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従業員が無断欠勤をする理由とは? 対応方法や解雇の手順と注意点などを紹介

従業員が無断欠勤をする理由とは? 対応方法や解雇の手順と注意点などを紹介

従業員が何の連絡もなく会社を休んでいる。業務が滞り、メンバーや顧客にも迷惑をかけている。そのような問題でお悩みの方も多いのではないでしょうか。無断欠勤は困った問題ですが、企業の対応の仕方によっては深刻なトラブルや裁判に発展してしまう場合があります。本記事では、従業員が無断欠勤してしまう理由、企業が取るべき対応方法、解雇する手順、その際の注意点について紹介します。

無断欠勤とは

無断欠勤とは、会社の規定通りの手続きや報告をおこなわず、従業員が自己都合で会社を休むことです。あらかじめ連絡を受けた場合でも、その方法が就業規則とは異なる場合や、欠勤の理由が正当な理由として認められない場合は、無断欠勤と判断することもできます。

無断欠勤をしてしまう理由

無断欠勤が発生すると、他の従業員にも多大な迷惑がかかります。なぜ無断欠勤をしてしまう従業員がいるのでしょうか。次の5つの理由が考えられます。

寝坊など遅刻の事実をごまかすため

寝坊や二日酔いなどによる遅刻をごまかすために無断欠勤をする場合が考えられます。夜更かしやお酒の飲みすぎで寝坊してしまった、だけど上司には言いづらい、伝えるのが気まずい。あるいは、連絡するのが億劫になってしまったなど、怠慢な理由によって無断欠勤をするケースがあります。

うつ病などの精神疾患の影響

精神疾患の影響で連絡できなかった場合が考えられます。精神疾患には、うつ病、適応障害、ストレス障害、自律神経失調症など、さまざまな症状があります。病気とは診断されていなくても、眠れない、食欲がない、疲れやすいといった身体症状が現れ、日常生活に大きな支障が生じ、連絡できないことがあります。

セクハラやパワハラなどが原因

セクハラやパワハラ、長時間労働など、職場環境が原因の場合が考えられます。上司からセクハラやパワハラを受けているため言葉を交わしたくない、職場でいじめを受けているため会社に行きたくない、本当の理由を伝えることができなくて無断欠勤してしまうなど、さまざまなケースがあります。

事故や急病、逮捕などの緊急事態

事故や急病、逮捕など、緊急事態で連絡が取れない場合が考えられます。事故に遭って入院している、急病で倒れて意識を失っている、逮捕されて連絡ができないなど、さまざまなケースがあります。同居する家族などがおらず、ひとり暮らしの場合、連絡をしたくてもできないこともあります。

退職が目的で連絡を絶っている

退職することを決めていて、従業員が連絡を絶っている場合が考えられます。離職の理由としてよく挙げられるのは、職場の人間関係、仕事や残業がつらい、上司によるセクハラやパワハラ、同僚のいじめなどです。いずれも上司や会社には伝えにくいため、無駄欠勤をしてしまうケースがあります。

無断欠勤が続く従業員の対応方法

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無断欠勤を続ける社員がいた場合、どのように対応したらいいのでしょうか。基本的な手順を紹介します。

① 本人と連絡を取り、安否確認をする

無断欠勤をする従業員がいたら、まずは本人に連絡を取り、安否確認をします。無断欠勤の理由には、事故や急病、逮捕などの緊急事態も考えられます。本人に連絡を入れ、安否の確認をすることが最優先です。無事であることを確認できたら、欠勤の理由を尋ね、話した内容を記録しましょう。

無断欠勤の理由が遅刻や怠慢ではなく、うつ病などの精神疾患だった場合は、専門家の判断が必要です。産業医や精神疾患に詳しいアドバイザーに相談しましょう。

セクハラやパワハラ、長時間労働など、職場環境が原因だった場合は、上司や同僚、関連部署などにヒアリングし、事実確認をすることが必要です。職場環境が原因で精神疾患を発症した場合は、労災(労働災害)認定される可能性があります。

