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自己都合退職で失業保険はもらえる?申請方法について解説

自己都合退職で失業保険はもらえる?申請方法について解説

失業保険は、キャリアアップなどの自己都合による退職をした場合でも受給できます。ただし、倒産や解雇など会社都合で離職した場合とは受給条件が異なりますので注意が必要です。
「転職が決まるまでの間、失業保険はもらえるだろうか」「退職してすぐ受け取れるの?」「失業保険の具体的な手続きが知りたい」といったお悩みはありませんか。

自己都合退職の場合、申請してから実際に最初の手当が振り込まれるまでに数か月はかかります。離職後に収入が途絶えて困ることがないよう、手続きの流れやもらえる金額を把握しておくことが大切です。

本記事では、自己都合退職の場合の受給条件や申請方法を詳しく解説します。受給額の計算方法も紹介していますので、参考にしてください。

会社都合と自己都合では失業保険の受給条件に違いがある

自己都合退職で失業保険はもらえる?申請方法について解説_1

一般的に「失業保険」と呼ばれている給付は、正式には雇用保険の「基本手当」と言います。失業した人が安定した生活を送りつつ、1日も早く就職できるようにと給付されるものです。失業保険を受け取るためにはさまざまな条件があり、離職理由によっても異なるのが特徴です。以下で詳しく解説します。

失業保険の受給条件

失業保険を受給するためには、次の3点を満たすことが必要です。ただし、離職理由によっては被保険者期間(※)の要件が変わります。

※被保険者期間=雇用保険の被保険者だった期間のうち、月11日以上または80時間以上の賃金支払いがあった月のこと

● 失業状態にある
● ハローワークに求職の申し込みをしている
● 離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上ある

「失業状態」とは、就職する能力と意欲があるにもかかわらず、仕事が見つからない状況のことを言います。病気やけが、妊娠出産などですぐに働けない状況の場合は、失業状態に当てはまりません。

【参考】ハローワークインターネットサービス |基本手当について

自己都合の場合の受給条件

職場への不満やキャリアアップを理由に自己都合退職した人は「一般被保険者」という区分になり、前述の受給条件3つを全て満たすことが必要です。自らの意思で離職を選んでいるため、一定の給付制限期間があるなど会社都合での退職と比較し条件が厳しくなります。

会社都合退職との違い

会社都合退職には大きく2種類あり、倒産・解雇などによる離職者を「特定受給資格者」、「雇止め」や「正当な理由による自己都合退職」をした離職者を「特定理由離職者」と呼びます。
会社都合では、自己都合に比べて望まない離職になるのが特徴です。そのため、前述の受給条件3つのうち被保険者期間の条件が緩和され、「離職の日以前1年間に通算して6か月」を満たせば、受給資格が認められます。

自己都合退職の際の給付制限期間とは

自己都合退職で失業保険はもらえる?申請方法について解説_2

失業保険を申請すると、まずは7日間の待期という期間があります。その後、会社都合退職の場合はすぐに受給期間が始まりますが、自己都合で退職した場合は給付制限と呼ばれる期間があります。自己都合退職の給付制限期間について見ていきましょう。

自己都合の場合は2~3か月の給付制限期間がある

自己都合退職の場合に設けられる給付制限期間は、直近の離職状況によって2か月の場合と3か月の場合があります。

2か月となる場合
直近5年間で、自己都合退職が2回までであれば給付制限期間は2か月となります。図で表すと以下のようになります。

【引用】厚生労働省|「給付制限期間」が2か月に短縮されます

3か月となる場合
直近5年間で3回以上の自己都合退職がある場合は、3回目以降は給付制限期間が3か月になります。また、「重責解雇」によって離職した場合の給付制限期間も3か月です。重責解雇とは、懲戒解雇の中でも犯罪行為や重大な過失などが原因となる解雇のことを言います。

【引用】厚生労働省|「給付制限期間」が2か月に短縮されます

給付制限期間がなしとなるケース

自己都合による離職でも、給付制限なしですぐに受給できるケースが2つあります。

1つめは「正当な理由による自己都合退職」の場合です。具体的には次のようなものがあります。

● 体力の不足や心身の障害
● 妊娠・出産・育児(ただし、失業保険の受給期間延長措置を受けていることが必要)
● 親族の看病や介護など、家庭の事情が急変した
● 配偶者や扶養親族との別居生活が困難になった
● 結婚や転勤で通勤が困難になった
● 企業の希望退職者の募集に応じた

2つめは、公共職業訓練を受ける場合です。公共職業訓練は無料で受けることができ、給付制限期間も免除されるため、失業保険を受給しながらスキルアップができます。

自己都合の場合の失業保険はどのくらいもらえる?

