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サテライトオフィスとは?メリットや導入時の課題、使い方を解説

サテライトオフィスとは?メリットや導入時の課題、使い方を解説

新型コロナウイルス感染・拡大防止のため、在宅勤務を迫られても、「自宅は集中して仕事に打ち込める環境ではない」といった悩みを抱える人も多く、課題となっています。そこで、新たな働き方の1つとして注目されているのが、「サテライトオフィス」です。

サテライトオフィスとは、ひとことでいえば、企業の本社・本拠地から離れた場所に設置する小規模なオフィスのこと。今回は、このサテライトオフィスのメリットや導入方法などについて解説します。

サテライトオフィスとは

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総務省によると、サテライトオフィスは「企業または団体の本拠から離れた場所に設置されたオフィス」と定義されています。本拠地を中心としてみたときに衛星(satelliteサテライト)のように存在するオフィスという意味合いから、この名称が付けられたといわれます。また、支店や支社よりも、小スペース・少人数での利用を前提としています。

支店や支社が、その地域で事業活動を推進するための拠点であるのに対して、サテライトオフィスは、テレワークといった従業員の多様な働き方に合わせて、働く場所の選択肢の1つとして提供されているのが特徴です。

BCP(事業継続計画)対応としても注目


もともとサテライトオフィスは、地震や台風などの災害時に、企業の本拠地が機能停止になっても、遠隔で事業活動を継続できるようにするBCP(※)の観点から導入が進んでいました。昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大により、従業員を分散させ、一極集中によるクラスターを避ける感染対策の一環として注目されています。

※BCP:中小企業庁より
BCP(Business continuity planning:事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時におこなうべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のこと。

サテライトオフィスの種類

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サテライトオフィスは、設置場所によって大きく3種類に分けられます。

都市型


企業の所在地が都市部にあり、サテライトオフィスも同じエリア内に設置されているパターンです。営業スタッフがわざわざ本拠地に戻ることなく、最寄りのサテライトオフィスで仕事をできるようにすることで、本拠地までの移動にかかるコストや時間の短縮、残業の削減などにつながります。
同様の理由から地方の企業が都市部にサテライトオフィスを設ける場合もあります。また、新規事業のためのオフィス拡大を目的に設置されるケースもあります。

地方型


企業の所在地が都市部にあり、離れた地方にサテライトオフィスが設置されているパターンです。テレワークの拡大にともない、環境の良い地方に引っ越す人などが増えており、そうしたニーズに応える拠点となっています。地方に住んでいる新たな人材の確保や、新規事業で用いる企業の活動拠点としても利用されます。地方の雇用活性化にもつながるため、地方の自治体によって積極的に誘致が進められています。

郊外型


企業の所在地が都市部にあり、都市郊外のいわゆるベッドタウンなどにサテライトオフィスが設置されているパターンです。もともとベッドタウンに住んでいる人の通勤時間の短縮や、仕事と育児・家事・介護との両立といった従業員のワークライフバランスを実現させる拠点となっています。

サテライトオフィスの導入方法と導入状況

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サテライトオフィスの導入方法


サテライトオフィスは、企業の本拠地から離れた小規模なスペースに、通常業務がおこなえる環境を用意することで導入できます。自社でオフィススペースの確保することが難しい場合は、月単位での契約が可能なレンタルオフィスやコワーキングスペースといった、シェアオフィスを利用する方法もあります。パソコンやコピー機、電話、通信環境などが十分に整っているシェアオフィスでは、利用初日から業務を開始できるところもあります。

※サテライトオフィスを対象にした補助金制度
本拠地が都市部にある企業が、地方にサテライトオフィスを設置する場合に費用の一部を補助する「ふるさとテレワーク」といった補助金制度や、各地方自治体が補助金制度を設けています。東京都も、都内の市町村部へのサテライトオフィス新設を対象にした補助金制度を設けています。
また、総務省は、地方自治体が準備するオフィス施設を「お試し」で利用できる、「お試しサテライトオフィス」を提供しています。

サテライトオフィスの導入状況


サテライトオフィスを導入している企業は年々増加しており、地方自治体が誘致していることもあり、地方に設置するパターン(地方型)が多い傾向にあります。
総務省の調査では、地方に展開するサテライトオフィスが増加したことで、地方企業と提携した新しいビジネスの創出や雇用の増加などの効果が生まれています。

