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採用マーケティングとは?企業が注目する理由やメリット、手法の解説とお役立ちツールを紹介

採用マーケティングとは?企業が注目する理由やメリット、手法の解説とお役立ちツールを紹介
採用市場や企業環境の変化により、「採用活動をおこなっても人材が上手く採れない」と悩む企業や採用担当者は多いはず。単に母集団を形成するだけでは、会社が求める人材を採用しにくくなっています。また、たとえ選考に進んでも内定辞退されることもあるでしょう。

会社が求める優秀な人材を集め、確保して定着させるために、マーケティング手法を活用した採用マーケティングが注目されています。この記事では採用マーケティングの基本やメリット、実施手順、人事に求められる採用マーケティングスキルまで広く解説します。

採用マーケティングとは

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昨今は、人材獲得の競争が激しくなっています。そのような状況下において採用マーケティングは、「マーケティングの概念を取り入れることで効果的な採用をおこなえる」として、注目されている採用戦略です。

採用マーケティングでは入社前から入社後までの長い期間を見据え、求める人材に自社を知ってもらうことから開始します。そして、選考から入社、また配属後に人材が定着するまでのプロセスにおいて、求職者に的確な行動を促していきます。

求職者が入社する会社を決めるプロセスは、顧客が商品を購入する際のプロセスと似ています。たとえば、顧客がCMで商品を目にしたとき、まずは興味を持ち、さらに他の商品と比較検討して購入を決定するでしょう。プロセスごとに顧客へ適格な行動を促して商品を購入してもらい、購入後は継続して購入し、自社のファンになってもらうための戦略がマーケティングです。

採用マーケティングも同様に、求職者に対してプロセスごとに適格な行動を促します。内定を出したからといって、求職者が内定を承諾してくれるとは限りません。他社と比較検討され、求職者に選ばれなければ内定を辞退されてしまうでしょう。このように人材獲得が難しくなっているからこそ、採用マーケティングの重要性が高まっているのです。

採用マーケティングが重視される背景

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採用マーケティングが重視される背景について、3つの点で確認していきましょう。

人手不足による採用市場の変化

まずは、人手不足による採用市場の変化です。少子高齢化により人材が減少していることに合わせて、企業を取り巻く環境変化に伴い、企業が求める人材が高度化してきています。

環境変化の例として、AIやIT技術の進展が挙げられるでしょう。AIやIT技術を導入して競合他社が商品開発に成功し、自社の市場シェアが競合に奪われるリスクを想定できます。自社が他社に商品開発において勝ち抜くためには、AIやIT技術を扱える優秀な人材を確保する必要があるのです。

しかし、優秀な人材は他社も欲しいと考えるため、人材獲得の競争が激化します。そこで採用マーケティングによって優秀な人材を確保し、定着させる必要が出てきています。

デジタルマーケティングの進歩

デジタルマーケティングの進歩も、採用マーケティングが重視される背景のひとつです。PCやスマートフォンの浸透により、顧客の情報の受け取りは検索やSNS、口コミサイトなど多岐にわたるようになりました。顧客は常にインターネットからの情報を得られ、そこ向けたマーケティング手法がデジタルマーケティングです。

デジタルマーケティングの手法を採用マーケティングに活かすことで、インターネットから情報を得て、時には情報の発信者となる求職者に対して採用活動のプロセスにおいて的確な行動促進をおこなう必要が出てきているのです。

採用手法の増加

もうひとつは、売り手市場に対応した採用手法の需要が増加しているということです。求人広告や人材紹介による採用手法にとどまらず、SNSやオウンドメディアを活用した採用活動、リファラル採用など新しい採用手法が出てきています。求職者に選んでもらうためにも、新たな採用手法を活用した採用マーケティングの重要性が増しています。

採用マーケティングにおけるファネルとチャネル

ファネル

採用マーケティングにおいては、入社前から入社後までのプロセスをファネルとして捉えます。具体的には「認知」「興味・関心」「応募・選考(比較・検討)」「内定承諾」です。

ファネルを図示すると以下のようになり、たとえば入社前なら認知から内定にプロセスが進むにつれて面積が小さくなりますが、これは人数が徐々に減っていくことを意味します。つまり、自社を知っている人はもっとも多いのですが、内定を承諾する人は少なくなるということです。採用マーケティングではこれらプロセスにおいて、求める人材に対して行動を変容するように促していきます。