労災とは、業務中や通勤中、もしくは業務や通勤が原因となって発生した病気やけがのことです。

事業主は、労災を防止するため、労働安全衛生法に基づく安全衛生管理責任を果たさなければなりません。法違反がある場合、労災事故発生の有無にかかわらず、労働安全衛生法などにより刑事責任が問われることがあります。早急に職場環境を改善するなどの対応が必要です。

事故や急病が原因の場合は、家族にも連絡したほうがいいでしょう。本人と連絡が取れない場合は、家族に確認をしたり、ひとり暮らしの場合は、自宅を訪れてみることも必要です。急病で倒れていたり、死亡していることも考えられます。警察への連絡も視野に入れ、まずは安否確認をすることを優先しましょう。

② 指導・教育

無断欠勤の理由を確認し、無事だった場合は、指導・教育をおこないましょう。会社には就業規則があり、就業時間も定められています。無断欠勤は重大な契約違反であることを伝え、厳重注意を促します。無断欠勤が発生するたびに、指導・教育をおこなうことが重要なポイントです。

指導・教育を怠ってしまうと、従業員の無断欠勤を容認することになってしまいます。解雇後に不当解雇で訴えられた場合などに備え、注意事項を書面で残しておきましょう。

上司のセクハラやパワハラ、長時間労働などが無断欠勤の理由だった場合は、上司本人が指導・教育をしても事態を悪化させてしまう可能性が高いです。上長や人事担当者が、上司の代わりに従業員の指導・教育をしたほうがいいでしょう。

③ 無断欠勤の理由や状況に応じた懲戒処分

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無断欠勤を繰り返す従業員がいても、簡単に解雇することはできません。理由や状況に応じた懲戒処分をしていかないと違法になる場合があります。代表的な懲戒処分(※)の方法を見てみましょう。

(※)懲戒処分は就業規則に規定されている事項なので、以下のような処分をおこなう際には、就業規則に則っておこなわなければなりません。無断欠勤があっても恣意的な処分をおこなってはならないことも覚えておきましょう。

・顛末(てんまつ)書
無断欠勤の理由が遅刻や怠慢だった場合は、顛末書を提出させる方法があります。顛末書とは、仕事上のミスやトラブルが発生した際に、それを報告する文書のことです。始末書と似ていますが、始末書はミスなどについて社内外に対して謝罪する文書。顛末書はミスなどについて一部始終を報告する社内向けの文書です。従業員に顛末書を作成させることで、会社側が指導・教育をおこなった証拠にもなります。

・出勤停止
再三にわたる注意をおこなったにも関わらず無断欠勤が続く場合は、徐々に重い処分を課していきます。顛末書を提出しても改善が見られない場合は、出勤停止処分を考える必要があります。出勤停止とは、会社が従業員に対して一定期間就業を禁止する懲戒処分のこと。出勤停止期間は、給与は支給されません。出勤停止の期間について法律上の上限はなく、就業規則で期間の上限を設けていることが一般的です。

・減給
無断欠勤を続ける従業員に対しては、減給を考えてもいいでしょう。減給とは、一定の期間において一定の割合で賃金を減額する処分のことです。減給する合理的な理由があり、一定の条件を満たした場合は、従業員の減給が認められています。

ただし、減給できる金額は法律で決まっており、月給に対して10分の1以下、平均賃金1日分の半額以下の減給までしか認められていません。また、就業規則に減給による制裁を明示していない場合は、懲戒として減給処分をおこなうことはできないため注意が必要です。

④ 無断欠勤を繰り返す場合は従業員と退職について話し合う

指導・教育や懲戒処分をしても無断欠勤を繰り返す場合は、従業員に休職を促したり、退職勧奨をするのもひとつの方法です。退職勧奨とは、企業が従業員に対して退職を勧めることです。

