ピッキングとは? ピッキングの仕事内容や「きつい」といわれる理由を解説
「ピッキング」という言葉から、どんな仕事を連想するでしょうか。ピッキング作業は、物流の拠点である倉庫業務において重要な役割を担っています。その一方で、業務がきついと言われることもあります。具体的にどのような点が大変なのでしょうか。ピッキングの具体的な仕事内容や、メリット・デメリット、どんな人に向いているかなども合わせて解説します。
目次
ピッキングとは
ピッキングとは、注文書などリストにもとづいて、倉庫内の商品を集めてくる仕事のことです。集められた商品は検品した後、適切な資材で梱包し、出荷作業の準備をおこないます。倉庫によって、これら仕分け、検品、梱包なども含めて行う場合があります。
なお、この仕事は、特別な資格などが必要なくても、ルールや手順を学べば未経験でもチャレンジできます。
ピッキングと仕分けの違い
「仕分け」とは、入荷した商品を決められたルールに従って、分類していく作業のことです。こうすることで、倉庫内が整理整頓され、商品が探しやすくなり、積み荷をつくりやすくなるため、効率的に仕事ができるメリットがあります。さらに、事故やケガを防げます。
一方「ピッキング」は、「仕分け」によって整理された倉庫の中から、商品を集めて取り出してくる作業をいいます。つまり「仕分け」→「ピッキング」という流れになります。
ピッキングと梱包の違い
「梱包」とは、商品が配送中に破損したり、傷ついたりしないように、緩衝材を入れ、ダンボールや袋など適切な資材で包装して、荷物を詰めることです。「ピッキング」は、前の説明であるように、注文書などの指示に従って、商品を集めてくる作業なので、順番でいえば、「ピッキング」→「梱包」となります。
ちなみに、「仕分け」「ピッキング」「梱包」の作業をまとめて「倉庫内軽作業」と言います。
ピッキングの魅力
ピッキング作業には次のような魅力があります。
運動不足が解消できる
注文を受けた商品をかき集めるために、倉庫内を動き回るため、運動不足になることはありません。また、保管している棚から商品の上げ下ろしなどをおこなうこともあるため、全身運動が可能です。
未経験OKの求人が多い
難しい作業はほとんどなく、特別な資格・スキルも必要ないため、未経験からチャレンジできます。高度なコミュニケーションを求められることがないため、コミュニケーションに自信がない人でも活躍できるでしょう。また、多くの就業先企業で、OJT研修(職場内訓練)を実施しているため、未経験からでも安心して就業できます。
シフト(勤務時間帯)の選択肢が多い
ピッキングの仕事は、さまざまなシフトが組まれることが多いです。「日勤や夜勤」、「週1~3日勤務」、「早朝・午後・夕方出社」、「時短勤務」などの多様な勤務が可能です。自分のライフスタイルに合った働き方(もしくは勤務先)が選べます。
ピッキング作業の種類
ピッキングには、「シングルピッキング」「トータルピッキング」「マルチオーダーピッキング」の3つの作業方式があります。会社(または倉庫)によって、採用している作業方式が異なるため、ピッキングの仕事に興味がある方は、この3つの違いをチェックして、自分に合った作業方法の仕事を選ぶようにしましょう。
シングルピッキング
「摘み取り方式」と呼ばれ、1つの注文ごとに商品を倉庫から集め、取り出す作業方式です。このやり方は、単品の注文だと検品や梱包、出荷にスムーズに流せるので、後工程が早く着手できるメリットがあります。また、作業内容もシンプルなため、未経験者など経験のない方もすぐに対応しやすく、新人の研修も短時間でおこなえます。
トータルピッキング
複数の注文に対して、同じ種類の商品をとりまとめる作業方式です。このやり方は、ピッキング作業が2段階に分かれます。まず複数の出荷先からの発注をもとに、商品をピッキングして、それを仕分けスペースに持っていきます。次に出荷先別に商品を仕分けして、その後検品・梱包・出荷の工程へとつながります。この後者の仕分け作業が、畑に種をまくように見えるとのことで、「種まき方式」とも呼ばれています。
トータルピッキングにおいては、2つの工程が発生したり、複数の注文を同時に行ったりするため、複数人で作業がすることが一般的です。なお、この作業方式を採用すれば、中間に仕分けスペースを置くため、移動距離が短くなり、複数の注文でも作業効率を高められる利点があります。
マルチオーダーピッキング
トータルピッキングのように複数の注文を集めつつも、同時に仕分けもおこなう作業方法です。例を挙げて紹介します。たとえば、下記のように3つのオーダーを受けたとします。