チャネル

上記の図の採用マーケティングにおけるチャネルは、各プロセスにおいて企業が求職者に対するアプローチ手法のことです。チャネルには求人媒体や採用イベント、オウンドメディア、SNS、人材紹介、人材派遣などがあります。採用マーケティングではファネルとチャネルを上手く組み合わせ、求める人材に的確な行動変容を促します。

これまでの採用活動との違い

これまでの採用活動は、企業が求職者を選ぶという立場が強いものでした。しかし、人手不足や企業を取り巻く環境変化に伴い、優秀な人材の確保が難しくなってきています。そこで採用マーケティングを活用することにより、企業が求職者を選ぶだけでなく、むしろ優秀な人材に企業を選んでもらうという視点が重要になってきました。

また、従来の採用活動は入社までを指していましたが、採用マーケティングでは入社後の定着を見据えて、優秀な人材の配属・活躍・愛着といったプロセス(ファネル)において社員の行動変容を促します。

採用マーケティングのメリット

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採用マーケティングにはどのようなメリットがあるか、4つの点で確認しておきましょう。

優秀な人材からの応募が増える

入社前のファネルにおいて、採用マーケティングは求める人材の確保を目的とします。求める人材とは、自社が捉える優秀な人材のこと。認知・関心・応募といったファネルで適切なチャネルを用意することにより、優秀な人材からの応募を増やすことができるでしょう。

企業のニーズとマッチした人材と出会いやすい

採用マーケティングを活用すると、企業は自社が求める人材と出会いやすくなるでしょう。応募を増やせるだけでなく、選考のプロセスにおいても辞退者を防ぎ、内定を出した後にも他社でなく自社を選んでもらいやすくなる可能性があります。

求める人材が他社と自社を比較検討しているとき、ファネルに適したチャネルを用意しておけば、求める人材にとって自社は競争優位となります。行動変容が続き、自社に入社したいという気持ちを持たせることができれば、企業のニーズとマッチした人材を確保できるようになるでしょう。

採用コストを減らせる

求める人材を見極め、そこに向けたチャネルを用意すれば、採用活動が効率化されます。その結果、採用マーケティングは採用コストの削減につながるでしょう。

たとえば、自社を認知させたいために高額な求人広告費を出しているのに、求める人材の採用に至っていないとしましょう。このとき、採用マーケティングによってチャネルとファネルを組み合わせ、広告費からオウンドメディアによる採用活動に切り替えれば、広告費の分だけ採用コストを減らすことが可能となるでしょう。

継続的な発信によって潜在ターゲットへの認知度が上がる

SNSや動画、オウンドメディアによって自社が継続的に発信し続ければ、潜在ターゲットへの認知を高めることも可能です。潜在ターゲットが自社を認知するようになり、興味・関心のファネルで適格なチャネルを用意すれば、潜在ターゲットが応募するように行動変容させることもできるでしょう。

採用マーケティング実施の手順

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次に、採用マーケティングの実施の手順を見ていきます。

①自社の強みと弱みの分析

自社の事業戦略や業界内の評価、人事戦略といった大きな領域から職場環境や福利厚生に至るまで、自社の強み・弱みを分析します。

たとえば、自社の強みには研究開発費の高さや新しい事業分野への進出があり、弱みにはベテラン社員の意見が強くて若手が主張しにくい雰囲気が挙げられるとしましょう。強み・弱みを分析することで、自社が求める人材に対してどのようにアプローチすべきかが明らかになります。

②求める人材像の選定

次に、求める人材像を選定します。ここでは、自社に入社してもらいたい人材をいかに設定するかが重要です。求める人材に対して、チャネルとファネルを適格に組み合わせることが採用マーケティングのポイント。つまり、人材像を設定せずに施策を打っても効果が出ず、コストが余計にかかってしまいかねません。求める人材像を適格に設定することで、効率的な採用活動が可能になるでしょう。

③採用ターゲットの持つニーズを調査

選定した求める人材が、どんなニーズを持っているか調査します。たとえば、求める人材が「若手社員の活躍度合い」「職場の雰囲気」などに関心を持っているとしたら、自社内の情報を調査し整理しましょう。情報の整理は、チャネルの選定や面接官のアプローチなどで役立つでしょう。

