
「紹介予定派遣の手数料について」仕組み・相場について解説

紹介予定派遣は、派遣スタッフとして一定期間働いた後、企業と直接雇用契約を結ぶことを前提とした仕組みです。紹介予定派遣には、企業が必要な人材を適切に確保できるメリットがある一方で、派遣料金や紹介手数料といった費用も発生します。本記事では、紹介予定派遣の仕組みを詳しく解説するとともに、発生する費用の種類や相場、注意点についてわかりやすくご紹介します。
目次
紹介予定派遣とは

本章では、簡単に紹介予定派遣の概要を説明します。
紹介予定派遣
紹介予定派遣は、派遣スタッフが派遣先の企業で一定期間(最長6ヶ月)働き、その後企業と派遣スタッフが互いに直接雇用契約を結ぶかどうかを決定する派遣形態です。派遣期間中に双方が適性を見極め、合意に達すれば、派遣スタッフは正式に企業に雇用されます。
【参考】:厚生労働省|紹介予定派遣とは・・・
・仕組み
紹介予定派遣とは、派遣スタッフとして一定期間勤務した後、直接雇用を前提として採用を進める派遣形態です。派遣期間中に業務適性を確認できるため、企業側は採用リスクを抑えながら人材を確保できます。紹介予定派遣の派遣期間は最長6ヶ月となっています。
・特徴
● 事前面談が可能
一般的な派遣(登録型派遣)では禁止されていますが、紹介予定派遣では認められています。
● 直接雇用の前提
派遣終了後に正社員や契約社員など直接雇用する意図が求められます。
詳しい解説はこちらをご覧ください
【関連記事】紹介予定派遣とは?仕組みや他の派遣形態との違いを解説
登録型派遣との違い
登録型派遣は、直接雇用を前提としていません。企業が柔軟に人材を確保し、必要な期間だけ業務をサポートしてもらうことを目的とした派遣形態です。繁忙期や特定プロジェクトへの対応、急な人員補充など、幅広いニーズに応えるために活用されています。
紹介予定派遣では、前述の通り事前面談が可能ですが、登録型派遣では、事前の面談は認められていません。派遣期間も最長3年と決められており、1ヶ月や3ヶ月など期間限定の案件も多くあります。
常用型派遣(無期雇用派遣)との違い
常用型派遣(無期雇用派遣)は、派遣元会社が労働者を無期雇用契約で採用した上で、派遣先会社に派遣する仕組みです。この形態では、派遣の上限3年ルールの対象外であるため、派遣を依頼する企業は期間を気にすることなく同じ派遣スタッフを受け入れられます。
人材紹介との違い
人材紹介では、派遣期間を挟まず、直接雇用を目的とした候補者の紹介がおこなわれます。紹介予定派遣とは異なり、派遣料金は発生しませんが、紹介手数料が設定されるケースが一般的です。
紹介予定派遣の手数料について

紹介予定派遣には、派遣料や紹介手数料といった費用が発生します。派遣期間中に発生する「派遣料」と直接雇用が決まった際に発生する「紹介手数料」について、その内訳や相場感を詳しく解説します。
手数料の種類
派遣料
派遣料は、派遣を依頼した会社が派遣元会社へ支払う費用です。派遣スタッフが企業で働く派遣期間中は毎月発生し、派遣期間が延長される場合、その分が追加でかかります。この派遣料には大きく分けて3つの要素が含まれています。
1. 派遣スタッフの賃金(派遣スタッフが有給を取得した場合の賃金も含む)
2. 社会保険料
3. 派遣会社の運営経費や営業利益
厚生労働省発表の令和4年度労働者派遣事業報告書によると、派遣料金(8時間換算・平均)は24,909円と報告されています。
これは1時間あたり約3,114円に相当し、職種や業務内容、地域によって異なるため、一概には言えませんが、一般的な派遣料の相場感を示しています。
具体的な派遣料の設定にあたっては、業務内容や必要なスキル、地域の相場等が考慮されています。
【参考】厚生労働省|令和4年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)
紹介手数料
紹介手数料は、派遣期間終了後に派遣スタッフが企業と直接雇用契約を結ぶ際に発生する費用です。派遣期間終了後、直接雇用に至らなかった場合は請求されることはありません。
一般的に紹介手数料は、採用される派遣スタッフの理論年収(基本給+賞与)の20~35%程度で設定されます。例えば、年収400万円の人を採用した場合、紹介手数料は80~140万円程度が相場です。
紹介予定派遣の仕組みにより、企業側は採用リスクを軽減できる点がメリットです。
費用が発生するタイミング

