採用面接のポイントとは?
採用プロセスにおいて、書類だけではわからない応募者の特性や考え方を理解できる場が、採用面接です。採用面接のポイントを押さえ、効果的な採用面接を実施することにより、応募者を見極める精度が高まります。
本記事では、採用面接の目的や実施手順、面接官に必要なスキルとともに、面接でみるべきポイントや質問すべきポイントについて解説します。
目次
採用面接の目的
採用面接の目的は、以下の3つです。
・ 書類だけではわからない情報を得る
・ 自社に合う人材か見極める
・ 自社への入社意欲を向上させる
書類だけではわからない情報を得ることにより、自社の業務に適したスキルや経験を持っているかだけでなく、長期にわたって働いてもらえるかどうかや、自社の風土に合っているかも見極めます。
また、採用面接は、応募者にとっても企業を選考する場です。採用面接での対応次第で、応募者の入社意欲が下がるケースは珍しくありません。自社の魅力を感じてもらい、入社意欲を向上させることも採用面接の目的といえます。
採用面接を実施する手順
採用面接を実施する手順は、以下の3フェーズに分けられます。
・ 前半:アイスブレイクや自社の説明
・ 中盤:応募者への質問
・ 後半:応募者からの質問
ここでは、それぞれのフェーズのポイントについて解説します。
前半:アイスブレイクや自社の説明
採用面接では、いきなり本題に入るのではなく、アイスブレイクでお互いの緊張をほぐすことから始めます。リラックスした雰囲気をつくることにより、応募者の本音を引き出しやすくなります。
アイスブレイクの話題は、採用にかかわる内容ではなく、天気や来社方法、今の心境といった当たり障りのない話題が良いでしょう。応募者は、面接官の反応や話し方から、人柄を観察しています。やわらかい雰囲気で話すことを意識すれば、応募者にも良い印象を与えられるでしょう。
アイスブレイクで雰囲気づくりができたら、面接官から自社の沿革や事業内容、求人を出した背景について説明します。前述したように、採用面接は応募者が入社先を選ぶ場でもあります。
そのため、企業理念や将来のビジョンといった、自社の魅力が伝わるような説明をすることが大切です。理念やビジョンに対し、応募者の共感を得られれば、入社意欲の向上につながるでしょう。
中盤:応募者への質問
自社の説明を終えたら、応募者への質問に入ります。質問に入る前に、応募者に自己紹介をしてもらうのが一般的です。応募者の緊張がみられる場合は、軽く質問をはさみながら進行すると良いでしょう。
自己紹介が終われば、応募者に対する質問に入ります。はじめに確認しておきたい内容は、経歴についてです。履歴書や職務経歴書の内容に沿って質問することにより、記載事項の誇張や誤記がないかを確認します。
中途採用者に対する面接の場合、前職の業務内容や役割のほか、やりがいを感じた業務や不満、退職理由についても質問しましょう。経歴について確認したら、志望動機や入社意欲について質問します。
将来の目標や自社でやりたいことを掘り下げれば、応募者の理解がさらに深まります。自社を知った経緯を確認しておけば、今後の採用活動にも活かせるでしょう。
このフェーズは、応募者が自社に合う人材かどうかを見極めるための重要なフェーズです。応募者が入社した後の姿をイメージできるよう、多角的な質問をすることが大切です。事前に質問シートを作成し、自社が求める人物像に近いかどうかを見極められるようにしましょう。
後半:応募者からの質問
応募者への質問を終えたら、応募者からの質問時間を設けましょう。面接は応募者の不安や疑問を解消する場でもあります。応募者からの質問は、入社意欲の高さを測る指標にもなります。積極的に質問してくる応募者や、自社の業務内容や社風について踏み込んだ内容を質問してくる応募者は、入社意欲が高いと捉えても良いでしょう。
応募者からの質問に答える際に、見栄を張って誇張してしまうケースがあります。誇張した結果、入社後にギャップを感じ、早期退職につながってしまっては意味がありません。答えにくい質問でも、正直に答えることが大切です。
