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採用のミスマッチはなぜ起こる?原因と対策の解説と人材採用のポイントを紹介

採用のミスマッチはなぜ起こる?原因と対策の解説と人材採用のポイントを紹介

「採用した人材が期待どおりの活躍をしてくれない」
「採用してもすぐに辞めてしまう」
「採用にかけたコストが無駄になってしまった…」

人材採用におけるこのような失敗は、採用のミスマッチによって起こりがちです。採用のミスマッチとは、企業と求職者に間に生じる「認識のズレ」のこと。なぜ採用のミスマッチは、起こってしまうのでしょうか?

本記事では、採用のミスマッチが起こる原因、それによる企業のリスク、入社前・入社後にできる対策、ミスマッチを防ぐ人材採用のポイントを紹介します。

よくある早期離職の理由

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採用のミスマッチによって起こる代表的な課題といえば、「早期離職」です。早期離職とは、採用した社員が3年以内に退職すること。

厚生労働省が令和3年に発表した「新規学卒就職者の離職状況を公表します」によると、就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者で約4割(36.9%)、新規大卒就職者で約3割(31.2%)でした。お金と時間をかけて採用活動をおこなっても、3年以内に3~4割は辞めてしまう。こうした問題に悩んでいる採用担当の方は多いのではないでしょうか。まずはよくある早期離職の理由を見てみましょう。

・職場の人間関係
職場の人間関係は、離職に関するアンケートで必ず上位に挙げられる理由のひとつです。上司のパワハラやセクハラ、職場内の悪口やいじめなど、人間関係の問題が早期退職の原因となっているようです。

・長時間労働・休日の数
残業が多い、休みが少ないなど、長時間労働や休日の数も早期退職の理由として多く挙げられています。体調不良や精神的ストレスなど、心身の負担を理由に早期離職するケースも少なくありません。

・仕事内容が合わない
仕事内容も、よくある離職の理由です。「思っていた仕事と違った」「実際にやってみたらつらかった」「希望する部署に配属されなかった」といった声を多くの離職者が口にしているようです。

・求人と労働条件が違う
求人情報と実際の労働条件のギャップも、離職理由としてよく挙げられます。業務内容、残業、休日、給与、福利厚生、勤務地など、「聞いていた話と違う」という不信感が離職の原因となっているケースがあります。

・給与が低い
給与の低さもよく挙げられる理由のひとつです。「頑張っても報われない」「仕事と収入が見合わない」など、業務と給与のバランスの悪さ、周囲の同年代と比べて給与が低いことが離職の原因として挙げられています。

採用のミスマッチが起こる原因

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採用のミスマッチは、企業側と求職者側、どちらにも原因があることが考えられます。なぜ採用のミスマッチが起こってしまうのか。よくある5つの原因について見てみましょう。

求人情報に良いことしか書いてない

最も多い原因といわれているのは、求人情報に良いことしか書いてないケースです。人材募集で自社の良い面をアピールするのは当然のことです。しかし、仕事の厳しさや残業など、ネガティブな側面も伝えておかなければ、入社後にギャップが生まれがちです。それが「思っていた仕事と違った」となり、早期離職につながってしまいます。求職者側も自分で調べることが大切ですが、企業側も情報発信の仕方には注意が必要です。求人情報で一言触れる、面接でも伝えるなど、一考したほうが良いでしょう。

求職者への情報提供が不十分

離職の原因は、仕事内容だけとは限りません。求職者への情報が不十分な場合も、離職の要因となります。昇給や昇格の仕組み、残業・休日、社風・風土、自社の独特のカルチャー、年齢層、男女比、教育制度の有無、テレワークの有無など、自社がどのような会社なのか、事前に詳しく伝える必要があります。あらかじめ求職者側に多くの情報を与えることで、採用後のギャップが起こりにくくなるでしょう。

入社後のフォロー不足

入社後のフォロー不足も、離職の原因となります。新卒社員は、初めての社会人生活に不安を覚えているものです。先輩や仲間のフォローがなければ、孤独や孤立感によって転職を考えるケースがあります。中途社員にしても、新しい組織に馴染むには時間がかかります。周囲のサポートがなければ、成果を出せない場合もあるでしょう。こうしたことが原因となって、早期離職につながるケースも少なくありません。

求める人材像が明確になってない

採用活動における重要なポイントは、求める人材像を明確にすることです。優秀な人材の定義は、会社や業務内容によって異なります。一流大学出身の新卒社員であっても、大手や有名企業から転職してきた中途社員であっても、必ずしも自社で活躍できるとは限りません。「自社が求める人材像」が明確になっていないと、学歴や経歴、肩書きだけで採用してしまい、ミスマッチが生まれやすくなる傾向があります。

主観的な判断で採用している

求める人材像が明確でないと、好き・嫌いなど、面接担当者の主観的な判断で採用をおこなうことになります。個人の主観で採用を決めると、会社が求める人材や業務内容などと合わず、ミスマッチが起こりやすくなります。こうした問題を防ぐには、求める人材像を社内全体で共有することが必要でしょう。

