契約社員とは?正社員との違い・契約社員から正社員になるには
契約社員という働き方には、柔軟な勤務条件やスキルを活かせるメリットがある一方で、雇用期間や待遇面での制限もあります。本記事では、契約社員として働く際の魅力や注意点、さらに正社員登用や無期転換ルールなどキャリアプランを充実させるためのポイントを詳しく解説します。契約社員として働くことを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
契約社員とは
契約社員とは、企業との雇用契約で定められた期間に基づき雇用される働き方です。多くの場合、企業と期間の定めのある「有期労働契約」を結び、その期間が満了すると契約の更新または終了のいずれかとなります。正社員とは異なり雇用期間に期限があるため、働き方に一定の自由度がある一方で、安定性に欠ける側面もあります。契約社員は、多様な働き方を希望する方や専門スキルを活かしたい方に向いている雇用形態です。
有期労働契約
有期労働契約とは、あらかじめ働く期間を定めたうえで締結する契約形態です。契約社員という働き方では、その多くが有期労働契約となっています。3ヶ月や6ヶ月といった数ヶ月単位での契約もありますが、1年ごとの契約が一般的です。労働基準法では、契約の上限は最長3年が原則とされています。ただし、以下の場合は例外的に5年です。
<上限が5年とされる例>
● 専門的な知識等を有する労働者
● 60歳以上の労働者
【参考】:厚生労働省|労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール
雇用形態
契約社員は、多くの企業で正社員とは異なる柔軟な働き方として活用されています。詳しくは次章の「契約社員と正社員の違い」で述べますが、正社員と契約社員では雇用期間や給与体系、福利厚生等に違いがあります。契約社員は、業務に専門性が求められる場合も多く、特定のスキルや経験を必要とする業務に従事するケースも珍しくありません。
有期契約労働者の勤務先の業種・職種傾向
厚生労働省の「令和3年有期労働契約に関する実態調査(個人調査)」によると、有期契約労働者は業種や職種によって一定の傾向があることが分かります。例えば業種別では、医療・福祉分野での割合が特に高く、介護や看護補助などの職種で多くの採用が見られます。また、教育・学習支援業では非常勤講師や教育補助スタッフとしての有期契約が一般的です。
一方、職種別の傾向を見てみると、専門的・技術的職業での有期契約が目立ち、特にITエンジニアやデザイナーなど、プロジェクト単位での仕事を主にする職種が多いことが特徴です。また、事務的職業や販売系でも有期契約が多いと言えるでしょう。
これらのことから、有期契約には、業務内容や人材の需要に応じて多様な活躍の場が用意されていることが分かります。
【参考】:厚生労働省|令和3年有期労働契約に関する実態調査(個人調査)
契約期間中の退職はできる?
契約社員は、原則として契約期間の途中での退職はできません(民法627条1項)。ただし、「やむを得ない事由」がある場合は、契約期間の途中であっても退職できるケースがあります(民法628条)。このやむを得ない事由とは、健康上の問題や家庭の事情など、本人がどうしても契約を続けられない状況を指します。
つまり、特別な事情がない場合には、基本的に契約期間を満了しなければなりません。企業との間で合意が得られず、契約期間中に一方的に退職する場合、企業から損害賠償を請求される可能性があります。
契約期間中の退職を希望する際は、雇用契約書や就業規則に記載された退職手続きに従い、企業と十分に相談することが重要です。契約社員として働く際は、契約内容にしっかり目を通し、自分の希望する働き方に合っているか事前に確認しておきましょう。
ただし、1年を超える有期労働契約の場合であって、働き始めてから1年が経過しているときは、理由なく退職することができます(労働基準法137条)。
【参考】:
厚生労働省|労働基準法Q&A有期の労働契約を結ぼうと思っているのですが、労働基準法には契約期間の制限はありますか。
契約社員と正社員の違い
契約社員と正社員には、雇用期間や給与、福利厚生等にさまざまな違いがあります。自分に合った働き方を選ぶために、それぞれの特徴をしっかり理解することが大切です。以下に、主な違いを比較表でまとめました。
項目 |
契約社員 |
正社員 |
雇用期間 |
有期契約(1年更新が一般的、最長3年) |
無期契約(長期雇用が前提) |
雇用主 |
企業 |
企業 |
給与・賞与 |
契約内容により決定。月給制や時給制が多いが、賞与や退職金は支給されない場合が多い |
月給制が主流。賞与や退職金の制度を設けていることが多い |
