派遣の仕事を辞めたくなったら?退職手続きはどうすればいい?
「派遣として働いているけれど、今の仕事を辞めたい」「更新を依頼されそうだけれど、実は更新せず別の仕事に就きたい」などと考えている人に向けて、本記事では派遣の仕事を辞めたくなった場合の対応、退職手続きをどうすべきかなどをまとめて紹介します。
気まずい思いをせずに退職するためにも、派遣の基本ルールや退職にあたっての手続きを覚えておくようにしましょう。
目次
派遣の仕事は辞めることができる?
原則、派遣契約の期間は退職できない
派遣の仕事は働く期間が指定された有期雇用契約であるため、原則期間途中での退職はできません。また、即日退職も不可能です。しかし、民法第628条で定められている「やむを得ない事由」がある場合は、例外的に契約期間中の退職が可能です。
基本は辞められないという前提はあるものの、やむを得ない事情、会社起因の問題がある場合は、まず派遣会社への相談から始めましょう。
「やむを得ない事由」「会社起因の問題」の例
例外となる、「やむを得ない事由」「会社起因の問題」にあたる具体例を4つ紹介します。
・契約以外の仕事をさせられている
派遣は事前に契約している内容の仕事をおこなうという原則ルールがあります。
・ハラスメントを受けている
ハラスメントがある場合は、派遣会社の担当者等に相談すべきです。
・親や家族の介護で働く時間に制限ができた
事前の契約内容の続行が物理的に不可能になった場合が想定されます。
・派遣社員当事者に体調不良があり、勤務を継続できない
自身の体調不良で契約通りの勤務継続が不可能な場合が想定されます。こちらは、ハラスメントなどを起因とする場合は派遣先企業の問題として相談しましょう。
上記などのやむを得ない事由、会社起因の問題がある場合は、契約途中で退職することが可能です。まずは派遣会社への相談をおこなうところから始めてみてください。
しかし、今後契約途中での退職を繰り返すと、紹介に影響が出てくる可能性も十分考えられます。そうなると、「次の仕事もまた契約期間途中で退職するのでは」と思われる可能性が高いため、注意深く選ぶようにしましょう。
派遣の仕事を辞めたいと感じたとき
では、派遣の仕事を辞めたいと感じるのはどのような理由からでしょうか。厚生労働省調べによると、辞めたいと感じる上位の理由は、下記5点です。
・人間関係が好ましくなかった
・労働条件が悪かった
・給料等収入が少なかった
・能力、個性、資格を活かせなかった
・仕事の内容に興味が持てなかった
出典:厚生労働省ホームページ「-令和3年雇用動向調査結果の概況-(3)転職入職者が前職を辞めた理由」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/22-2/dl/gaikyou.pdf
男女別で多少順位は異なるものの、人間関係、労働条件、待遇、キャリアの部分で退職を決断する方が多いことが見て取れます。
仮に辞めたいと感じた場合は、まず派遣会社の担当に相談することから始めましょう。派遣会社は働き続けるサポートとして、退職以外の悩みに関しても相談に乗ってくれます。
もし退職する場合どうすればいい?
