仕事の指示の仕方で変わる、部署の業績と部下の成長
今回はリクルートワークス研究所の主任研究員・萩原 牧子氏による、「仕事の指示の仕方で変わる、部署の業績と部下の成長」をテーマにした論文をご紹介します。調査データなども交えて、仕事の指示についてのポイントを探っていきましょう。
「仕事の指示」に関する悩み
・業績をあげること、部下を育成することの両方のミッションをどのように達成すればよいのか?
・日々どのように部下に仕事を指示すればよいのだろうか?
初めて部下をもつことになった新任マネジャーはもちろん、長年経験を積んできたベテラン管理職でさえ、「仕事を指示すること」について悩んでいることと思います。ここでは、上司の仕事指示の仕方に注目し、それが、部署の業績や部下の成長に与える影響について考察してみましょう。
首都圏で働く個人を対象に実施している「ワーキングパーソン調査2014」では、「直属の上司のふだんの仕事指示の仕方(16項目)」と併せて、直属の上司が管理する「部署の業績」の良し悪し、「部下(回答者本人)の成長実感」の有無についてもそれぞれ尋ねています。以下では、これらの関係を見ていきます。
※分析対象は回答者が正社員フルタイム勤務で20歳から49歳に限定しています。
業績と育成に効果の高い仕事指示とは
「部署の業績」と「部下の成長実感」への効果の違いをみるために、ぞれぞれの上司のふだんの仕事指示の仕方に関して、「あてはまる」「どちらかというとあてはまる」と回答したグループと「あてはまらない」「どちらかというとあてはまらない」と回答したグループで効果の差分を計算し、「部署の業績」と「部下 の成長実感」それぞれで、差が大きいものから順に5つ並べました。
まず「部署の業績」への効果が高い項目をみると、部下が不要な仕事に埋もれず、また、必要以上に悩むこともなく、重要な仕事に集中することで、仕事の精度を高め、部署の業 績に貢献しているという流れが見えてきます。
一方で、「部下の成長実感」への効果が高い項目をみると、上司による部下の仕事の方向付けや取り組み方の軌道修正が、部下の成長実感を促すことに繋がっている様子がうかがえます。
順序こそ異なりますが、「部署の業績」にも「部下の成長実感」にも、上位に並ぶ項目は、かなり共通していることがわかります。正しく仕事を指示すれば、「部署の業績」をあげることと「部下に成長を感じさせる」ことは、同時に達成できるということが言えそうです。
自身の仕事の指示の仕方を見直そう
一つひとつの仕事の指示項目をみると、どれも当たり前のことではないかと思うかもしれません。しかし、その当たり前のことを、しっかりと実行できているのか否かが重要になります。先ほど挙がった効果の高い仕事指示について見てみると、高いものでも4割強、「フィードバック」に関しては3割強しか行われていません。そんなはずはない、と思うかもしれませんが、これが部下からの評価なのです。
一方で、「部署の業績」にも「部下の成長感」にも悪影響を与えかねない仕事の指示として、3割弱から2割強の回答がありました。
まとめ
「できている」と思っている仕事の指示、「こんなことはやっていない」と思っている仕事の指示、ふだんのご自身のやり方について、これを機会に見直してみると、部署の業績と部下の成長に、思わぬ効果が表れるかもしれません。