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失業保険は離職時の年齢やそれまでもらっていた給与額などにもとづき、計算方法が決められています。具体的な計算方法や例を解説しますので、自分がいくらもらえるのか気になる人は参考にしてみてください。

失業保険の金額について

失業保険の1日あたりの金額を「基本手当日額」といい、離職前の賃金(賞与は除く)をもとに計算されます。基本手当日額には年齢ごとに上限・下限額が決められており、令和6年4月現在は次のようになっています。
 

離職時の年齢

基本手当日額の上限額

基本手当日額の下限額

30歳未満

6,945円

2,196円
※全年齢共通

30歳以上45歳未満

7,715円

45歳以上60歳未満

8,490円

60歳以上65歳未満

7,294円

【参考】ハローワークインターネットサービス | 基本手当について

具体的な計算方法や計算例を見てみましょう。

計算方法
失業保険の給付総額は、基本手当日額×給付日数で決まります。
基本手当日額は、離職日の直前6か月間に支払われた賃金(賞与は除く)を合計して、180で割った金額に、45~80%の給付率を掛けあわせた金額となります。離職前の賃金が低い人ほど、掛け合わせる給付率が高く(80%に近く)なる仕組みです。
具体的な給付率は、こちらを参考にしてください。

【参考】厚生労働省|賃金日額・基本手当日額の変更について

計算例
具体例を挙げて、実際に失業保険の金額を計算してみます。

<例:年齢が35歳、離職前の賃金が月38万円だった場合>
直近6か月に支払われた賃金÷180
=(38万円×6か月)÷180=12,666円
 

離職時の年齢が30~44歳

賃金日額

給付率

基本手当日額

2,746円以上~5,110円未満

80%

2,196円~4,087円

5,110円以上~12,580円以下

80~50%

4,088円~6,290円

12,580円超~15,430円以下

50%

6,290円~7,715円

15,430円(上限額)超

7,715円
(上限額)

【参考】厚生労働省|基本日額・基本手当日額の変更について

上記の表より、12,666円の給付率は50%なので
12,666円×50%=6,333円
基本手当日額は6,333円となります。

もし、この人が4週間(28日)分の失業保険を申請すると
6,333円×28日=177,324円
が支給されることになります。

受給期間について
雇用保険では、受給できる期間のことを「所定給付日数」と言います。自己都合退職の場合、所定給付日数は被保険者であった期間によって、90~150日の間で決められています。

【参考】ハローワークインターネットサービス | 基本手当の所定給付日数

失業保険の受給手続きの申請方法

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失業保険は、申請から振り込みまでに時間がかかり、金額も人によって異なります。ここからは受給手続きや受給額について解説しますので、しっかり確認しておきましょう。

受給手続きの流れ

受給手続きの流れは次の通りです。

1. ハローワークで求職を申し込む
離職した会社から離職票が届いたら、必要書類を持ってハローワークへ行き、求職の申し込みをします。詳しくは後述の「必要書類」をご覧ください。
2. 雇用保険受給者初回説明会に参加する
ハローワークで指定された日時に説明会に参加し、雇用保険の受給に関する説明を受けます。このときに、「雇用保険受給資格者証」「失業認定申告書」などが渡され、初回の失業認定日が決まります。
3. 失業認定を受ける
失業保険の受給中は、原則として4週間に1度、指定された日にハローワークへ行って失業認定を受けます。同時に、期間中の就職活動の実績も報告します。
4. 受給
失業認定の日から数日~1週間程度で、認定を受けた期間分の基本手当が指定口座に振り込まれます。これ以降、次の就職が決まるまで、または受給期間が終わるまで、4週間ごとに「失業認定」と「受給」を繰り返します。

【参考】ハローワークインターネットサービス |雇用保険手続きのご案内

必要書類

最初にハローワークに行くときに必要な書類は、次の5点です。

● 雇用保険被保険者離職票(1・2)
● マイナンバーが分かるもの(マイナンバーカード、通知カード、住民票など)
● 身元確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証など)
● 証明写真2枚(縦3.0cm×横2.4㎝。最近撮影したもの)
● 本人名義の通帳またはキャッシュカード

雇用保険被保険者離職票は、一般的に離職日から数週間~1か月程度で会社から郵送されることがほとんどです。なかなか届かない場合は、会社に問い合わせてみるとよいでしょう。

【参考】ハローワークインターネットサービス |雇用保険の具体的な手続き

失業保険を受給する際の注意点

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次の就職先が決まるまでの生活の保障となる失業保険ですが、受給する際にはいくつか気をつけるべきポイントがあります。仮に知らなかった場合でも、不正行為に該当してしまうと返金等のペナルティが課せられることもありますので、以下の点をおさえておきましょう。

