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アウトソーシングとは?導入手順や人材派遣との違いについて解説

アウトソーシングとは?導入手順や人材派遣との違いについて解説

アウトソーシングとは、自社内でおこなっていた業務を部分的に外部に委託することです。専門性の高い業者等に委託することにより効率化が図れるため、人材不足の昨今注目されるようになりました。
本記事では、アウトソーシングの仕組みや導入を検討する際の基本的な知識、導入手順等について説明します。また、企業が比較材料として検討することの多い人材派遣についても触れ、両者の違いを解説しています。
アウトソーシングの導入でお悩みの方は参考にしてみてください。

アウトソーシングとは

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本章では、アウトソーシングの概要やその種類、注目を集めるようになった背景について解説します。

概要

アウトソーシングとは、企業が自社内でおこなっていた業務の一部を外部の専門業者や第三者に委託することを指します。主な目的は、コスト削減、業務の効率化、そして自社のコア業務に集中するためのリソース確保です。近年では特に、IT関連や人事・経理業務といった専門性の高い分野での導入が進んでいます。

アウトソーシングが注目を集めるようになった背景

アウトソーシングが着目されるようになったのには、いくつかの時代的背景があります。

人手不足  
少子高齢化が進む日本では、生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)が減少し続けています。厚生労働省発表の令和5年版厚生労働白書によると、1995年をピークとして日本の生産年齢人口は減少に転じており、2050年には5,540万人になることが見込まれています。2020年の7,509万人と比較すると26.2%も下がるという試算です。
このような状況下で、企業は限られた人材リソースを効率的に活用しなければならず、非コア業務を外部に委託するアウトソーシングが有効な手段として選ばれています。アウトソーシングの有効活用によって、企業はコア業務に人材を集中させることができ、生産性の維持・向上が可能となるのです。

DXやデジタル化による業務効率改善
デジタルトランスフォーメーション(DX)や業務のデジタル化が進む中、企業は迅速かつ効率的に業務を遂行することが求められています。DXやデジタル化を推進していくためには、高度な技術や専門知識が必須です。しかし、これらすべてを自社で賄うことは難しいのが実情です。この問題の解決策として、IT関連業務やデータ分析などを外部に委託する企業も少なくありません。

多角化経営の普及
市場環境の変化のスピードは、以前にも増して速くなっています。この市場の動きに対応し、企業が新たなビジネスチャンスを追求するために広がりを見せたのが経営の多角化です。

しかし、多角化により新たな事業領域に進出する一方で、企業の直面した問題がリソース面での限界でした。全ての業務を自社でおこなうことが難しくなったことにより、非コア業務や特定分野の業務を外部に委託することの重要性やメリットが注目されるようになったのです。

【参考】
厚生労働省|令和5年版 厚生労働白書

アウトソーシングの種類

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一般的にアウトソーシングは以下の4種類に大別されています。
●    BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)
●    ITO(ITEMアウトソーシング)
●    KPO(ナレッジプロセスアウトソーシング)
●    SPO(セールスプロセスアウトソーシング)

BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 
BPOは、企業が日常的におこなうバックオフィス業務を外部に委託する形態です。例として、コールセンター業務、経理処理、人事管理などが挙げられます。BPOの目的は、これらの業務を外部の専門企業に任せることにより、社内リソースをコア業務に集中させることにあります。また、業務効率化やコスト削減もBPOの大きなメリットです。

ITO(ITアウトソーシング)
ITOは、IT関連の業務を外部に委託する形態です。一口にIT関連業務と言っても、システム開発やインフラの設計といったものから、サーバー管理やヘルプデスクの運用といった保守業務まで多岐に渡ります。特に専門的な知識が求められるIT分野では、社内でのリソース不足を補うためにITOが非常に有効です。

KPO(ナレッジプロセスアウトソーシング)
KPOは、データ分析や市場調査など、専門的な知識や高度な分析が必要な業務を外部に委託する形態です。KPOは、単なる業務委託にとどまりません。企業の意思決定や戦略策定を支援する役割も担っているため、企業は外部の知見やノウハウを活用し、より高度な意思決定をおこなうことが可能となります。