サテライトオフィスと在宅勤務との違い

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サテライトオフィスでの勤務も、在宅勤務も同じテレワークですが、サテライトオフィスは業務に集中できる環境が整っているため、集中して一気に仕事を片付けたいときなどに向いています。また、自宅には最適なパソコン環境やデスク回りがそろっていない、大型のコピー機やFAXがないという場合にサテライトオフィスを利用するというケースもあります。

在宅勤務は普段生活している環境の中で仕事ができるため、育児・家事・介護との両立がはかれる一方で、「仕事に集中しにくい」を感じている人も多くいます。

サテライトオフィスを導入できる業種


在宅勤務の場合、在宅で業務をおこなえる業種に限って導入できますが、サテライトオフィスは外回りの営業職など在宅勤務が難しい業種でも利用できます。

コミュニケーション手段


在宅勤務はチャットツール、メール、電話が主なコミュニケーションツールになりますが、サテライトオフィスでは直接の会話でのコミュニケーションも可能です。また、自宅よりも通信環境が良い場合が多いので、遠隔でのウェブ会議の際に、サテライトオフィスの会議スペースを利用するというケースもあるようです。

サテライトオフィスのメリット

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サテライトオフィスのメリットについて、見ていきましょう。

従業員の健康管理・維持


在宅勤務だとどうしても、日々の運動不足が慢性化したり、仕事とプライベートの切り替えがうまく行かずに残業が増えたり、孤独感からメンタルヘルス不調になったりと、従業員の体調が悪化するケースがあります。

サテライトオフィスを利用すれば、サテライトオフィスまで通勤することで運動不足解消が見込めます。自宅から近い場合は、自転車通勤をすることで適度な運動とリフレッシュ効果も期待できます。
また、自宅から出て通勤することで仕事とプライベートとのメリハリが付きますし、サテライトオフィス内で人と接することで孤独感も解消することができます。

人材確保


地方型のサテライトオフィスの場合、企業の所在地から遠方に在住する人材の確保や新規顧客の開拓に役立ちます。前述したように、最近はテレワークの拡大で、環境の良い田舎に移動する人が増えています。そうした人のニーズを満たし、優秀な人材の確保にもつながります。

生産性向上


オフィスの利用人数が少人数のため、業務に集中できる環境が作りやすく、一人ひとりの生産性の向上につながります。従業員個々の働き方、時と場合によって、自由に在宅勤務とサテライトオフィス勤務を使い分けてもらうなど、従業員が働きやすい環境を提供することができます。

サテライトオフィス導入の課題

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サテライトオフィスの導入にあたっては、次のような課題があります。

業務上のコミュニケーション


サテライトオフィス勤務の場合、主なコミュニケーションツールとしてチャットツール、メール、Web会議システム、電話などが利用されていますが、相手が遠隔の場合、会話の温度感を伝える事が難しく、予期しない行き違いが起こる可能性が高くなります。
そのため、対面時よりも密なコミュニケーションを意識する必要があります。これは、在宅勤務を含めたテレワーク全体の課題ともいえます。

情報セキュリティの強化


これもテレワーク全体に共通する課題ですが、外部から社内サーバーにアクセスするため、VPN構築などといったサーバーセキュリティの強化が必要になります。
また、在宅と違って、シェアオフィスを利用したサテライトオフィスの場合は、他社も同じ建物・フロアを利用している場合があります。ウェブ会議の音が漏れて企業や取引先の情報が漏れたり、席を立ったときにパソコン上の重要な情報を見られたり、貴重品を盗られたりといったリスクもあります。従業員個々人のセキュリティ意識を高めてもらうことが必須となります。

オフィススペースの確保


シェアオフィスを利用できない場合、通常のレンタルスペースにてオフィス環境を整える必要があるため、手間とコストが必要になります。支社や支店を設置するよりは低いものの、従業員が快適に働くためのデスクや椅子、パソコン機器や通信環境の整備のほか、コピー機が必要な場合もあります。

こうした課題から、サテライトオフィス導入に二の足を踏む企業もいるでしょう。その場合は、前述した「お試しサテライトオフィス」などを利用し、実際にサテライトオフィスでの執務を体験してみて、検討してみるのも良いかもしれません。

まとめ


1つのオフィスに全員が定時に出社する働き方が必要とされなくなってきた今、企業にとって大事なのは、従業員が働きやすい環境を整えることです。在宅勤務やサテライトオフィスの導入により、従業員は生活や状況に合った働き方を実現することができます。
シェアオフィスを利用したり、国のサービスや補助金などを活用したりすることで、必要最低限のコストで導入することが可能になっています。ぜひご検討してみてはいかがでしょうか?