社内研修を有意義に。オンライン研修のメリットとコツ
働き方改革の推進をきっかけに、多くの企業では場所や時間にとらわれずに働ける環境が整い始めています。
勤務形態の多様化や労働時間の見直しだけでなく、教育体制も新たに見直されるようになりました。これまで研修といえば、参加者が同じ場所に集まり、実施するものが一般的でした。現在は、遠隔地や複数拠点であっても、ネットワーク環境とデバイスがあれば受けられる「オンライン研修」の導入が進んでいます。
今回は、そんなオンライン研修の概要やメリット、実施する際のコツを解説します。
オンライン研修とは
オンライン研修とは、オンライン会議ツールを使い、インターネット上で行われる研修です。参加者はパソコンを使い、講師の映像を閲覧します。
一般的に、オンライン研修は参加者がそれぞれの自宅から受講する「個別参加型」、会議室などひとつの場所に集まった参加者がそれぞれのパソコンから受講する「多拠点参加型」にわかれています。
また、オンライン研修は映像の形式によっても細かくわかれています。映像をリアルタイムで配信するタイプは「ライブ配信型」、すでに録画されている映像を参加者が視聴するタイプは「eラーニング型」と呼ばれています。
個別参加型
個別参加型のオンライン研修は、機材とネットワーク環境があれば、育児や介護などと仕事を両立させている社員も、オフィスまで行かずに自宅から参加が可能です。また、事業所が点在しているために対象者を集めるのが難しかったり、テレワーク勤務をしている社員が多い企業に適しています。
多拠点参加型
多拠点参加型のオンライン研修では、企業側で機材を準備する手間はありますが、自宅にネットワークが整っていない、パソコンを持っていない社員も参加できます。パソコンの持ち出しも発生しないため、情報漏えいのリスクもありません。
ライブ配信型
ライブ配信型では、講師と受講者がリアルタイムでコミュニケーションを取ることができる点が強みです。チャット機能のあるオンライン会議ツールを使えば、複数人からの質問への対応も可能です。
eラーニング型
録画された映像を視聴する形式のため、社員それぞれのペースで学べるのがeラーニング型の大きな特徴です。各々が苦手なポイントを再度視聴でき、理解を深めることができます。
一度撮影した映像はその後も使えるため、オンライン研修を再度行う際の手間やコストの削減にもつながります。
オンライン研修の導入企業が増えている背景
総務省が2019年9月に実施した調査によれば、テレワークを導入している・導入を検討している企業は約30%です。2017年度の18%、2018年度の27%と比較すると、わずかではあるものの増加がみられます。
一方で、2020年5月に実施された東京都の調査によれば、都内企業のテレワーク導入率は62.7%です。3月時点の調査(24.0%)と比較すると、2.6倍にも上昇していることがわかります。
国内で最も人口の多い東京都では、新型コロナウイルス感染のリスクは避けられません。満員電車での通勤、一室に集まって行われる会議や研修など、働くうえでも気をつけるべき瞬間は多くあります。感染のリスクを避けるためにも、テレワークを導入する企業が増えているのです。
現在、政府は出産や育児などで勤務が難しくなった女性をはじめとする人々が活躍できる社会を「ニッポン一億総活躍プラン」によって実現しようとしています。少子高齢化により減少する労働人口の確保として、場所や時間にとらわれないテレワークの導入が急がれているのです。
形式によって差異はあるものの、オンライン研修の強みは場所や時間を選ばずに受講できる点にあります。オンライン研修はテレワーク勤務であっても受講できるため、社員の教育格差が生じないのも、企業にとってメリットといえるでしょう。
オンライン研修のメリット
オンライン研修には、以下のメリットがあります。
メリット1.さまざまなコスト・手間の削減
従来のような集合型研修を行う場合、多くの受講者が一度に集まれる広さの場所が必要となります。もしも複数人が収容できる部屋が無ければ、別途レンタルスペースを探さなければなりません。
4~5月は多くの企業において研修が行われるため、予約を取ることも難しいでしょう。オンライン研修は自宅からでも受講ができるため、会議室を借りるコストや予約の手間が省けます。
また、各事業所に勤務している受講者を集めるためには、当然ながら移動のコストがかかります。さらに研修を数日にわたって集中的に行う場合、滞在中の宿泊費も生じます。オンライン研修であれば、それらのコスト削減にもつながります。
メリット2.教育の均一化につながる
従来の研修では、場所や時間が原因で受講を諦めなければいけないというデメリットもありました。結果として、それぞれの社員の間には、受講の有無によって理解度の差が生じてしまいます。
