身元保証人とは?
社員が入社する際、身元保証人を記載した身元保証書を求められることがあります。身元保証人は、社員本人の身元を保証する人を指します。身元保証人は、社員の身元を確認する以外にも、損害リスクを抑えることも理由のひとつです。
本記事では、身元保証人の概要や必要な理由、身元保証人の条件について解説します。
目次
身元保証人とは?
身元保証人とは、本人の身元や社会的に信用できる人物であることを保証する人です。本人の代わりに責任を負う役割もあり、一般的には、入社時に会社から身元保証書の提出が求められます。
会社が不利益を被るような行為をした場合、代わりに補償しなければならないため、友人や知り合いに安易に頼めるものではありません。
就職・転職に身元保証人が必要な理由
就職や転職時に身元保証人が必要な理由として挙げられるのは、以下の2つです。
・ 身元を確認するため
・ 企業への損害リスクを抑えるため
ここでは、それぞれの理由について解説します。
身元を確認するため
身元保証人が必要な理由として挙げられるのは、社員の身元を確認するためです。会社は、社員の経歴を履歴書や面接で確認しています。しかし、履歴書の経歴に間違いがないか、素行に問題がないかは、履歴書や面接だけでは判断できません。
身元保証人をおき、社員の経歴や素行に問題がないことを会社に対して保証することにより、会社側が安心できます。
企業への損害リスクを抑えるため
企業への損害リスクを抑えることも、身元保証人が必要な理由に挙げられます。前述したように、会社は採用する人の素性をすべて把握したうえで採用しているわけではありません。実際に、入社した社員が会社に損害を与えてしまうことがあります。
損害を与えた社員本人がその損害を賠償できるのであれば良いものの、支払い能力がない場合や、本人と連絡がとれなくなるケースも考えられます。そのようなリスクに対し、本人に代わって損害賠償を請求できる人として、身元保証人を設置するのです。
身元保証人をおくことにより「身元保証人に迷惑をかけてはいけない」と、会社に損害を与える行為への抑止力にもなるでしょう。会社に損害を与える例としては、以下のものが挙げられます。
・ 会社資産の横領
・ 会社が管理する情報(個人情報や機密情報など)の漏えいや流出
・ 会社の商品や備品(設備やパソコンなど)の破壊または紛失
・ かかった費用以上の経費を故意に請求する
・ SNSへの誹謗(ひぼう)中傷の書き込み
会社は、上記のような損害が発生し、身元保証人にも責任が及ぶ可能性がある場合、身元保証人に通知することが義務づけられています(身元保証法第3条)。
身元保証人の条件
身元保証人の条件は会社によって異なるものの、基本的な条件として挙げられるのは、以下の3つです。
・ 親以外でも可能
・ 経済的に自立している成人
・ 期限は3年~5年
ここでは、それぞれの条件について解説します。
親以外でも可能
身元保証人は本人を理解し、社会的に信用がある人物であることが求められています。そのため、多くの人は身元保証人として親を選ぶケースが一般的です。しかし、親がいなかったり、連絡がとれなかったりといった、親を保証人にできない事情がある人もいるでしょう。
その場合、友人や知人に身元保証人になってもらうことも可能です。ただし、身元保証人になるということは、本人に代わって賠償責任を負わされる可能性があります。そのため、嫌悪感を示し、今後の関係性に影響がでる可能性もあります。友人や知人に頼むのであれば、丁寧に説明し、納得してもらったうえで依頼することが大切です。
身近な人に身元保証人になってもらえる人がみつからず、会社からも身元保証人の設置を求められることがあります。その場合、身元保証人の代行会社を利用するのもひとつです。
ただし、身元保証人の代行会社は会社やサービス内容によって料金が異なります。トラブルを防止するためにも、以下の条件を確認したうえで、適した代行会社を選ぶことが大切です。
・ 適正な価格設定であるか
・ 追加料金が発生しないか
・ 弁護士をはじめとした有資格者が運営しているか
経済的に自立している成人
身元保証人は家族や友人、知人になってもらうことも可能です。しかし、依頼者が納得さえすれば身元保証人になれるわけではありません。身元保証人は、損害発生時に本人に代わって賠償しなければなりません。
そのため、身元保証人には「経済的に自立しており安定した収入がある成人」であることが求められています。つまり、経済的に自立していても、未成年の兄弟は身元保証人にはなれません。親が年金で生活している場合も、経済面の不安から身元保証人として認められないことがあります。
期限は3年~5年
身元保証人は、一度認められれば永久的に保証人でいられるわけではありません。身元保証法第2条第1項で、身元保証人として認められる期限は原則3年と定められており、書面に記載がある場合でも5年が最長です。
期限が終了した場合は更新できるものの、自動更新ではなく再審査があります。そのため、契約期間中に身元保証人である親が年金生活になった場合、契約更新ができない場合があるため、注意が必要です。
連帯保証人との違い
身元保証人と混同されることがある用語が「連帯保証人」です。連帯保証人は、本人とともに損害を保証する人であり、損害をすべて保証することが求められます。一度引き受けた場合、連帯保証人側からは解除できません。
一方、身元保証人はあくまでも身元を保証することが目的です。会社と身元保証人との契約では、損害賠償の上限額を明記する必要があり、上限額を超える金額を請求されることはありません(民法465条の2)。一度身元保証人を引き受けても、被用者本人の勤務態度が悪く会社に損害が生じ身元保証人に責任が及ぶ恐れがあるなどの通知を会社から受けたときは身元保証人側から契約を解除することも可能です(身元保証法第3条)。
連帯保証人と身元保証人では、責任の範囲が異なることを理解しましょう。なお、入社手続きで連帯保証人を求められるケースはほとんどありません。
まとめ
身元保証人とは、本人の身元や素性を保証する人を指し、入社時には会社から身元保証書の提出が求められることが一般的です。身元保証人が必要な理由として挙げられるのは、社員の身元を確認するとともに、企業への損害リスクを抑えるためです。
身元保証人の条件は会社によって異なるものの、必ずしも親でなければならないわけではありません。一般的に、経済的に自立しており、安定した収入がある成人であることが条件です。
また、身元保証人になれる期限は3年~5年と定められており、一度身元保証人として認められても、更新審査が必要です。会社から身元保証人の設置を求められた場合、条件を満たしたうえで、信頼できる人に依頼しましょう。
《ライタープロフィール》
ライター:田仲ダイ
エンジニアリング会社でマネジメントや人事、採用といった経験を積んだのち、フリーランスのライターとして活動開始。現在はビジネスやメンタルヘルスの分野を中心に、幅広いジャンルで執筆を手掛けている。