労災が起きたら~対応と届出~
今回は労働災害のうち、労災が起きてしまった場合の対応と届出について取り上げます。労働災害が発生した場合、発生状況や怪我の程度、また派遣先の作業状態や職場環境の確認、さらに職場復帰のサポートや家族への対応まで行う必要があります。
労災が発生した際に対応すること
労働災害や交通災害の多くは緊急を要します。また就業している派遣スタッフについては営業担当がその場に居合わせることはほとんどありませんので、詳しい状況はなかなかわかりにくいものです。派遣先担当者は、人命救助を最優先にし派遣元に連絡の上、指揮命令者などに発生状況を確認してください。また労災の「認定・不認定」は労働基準監督署長が行います。一般企業で判断するものではありません。
※被災スタッフへの対応
大きなダメージを受けている被災スタッフは通常の思考が出来ない状態と考えます。被災状況によっては会話がままならない、意思疎通が出来ない状態かもしれませんが、出来るだけ積極的に話しかける、病院への付き添いを行うなど、被災スタッフがどのような状態なのかを見極めながら適切な対応を行います。
業務上の災害について
[1] 治療は労災保険を使うこと <健康保険は使えません!!>
[2] 休業のうち最初の3日間は会社が補償する
労災認定され、国から休業補償が支給されるのは労災後4日目以降です。
最初の3日間は会社からの支給となります。また支給額は平均賃金の60%となります。有給休暇がある場合は有給休暇を取得しても構いませんが、補償時には有給休暇取得分は控除されます。
[3] 休業4日以上の災害は遅滞なく労基署に報告義務がある「労働者死傷病報告」という書式を派遣先・派遣元双方が提出することになります。
[4] 解雇制限
労災で休業した場合、労災で休業中また仕事復帰後30日は解雇出来ないことになっています(労基法19条)。
通勤・帰宅途上の災害について
[1] 被害事故は加害者の損害保険(車両の自賠責保険)を使用
事故に相手方が居る場合、労災保険は適用せず、相手方の任意保険を使用します。ただし、自損事故や相手方車両の自賠責保険が使えない、又は自賠責保険の限度額を超える際には労災保険を適用する場合もあります。
[2] 通勤経路の逸脱
会社に届け出ている通勤経路を外れ、寄道などをした場合の通勤災害は通勤(帰宅)途上として取扱いされないケースがあります。また、合理的な理由がなく、本来の通勤経路を遠回りした場合なども通勤(帰宅)途上として取り扱われないケースがあります。この際の「合理的な理由」には個別具体的に判断する必要があります。
[3] 災害後3日間は補償無し
事故の相手方がなく、自損事故のような場合に労災保険を適用するケースがありますが、この場合は業務上の災害と異なり、最初の3日間は補償されません。休業4日目以降は労働基準監督署で認定後、労災保険から補償されます。支給額は1日につき平均賃金の60%となります。また有給休暇がある場合は有給休暇を取得しても構いません。ただし、労働基準監督署で「労災」と認定された場合、補償時には有給休暇取得分は控除された額が補償額となります。
[4] 解雇制限
業務上の災害と異なり、通勤途上災害の場合は、怪我などにより長期に勤務できない等の正当な理由があれば、解雇制限などの労基法の労働災害の規程が適用されることはありません。しかしながら、たとえ正当な理由があったとしても、仕事復帰できないスタッフを安易に中途終了させることは後々トラブルになる可能性も想定されますので慎重な対応が必要です。
ケガ(腱鞘炎・慢性腰痛など)について
[1] 認定されるまで時間を要する
腱鞘炎や腰痛は、通常の労働災害に比べて労働基準監督署が「労災である」と認定するまでには相当時間がかかります。
また腰痛は日常生活や心理的ストレス、働き甲斐の低さなど、心理的、社会的な要因が複雑に絡んでいると考えられ、単に同じ姿勢で何時間も作業し続けただけでは認定されないケースが多いのが実状です。
その他、労働基準監督署の調査にあたり、
・派遣先企業への現場調査に協力いただくこと
・派遣先企業の業務量を確認出来る資料等を提供いただくこと
・当該スタッフの既往歴、派遣先で実施した健康診断結果の提出
・当該スタッフの過去稼働状況、仕事内容がわかる資料の提出
・同僚スタッフ、従業員のヒアリング
など、派遣先の協力も不可欠です。
届出
●様式5号
労災が発生した場合、まずは医療機関で治療することになります。その際、病院に提出する書式が「療養補償給付たる療養の給付請求書」(様式5号)になります。
●様式23号
労災が発生し労働者が4日以上休業する場合は「労働者死傷病報告」(様式23号)を労働基準監督署へ速やかに報告しなければなりません。
まとめ
労災が発生したら、まずは安全を確認したうえで速やかに対応する必要があります。派遣元の担当者に連絡の上、指揮命令者などに発生状況を確認してください。また、労働基準監督署にも相談を仰ぎ、適切に対処するようにしましょう。