SPO(セールス・プロセス・アウトソーシング)
SPOは、営業プロセスの一部を外部に委託するものです。ここで言う営業プロセスには、新規顧客開拓やマーケティング活動も含まれます。企業はSPOを活用することで、営業活動の効率化のみならず、より効果的なマーケティング戦略を展開できるようになります。

アウトソーシングの導入手順・ポイント

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アウトソーシングを成功させるためには、企業の戦略的な観点から計画的に進めることが重要です。以下の導入手順とポイントをぜひ参考にしてください。

①長期ビジョンの策定・戦略の確立

まず、企業は長期的なビジョンを明確にし、それに基づくアウトソーシング戦略を確立する必要があります。長期的な視点でアウトソーシングを捉えることにより、企業の競争力を維持し、成長を促進する戦略に繋がります。

②現状の業務に対する課題把握

現状の業務プロセスを詳細に分析し、効率化の余地や問題の原因を特定します。
業務のボトルネックや非効率的なプロセスを洗い出し、アウトソーシングが最適解かを見極めることが重要です。これにより、アウトソーシングの導入がもたらす具体的な効果を事前に予測することができます。

③アウトソーシング可能業務の整理

企業は業務を「コア業務」と「ノンコア業務」に分類し、それぞれを内製化(インソース)するか、外部に委託(アウトソース)するかを判断します。ここでは、具体的な分け方について解説します。

専門性で分ける
業務が特定の専門知識やスキルを必要とする場合、それを専門的な外部業者に委託することが一般的です。例えば、ITシステムの開発や法務関連の業務などが該当します。専門性の高さから自社内で賄うことが難しく、かつ、時間を取られそうな業務を選定します。

コア業務とそれ以外の業務で分ける
コア業務は企業の競争力を左右する重要な業務であり、通常は内製化します。一方、ノンコア業務は外部に委託することで、コスト削減や効率化が見込まれます。例えば、清掃業務や人事の給与計算などがノンコア業務に該当します。

経営や戦略にかかわる業務とそれ以外で分ける
経営戦略に直接関与する業務は、企業の方針やビジョンに深く結びついているため、一般的にはアウトソーシングに適しません。例えば、新製品の開発プロジェクトや、企業の長期戦略を策定する経営企画業務などがこれに該当します。
一方で、それ以外の業務、具体的には、日常的なバックオフィス業務や顧客サポートセンターの運営等は、専門的なアウトソーサー(委託先企業)に外注することで、リソースを最適化し、本来の経営資源をより重要な業務に集中させることができます。

④アウトソーシング方法のリストアップ・選択

企業がアウトソーシングを検討する際には、どの業務をどのような形で外部に委託するかをリストアップし、最適な方法を選択することが重要です。

ここで述べるリストアップや選択には、業務の性質に応じた専門業者、クラウドソーシング(インターネット上で不特定多数に業務を発注する業務形態)、もしくはパートナー企業との提携の検討が含まれます。また、委託先の選定にあたってはコスト面のみならず、品質、信頼性等を総合的に考慮することがポイントです。委託先企業のリスク管理の方針もあわせて確認しておきましょう。

⑤アウトソーシング導入による業務プロセスの改善

導入によって得られる効率化やコスト削減の効果を最大化するためには、継続的な業務プロセスの見直しと最適化が鍵となります。アウトソーシング導入後の業務プロセスの見直しは必須です。定期的なパフォーマンス評価や、委託先とのコミュニケーションの強化を通じて、業務品質の維持と向上を図っていきます。

アウトソーシングを導入する企業のメリット

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アウトソーシングを導入するメリットは以下の3つです。
● 従業員が付加価値の高いコア業務に集中できる
● 外部の専門性やナレッジを活用可能
● 人件費/固定費等のコスト削減

従業員が付加価値の高いコア業務に集中できる

アウトソーシングにより、従業員が新規開発等のコア業務に集中できるようになります。従業員のリソースを重要な業務にあてられるため、企業にとって競争力や生産性の向上が期待できます。

外部の専門性やナレッジを活用可能

自社にない専門知識や技術を持つアウトソーサーの有効活用は、企業のサービスの幅を広げるものです。例えば、ITシステムの開発や法務業務など専門分野でのノウハウやスキルは、一朝一夕で身につけることが難しいため、一定のコストでそれらを利活用できることは企業にとって大きなメリットとなります。