失業保険中のアルバイトには注意が必要

「アルバイトをしている」=「失業状態であるとみなされない」ため、失業保険受給中にアルバイトやパートとして働くことは注意が必要です。ただし、1週間あたりの労働時間が20時間未満の場合、失業認定を受ける際に就労した日と収入額の申告をすることで、基本手当の受給を受けることが可能となります。そのケースでは、就労した日についての基本手当は支給されませんが、その他の日について失業の認定を受けることで受給額が決定されます。

扶養に入る際は失業手当の金額に注意

失業保険を受給している場合でも、一定の条件を満たしていれば扶養に入ることができます。具体的には、1年間の収入が130万円未満(60歳以上の場合は180万円未満)であることが必要です。
これを基本手当日額に換算すると、3,612円未満(60歳以上の場合は5,000円未満)となります。扶養の収入はこれから1年間で予想される収入になりますので、この金額を超える金額で受給を開始した場合には被扶養者になれません。

健康保険や年金の支払に注意

健康保険や年金の保険料は、在職中は給与からの天引きで会社が支払いをおこなってくれているため、自分でやる必要がありませんでしたが、退職後はそれぞれの立場に応じて対応しなければなりません。
一般的に、失業保険を受給している際の健康保険には以下の3つのパターンが考えられます。

● 家族の被扶養者になっている
● 前職の任意継続被保険者制度を利用している
● 国民健康保険に加入している

このうち、任意継続被保険者制度と国民健康保険の場合は、自身で保険料の納付が必要となります。ただし、国民健康保険については、会社都合による離職で雇用保険の「特定受給資格者」または「特定理由離職者」に認定されれば、保険料が減免になる場合があります。市区町村への手続きの際に確認してみましょう。

年金は、厚生年金に加入している配偶者の扶養に入っていて、自身が国民年金の第3号被保険者となっている場合は自分で年金保険料を納付する必要はありません。しかし、自身が第1号被保険者になっている場合は保険料の納付が必要です。

職業訓練の活用により給付制限がなくなる

前述の「給付制限期間がなしとなるケース」にあるように、職業訓練を開始することで、本来は給付制限期間がある人も給付制限を受けずに失業保険の受給ができるようになります。ご自身のキャリアアップにもつながる機会ですので、気になる人はハローワークに相談してみましょう。

再就職手当について

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再就職手当とは、失業保険(基本手当)の給付日数がまだたくさん残っている状態で、安定した職業に就いた場合に受け取れる手当のことです。再就職手当のおかげで、「失業保険がまだ残っているのに、早く就職して損をした気分になる」ということがありません。

【参考】ハローワークインターネットサービス| 就職促進給付

再就職手当をもらえる条件

再就職手当の受給要件は、以下の条件を全て満たす必要があります。

1. 受給手続き後、7日間の待期期間を過ぎてから就職(または事業を開始)したこと
2. 就職日の前日まで失業認定を受け、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること
3. 前の事業主や、その事業主と資本や人事で密接な関りがある事業主への就職ではないこと
4. 給付制限が始まって1か月以内の就職の場合は、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職であること
5. 1年を超える勤務が確実であること
6. 雇用保険の被保険者になっていること
7. 過去3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていないこと
8. 求職の申し込み前から採用が内定していた就職ではないこと
 

支給額の計算方法

再就職手当の支給額の計算方法は、失業保険(基本手当)の支給残日数によって大きく2つに分かれます。

● 支給残日数が所定給付日数の3分の2以上ある場合
基本手当日額 × 支給残日数 × 70%
● 支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある場合
基本手当日額 × 支給残日数 × 60%

再就職が早ければ早いほど、支給残日数が多く、給付率も高くなるため、受け取れる金額が多くなる仕組みです。

【参考】厚生労働省|再就職手当のご案内
 

まとめ

失業保険は、再就職先が決まるまでの生活を支える保障となるものです。しかし、離職の理由によって受給開始の時期や給付日数が異なるなど、個々人の状況によって支給内容が変わってきます。離職理由や受給できる金額などを確認し、いざ退職した際に困らないような環境を整えておくとよいでしょう。
 


<執筆監修者プロフィール>
西本 結喜(監修兼ライター)

結喜社会保険労務士事務所 代表。金融、製造、小売業界を経験し、業界ごとの慣習や社風の違いを目の当たりにしてきたことから、クライアントごとのニーズにあわせ、きめ細やかな対応を心がけている。
 

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