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ワーク・ライフ・バランスとは? 意味や充実させるメリットと企業ができる取り組みを紹介

ワーク・ライフ・バランスとは? 意味や充実させるメリットと企業ができる取り組みを紹介

仕事と生活を調和させる「ワーク・ライフ・バランス」は、働き方や価値観の多様化によって、ますます重要視されるようになってきました。働き方改革を推進するためにも、多くの企業がさまざまな取り組みにチャレンジしています。
本記事では、ワーク・ライフ・バランスの意味やメリット、企業ができる具体的な取り組み、注意点などを改めて紹介します。今後の新しい制度や施策の参考にしてみてください。

ワーク・ライフ・バランスとは?

ワーク・ライフ・バランスとは? 意味や充実させるメリットと企業ができる取り組みを紹介_1

ワーク・ライフ・バランスという概念は、広く知られるようになりました。ですが、その語句のイメージから「仕事よりプライベートを優先すること」「女性のための取り組み」など、誤解をされていることも少なくないようです。まずはワーク・ライフ・バランスの正しい意味を確認しておきましょう。

ワーク・ライフ・バランスの正しい意味

ワーク・ライフ・バランスとは「仕事と生活を調和させること」。仕事を少なくしてプライベートを充実させることでも、女性のためだけの取り組みでもありません。“性別や年齢を問わず、仕事と生活を両立させ、相乗効果を生み出す”という意味が込められています。

仕事は、暮らしを支え、生きがいや喜びをもたらすもの。
生活は、家事や育児、介護なども含め、生きていくうえで欠かせないもの。
どちらも充実してこそ、生きがいや喜びを感じられるわけですが、現実的には、次のような問題を抱えている人も少なくありません。

・仕事だけに追われてしまい、心身のストレスから健康を害してしまう
・仕事と家事、育児や介護などの両立が難しい
・家庭の事情で安定した職に就けず、経済的に自立することができない


そのため提唱されたのが、内閣府の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」です。生活には、家事、育児、介護、地域活動、学習、趣味、休養など、さまざまな意味が含まれています。

ワーク・ライフ・バランスとは、以下のようなイメージで、仕事と生活のどちらも充実させ、お互いに好循環を生み出すことを意味しています。

≪参考サイト≫
内閣府|仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/20barrier_html/20html/charter.html


 

ワーク・ライフ・インテグレーションとは?

近年では、「ワーク・ライフ・インテグレーション」という言葉も注目を集めています。これは「仕事と生活を統合し、どちらも高め合う」という考え方です。仕事と生活の双方が相乗する存在となり、公私ともに高め合うことを目的としています。

ワーク・ライフ・バランスは、「仕事と生活の調和」という本来の意味ではなく「生活を重視する」という誤解した認識で広まっている現実があります。そこでワーク・ライフ・バランスに代わる言葉として、ワーク・ライフ・インテグレーションが注目されているのです。

 

ワーク・イン・ライフとは?

また、最近は「ワーク・イン・ライフ」という言葉もよく聞くようになりました。ワーク(仕事)とライフ(人生)という2つの要素を別々に考えるのではなく、「ライフには、さまざまな要素(家族、友人、恋人、趣味、学び、健康、地域など)があり、ワークもその中の1つである」という考え方です。

呼称こそ異なりますが、いずれにしても「仕事と私生活が良い影響を与え合う好循環をつくりましょう」という基本的な考え方に変わりはありません。企業には、従業員が仕事と生活のどちらか一方に偏ることがないように、暮らし全体に配慮した取り組みをおこなっていくことが求められています。

 

ワーク・ライフ・バランスの目標

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ワーク・ライフ・バランスを実現することによって、私たちの暮らしはどのように変わるのでしょうか。前述した、内閣府の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」では、ワーク・ライフ・バランスが実現した社会とは、以下の3つを兼ね備えた社会としています。これが企業の目指すべきものと考えてよいでしょう。