紹介予定派遣では、派遣開始前から直接雇用決定時までの各段階で異なる費用が発生します。それぞれの費用を正しく理解することで、コスト管理をおこないつつ効果的な採用活動を進めることが可能です。
派遣開始前
派遣開始前の段階では、派遣を依頼する企業側に費用負担はありません。この時期には、派遣会社が企業のニーズをヒアリングし、候補者の選定や面談の調整、条件交渉といったサービスが提供されますが、この段階での費用は発生しないため、企業は安心して人材選定を進められるのが特徴です。
派遣期間中
派遣料金
派遣期間中には、マージン料を含む派遣料金が発生します。この派遣料金には前述のとおり3つの要素が含まれており、企業が派遣スタッフを利用するための総合的な費用であり、時間当たり単価として派遣会社から請求されることが一般的です。
1. 派遣スタッフの賃金
派遣スタッフが実際に受け取る給与(派遣スタッフが有給を取得した場合の賃金も含む)
2. 社会保険料
派遣スタッフの健康保険、厚生年金、雇用保険料等
3. 派遣会社の運営経費や営業利益
営業活動や派遣スタッフのサポート体制、福利厚生提供、事務管理費、求人広告費など、派遣会社の運営に必要な費用
派遣料金の計算方法
派遣料金は次の式で算出されます。
月額の派遣料金 = 上述の時間単価 × 勤務時間 +派遣スタッフの交通費
実際には、消費税も発生するため、例えば、派遣スタッフの時間単価が2,500円、1ヶ月に160時間勤務する場合、派遣料金の目安は、消費税等も含むと45万円前後となります。
採用決定時
紹介手数料
紹介手数料は、直接雇用が決まった際に派遣元会社に支払う費用です。手数料は、派遣スタッフの理論年収に基づいて計算され、相場は年収の20~35%程度です。高いスキルや専門性を持つ人材の場合、この割合がさらに上がることもあります。
紹介手数料発生の条件
紹介手数料は、派遣期間終了後に直接雇用契約が成立した場合にのみ発生します。雇用契約が成立しなかった場合は費用が請求されません。
理論年収の計算方法
理論年収とは、労働者が1年間フルタイムで勤務した場合に得られる収入を理論的に算出した金額のことです。この概念は、特に紹介予定派遣や人材紹介の際、紹介手数料を計算するために用いられます。理論年収には、基本給だけでなく賞与や手当などの定期的な収入を含むため、実際の収入に近い数値として位置づけられています。
紹介予定派遣の手数料計算における理論年収は、派遣スタッフが直接雇用された際の年間想定収入を表します。具体的には以下の式で計算されます。
理論年収 = 月給 × 12ヶ月 + 賞与
例えば、月給が25万円で賞与が2ヶ月分支給される場合、理論年収は次の通りです。
<計算例>
月給分:250,000円 × 12ヶ月 = 3,000,000円
賞与分:250,000円 × 2ヶ月 = 500,000円
合計:3,500,000円
紹介手数料はこの理論年収に手数料率を掛けて算出されます。
<手数料率20%の場合の計算例>
理論年収3,500,000円 × 手数料率20% = 700,000円
この場合では、700,000円が紹介手数料となります。
紹介予定派遣の手数料についての留意点

紹介予定派遣を利用する際には、手数料に関するポイントを事前に理解しておきましょう。派遣期間の長さや直接雇用後の条件によって手数料が変動する場合があるため、契約内容を十分に確認することが大切です。
直接雇用後にすぐに離職した場合でも紹介手数料の返金はない
紹介予定派遣において、派遣期間終了後に派遣スタッフが直接雇用されると、企業は派遣会社に紹介手数料を支払います。この手数料は、直接雇用が成立した時点で発生し、その後に労働者が短期間で退職した場合でも通常は返金されません。これは、派遣期間中に派遣先企業と派遣スタッフが互いに適性を確認し、十分な検討を経たうえで直接雇用が成立していることを前提としているためです。このため、企業側には事前に十分な情報収集と派遣スタッフの適性確認が求められます。
ただし、一部の派遣会社では、短期間での退職に対して部分的な返金を保証する契約内容になっている場合もあります。そのため、契約時には返金ポリシーや条件について詳細に確認しておくことが重要です。
登録型派遣から直接雇用への切り替えは可能
登録型派遣として契約している派遣スタッフを、派遣期間終了後に直接雇用することは可能です。ただし、その場合は派遣会社との間で紹介手数料が発生します。登録型派遣では事前面談が認められていないため、業務適性の確認が難しい場合がありますが、派遣期間中のスキルの発揮や働きぶりをもとに直接雇用を検討できます。
このような切り替えは、企業にとって派遣スタッフのスキルや適性を認識した上で採用を決定できるため、ミスマッチを防ぐメリットがあります。一方で、手数料の発生条件や金額は事前に派遣会社と取り決めておくことが必要です。また、派遣契約の終了タイミングや手続きにも注意を払い、スムーズな切り替えをおこなうことが求められます。
まとめ
紹介予定派遣は、派遣期間中に業務適性を確認できる点で、採用リスクを軽減しながら直接雇用を実現できる仕組みです。派遣には、この他にも登録型や常用型といった形態があり、それぞれに特徴や適した場面があります。また、人材紹介は派遣期間を経ずに採用活動を効率化でき、特にスピーディーな採用を重視する企業に向いています。それぞれの手数料や費用構造には違いがあり、企業の採用ニーズや予算に応じた選択が重要です。コスト面だけでなく、採用プロセスの効率性や人材とのミスマッチ防止といった観点から、最適な方法を検討しましょう。
執筆監修者プロフィール
川西 菜都美(監修兼ライター)
結喜社会保険労務士事務所 代表。金融、製造、小売業界を経験し、業界ごとの慣習や社風の違いを目の当たりにしてきたことから、クライアントごとのニーズにあわせ、きめ細やかな対応を心がけている。