昇進・昇給 |
昇進や昇給制度はない場合が多い(契約内容に基づき昇給がある場合もある) |
昇進・昇給の制度が整備されていることが一般的 |
勤務時間 |
契約内容で定められる(短時間勤務やシフト制等を採用しているケースが多い) |
原則フルタイム勤務 |
各種保険 |
契約内容や勤務時間に応じて適用(例:雇用保険は週20時間以上勤務など一定条件を満たす場合加入) |
一般的に労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険といったすべての保険が適用される |
また、契約社員と正社員の違いや待遇差については、「同一労働同一賃金」という考え方をおさえておきましょう。これは、職務内容や責任範囲が同じであれば、雇用形態にかかわらず賃金や福利厚生に差を設けてはならないというものです。契約社員として働く際には、契約内容が「同一労働同一賃金」に沿ったものになっているかを確認することも大切です。
【参考】:厚生労働省|同一労働同一賃金特集ページ
契約社員と派遣社員の違い
契約社員と派遣社員はどちらも非正規雇用に分類されますが、その雇用形態や働き方には大きな違いがあります。契約社員は、企業と直接雇用契約を結ぶのに対し、派遣社員は派遣元会社が雇用主となり、派遣先会社で働きます。それぞれの特徴を知ることで、自分に合った働き方を見つけやすくなります。
項目 |
契約社員 |
派遣社員 |
雇用主 |
企業が雇用主 |
派遣元会社が雇用主 |
雇用契約 |
企業と有期労働契約を結ぶ |
派遣元会社と有期または無期労働契約を結ぶ |
雇用期間 |
契約期間ごと |
派遣契約に基づく期間 |
給与の支払い元 |
企業 |
派遣元会社 |
就業場所 |
雇用契約を結んだ企業 |
派遣先会社 |
業務の指示 |
雇用主(雇用契約した企業)から指示を受ける |
派遣先会社から指示を受ける |
契約社員は雇用主との直接契約が基本のため、キャリア形成や企業内でのステップアップを目指す場合に向いています。一方、派遣社員は派遣会社のサポートを受けながら、幅広い職場で経験を積みたい場合に適していると言えるでしょう。上記にあげた違いを理解し、目的に応じた選択をすることが大切です。
契約社員として働く魅力・メリット
契約社員という雇用形態には、正社員にはない魅力やメリットがあります。以下では、契約社員として働く魅力を具体的に解説します。
生活環境が安定する
契約社員は、勤務地が限定されているケースが多く、異動や転勤は原則ありません。そのため、住み慣れた地域で長く働き続けたい方にとって、生活環境を安定させやすい働き方と言えます。ただし、契約社員だからといって必ず異動等の対象外というわけではありませんので、勤務条件について雇用契約書や就業規則を確認しておきましょう。
勤務時間、勤務日数を調整できる
契約社員は、勤務時間や勤務日数について柔軟に調整できる求人も多いため、ワークライフバランスを重視したい方に向いています。例えば、フルタイム勤務だけでなく、週3~4日の勤務や短時間勤務といった、ライフスタイルに合わせた働き方が可能な場合もあります。
ただし、企業や職種によって異なるため、応募前に求人情報や面接時に条件を確認することが重要です。
役職による仕事へのプレッシャーを受けない
契約社員は、管理職や責任者としての業務を任されることが少なく、役職に伴う仕事のプレッシャーを受けにくいという特徴があります。そのため、責任の重い業務が苦手な方やサポート業務に集中したい方に向いている働き方とも言えるでしょう。
正社員と比較し、仕事の範囲が明確であるケースが多く、求められる成果が分かりやすい点も契約社員のメリットのひとつです。このため、自分の得意分野を活かしながら無理のない範囲で働きたい方にも適しています。
契約社員として働く注意点・デメリット
契約社員として働くことにはメリットがある一方で、注意しておきたいデメリットも存在します。働き方を選ぶ際に十分に理解しておくことが重要です。
雇用期間に制限がある
契約社員は有期労働契約に基づいて働くため、雇用期間に制限があります。前述のとおり一般的には1年更新が多く、契約満了時に更新の可否が検討されます。企業側が更新を希望しない場合やプロジェクトの終了などで契約が打ち切られる可能性も考慮しておきましょう。この点が、長期的な安定を求める方には向かないこともあります。
昇進・昇格の機会は少ない
正社員に比べ、契約社員は昇進や昇格の機会が少ない傾向にあります。特定の業務に従事することが主な役割とされているケースも多いため、管理職やリーダー職への道が限られていることもあります。キャリアアップを目指したい場合には、スキルを磨きながら正社員登用の機会を待つことや転職を視野に入れる等、将来の計画をしっかり立てることが求められます。