1.就労による経済的自立ができること
経済的自立を必要とする者、とりわけ若者がいきいきと働くことができ、かつ、経済的に自立可能な働き方ができ、結婚や子育てに関する希望の実現などに向けて、暮らしの経済的基盤が確保できる。

2.健康で豊かな生活のための時間が確保できる
社会で働く人々の健康が保持され、家族・友人などとの充実した時間、自己啓発や地域活動への参加のための時間などを持てる豊かな生活ができる。

3.多様な働き方・生き方が選択できる
社会性別や年齢などにかかわらず、誰もが自らの意欲と能力を持ってさまざまな働き方や生き方に挑戦できる機会が提供されており、子育てや親の介護が必要な時期など、個人の置かれた状況に応じて多様で柔軟な働き方が選択でき、しかも公正な処遇が確保されている。

ワーク・ライフ・バランスが企業に注目される理由

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ワーク・ライフ・バランスが注目されている理由は、政府の意向だけではありません。企業にとっても、次のような目的や背景があるといわれています。

 

多様な働き方・多様な労働者に柔軟に対応するため

コロナ禍によってテレワークや在宅勤務が広まり、働き手のニーズは多様化しています。育児や介護と両立しながら働きたい、自分の好きな時間・場所で働きたい、複数の仕事をしたいなど、多様な働き方への対応は企業にとって急務です。また、少子高齢化・人口減少が進み、日本は慢性的な人手不足となっています。女性はもちろん、高齢者や外国人労働者を活用するためにも柔軟な対応が必要でしょう。

仕事に追われて健康的な生活が送れなくなるのを防ぐため

長時間労働による従業員のストレス、うつ、モチベーションダウンなども企業にとって深刻な問題です。過重労働は、心身の健康に重大な影響を与え、生産性を低下させます。従業員のメンタル不調や生産性の低下は、自社の業績にも大きく影響してきます。従業員が仕事に追われ、健康的な生活が送れなくなるのを防ぐためには、ワーク・ライフ・バランスの充実が不可欠と考える企業が増えているのです。

従業員の定着率を上げて離職率を下げるため

人手不足や過重労働は、心身にストレスを与えたり、パワハラやセクハラ、いじめなどの原因になったりする場合があります。人間関係の悪化は従業員の離職につながります。従業員の定着率を上げて、離職率を下げるために必要なのは職場環境の改善です。職場の雰囲気や人間関係は、新卒採用においても特に重視されている要素の1つです。ワーク・ライフ・バランスの充実は、採用力の向上にもつながるといわれています。

ワーク・ライフ・バランスを充実させるメリット

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ワーク・ライフ・バランスを充実させることは、従業員の働きやすさだけでなく、企業にとっても多くのメリットがあるといわれています。代表的なメリットを見てみましょう。

 

優秀な人材の獲得、人手不足の解消

前述したように、日本は少子高齢化・人口減少が急速に進んでいます。人手不足の解消はもちろん、優秀な人材の獲得はどの企業にとっても非常に重要な課題でしょう。

リクルートマネジメントソリューションズの「新入社員意識調査2022」によると、新入社員の就職先での勤続意向は「現在の会社で勤め続けることにこだわらない・どちらかと言えばこだわらない」(57.5%)が「定年まで現在の会社で勤めたい・どちらかと言えば勤めたい」(32.0%)を大きく上回っていました。

若年層にとって、より良い職場への転職は当たり前になっており、優秀な人材ほどその傾向が強いといわれています。また、プライベート(趣味や友人・恋人・家族と費やす時間)を大事にする傾向も広く知られています。ワーク・ライフ・バランスの充実は、優秀人材の獲得や人手不足の解消が期待できます。

 

従業員の離職や意欲低下の防止

厚生労働省の「平成30年若年者雇用実態調査の概況」によると、従業員の離職理由として「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が約3割を占めていました。

また、内閣府の「両立支援・仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)推進が企業等に与える影響に関する報告書概要」では、既婚・独身を問わず、男女ともに「ワーク・ライフ・バランスが図れていると感じている人のほうが仕事への意欲が高い」という結果が出ています。

