようになった「在宅ワーク」。会社に出社せずに、自宅でPCなどの情報通信機器を用いて業務を行うワークスタイルです。通勤する必要なく、プライベートで育児や介護などをしている人は、業務時間を柔軟に調整できます。
ハイブリッドワーク
在宅ワークと、オフィスに出社するオフィスワークを組み合わせたワークスタイルです。在宅ワークだけだと、プライベートと仕事のメリハリをつけるのに苦労したり、孤独に不安に感じたりすることが少なくありません。オフィスワークと組み合わせることで、こうしたデメリットを解消できます。
フレックスタイム制
一定期間のあらかじめ決められた総労働時間内であれば、毎日の始業・就業時刻や働く時間を、労働者本人が自由に決められる制度のことです。繁忙期や閑散期、またはプライベートの状況に合わせて、自己裁量で自由に働く時間を調整できます。なお、このフレックスタイム制度の延長上で選べる「選択週休3日制」を導入している県庁や企業もあります。
まとめ
週休3日制は、これからの制度です。まだまだ整備が必要なところもあるため、導入する場合は導入目的や運用タイプ、ルールなどを綿密に検討するようにしましょう。たとえば、まずは期間と対象者を限定して試験的に実施して、課題などを抽出してから本格稼働してみるのがおすすめです。
なお、スタッフサービスでは「週4日以内」に該当するお仕事を紹介しています。
https://www.staffservice.co.jp/w4/
<ライタープロフィール>
西谷 忠和
新卒・中途採用、進学などのメディアにて広告制作ディレクターを経験後、2007年に独立。現在は、フリーのライターとして採用サイト、求人メディアの広告、採用のオウンドメディア、人材サービス企業のインナーコミュニケーションなどのコンテンツ制作に携わっています。またライフワークとして、20~50代のビジネスパーソンやフリーランスのキャリア支援をおこなうキャリアコンサルタントとしても活動中。