オンライン研修ではそのような受講のハードルが無くなるため、集合型の研修よりも参加しやすくなります。
メリット3.質疑応答が可能になる
集合型研修は、時間の都合から全員への質疑応答が容易ではありませんでした。実際に気になる点があったとしても、進行を止めてしまう懸念から質問を避けてしまう受講者の声も聞かれます。
オンライン研修ではチャット機能を活用することで、講師が話している最中でも質問が可能です。ツールによっては挙手を示せる機能もあり、講師側も受講者のリアクションを見逃しにくい状況にもなっています。
オンライン研修のデメリット
オンライン研修にはデメリットもあり、企業によってはかえって逆効果になる場合も考えられます。メリット・デメリット双方を理解し、導入を検討するのが良いでしょう。
デメリット1.モチベーションの維持が必要
eラーニング型のオンライン研修は、「流し見」に陥りやすい注意点があります。参加のモチベーションを維持できなければ、研修の効果は得られないでしょう。テストや内容の要約などで理解度をチェックできるようにすれば、気のゆるみを防ぐことができます。
デメリット2.受講者間のコミュニケーションが生まれにくい
集合型の研修は、支店や業務が異なる、普段関わらない社員とのコミュニケーションが生まれやすい場です。グループワークでさまざまな意見を出し合い、その後も交流が続くケースもあるでしょう。
対してオンライン研修では一方的に聞くだけの形となり、他の受講者との関わりが薄くなってしまうことも考えられます。オンライン会議ツールによっては参加者をグループ化し、ワークに参加させられます。受け身ではなく、意見を出し合う状況を企業側で整えるようにしましょう。
オンライン研修を有意義にするコツ
オンライン研修は、ただ漠然と実施するだけでは意味がありません。より良いものにするためのコツを知っておきましょう。
短時間でまとめる
パソコンの画面を長時間見つめる、イヤホンやヘッドフォンで音声を聞くといったことは意外と負担が大きいもの。オンライン研修では受講者の集中力を持続させるためにも、なるべく短時間で終わるようにタイムスケジュールを組みましょう。
どうしても長時間になってしまう場合は、こまめな休憩を設ける、数日に分けるようにするといった方法をとるだけでも受講者の負担は軽減します。
アシスタントを決める
リアルタイムで講師が話している映像を配信するオンライン研修では、機材や音声の突発的なトラブルが発生することもあるでしょう。そのような場合に講師が対応しようとすると、研修そのものがストップしてしまいます。
トラブルに対応できる、技術的な知識を持ったアシスタントがいれば、講師も安心して研修を続けられます。
カメラオンを義務付ける
集合型の研修と違い、オンライン研修ではカメラをオンにしていない場合、受講者の様子が把握できません。受講しているようにみえても、実際はその場にいなかったり、別の作業をしていることも考えられます。
オンライン研修では自分の顔が写るよう、カメラのオンを義務付けましょう。受講者のリアクションだけでなく、受講時の態度を確認できます。
ただし、プライバシーの観点から「自分の部屋を写したくない」という受講者もいます。そのような場合は選んだ画像を背景に設定できる「バーチャル背景」を任意で設定させるのも良いでしょう。
グループワークは進行役を決める
オンライン会議でもグループワークは可能ですが、スムーズに進めるためにはあらかじめグループのメンバーと進行役を運営側で決めておきましょう。
対面とは異なり、オンライン会議では円滑なコミュニケーションを取ることがどうしても困難です。全員から意見を聞き、まとめあげる進行役がいなければ、グループワークの成果が得られない事態も起こり得るでしょう。それまで進行役をやったことがない受講者にとっても、良い経験となるはずです。
グループワークの内容を精査する
対面ではないからこそ、オンライン研修におけるグループワークの内容は精査しなければいけません。たとえば役割を決めて実践するロールプレイング形式は、対面でなければ難しいでしょう。
オンライン研修では、ひとつのテーマに対し、意見を出し合う形式のグループワークが最適です。
まとめ
「本当に集合型の研修のように実施できるのか」「受け身になってしまわないか」といった懸念から、オンライン研修に対し懐疑的な人も少なくないでしょう。しかし、利用するツールの精査や、ルールの徹底によって、対処することは可能です。
オンライン研修は場所や時間にとらわれずに誰でも気軽に受講でき、学びの機会が得られるメリットがあります。ぜひ、オンライン研修で受講者の教育を見直してみてはいかがでしょうか。