ワーク・ライフ・バランスの充実による就業環境の改善は、従業員の離職を防ぎ、仕事への意欲を高めるモチベーションアップの効果が大きいといわれています。

業務効率改善による時間外労働の削減

ワーク・ライフ・バランスの実現には、業務効率の改善が欠かせません。業務効率の改善は、生産性の向上はもちろん、時間外労働の削減にもつながります。ワーク・ライフ・バランスの取り組みによる、時間外労働の削減は、若手の獲得・育成・確保、さらには人件費コストの削減も期待できるでしょう。

従業員を大事にするという企業イメージの向上

企業にとって「ブラック企業であるかどうか」は、新卒採用に大きく影響すると考えたほうがいいでしょう。厚生労働省では、労働者の安全や健康を確保するための対策に積極的に取り組み、高い安全衛生水準を維持・改善している企業を「ホワイト企業」として公的な証明をしています。

この認定を受けると3年間、その認証マークが使用可能となり、求人広告などにつけることができます。従業員を大事にする取り組みをおこない、ホワイト企業であることをPRするのは、企業イメージの向上に高い効果があると考えられます。そのためにも、ワーク・ライフ・バランスの充実は欠かせません。

仕事以外の体験から得られるスキルや人脈への期待

OJTやメンター制度、研修など、社内での教育・人材育成も大切ですが、社外や仕事以外の経験から学べることも多くあります。ライフ・ワーク・バランスを充実させ、労働時間や休日などの労働条件を見直すことで、従業員はスキルアップのためのセミナーや勉強会、異業種交流会などに参加しやすくなります。

近年は、副業や社会人のインターシップによってスキルアップを志向するビジネスパーソンも増えています。仕事以外の体験や学習から得られるスキル・知識・人脈によって、本人の成長はもちろん、自社の業務へのフィードバックも期待できます。ライフ・ワーク・バランスは「明日への投資」となるでしょう。

《関連サイト》
OJTとは? 意味や目的、実施するメリットと成功させるポイントを紹介
https://www.staffservice.co.jp/client/contents/management/column028.html

企業ができる具体的な取り組み

では、ワーク・ライフ・バランスを実現するためには、具体的にはどのような取り組みをおこなったらいいのでしょうか。内閣府の「ワーク・ライフ・バランス施策の類型」を参考に代表的な施策を紹介します。

                    ワーク・ライフ・バランス施策の例

休業制度
育児休業
介護休業
求職者の復帰支援

休暇制度
看護休暇
配偶者出産休暇
年次有給休暇の積立制度
有給を利用した連続休暇


働く時間の見直し
勤務時間のフレキシビリティ(フレックスタイム制度/就業時間の繰り上げ・繰り上げなど)
時短勤務(勤務日数を減らす・勤務時間を減らす、週3勤務・週4勤務など)
変形労働時間(一定の期間内での労働時間を柔軟に調整する)
時間勤務の見直し(ノー残業デー、残業の事前申告制など)

働く場所の見直し
勤務場所のフレキシビリティ(在宅勤務制度/サテライトオフィス制度/テレワーク・リモートワーク/ワーケーションなど)
転勤の限定

その他
経済的支援(業務に関わる資格の受講料・受験料を会社が全額または一部負担する、出産や子どもの成長に合わせた祝い金の支給など)
事業所内保育施設
再雇用制度
育児・介護・家事代行・食事手配の情報提供・相談窓口の設置

※内閣府「ワーク・ライフ・バランス施策の類型」を元に加筆
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/research/cyousa17/sensin/hokoku21.html


休業・休暇制度、働く時間・場所の見直し、資格取得などのスキルアップのサポート、出産や子どもの成長に合わせた祝い金の支給といった経済的支援、相談窓口の設置や情報提供など、ワーク・ライフ・バランス施策にはさまざまな方法があります。自社に適した取り組みを幅広い観点から検討してみましょう。