担当する仕事に制限が生まれる
契約社員は、企業内で担当する業務があらかじめ限定されているケースが多いです。プロジェクト単位や専門業務をサポートする役割が中心であり、幅広い業務を経験する機会が少ない場合があります。正社員のような幅広いスキルや経験を積む機会が制限されるというデメリットをあらかじめ理解しておくと良いでしょう。
手当や賞与、退職金がない場合が多い
契約社員は、正社員と比べて手当や賞与、退職金の制度が適用されないことが多いのが現状です。同一労働同一賃金の原則に基づき、不合理な格差は解消傾向にありますが、反面、合理的な格差は存在するということです。これらの条件については雇用契約書や就業規則に明記されているため、事前の確認によって、想定外のデメリットを避けることができます。
無期転換ルールとは
無期転換ルールは、一定の条件を満たした有期雇用労働者が、期間の定めのない無期雇用契約に転換できる制度です。
制度概要
無期転換ルールは、同一の使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合に、労働者本人の申出により無期雇用に転換できる制度です。適用の条件としては、契約期間が連続していることが必要なため、通算期間に一定の空白がある場合は対象外となることがあります。
また、無期雇用に転換するには、労働者本人から「無期転換の申込み」をおこなう必要があります。申込み後、企業側がこれを拒否することはできません。
無期転換ルールの詳細については、以下の関連リンクをご覧ください。
関連リンク
採用お役立ちコラム|派遣の「5年ルール」とは?制度内容、適用条件、メリットを解説
【参考】厚生労働省|有期契約労働者の無期転換ポータルサイト
契約社員から正社員として働くその他の方法
契約社員としての経験を活かしながら正社員を目指す方法として、企業が設けている正社員登用制度があります。この制度は、一定期間契約社員として働いた後に、正社員登用のチャンスが与えられるものです。
正社員登用の制度内容は企業によって異なるものの、その多くは業績や勤務態度を評価基準として、定期的に登用試験や選考をおこなう形式が取られています。
また、契約社員から正社員への道が明確にされていない場合でも、企業との信頼関係を築きながら、登用の可能性について相談することで道が開けるケースもあります。正社員登用制度の有無や条件は企業ごとに異なるため、正社員を目指す方は事前に確認しておくことをおすすめします。
契約社員になるには
契約社員として働くためには、現職の会社での雇用形態の変更や契約社員の募集をしている企業に転職する方法があります。
現職の会社で雇用形態を変更する
現在の職場で契約社員として働くことを希望する場合、まずは雇用形態の変更が可能かどうか会社に確認する必要があります。例えば、正社員の人がライフスタイルの変化を理由に契約社員へ変更を希望する場合や、アルバイトからステップアップして契約社員を目指す場合等が考えられます。雇用形態の変更については企業の就業規則や人事制度によりますので、事前に担当部署に相談しておくことが重要です。また、変更後の契約内容(雇用期間・給与・福利厚生等)についても十分に確認しましょう。
転職先の会社で契約社員として働く
契約社員としての働き方を希望する場合、契約社員を募集している企業へ転職する方法も一般的です。求人情報サイトや人材紹介会社を活用し、自分のスキルや経験に合った職場を探します。
特に、専門職やプロジェクトベースの業務では、契約社員としての募集が多いことがあります。転職活動をおこなう際には、契約期間や条件、将来的なキャリアプランについても応募先に確認しておくと安心です。
気になる方は、スタッフサービスのこちらのページから求人検索が可能です。
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まとめ
契約社員という働き方は、ライフスタイルに合わせた柔軟な選択肢である一方、雇用期間の制限や待遇面での注意が必要になるものです。キャリアアップを目指す方にとっては、契約内容を十分に確認し、将来のプランを明確にしておくことが重要になります。また、無期転換ルールや正社員登用制度など、長期的な雇用安定を図る道もあります。契約社員のメリットとデメリットを理解し、自分に合った働き方を見つけましょう。
- ライター:川西 菜都美(監修兼ライター)
- 結喜社会保険労務士事務所代表。金融、製造、小売業界を経験し、業界ごとの慣習や社風の違いを目の当たりにしてきたことから、クライアントごとのニーズにあわせ、きめ細やかな対応を心がけている。