オーダー1 A商品:2個 B商品:4個
オーダー2 A商品:3個 B商品:5個
オーダー3 A商品:2個 B商品:7個
3つのオーダーをまとめると、A商品7個、B商品:16個となりますが、このまま7個と16個で分けて集めてくると、あとでオーダー別に分ける手間が出てきます。
そこで、ダンボールなどを複数用意して、オーダー別に分類して、商品をピッキングするのが、この「マルチオーダーピッキング」になります。この例だと、商品Aと商品Bの注文の数を、3つのオーダー別の箱に投入していきます。こうすれば、ピッキングと仕分けをほぼ同じタイミングでおこなうので、作業の効率化が図れます。
ピッキングの仕事内容
倉庫内軽作業においては、「ピッキング作業」の他に「検品作業」「梱包作業」「出荷作業」「物品の在庫管理」があります。ピッキングの仕事においても、梱包や出荷などをおこなう場合があります。具体的にどういう内容なのかチェックしておきましょう。
ピッキング作業
依頼を受けて、倉庫内にある商品を集める作業のことです。指定の便に商品をのせる必要があり、かつ注文書にもとづいておこなうため、間違いのないように正確かつ迅速に作業をおこなわなければなりません。そして集めた商品は、検品チームに引き継いでいきます。
検品作業
ピッキングで集められた出荷商品が注文書の内容と合っているか確認する作業のことです。該当の商品かどうかの確認はもちろん点数に誤りがないかも照合し、間違いがあればピッキングチームに迅速にフィードバックします。
梱包作業
検品が終了した商品を配送できるように包装する作業のことです。商品の形状や重さ、量にあわせて適切なサイズのダンボールや袋を選び、商品を詰めていきます。配送中などに商品が破損しないように、エアパッキンなどの緩衝材を隙間に埋めるのも大切な作業です。
出荷作業
検品・梱包作業が完了すれば、トラックへの商品の積み込みなど、出荷先に向けて商品を送り出す作業が発生します。注文の商品が間違いなく配送先に届くように、送り状もつくります。配送先リストと送り状を照らし合わせながら、注文主(依頼主)のお名前、住所、電話番号が正しく記載されているかチェックしましょう。
ピッキングの作業はきつい?
「ピッキング作業はつらい、しんどい」という話を聞きますが、具体的にどのような点が大変なのでしょうか。
ピッキング作業が「きつい」と言われている理由
体力が必要な時がある
電化製品や飲料、設備機器など重さのある商品などを取り扱う場合は、体力が求められます。こうした場合は、複数人でピッキングをおこなったり、フォークリフトなどの機械を操作して対応することがほとんどですが、商品によっては一人で上げ下ろしの作業をすることもあります。
業務スピードと正確性が求められる
ピッキング作業を終了すると、その後、検品・梱包・出荷作業が控えています。このピッキング作業が滞ってしまうと、後工程に大きな影響が出てしまうため、「スピード」と「正確性」は常に求められます。特にこの2つは相反するスキルのため、両立させるのが非常に難しいです。しかし経験を重ねていけば、どちらも高めていくことができるので、意識して取り組むことが重要となっています。
労働環境の温度調整が難しい
ピッキング作業は倉庫内での作業なので、通常であれば天候の影響はあまり受けません。しかし、商品の搬入・搬出が頻繁におこなわれるため、倉庫の出入り口を開放していることが多く、空調が効きづらいことがあります。そうなると夏は暑く、冬は冷え込むという状況になりやすいです。仕事中は、衣類での温度調節や、定期的な水分補給をしての体調管理を心がけることが必要です。
繁忙期に業務量が増加する
物流・倉庫の仕事には、多くの場合繁忙期があり、業務量が一定しません。特に個人消費者向けの商品は、注文量がシーズンによって異なるため、繁忙期・閑散期の波が激しいのが特徴です。クリスマスや年始、バーゲンシーズンなどは注文が殺到し、倉庫内も大忙しです。
ただし繁忙期は事前に予測できるため、アルバイトの人数を増やしたり、会社として対策をとっているところも多いです。会社として、どのような対策を講じているのかなどを面接で聞いてみるのも、会社選びでポイントの1つになるでしょう。
ピッキング作業に向いている人
ピッキング作業は、次のようなタイプが向いています。
作業に集中できる人
ピッキング作業は非常にシンプルな仕事ですが、正確性やスピードが求められます。そのため、1つひとつの業務に集中できる人は、ミスや漏れがなく、高い精度のピッキングを、迅速にできるようになります。そうすれば、周りからも評価されるので、やりがいを持って仕事に取り組めます。
早朝・夜間に働きたい人