退職勧奨は、会社と従業員、双方の合意が必要となるため、会社側からの一方的な意思表示に基づく解雇とは異なります。従業員と退職について話し合い、身の振り方について真剣に考えてもらいましょう。

無断欠勤が続く従業員を解雇する手順

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無断欠勤を繰り返し、退職する意志もない。こうした従業員に対しては、「解雇」という手段を取らざるを得ない場合もあるでしょう。ただし正しい手順を踏まなければ、不当解雇などで訴えられ、会社側が甚大な被害を受けてしまう可能性があります。従業員の解雇は、以下の手順で進めましょう。

① 従業員へメール・電話で出勤を督促

まずは無断欠勤している従業員に、メールや電話で出勤を督促します。これらはすべて記録し、無断欠勤や出勤の督促をした証拠としてください。メールや電話に反応がない場合は、手紙を送ったり、自宅を訪ねてみましょう。これらも記録に残し、裁判になった場合の証拠とします。

② 解雇の予告

再三の連絡も無視し、出勤の督促をしたにも関わらず、無断欠勤を繰り返していれば、正当な解雇として認められる可能性が高いです。ただし解雇をする場合は、従業員に対して30日前までに解雇の予告をする必要があります。解雇予告は口頭でも有効ですが、口約束では後々にトラブルの原因となります。解雇する日と具体的理由を明記した「解雇通知書」を作成することが望ましいでしょう。

解雇通知書とは、会社が労働者に対し、解雇の意思表示を通知する書面のことです。解雇通知書が届いてから解雇まである程度の期間がある場合は「解雇予告通知書」ともいいます。

また、解雇しようとする従業員から作成を求められた場合は、解雇理由を記載した書面を作成して本人に渡さなければなりません。

予告をおこなわずに解雇する場合は、最低30日分の平均賃金を支払う必要があります。連絡が取れない従業員であっても、解雇予告手当を支給するか、「解雇予告除外認定」を受けるしかありません。

解雇予告除外認定とは、労働基準監督署に申請し、承認されれば即日解雇が可能となる制度です。管轄の労働基準監督署から「解雇予告除外認定」を受け、従業員に対して解雇予告通知書を送付します。

③ 解雇通知書の送付

解雇予告から一定の期間を経たら、従業員に対して解雇通知書を送付します。もし相手が受け取らない場合は、再送または住所の確認が必要です。住所を調査しても従業員の行方がわからず、連絡が取れない場合は、「公示送達」の手続きを取ります。

公示送達とは、相手の住所がわからないために、意思表示を到達させることができない場合に、その意思表示を到達させるための手続きです。公示送達で送付していれば、従業員宛てに届いていなくても、届いたとみなすことができます。

④ 解雇

解雇通知書を送付したら、従業員の解雇をおこないます。解雇には、以下の3種類があります。

                        解雇の種類

懲戒解雇
従業員が極めて悪質な規律違反や非行をおこなったときに懲戒処分としておこなうための解雇
※就業規則や労働契約書に、その要件を具体的に明示しておくことが必要です


整理解雇
会社の経営悪化により、人員整理をおこなうための解雇
※次の4点を満たすことが必要です
① 整理解雇することに客観的な必要があること
② 解雇を回避するために最大限の努力をおこなったこと
③ 解雇の対象となる人選の基準、運用が合理的におこなわれていること
④ 労使間で十分に協議をおこなったこと


普通解雇
「懲戒解雇」「整理解雇」以外の解雇
※労働契約の継続が困難な事情があるときに限られます
【例】
・勤務成績が著しく悪く、指導をおこなっても改善の見込みがないとき
・健康上の理由で、長期にわたり職場復帰が見込めないとき
・著しく協調性に欠けるため業務に支障を生じさせ、改善の見込みがないとき