採用のミスマッチによる企業のリスク

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採用のミスマッチは、企業にとって大きなリスクになり得ます。早期離職をはじめ、生産性の低下、業績の悪化、社員のモチベーションダウン、採用コストが無駄になるなど、負のスパイラルを引き起こす可能性があります。対応策を講じるために、代表的な4つのリスクを見てみましょう。

 

早期離職の増加

採用のミスマッチは、早期離職を増加させるでしょう。日本は少子高齢化が進み、若手は減少する一方です。若年層に限らず、2008年をピークとして人口減少が始まり、採用難と人手不足が深刻になっています。せっかく採用した人材が離職してしまうと、次の人材が確保できる保証はありません。人材不足によって、他の従業員の残業や休日出社などが増え、さらなる離職を生む可能性があります。

採用者が戦力にならない

採用ミスマッチが起こると、せっかく人材を採用しても「戦力にならない」「使えない」といった声が現場から上がるようになるでしょう。戦力にならない人材が増えると、他の従業員のストレスとなり、働く意欲や生産性の低下を招きます。それによって企業全体の業績悪化につながる恐れもあります。

既存社員のモチベーションの低下

採用のミスマッチによって戦力にならない社員や離職する社員が増えると、既存社員のモチベーションが低下するでしょう。戦力にならない社員のフォローで残業が増える、親身になって教えた社員がすぐに辞めてしまう、業績が悪化して賞与が下がる。こうした負の連鎖は、離職者をさらに増加させます。

採用に使ったコストが無駄になる

人材採用には、お金や時間など、多大なコストがかかります。求人媒体の掲載料、人材紹介会社に支払う成功報酬、企業説明会の会場・設備費、企業案内パンフレット・Webコンテンツの製作費、そして、採用担当者や選考に関わる社員の人件費。採用のミスマッチによって離職者が増えると、これらの多くのコストが無駄になります。新たに人材を募集するためには、さらに多くのコストが必要となります。

採用のミスマッチを防ぐ対策

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では、採用のミスマッチを防ぐには、どうしたらいいのでしょうか。人材の入社前にできること、入社後にできること、それぞれの対策を紹介します。
 

入社前にできる対策

・面接時に自社の弱みも伝える
どんな会社にも、強みと弱みがあるものです。求職者に対しては、自社の強みだけでなく、弱みも伝えるようにしましょう。求人募集や面接の際に「強み」ばかりアピールしてしまうと、入社後に「聞いてなかった」「こんなはずじゃなかった」といったギャップを生み、それが離職につながるケースがあります。

強みばかりをアピールして多くの人材を採用できても、その大半が離職してしまったら意味がありません。弱みも伝えることで応募者は減るかもしれませんが、弱みも理解して入社した人材は、入社後のギャップで離職することは少なくなるはずです。結果的には、より多くの人材を確保できるでしょう。

たとえば、「うちは成果によって給与が上がります。ただし成果が上がらなければ、給与が下がります。それでもよろしいですか?」「当社は若手をどんどん抜擢しています。裁量が大きい分、残業が増えることもありますが、大丈夫でしょうか?」など、実情に合った情報を面接時などに伝えましょう。

・適性テストを実施
採用のミスマッチを防ぐためには、適性テストの実施も有効な手段です。適性テストとは、一定の行動や職業に対して、どのような資質を持っているかを測定すること。以下の例のように国語や数学、英語といった学力テストだけでなく、価値観や意欲、感情など、性格的な適性を見極めることも可能です。

《適性テストの例》
学力・能力:思考力や論理性、数値能力など、基本的な学力や能力を測定
性格・適性:人間性や志向、価値観など、パーソナリティを定量的に測定

適性テストには、何百もの種類があり、【学力・能力】や【性格・適性】のみ、あるいは両方を選択することも可能です。自社が求める人材を判断しやすい、適切な適性テストを実施することによって、採用のミスマッチの軽減が期待できます。

・長期インターンを実施
近年、インターンシップを実施する企業が増えているのは、「インターンシップ経験者の離職率は、未経験者に比べて低い」という結果が多くの調査によってわかってきたからです。実際に仕事を体験することで、業務への理解が深まるため、入社後にギャップを感じることが少なくなるでしょう。

採用後のミスマッチをなくすためには、入社前に実際に働いてもらうことが有効な施策です。長期インターンを実施し、実際の業務を体験してもらうことで、採用のミスマッチが生まれにくくなります。

また、インターンシップで多くの社員と直接触れ合うことで、会社の雰囲気や人間関係に魅かれて入社する人材も多くいます。こうした場合も、入社後の人間関係で早期離職するリスクが少なくなるでしょう。

入社後にできる対策

・人材の成長機会を用意する
求職者は、仕事にやりがいを求めています。やりがいとは、成長や達成感などの精神的なものと、給与・賞与などの報酬に分けることができます。メンバー、チーフ、プロジェクトリーダー、課長など、キャリアステップを明確にし、昇格・昇給の仕組みを整備することは、やりがいにつながります。

頑張って成果を上げても、昇格も昇給もしなければ、やりがいを感じることができず、自分をより適切に評価してくれる会社に転職するでしょう。昨今は売り手市場が続いているため、優秀な人材は引く手数多(あまた)です。優秀な人材ほど、自社に見切りをつけて、転職しやすい傾向があります。

