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働き方改革とは?取り組み内容を解説

働き方改革とは?取り組み内容を解説

長時間労働の常態化や少子高齢化による労働人口の減少により、日本の労働環境には多くの課題が発生しています。課題解消に向け、2016年に政府主導で「働き方改革実現推進室」が設置されました。

働き方改革とは多様な働き方を実現するための改革で、推進できれば労働者と企業の双方にメリットがあります。本記事では、働き方改革の概要や背景、課題とともに、働き方改革の推進で得るメリットや主な取り組みについて解説します。

働き方改革とは

働き方改革とは、一人ひとりの事情や考え方に合わせた働き方を可能にするための改革です。具体的には、以下の取り組みが挙げられます。

●    長時間労働の是正
●    多様で柔軟な働き方の実現
●    不合理な待遇差の改善

労働制度を抜本的に改善することにより、働き方に対する意識改革を目指しています。2019年からは、働き方改革のもと、時間外労働の規制や有給休暇の取得義務などを定めた「働き方改革関連法」が順次施行されています。

働き方改革関連法とは

働き方改革関連法は、新たに作られた法律ではありません。働き方改革関連法とは、働き方改革により改正された労働関連の法律の総称を指しています。働き方改革関連法に該当するのは、以下の法律です。

●    労働基準法
●    労働時間等設定改善法
●    労働安全衛生法
●    じん肺法
●    パートタイム・有期雇用労働法
●    労働者派遣法
●    労働契約法
●    雇用対策法

働き方改革が必要とされる背景

働き方改革が必要とされる背景には、労働人口の減少と、労働者のニーズの変化が挙げられます。ここでは、それぞれの背景について解説します。

労働人口の減少

現代の日本は少子高齢化が加速しており、それに伴い労働人口が減少しています。内閣府がまとめた高齢化の推移と将来推計によると、15歳以上65歳未満の人を指す生産年齢人口は、1995年の8,726万人をピークに減少しています。

2030年には7,000万人を下回り、2065年には4,529万人まで減少するとの推計結果となりました。生産年齢人口の減少は、労働人口も減少することを意味します。労働人口の減少により、日本全体としての生産力が低下することが予想されるため、働き方改革による生産性向上に向けた取り組みが必要になりました。

参考:内閣府「平成30年版高齢社会白書(全体版)第1章 高齢化の状況

労働者のニーズが変化した

労働者の働き方に対する考え方が変化してきたことも、働き方改革が必要とされる背景に挙げられます。日本では、共働き世帯が増加傾向にあり、1990年代に共働き世帯数が専業主婦世帯数を逆転してからは、その差は広がるばかりです。

共働き世帯の増加により、それまでは主婦が担っていた家事や育児、介護は、夫婦で協力する必要がでてきました。家事や育児、介護と仕事を両立するためには、時間や場所に融通が利く柔軟な働き方が求められます。

そのようなニーズに対応するため、短時間労働やフレックス勤務、テレワークの導入といった働き方改革が求められたのです。

働き方改革の課題

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働き方改革の課題には、以下の3つが挙げられます。

●    長時間労働の是正
●    正規社員と非正規社員の格差解消
●    労働力の確保

ここでは、それぞれの課題について解説します。

長時間労働の是正

働き方改革の課題として挙げられるのは、長時間労働の是正です。これまでの日本では、労働を美徳とする文化があり、遅くまで残業することや休みをとらずに働くことが評価されていたため、長年にわたり長時間労働が常態化していました。

これまでも残業の規定があったものの、規制が緩いため、規定を超過した残業や休日出勤が横行していました。長時間労働が常態化した環境下では、重大な健康被害を招いてしまう可能性があります。実際に、長時間労働による過労が原因で労災や過労死に至ってしまうケースもあります。

多くの人が健康的に働き、ワーク・ライフ・バランスを実現するためには、長時間労働からの脱却は欠かせません。そのためにも、働き方改革では、従業員の労働時間の管理や是正を実施し、改善することが求められています。

正規社員と非正規社員の待遇格差解消

正規社員と非正規社員の待遇格差解消も、働き方改革の課題に挙げられます。日本の正規社員と非正規社員の待遇格差は欧米諸国の水準よりも大きいと言われています。この原因のひとつとして挙げられるのは、派遣社員の普及拡大や、パートやアルバイト、契約社員と正規社員との待遇格差です。

元々、派遣社員は企業の繁忙期の一時的な人手不足の補填が目的で、雇用できる業種も、専門的なスキルを必要とする26種類に限定されていました。しかし、雇用できる業種が緩和されたことにより、人件費削減を目的に派遣社員を雇い、正社員と同じ内容の業務をおこなう状況がでてきたのです。

正社員と同じ業務を担当していても、賃金が低い状態が続いた場合、派遣社員のモチベーション低下を招く恐れがあります。モチベーションが低下すれば、おのずと生産性も低下するでしょう。

派遣社員として働く人たちのモチベーション向上や生産性向上につなげるためにも、雇用形態による待遇格差を解消することが求められています。近年では、同一労働同一賃金や派遣法の改正など、非正規社員の待遇改善に向けた取り組みも進んでいます。

労働力の確保

労働力の確保も、働き方改革の課題のひとつです。前述したように、日本では少子高齢化による労働人口の減少が問題となっています。労働人口の減少により、これまでよりも更に労働力が深刻化することが予想されています。

労働力不足が深刻化する状況では、安定した労働力の確保が課題です。そのためには、従業員が心身ともに健康的に働ける環境を整備することが求められます。前述した長時間労働の是正だけではなく、休暇取得や勤務時間のインターバルにも取り組む必要があるでしょう。