早朝や夜間は、求人ニーズが高いものの、応募する人が少ない時間帯です。なかなか人材が充足しないため、この時間帯に希望すれば、採用される可能性が高まります。なお午後10時~午前5時までの時間帯は、25%の深夜手当がつくので、通常の時給よりも賃金を稼げるため、お金を稼ぎたい人には狙い目です。
体力に自信がある人
倉庫内を歩き回ったり、商品を上げ下ろししたりするため、一日中身体を動かすことが求められます。さらに立ち仕事でもあるため、体力に自信がある人は活躍できるでしょう。
一人で作業するのが好きな人
人と協力しながら仕事を進めていくので最低限のコミュニケーションは必要です。しかし、倉庫内で商品をピッキングする作業は一人でおこなうことが多いので、人間関係をあまり気にせずに仕事に取り組みたい人には向いています。
ピッキング作業に活かせる資格
ピッキング作業に必須となる資格はありませんが、保有しておくと有利な資格はあります。それは、「フォークリフトの運転免許」です。実は、大きく分けると2つの資格があります。具体的に見てみましょう。
フォークリフトの運転免許
フォークリフトの運転免許は積載量によって2種類に分かれます。
積載量が1トン未満の場合は「フォークリフト運転特別教育」、1トン以上になると「フォークリフト運転技能講習」の資格が求められます。なお、それぞれイチから取得するには、前者であれば学科講習6時間、実技講習6時間、後者であれば学科講習11時間、実技講習24時間、受講することが必要です。
フォークリストが運転できれば、重い商品などを一度にまとめてピッキングがおこなえ、効率的に仕事ができるので、現場では重宝される資格です。この資格を持っていると手当を支給してもらえる会社もあり、収入アップも期待できます。
ピッキング作業の給与
2023年の厚生労働省の『jobtag』によると、ピッキングの作業の、全国平均年収は340万円となっています。また、スタッフサービスの求人では「ピッキング・入出荷」の全国平均時給は1,261円(2024年6月時点)となっています。この数字は、あくまで平均年収ですので、経験を積んだり、割増手当が付く夜間勤務などを選べば、さらに収入を増やすことが可能です。
厚生労働省「jobtag」
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/486
ピッキング作業の将来性・需要
日本のBtoC-EC(Electronic Commerce:電子商取引)全体の市場規模は、22.7兆円。前年比は9.91%増加です。なかでも物販系やサービス系は年々伸びており、こちらも需要拡大傾向にあります。(※1)特にピッキングに関わる物販系分野においては、「食品、飲料、酒類」(2兆7,505億円)、「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」(2兆5,528億円)、「衣類・服装雑貨等」(2兆5,499億円)、「生活雑貨、家具、インテリア」(2兆3,541億円)の割合が大きく、これらの上位4カテゴリーがすべて2兆円を超えています。こうした需要高の影響もあって、ピッキング作業のニーズはまだまだ伸びしろがあり、未経験者も含め活躍できるチャンスがあります。
※1 経済産業省 電子商取引に関する市場調査報告書(2023年)
https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002.html
まとめ
ピッキングの仕事はいかがでしたでしょうか。本記事では、ピッキング作業の種類や、多岐にわたる仕事内容、ピッキング作業に向いている人から、ピッキングの仕事の大変さや魅力、将来性に至るまで、幅広い情報を紹介してきました。
なおスタッフサービスグループでは、ピッキングのさまざまな求人をご紹介しています。今回記事で解説した観点を参考に、自分に合った仕事を見つけてください。
スタッフサービスグループ「ピッキング」の求人一覧紹介はこちら
https://www.staffservice.co.jp/seizo_butsuryu_keisagyo/butsuryu/
- ライター:西谷 忠和
- 新卒・中途採用、進学などのメディアにて広告制作ディレクターを経験後、2007年に独立。現在は、フリーのライターとして採用サイト、求人メディアの広告、採用のオウンドメディア、人材サービス企業のインナーコミュニケーションなどのコンテンツ制作に携わっています。またライフワークとして、20~50代のビジネスパーソンやフリーランスのキャリア支援をおこなうキャリアコンサルタントとしても活動中。