応募者からの質問を終えたら、採用結果がでる日程の目安や連絡方法について説明します。必要な連絡事項を終えたら、採用面接は終了です。
面接官に必要なスキル
面接官に必要な主なスキルには、以下の2つが挙げられます。
・ コミュニケーション能力
・ 判断力や柔軟性
ここでは、それぞれの能力について解説します。
コミュニケーション能力
応募者と対話する採用面接において、コミュニケーション能力は欠かせないものです。採用面接は、面接官と応募者が初めて対話する場であり、打ち解けるまでに時間がかかります。面接官にコミュニケーション能力がなければ、面接の場で打ち解けられず、応募者の考えや特性を引き出せません。
適切な話し方や適切な言葉を、応募者や面接時の状況に合わせて選択し、話を引き出す力が、面接官に求められています。
判断力や柔軟性
判断力や柔軟性も、面接官には必要です。人は、思い込みや感情によって認知が左右されてしまい、これを「認知バイアス」といいます。しかし、面接では面接官の思い込みではなく、客観的な視点で応募者をみることが求められます。そのため、面接官には認知バイアスに左右されず、冷静に判断できる力が必要です。
また、面接ではあらかじめ準備した質問項目に沿って質問をすることが基本であるものの、状況によっては準備した質問だけでは応募者の特性を見極められないケースがあります。
その際は、質問内容を変更したり、順番を変えたりといった臨機応変な対応が必要です。予定通りに進まない場合に対応できる柔軟性も、面接官には求められています。
面接でみるべきポイントとNG行為
面接でみるべきポイントには、以下の2つが挙げられます。
・ 身だしなみやマナーを守れているか
・ スムーズにコミュニケーションをとれるか
また、面接では質問してはいけない内容が存在します。ここでは、面接でみるべきポイントと質問してはいけない内容について解説します。
身だしなみやマナーを守れているか
面接時にみるべきポイントとして挙げられるのは、身だしなみやマナーです。服装や持ち物、髪型に清潔感があるかどうかを確認しましょう。面接は応募者にとって人生を左右する場です。そのような場において身だしなみに気をつけられないのであれば、入社後の重要な場面でも、同様のことが起こる可能性があると考えられます。
時間についても同様です。ただし、電車遅延や急な体調不良など、やむを得ない場合もあるでしょう。その場合は、事前連絡や到着時に謝罪の言葉の有無が、マナーを身につけているかを見極めるポイントです。
また、面接前待機中の態度は良くないものの、面接が始まると態度が変わる人もいます。その人の本来の姿に近いのは、面接時ではなく控室での態度です。待機中の態度も観察し、応募者の本来の姿を見極めることもポイントです。
スムーズにコミュニケーションをとれるか
スムーズにコミュニケーションがとれるかどうかも、面接時にみるべきポイントです。入社後、共に業務に携わるうえで、コミュニケーションは欠かせません。スムーズなやり取りができないのであれば、業務でも同様のことが起こると考えても良いでしょう。
スムーズなコミュニケーションがとれているかを判断する基準は以下のとおりです。
・ 質問に対して、的を射た受け答えができているか
・ 聞いていないことまで延々と話し続けていないか
しかし、応募者の中には、緊張で普段のような受け答えができない人もいるでしょう。そのため、応募者の緊張をどれだけほぐせるかも、面接の精度を上げる条件になります。
質問してはいけない内容
厚生労働省によると、面接では、本人のプライバシーを侵害する内容や業務に関係のない内容の質問は配慮すべきとされています。配慮すべき内容には以下のものが挙げられます。
本人に責任のない事項の質問
・ 本籍地や出生地
・ 家族
・ 住宅状況
・ 生活環境や家庭環境
本来自由であるべき事項の質問(思想・信条にかかわること)
