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BCP(事業継続計画)とは? その目的や災害対策に向けた方針作成手順を解説

BCP(事業継続計画)とは? その目的や災害対策に向けた方針作成手順を解説

あらゆる企業にとって、災害などの緊急事態が起こった際に、被害を最小限にとどめることはとても重要です。事前に事業継続のためのBCP(事業継続計画)を立てておくことで、万が一の事態が起こった場合でも事業の早期復旧が可能となるプランを組むことができます。今回はBCPを立てるための知識として、BCPの活用事例や方針作成の手順などを紹介します。

事業継続に不可欠となるBCPとは?

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BCPとは、災害などの緊急事態を想定した、企業や団体の事業継続計画(Business Continuity Plan)のことです。BCPの目的は、自然災害やテロをはじめとした危機的状況に遭遇した際、被害額や損益を最小限に抑えつつ、企業にとっての重要な業務を継続して早期の復旧を図ることにあります。BCPの具体的なメリットには、事業の継続性が高まること、ひいては株式市場や顧客からの信頼性を高められる点などが挙げられます。

2011年に起こった東日本大震災では、企業やサプライチェーンが甚大な被害を受け、BCPの重要性が認知されました。その後、国としてBCP策定を推進する動きが加速し、震災翌年の2012年3月には中小企業庁により「中小企業BCP策定運用指針」が改訂されています。地震をはじめ、さまざまな災害が想定される日本では、引き続きBCPの策定・運用が重要です。

BCPに取り組むべき理由

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企業がBCPに取り組むべき主な理由は、以下の2点に整理できます。

事業再開の目途を立てられるようにするため


災害などの緊急事態に遭遇した際、どのくらいの期間で事業の再開が可能となるか想定しておく必要があります。そのため災害が起きた場合、事業復旧にかかる期間を踏まえてBCPを策定することが重要です。こうした予測や対策をしないと、事業を再開するまでに長期間を要することになり、顧客や取引先などからの信頼を損なってしまいます。また、復旧までにかかる時間によっては、資金がショートするなどして事業の継続が困難になる可能性があります。

予測されている地震などの災害に備えるため


政府の地震調査では、今後30年以内に千葉県から四国南部にかけて、太平洋沖で26%以上の確率で震度6弱以上の強い地震が起こると公表しています。日本で事業を継続する上で、地震災害に向けたBCPは今後も非常に重要です。地震災害のBCPの具体策としては、たとえば、工場をはじめとした生産拠点や営業所などの代替拠点の用意や、事業継続のために重要な施設の耐震性能の補強が考えられます。

また、昨今の新型コロナウイルスのような感染症を踏まえたBCPも必要です。感染者が生じた場合の連絡体制の整備や事業規模の縮小、休業する事業の選定など、感染症ならではの対策を意識しておきましょう。

過去の事例から考えるBCP

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日本でBCPへの意識が高まっている背景には、過去に起こった災害の経験があります。以下の事例を踏まえて、どのようにBCPを立てればよいか、考えてみましょう。

東日本大震災


2011年の東日本大震災が発生した当時は、現在ほどBCPは重要視されていませんでした。企業による事業継続のための取り組みも十分でなく、約62%の企業が、あらかじめ計画していたBCPに問題があったと答えています。どのような点に問題があったのか? 震災を教訓に、具体的に機能するBCPを策定するポイントを挙げてみました。

・災害によって発生する被害の想定
・事業を早期復旧、継続するための目標を設定
・災害時の役割分担
・顧客や取引先への対応手順
・防災のための事前対策
・震災を想定した従業員の教育と防災訓練

新型インフルエンザ


2009年の新型インフルエンザの流行では、感染症のパンデミック(世界的大流行)を想定した、以下のようなBCPが効果的に機能しました。現在起きている新型コロナウイルス感染症においても、同様の取り組みが有効と考えられます。

・感染拡大状況の正確な情報収集
・パンデミック発生時の就業規則の用意
・職場または通勤時の感染を避けるための感染防止策
・マスクの着用や消毒液の利用などの感染防止のための意識強化


感染症のパンデミックの場合は、正しい感染拡大状況を踏まえた上で、感染防止のための取り組みと意識強化が重要なポイントになります。リスクを想定したBCPを策定するのはもちろん、定期的に社員研修などを実施し、感染した場合、迅速に正しい行動を取れるようにする必要があります。