人件費/固定費等のコスト削減

アウトソーシングは、従業員の人件費や設備維持費といった固定費の削減に直結します。また、業務量に応じて柔軟にリソースを調整できるため、繁閑の差がある季節的な業務にも対応可能です。これにより、全体的なコスト削減も期待できます。

アウトソーシングを導入する企業のデメリット

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アウトソーシングの導入が企業にもたらすデメリットは以下の3つです。

● 自社にナレッジやノウハウが蓄積しづらい
● ガバナンス/情報漏洩リスクに対して対策が必要
● アウトソーシングに対しての適正コストの判断が難しい

自社にナレッジやノウハウが蓄積しづらい

業務を外部に委託することで、関連するノウハウや知識が社内に蓄積されにくくなります。長期的な視点で見ると、これが自社の成長やイノベーションの妨げとなる可能性があります。特に戦略的な分野では、アウトソーシングと内製化のバランスの精査が必要です。

ガバナンス/情報漏洩リスクに対して対策が必要

外部の業者に業務を委託する際は、データの取り扱いや業務プロセスの管理においてガバナンスや情報漏洩のリスクが増加します。特に機密情報を扱う業務の場合、厳格なセキュリティ対策や契約書によるリスク管理が必須です。万が一トラブルが発生した場合は、企業の信頼性にも影響を及ぼします。

アウトソーシングに対しての適正コストの判断が難しい

適正コストの判断は、慎重におこなわなければなりません。単に金額的なものだけでなく、当初期待されていた効果がもたらされているかといった評価も重要です。その意味でも適正コストの判断は難しく、かえってコストが増加してしまうことや期待した効果が得られない場合もあります。

アウトソーシングと人材派遣の違い

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アウトソーシングと混同されがちなのが人材派遣です。両者の違いを理解して、自社に適した方を選択しましょう。

仕組みの違い

下表にアウトソーシングと人材派遣の仕組みにおける違いをまとめました。

比較項目

アウトソーシング

人材派遣

目的

業務の効率化、コスト削減、専門性の向上を図るために、特定の業務を外部の専門業者に委託する。

一時的な人手不足や特定のスキルが必要な場合に、派遣元会社から必要な人材を一定期間受け入れる。

契約形態

企業間で業務委託契約を結び、業務の全体を委託先企業に任せる。

派遣スタッフと派遣元会社が労働契約を結び、派遣スタッフは派遣先会社の指示を受けて業務をおこなう。

雇用元

委託先企業が業務遂行のために従業員を雇用する。

派遣元会社が派遣スタッフを雇用する。

契約期間

長期的な契約が多いが、プロジェクト単位での短期契約もあり。

短期から長期まで柔軟に対応可能。派遣期間に合わせた契約がおこなわれる。(通常の派遣形態の場合、同一派遣先で同一の派遣スタッフの受け入れは最大3年が上限・紹介予定派遣の場合は、半年が上限となっている)

料金

成果物や業務に対して固定料金が設定される傾向にある。

派遣された労働者の稼働時間や日数に応じて、派遣元会社から派遣スタッフに料金が支払われる。

業務の
指示系統

業務の遂行方法は委託先企業に委ねられる。

派遣スタッフは派遣先会社の指揮命令のもとで業務をおこなう。

【参考】厚生労働省|労働者派遣と請負の区分の必要性

アウトソーシングに適している業務・利用シーン

アウトソーシングは、特に専門性が高く内部での対応が困難または非効率な業務を、外部の専門業者に委託する際に非常に効果的です。以下に、具体的な業務例やアウトソーシングの利用シーンを詳しく紹介します。

・システム開発やインフラ管理(IT)
IT分野は高度な技術と専門知識が求められるため、内部リソースだけで対応するのは困難なケースが多い業務です。例えば、新しいソフトウェアシステムの開発では、開発言語やフレームワーク、セキュリティ対策に関する深い知識が求められます。このようなプロジェクトをアウトソーシングすることで、最新の技術を熟知したプロフェッショナルがプロジェクトに携わり、効率的かつ効果的なシステムの開発が期待できます。