④自社でできる効果的なアプローチを検討

ファネルごとに適切なチャネルの組み合わせを考えます。組み合わせは、求める人材が行動変容できるような効果的なアプローチを検討しましょう。求める人材といっても、まったく転職を考えていない人や既に求人を見始めている人、積極的に転職活動している人などパターンはさまざまです。どのようなパターンの人材に向けた施策なのかを想定し、効果的なアプローチを検討する必要があります。

⑤アプローチを継続的に改善

アプローチを決定したら、いよいよ採用施策を実施します。ただし、その前にアプローチの継続的な改善方法を用意する必要があります。採用マーケティングでは、チャネルのさまざまな施策ごとにデータを可視化しておき、分析して継続的に改善していくことが求められます。

上記のすべての手順を押さえたら、採用施策を実施します。採用施策を実施後もリアルタイムで改善していく必要があります。

採用マーケティングに役立つツール

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TwitterやFacebookなどのSNSは、採用マーケティングに役立つツールです。企業からの発信もできますし、求める人材とのマッチングや分析に使えます。しかしSNSの他にも、自社サイトを作成した際に使えるツールがありますのでご紹介しましょう。

Google アナリティクスは、サイトに訪れた人の属性などアクセス状況を分析するのに活用できます。また、同じくGoogleのサーチコンソールは、検索キーワードの状況やサイトのSEOの課題などが分かるツールです。そしてGoogleのキーワードプランナーは、人がどういうキーワードで検索しているかを把握できるツールとなります。検索意図に合ったサイトを作り上げ、サイトを上位表示させることにも役立つでしょう。これらGoogleが運営する3つのツールは、活用次第でサイトの改善に貢献します。

また、ヒートマップはサイトを訪れた人の行動を分析できるツールです。ヒートマップがあることで、サイト内のどのページがよく見られているか、あるいは見られていないかを分析できます。

採用マーケティングで求められる人事のスキル

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採用マーケティングを活用する上で、採用担当者に求められるスキルを紹介します。

求職者に自社を認知させて応募を促すには、求人票のライティング力が必要です。求人票を用いて、求職者が魅力的に感じられるようにアピールしなくてはいけません。同様に、求人メディアやオウンドメディアに記事を掲載する際にもライティング力が求められます。

Googleアナリティクスやサーチコンソールなどを使って、応募状況や自社サイトの訪問数の分析をおこなえるスキルも必要です。採用マーケティングは、施策を実施して終わりではありません。継続的な改善が重要なため、改善に必要な分析を採用担当者がおこなえることが求められます。

さらに、求職者の反応を基にした採用活動内容全体を改善するスキルも重要です。サイトの分析に基づく改善に限らず、認知、興味・関心、応募・選考、内定承諾といったファネルにおいてチャネルとの組み合わせは適切か、効果的なアプローチとなっているかを幅広く検証します。検証後に改善が必要な組み合わせやアプローチがあれば、重要度や緊急度に応じて着手・改善していくことになります。

まとめ


近年、採用マーケティングの重要性が増してきています。マーケティング手法を採用活動にも取り入れ、優秀な人材に対して入社前から入社後まで適格な施策を講じ、実施・改善して採用活動を成功に導くことが採用マーケティングには必要です。人手不足による労働人口の減少が問題視される昨今、企業の採用活動の内容も時代に合わせて変化しています。採用マーケティングを活用して、優秀な人材を効率的に探しましょう。

採用マーケティングに限らず、自社で採用活動をすべておこなうことに課題感をお持ちの採用担当者もいるでしょう。「欲しい人材がなかなか採れない」「採用活動の改善ってどうやるの?」「今すぐ人材が欲しいのですが」といった採用活動全般にお悩みの企業様に対し、スタッフサービスは全力でサポートいたします!


《ライタープロフィール》
山崎英理夫(人事コンサルタント)
人事コンサルタントとして教育研修のプログラム開発、人事制度診断等を提供。また、企業人事として新卒・中途採用に従事し、人事制度構築や教育研修の企画・運用など幅広く活動。この経験を活かし、人材関連の執筆にも数多く取り組む。