キャリアステップを明示する、昇格・昇給の仕組みを整えるなど、人材の成長機会を用意することが、採用のミスマッチによる離職を防ぐ有効な手だてとなります。

・人材育成の体制を強化する
近年の若手は企業を転々とするのが当たり前になっているため、志望先を選ぶ理由として「自身が成長できる環境」であるかどうかを重視しています。入社後にミスマッチを感じ、「この会社にいても成長できない」と思えば、早期離職し、より自分が成長できる企業へと移っていくでしょう。

採用ミスマッチを防ぐには、人材育成の体制を強化することが必要です。新人研修やOJTはもちろん、メンター制度やオンボーディングなど、人材育成にはさまざまな方法があります。

メンター制度とは、先輩社員が新入社員に定期的に面談をおこない、不安や悩みを聞いて精神的なサポートする人材育成の方法です。オンボーディングは、新しく配属されたメンバーの教育・育成をおこない、早く会社に馴染んでもらい、早期に活躍できるようにするための施策です。

社員が自分で目標を設定するMBO(目標管理制度)や、あえて難易度の高い目標を設定するOKRなども、人材育成の手段として効果的です。人材育成の体制を強化して、離職を防ぎましょう。

・報酬や環境の見直し
報酬の見直しも、離職を防ぐ重要な手段です。年功序列の給与制度などによって、年齢や勤続年数を重ねなければ給与が上がらないようだと、若手はモチベーションを上げることができないでしょう。若手の定着を図るためには、成果や行動を給与に反映させる仕組みが必要です。

また、働きやすい職場環境を整えることも、離職を防ぐ有効な手段です。職場環境には、照明の明るさなどの快適さ、デスク環境などの物理的な環境から、上司や同僚との人間関係など、精神的な環境までが含まれます。労働安全衛生法では、「職場環境に対する配慮義務がある」と定められており、従業員にとって働きやすい環境を整備することは企業にとって義務となっております。

職場の照明を明るくする、疲れにくい椅子に変える、パワハラ・セクハラなどの相談ができる窓口を設置する、ノー残業デーを作る、残業食を出す、気分転換ができる休憩室を設置するなど、職場環境を整える方法はいろいろあります。職場環境を整え、従業員にとって働きやすい環境を提供しましょう。

ミスマッチのない人材を採用するポイント

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ミスマッチのない人材を採用するためには、次の3つのポイントが重要です。

求める人材像を明確にする

採用ミスマッチを防ぐためには、「求める人材像」を明確にすることが必要です。「明るく素直で元気」といった漠然としたイメージではなく、「物事を自ら考え行動できる」「状況に応じて柔軟な思考や対応ができる」「将来は経営に関わることを目標としている」など、できるだけ具体的に考えてみましょう。経営層や各部門のリーダーと話し合い、自社が求める人材像を共有することも必要です。

人材のスキルにあった報酬を用意する

少子高齢化や人口減少の影響によって、今後はますます若年層の人材を獲得することが難しくなっていくことが予想されます。若手を獲得するためには「〇〇の資格取得者は基本給を増額」「△△の検定試験に合格したら賞与を追加」など、人材のスキルにあった報酬を用意することも検討してみましょう。報酬基準を明確にすることは、求職者だけでなく、既存社員のモチベーションアップも期待できます。

現場の社員も採用活動に加える

採用のミスマッチを防ぐためには、現場の社員を採用活動に加えることも効果的な手段です。経営層や各部門のリーダークラスと、現場のマネージャーやスタッフでは、人材に対する見方が異なっている場合があります。現場をよく知る社員の意見も参考にすることで、「こんな仕事とは思っていなかった」「実際にやってみたらつらかった」といった入社後のギャップを軽減することが期待できるでしょう。

まとめ

採用のミスマッチは、早期離職や生産性の低下、業績の悪化など、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。ミスマッチの原因はさまざまなところに潜んでいるため、改めて職場環境や人材育成の体制の見直しをおすすめします。また、ミスマッチを抑える方法として「紹介予定派遣」の活用もあります。

紹介予定派遣とは、主に派遣就業開始後に、派遣先企業に職業紹介することを前提としている労働者派遣のことをいいます。 派遣先企業と派遣スタッフの双方の合意が得られた場合、派遣スタッフは派遣先企業に直接雇用されます。そのため、採用のミスマッチが起こりにくくなります。

スタッフサービスグループでは、企業様の採用課題を解決するためのさまざまな人材サービスをご用意しています。せっかく採用できた人材がすぐに退職、離職理由は入社前後で会社の雰囲気や業務内容のギャップが発生していたことだった…。このようなお悩みの際は、ぜひご相談ください。

スタッフサービスグループ:活用事例の紹介
https://www.staffservice.co.jp/client/jirei/

・ライタープロフィール
鈴木にこ(ライター)
求人メディアの編集者を経て、フリーランスとして活動中。派遣・新卒・転職メディアの編集協力、ビジネス・ライフスタイル関連の書籍や記事のライティングをおこなう。