・ 宗教
・ 支持政党
・ 人生観や生活信条
・ 尊敬する人物
・ 思想
・ 労働組合(加入状況や活動歴など)や学生運動などの社会運動
・ 購読新聞や雑誌、愛読書
出生地や家族、尊敬する人物、愛読書などは、面接時に質問してしまいそうな内容です。これらは、就職差別につながる可能性があるため、配慮が必要となっています。結婚や交際相手の有無についても、セクハラや男女雇用機会均等法に接触するため、質問してはいけません。
違反した場合、行政指導の対象となり、罰則を受ける可能性があります。配慮が必要とされている質問をされた応募者がSNSに投稿し、拡散されれば、企業イメージが下がることも考えられます。そのため、面接官に対する研修を実施し、企業として対策を打つことが大切です。
参考:厚生労働省「公正な採用選考の基本」
面接で質問する際のポイント
面接での応募者への質問では、どれだけ情報や応募者の考え方を引き出せるかが重要です。特に、退職理由やこれまで経験してきたことを深掘りすれば、応募者の考え方を理解できます。ここでは、それぞれの質問をする理由や質問時のポイントについて解説します。
前職の退職理由と転職理由
中途採用の応募者は、前職に不満を感じて転職活動をすることが多いでしょう。そのため、退職理由を深掘りすれば、応募者が就職先に求めている条件が把握できます。応募者が就職先に求める条件がわかれば、自社とのマッチングも判断しやすくなるはずです。
退職理由に関する質問例は、以下のとおりです。
・ なぜ、1年後ではなく、今退職することを決めたのですか?
・ 今後、転職をするとしたら、どのような理由が考えられますか?
ただし、退職理由にはプライベートな理由が関係しているケースもあります。その場合、深掘りすると、前述した配慮が必要な内容に該当する恐れがあるため、注意が必要です。
学生時代やキャリアでの経験
学生時代やこれまでのキャリアで苦労したことを深掘りすれば、応募者の仕事に対する姿勢や自社の業務を任せられるかどうかが見極められます。履歴書や職務経歴書の内容を参考に確認していきます。
応募者の回答に対してさらに質問すれば、内容の深掘りができるでしょう。学生時代やキャリアで苦労したことに関する質問例は、以下のとおりです。
・ 前職では、どのような仕事をされていたのですか?
・ 前職(学生生活)で得られた成果と、その成果を得るためにどのようなアプローチをしましたか?
・ 数人のグループで仕事をするとき、どのような役回りをしていましたか?
・ 仕事で一番やりがいを感じるのは、どんなことですか?
・ 経歴の中で成長できた出来事や大きな成功を収めた出来事をお話しください
・ 〇〇(技術や知識)は、どれくらいの経験がありますか?
まとめ
採用面接の目的は、書類だけではわからない応募者の特性や考え方を理解し、自社に合う人材か見極めることです。自社への入社意欲を向上させることも、採用面接の目的のひとつです。そのため、面接官には、コミュニケーション能力と判断力や柔軟性といった能力が求められます。
採用面接では、応募者が質疑応答した内容だけでなく「身だしなみやマナーを守れているか」「スムーズにコミュニケーションをとれるか」をみることがポイントです。ただし、面接では質問してはいけない内容が存在するため、配慮が必要とされている質問内容を理解したうえで、面接に挑む必要があります。
応募者への質問では、退職理由やこれまで経験してきたことを深掘りし、どれだけ情報や応募者の考え方を引き出せるかがポイントです。事前に質問シートを作成するとともに、面接官に対する研修を実施し、企業として採用面接に取り組むことにより、自社に合った人材の獲得につながるでしょう。
《ライタープロフィール》
ライター:田仲ダイ
エンジニアリング会社でマネジメントや人事、採用といった経験を積んだのち、フリーランスのライターとして活動開始。現在はビジネスやメンタルヘルスの分野を中心に、幅広いジャンルで執筆を手掛けている。