また、企業のネットワーク管理やサーバーの運用・保守といった業務にも、専門的な知識が欠かせません。これらを専門の企業に委託することで、トラブルの早期発見・対応や最新技術の導入がスムーズにおこなわれ、システムの信頼性が向上します。

・人事・労務管理(人事・労務・採用)
人事や労務に関連する業務は、手続きや処理が複雑な分野であることに加え常に最新の法令の把握が必要です。
具体的に給与計算を例に挙げて見てみると、各種手当や税金の控除には正確さが求められ、少しのミスでも大きな問題に繋がるおそれがあります。人事や労務管理の業務をアウトソーシングに委ねることにより、社内リソースを戦略的な人材育成や組織開発などに集中させることができます。また、法改正の把握漏れを防止でき、コンプライアンスリスクを最小限に抑えることが可能です。

採用活動は、求人の広告、応募者の管理、面接の調整、そして内定者のフォローアップまで、多岐にわたる作業が含まれますが、近年では応募者の初期スクリーニングや面接調整などを外部に委託する企業が増えています。

・総務・経理
総務や経理部門では、日常の帳簿管理から月次・年次の決算処理まで、正確性とタイムリーな対応が求められます。特に、事業所を複数持つ企業やグローバル展開している企業では、経理業務が複雑化し、内部で対応するには多くのリソースを必要とします。アウトソーシングの利活用は、効率化や正確性に寄与します。また、専門業者が最新の会計基準や税法に準拠した処理をおこなうため、法令遵守の面でも安心です。

・事務全般
例えば、毎月のレポート作成や顧客データの管理など、定型的で時間を要する業務もアウトソーシングに適しています。これにより、社内スタッフは重要な業務や戦略的なプロジェクトにリソースを割くことができ、社内全体の業務効率が向上します。

さらに、これらの事務作業をアウトソーシングすることで、急な業務量の変動にも柔軟に対応でき、ビジネスの成長をサポートする体制が整えられるのです。
アウトソーシングを適切に活用することで、企業は専門的な業務を外部に任せることができ、内部リソースを最適化し、コア業務に専念することが可能となります。これにより、業務効率の向上やコスト削減、さらにはサービスの質の向上が期待できます。

人材派遣に適している業務・利用シーン

人材派遣は、派遣契約により対応可能な業務があらかじめ決まっているのが特徴のひとつです。アウトソーシングとは異なり派遣先会社が業務の指揮命令権を持っており、業務の進行や調整に柔軟性を持たせることができます。企業は必要な期間だけ、必要なスキルを持つ人材を1人から受け入れることができ、急な人手不足や特定のプロジェクトに対応する際に極めて有効です。
具体的には、以下のようなシーンに適しています。

・短期的なプロジェクト
新製品のキャンペーンや展示会など、一時的にスタッフを増やしたい場合に人材派遣を利用すると効果的です。例えば展示会の受付業務に英語が必要といった特定のスキルを求められる業務でも、派遣スタッフであれば即戦力として活用できます。

・事務職やアシスタント業務
繁忙期や欠員補充の際、事務作業を迅速にこなすために、必要な期間だけ派遣スタッフに働いてもらうことができます。例えば、決算期や年末調整の時期に経理部門をサポートするためとして派遣スタッフを受け入れるケースです。
人材派遣は、このように特定のスキルが求められる業務や人員の補充が急に必要となったシーンにおいて、柔軟かつ迅速に対応できる点が大きなメリットです。

まとめ

少子高齢化により人手不足がますます加速する日本。足りないリソースをどのように調達するかは、企業にとって今後も大きな課題となります。アウトソーシングの有効活用は、単に業務効率化や品質向上だけでなく、企業の長期的な成長にも影響するものです。社内の状況に即した活用をおすすめします。

 


<執筆監修者プロフィール>
西本 結喜(監修兼ライター)

結喜社会保険労務士事務所代表。金融、製造、小売業界を経験し、業界ごとの慣習や社風の違いを目の当たりにしてきたことから、クライアントごとのニーズにあわせ、きめ細やかな対応を心がけている。