BCPに取り組む手順

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BCPを策定する手順について順番に見ていきましょう。企業がBCPを策定・運用する際の詳細な手順は、中小企業庁が取りまとめた「中小企業BCP策定運用指針」が参考になります。主なポイントを説明します。

1.目標設定


まずは、「何のためにBCPを策定し、運用する必要があるのか」について検討します。
緊急時の対応には、事前対策の段階から社員や取引先の協力が不可欠であり、BCPの目的を共有することが大切です。

たとえば、「従業員の雇用」「顧客からの信用」「地域経済の活力」といった守るべきものを明確にすると、どのように行動するかを決定しやすくなります。さらに、業務をいつまでに復旧させるのかという、復旧までの目標日数も定めておきましょう。

2.リスクの洗い出し


災害によって発生しそうな事業リスクを、一つひとつ洗い出しましょう。例を挙げると、地震や台風などの自然災害であれば建物の倒壊や洪水による被害、感染症であれば社内での感染拡大などが該当します。事業へのリスクは他にも、日常で起こる交通事故や人材流出、ハラスメントなどの人事・労務リスクも含まれます。

このとき、インフラへの影響を踏まえ、会社への影響を考える必要もあります。たとえば停電により通信が遮断され、社員と連絡が取れなくなる可能性や、鉄道の大幅遅延により社員が出社できないといった事態を想定しておきましょう。

3.リスクを踏まえ優先順位をつける


想定されるすべてのリスクに対処するのは現実的とはいえません。災害時の限られたリソースを効果的に投入するために、リスクに優先順位をつけ、優先度の高いリスクに絞って、BCPを策定します。

ここで大切なのは、会社の存続に関わるような最も重要性の高い「中核事業」を特定することです。たとえば、「取引先Aに製品Xを提供すること」が中核事業であれば、受注や出荷、配送などの付随業務を把握し、中核事業が災害の影響を受けた場合に、いかに素早く復旧させるのかを考えていきます。

4.具体策を決める


災害が起きたときのリスクや優先順位を把握した後は、具体的にどう対応すべきかを定めます。このとき、災害が起きたときの対応だけでなく、災害が起きる前からできることについても検討するとよいでしょう。事前対策としては、以下が考えられます。

・非常用備品を用意する
・施設の耐震化
・棚などの転倒防止
・緊急時に必要な資金を把握
・現金や預金の用意
・重要データのバックアップルールを決める
・災害が起きたときに安否を確認するルールを決める
・担当者不在の場合の対応を決める


このように、BCPに含める上で望ましいことは数多くありますが、最初からすべてのリスクを解決しようと構える必要はありません。施設耐震化や棚の固定、防災用具の購入といったハード面の措置は予算が必要ですから、予算に応じて数年がかりで整備するのが現実的です。
一方、避難計画の作成や、従業員の連絡リスト共有、防災教育といったソフト面の整備は費用が少なくてすむため、まずはこういった対策を取り入れることをおすすめします。

5.BCPを社内に定着させる


時間をかけてBCPを策定しても、従業員に浸透していなければ、いざというときに役に立ちません。策定したBCPは社内で共有する必要があります。たとえば毎年1回、従業員全員がBCPについて理解を深める場を設けるなど、一人ひとりが自分の役割ややるべきことを認識してもらうようにしましょう。

6.BCPの見直し


BCPは一度策定すれば終わりというものではありません。都度に会社の現状に見合ったものに改訂していくことが重要です。取引先の変化や、商品の製造ラインの組み換え、人事異動など、会社の状況が変わった場合はBCPの見直しについて検討します。そのためにも、BCPを策定する際は、どのような場合に見直しをおこなうかも盛り込んでおくことが有効です。

まとめ


日本中を大きく揺るがす震災や感染症拡大の影響で、具体的かつ効果的なBCPの作成は企業にとって非常に重要となっています。そのため、自然災害など、予測不能な緊急事態に備えた事業の復旧、継続のための取り組みをあらためて考えてみてはいかがでしょうか?


《ライター プロフィール》
小林義崇(ライター/元国税専門官)
2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、相続税調査や確定申告対応などに従事。2017年にフリーライターに転身。著書に「すみません、金利ってなんですか?」(サンマーク出版)、「確定申告 得なのはどっち?」(河出書房新社)がある。