派遣会社に相談した結果、退職を決意した場合、どのように手続きを進めていけばいいのかを解説します。
・退職の意向を派遣会社に伝える(契約満了の1か月~2か月前)
まずは、「先日相談したけれど、やはり退職したい」という意向を派遣会社に伝えるようにしてください。契約が満了する1か月~2か月前が望ましいです。
やむを得ない事情で契約途中に退職する場合は、派遣会社にできるだけ早く退職意向を伝え、退職日を調整してもらいましょう。
・退職願、退職届の順番で提出をする
契約更新のタイミングで退職をする場合は、退職願や退職届などの書類は不要です。単に契約を更新せず、退職の意向を伝えておけば派遣会社が派遣先とやりとりして勤務を終了する手続きを進めてくれます。
契約期間の途中でやむを得ず退職をする場合は、退職願、退職届の提出が必要です。派遣会社の指示に従い、期限を守って提出してください。
当然のことですが、退職が決まっても派遣先の会社から発表されるまで、退職の件を口外してはいけません。退職が発表されたら、退職後に迷惑をかけないような業務整理を行うとともに、お世話になった方、関わった方に最終日までの間にご挨拶をするなど、気持ちよく退職できるような準備をしておいてください。
退職する際の注意点
いざ退職が決まったときのために、退職する際に注意したい8つのポイントを覚えておくようにしましょう。手続きを忘れてしまうと、病院にかかるときに負担額が大きくなるなど、日常生活に支障が出る可能性もあります。
退職の意思は派遣先企業に伝えない
派遣会社に退職意思を伝えてからも、派遣会社以外の場所で退職の意思を口にしないように注意してください。派遣会社が退職の意思を受け取ってから、派遣先企業に伝えるまでにはさまざまな事情でタイムラグが生じる可能性があるためです。
派遣会社から伝えてOKと言われるまでは、派遣先の人に伝えないよう注意しましょう。
有給が取れるかを確認
期間途中での退職の場合は難しい可能性もありますが、有給取得の対象であれば退職までに有給が取れるかは確認しておきましょう。
次の仕事を探す
次の仕事がまだ決まっていない場合は、退職の話が落ち着いてから探しましょう。派遣会社から話がある場合もありますが、自分から条件に当てはまるところがあるかを相談してみてください。
失業手当の受給ができるかを確認
派遣社員でも、条件を満たせば失業手当の受給が可能です。退職日までの2年間に雇用保険に入っていた期間が12か月以上あり、かつ求職活動をしていて勤務先が見つからない場合に対象となります。
すぐに仕事が決まらず求職活動を行う場合は、対象になるかを確認してみてください。
退職まで無断欠勤しない
たとえ会社起因の問題で出勤が難しくなっている場合でも、連絡なしの無断欠勤はしないよう注意してください。連絡をきちんと入れてからでないと、無用なトラブルを生む可能性があるためです。
業務の引き継ぎを行う
期間途中での退職はもちろん、契約更新をせずに退職する場合も業務の引き継ぎは丁寧におこないましょう。また、期間途中で退職する場合、後任が決まるまでに時間がかかることも想定されます。その際は誰が見てもわかるように資料を作成しておき、いつ引き継ぎをすることになっても問題ないよう準備を進めておきましょう。
貸与物の返却を忘れない
退職日が近づいてきたら、会社から貸与されたものを整理し、まとめて返却できるよう準備しておいてください。貸与物を誤って持って帰ってしまうと、別途返却手続きを取る必要が出てきます。派遣先や派遣会社に迷惑をかけないためにも、確認を怠らないようにしましょう。
退職後の手続きを忘れない
退職後に働かない期間がある場合、雇用保険・健康保険・厚生年金の変更手続き、住民税の支払いが必要です。しばらく働かない場合は雇用保険給付(失業手当)の手続きをハローワークで行う、健康保険は任意継続・国民健康保険への加入・家族の扶養に入る、のいずれかを決定し、必要な手続きをおこなってください。
国民年金・国民健康保険への加入は、役所での手続きをすれば完了します。住民税の支払いは年始から5月末までに退職した場合、給与から天引きされるので手続きが必要ありません。しかし、6月1日~年末までに退職された方は、退職月の翌月から自分で住民税を納める必要があります。
必要な対応が状況によって異なるため、それぞれ自分に該当する手続きを忘れないよう注意してください。
まとめ
派遣の仕事を辞めたくなった場合の対応方法や手続きについて、まとめて紹介しました。「契約の期間内は絶対に辞められない」と考えている方も多いかもしれませんが、やむを得ない事由や会社起因の問題があれば、期間途中でも退職は可能です。
さまざまな悩みや不安を抱えている場合、まずは派遣会社に相談をすることから始めてみてはいかがでしょうか。
- ライター:高下 真美
- 新卒で人材派遣、人材紹介企業に入社し、人事・総務・営業・コーディネーターに従事。その後株式会社リクルートジョブズ(現・株式会社リクルート)に転職し、営業として8年勤務後、HR系ライターとしてフリーランスへ転身。現在は派遣・人材紹介・人事系メディアでの執筆、企業の採用ホームページの取材・執筆の他、企業の人事・営業コンサルタントとして活動中。