ワーク・ライフ・バランスの注意点

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ワーク・ライフ・バランスの取り組みには、いくつかの注意点があります。失敗するとマイナスの影響が出てしまうこともあります。新しい制度・施策を実施する際には、以下のポイントに注意しましょう。

ワーク・ライフ・バランスの誤解を解く

前述したように、ワーク・ライフ・バランスは「仕事を減らして私生活を充実させる施策」でも「女性のためだけの取り組み」でもありません。ワーク・ライフ・バランス施策を導入する際は、まずはこうした誤解を解くことが必要です。特に、経営陣が誤った認識をしている場合は制度改革の障壁となります。

重要なのは、経営陣をはじめ全従業員に対して、ワーク・ライフ・バランスとは「仕事と私生活の調和」であることを伝え、誤解した認識のアップデートを促すことです。説明会やセミナーを実施して、生産性向上や人手不足の解消、採用力アップなど、企業にとってもメリットがあることを明示するといいでしょう。

新しい制度の導入は慎重におこなう

ワーク・ライフ・バランスの取り組みは、必ずしもすべての従業員から歓迎されるとは限りません。働く時間を見直す制度を導入することによって残業代が減り、不満を持つ人もいるかもしれません。育児休業や出産祝いに対して、未婚者が不公平に感じることもあるかもしれません。

すべての従業員に満足してもらうことは不可能かもしれませんが、多くの人々のモチベーションダウンや会社への不信感につながるような施策は避けるべきでしょう。新しい制度・施策は、あらゆる角度から抜けもれのない視点で検証し、プラス・マイナスの効果を慎重に検討してから始めるようにしましょう。

休業制度や休暇制度を利用しやすい雰囲気や環境を整える

新しい制度・施策を始めても、形骸化してしまうことは多くあります。休業制度や休暇制度を導入しても、部署の雰囲気や上司の価値観によっては、利用しづらくなってしまったりするかもしれません。

ワーク・ライフ・バランスを浸透させていくためには、新しい制度・施策の説明をするだけでは不十分かもしれません。少しずつ時間をかけて認識を共有し、会社全体で意識改革を進める姿勢が必要となるでしょう。

経営陣や管理職が自ら率先し積極的にワーク・ライフ・バランスの制度を活用する、社内報に制度利用者の声を繰り返し掲載し広報するなど、新しい制度を利用しやすい雰囲気や環境を整えることが大事です。

制度の調整や見直しを定期的におこなう

ワーク・ライフ・バランスの最も重要なポイントは、仕事と私生活のバランスが取れていること。仕事を疎かにしてプライベートばかり重視したり、過重労働が改善されなかったり、育児休業や介護休業などの制度が利用しにくい雰囲気になっていたりする場合は、制度や運用の仕方に問題があると考えられます。

ホワイト企業として認定された企業も、最初からうまくいったわけではありません。社長にワーク・ライフ・バランスの重要性を学んでもらったり、勉強会を繰り返したり、社内サーベイやアンケート、従業員インタビューなどをおこない率直な感想を集めるなどして、改善を繰り返してきたといいます。

ワーク・ライフ・バランスは、仕事と生活、どちらか一方に傾かないように、定期的に制度の調整や見直しをすることが必要です。さまざまな方法で現状の課題を解決しながら社内改革を進めていきましょう。

まとめ

ワーク・ライフ・バランスは、働く人たちの生活や健康を守るだけでなく、従業員のスキルアップや生産性の向上、優秀な人材の獲得、離職防止など、企業にとっても多くのメリットがあるといわれています。

従業員側でも、自分のライフスタイルに合わせて派遣という働き方を選ぶ人も増えています。働き方や価値観の多様化にともない、企業は今後ますますワーク・ライフ・バランスの実現が求められていくでしょう。中長期的なリターン視点を持って、自社の課題を解決する施策に取り組んでいくことをおすすめします。


ライタープロフィール
鈴木にこ/ライター
求人メディアの編集者を経て、フリーランスとして活動中。派遣・新卒・転職メディアの編集協力、ビジネス・ライフスタイル関連の書籍や記事のライティングをおこなう。