参考:東京労働局「しっかりマスター 労働基準法 ―解雇編―」
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/seido/kijunhou/shikkari-master/pdf/kaiko.pdf

無断欠勤が理由で解雇する場合は、「懲戒解雇」が妥当と考える企業が多いでしょう。しかし懲戒解雇を成立させるのは容易ではありません。就業規則や労働契約書に「2週間以上連続して無断欠勤が続いた場合は解雇する」といったルールを定めていても、法律によって正当な解雇と認められるとは限りません。

「従業員に責を帰すべき事由がある」といった最低限の条件を満たしていれば懲戒解雇にすることも可能ですが、実際にはかなりハードルが高いため「普通解雇」として扱うのが一般的になっています。

無断欠勤が続く従業員を解雇する際の注意点

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無断欠勤を続ける従業員がいた場合でも、解雇をするためには、さまざまな条件を満たす必要があります。最後に、何かとトラブルになりやすい「従業員を解雇する際の注意点」を紹介します。

法的に解雇が認められる無断欠勤の日数の目安は14日以上

解雇が認められる無断欠勤の日数は明確には定められていませんが、14日(2週間)以上の無断欠勤が続くことが、裁判所で正当な解雇として認められる目安といわれています。6日程度の無断欠勤で解雇した場合、不当解雇と判断している裁判例がほとんどです。無断欠勤の日数には十分注意しましょう。

無断欠勤を証明できる証拠が必要(タイムカードなどの勤怠データ)

無断欠勤を理由に解雇する場合は、それを証明できる証拠が必要です。タイムカードや出勤簿などの勤怠データが証拠になります。労務管理がずさんで勤怠データを取っていなかったために、裁判で敗訴している企業もあります。タイムカードや出勤簿など、無断欠勤を証明できる証拠は必ず残しておきましょう。

無断欠勤の原因が企業側にある場合、精神疾患が理由の場合は解雇できない

ハラスメントや長時間労働など、無断欠勤の原因が企業側にある場合は、従業員を解雇することはできません。裁判を起こされた場合、不当解雇と判断され、多額の金銭支払いを命じられる場合があります。

また、無断欠勤の理由が精神疾患だった場合も解雇はできません。従業員が精神疾患と診断された場合、休職させて治療に専念させることが必要です。このような手続きを踏まず、無断欠勤を理由に解雇した場合は不当解雇となります。従業員のメンタルの病気に対しては、細心の注意を払って対応しましょう。

誤った方法・理由で解雇してしまうと不当解雇とみなされ、企業が罰則を受けることがある

誤った方法や理由で解雇してしまうと不当解雇とみなされ、企業が罰則を受けてしまう場合があります。一度出した解雇予告は企業側の都合で撤回はできず、不当解雇としての慰謝料の請求のほか、従業員の地位の確認訴訟も提起され、訴訟中にかかる賃金相当額の請求をされる場合もあります。

不当解雇に刑事罰はありませんが、企業の社会的イメージや経済的な損失など多大なリスクがあります。従業員の解雇は、極めて慎重な判断が必要です。順序や規則を守り、正しい対応をしていきましょう。

まとめ

従業員が無断欠勤した場合、寝坊や怠慢だけでなく、精神疾患、セクハラやパワハラ、事故や急病など、さまざまな理由が考えられます。企業側に原因がある場合は、不当解雇として従業員から訴えられるだけでなく、企業ブランドの失墜や経済的損失、さらには他の従業員にも悪影響を与えるリスクがあります。ハラスメントや長時間労働などの問題は、早急に改善する必要があります。無断欠勤に対して適切な対応をするとともに、従業員が無断欠勤をしないような職場環境づくりに取り組むことをおすすめします。

ライタープロフィール
鈴木にこ(ライター)
求人メディアの編集者を経て、フリーランスとして活動中。派遣・新卒・転職メディアの編集協力、ビジネス・ライフスタイル関連の書籍や記事のライティングをおこなう。