また、生産年齢人口に含まれない高齢者を、労働力にする方法もあります。内閣府の調査によると、現在仕事をしている60歳以上の人の約40%が「働けるうちはいつまでも働きたい」と回答しており、87%の人が70歳以上まで働きたいと考えていることが明らかになりました。

生産年齢にとらわれず、就業意欲を持つ高齢者を活かせる環境を整備することも、働き方改革に求められています。

参照:内閣府「令和2年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)2 就業の状況

働き方改革の推進で得るメリット

働き方改革を推進することにより現在の日本における課題が解決できれば、労働者と企業の双方にメリットがあります。ここでは、労働者側と企業側のメリットについて解説します。

労働者側のメリット

働き方改革の推進による労働者側のメリットとして挙げられるのは、ワーク・ライフ・バランスの実現です。働き方改革により労働時間が削減されれば、これまで仕事をしていた時間を趣味や家族と過ごす時間に充てられます。

趣味や家族と過ごす時間の増加は、私生活の充実につながります。私生活が充実すれば、仕事に対するモチベーション向上にもつながるでしょう。

また、短時間勤務やテレワークといった柔軟な勤務形態や就業形態が実現すれば、能力がありながらも、フルタイムでは働けない環境にいる人材も働けるようになります。これまでは引越しや育児を理由に退職せざるを得なかった人材も、退職せずに働けます。安定した収入も確保できるため、生活の安定にもつながるでしょう。

企業側のメリット

働き方改革の推進による企業側のメリットとして挙げられるのは、生産性向上です。長時間労働が是正されれば、短い時間で成果を出すことが求められます。業務効率化にも取り組む必要があるため、おのずと生産性向上につながります。

柔軟な勤務形態や就業形態が実現すれば、働く条件の幅も広がり、これまでは働けなかった人材の確保も可能です。人材確保により労働力不足を理由にした機会損失も防止できるため、安定した収益確保にもつながるでしょう。

また、長時間労働を是正し、柔軟な勤務形態や就業形態を導入していることを社外にアピールすれば、周囲からは「従業員を大切にする企業」と認知してもらえます。良い印象を持たれる企業であれば、優秀な人材が応募してくる可能性も高まります。

優秀な人材を確保できるようになれば、さらなる生産性向上も期待できるでしょう。

働き方改革の主な取り組み

働き方改革とは?取り組み内容を解説_5

働き方改革による主な取り組みとして、以下の3つが挙げられます。

●    フレックスタイム制の導入
●    テレワークの導入
●    同一労働同一賃金の施行

ここでは、それぞれの取り組みについて解説します。

フレックスタイム制の導入

働き方改革の主な取り組みとして、フレックスタイム制の導入が挙げられます。フレックスタイム制とは、労働者に始業時間と就業時間の裁量が与えられる制度です。労使協定に協定の有効期間を記載し、労働基準監督署に届け出れば、導入できます。

フレックスタイム制には以下のケースがあります。

●    1ヵ月の労働時間さえ守れば出社時間や退社時間を自由に選べる
●    必ず出勤する時間(コアタイム)が設けられている
●    ある時間の範囲内であれば出社時間や退社時間を自由に選べる

フレックスタイム制を導入すれば、毎日決まった時間に出退勤する必要がありません。私用や家族の予定が入った際にも、時間を調整できたり、ライフスタイルに合わせた時間に出勤したりできるため、労働者にとってメリットの大きい取り組みです。

テレワークの導入

テレワークの導入も、働き方改革の主な取り組みに挙げられます。テレワークとは、オフィスに出勤せず、自宅やカフェといったオフィスから離れた場所で仕事をする働き方です。まったくオフィスに出勤しないケースもあれば、週や月ごとに出勤する日が決まっているハイブリッド型を採用するケースもあります。

テレワークを導入すれば、遠方に住んでいる人材や家庭の事情によりオフィスへの通勤が困難な人材でも働けます。オフィスに通勤できない事情がある労働者にとってメリットがあるだけでなく、企業側にとってもメリットがある働き方です。これまで採用できなかった人材を採用できるため、新たな層の人材確保にもつながります。

同一労働同一賃金の施行

同一労働同一賃金の施行も、働き方改革の主な取り組みに挙げられます。正社員と同じ業務を担当している派遣社員の待遇を正社員と同等の待遇にすることで、派遣社員のモチベーション向上につながるでしょう。

また、派遣社員から正社員登用へのルールを整備することでも、モチベーションは向上するでしょう。企業側からしても、正社員と同等の働きをする人材確保につながります。

まとめ

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働き方改革とは、柔軟な働き方を可能にするための改革です。少子高齢化による労働人口の減少や労働者のニーズの変化により、働き方改革が求められました。働き方改革の課題には長時間労働や正規社員と非正規社員の格差解消、労働力の確保が挙げられます。

課題を解決するための主な取り組みとして挙げられるのは、フレックスタイム制の導入やテレワークの導入、同一労働同一賃金の施行です。働き方改革は、労働者と企業の双方にメリットがある取り組みです。

働き方改革に取り組み、魅力的な職場環境を構築しましょう。
 



《ライタープロフィール》
田仲 ダイ

エンジニアリング会社でマネジメントや人事、採用といった経験を積んだのち、フリーランスのライターとして活動開始。現在はビジネスやメンタルヘルスの分野を中心に、幅広いジャンルで執筆を手掛けている。