閉じる

離職率が高い会社の特徴とは

離職率が高い会社の特徴とは

人材の定着率の改善に取り組んでいる人事担当者がいるでしょう。離職率が高い会社には、評価制度や労働時間、人間関係といった問題を抱えているケースが考えられます。

離職率が高い場合、慢性的な人手不足になるだけでなく、企業イメージの低下や業務効率の悪化といった企業の業績にも影響するかもしれません。この記事では、離職率の平均や離職率が高いことによる問題、離職率が高くなる原因のほか、離職率を下げる方法について解説します。

離職率の平均はどのくらい?

離職率とは、一定期間に働いていた従業員のうち、離職した従業員の割合を示す指標です。厚生労働省では「常用労働者数に対する離職者の割合」と定義しています。

自社の離職率の高さを判断する指標として参考になるのが、厚生労働省から発表されている雇用動向調査結果です。この調査では、全体の離職率だけでなく、男女別や雇用形態別、産業別の離職者数も確認できます。

全業界での平均離職率だけでなく、自社と同じ業界の平均離職率も参考にすれば、自社の状況をより把握できるでしょう。

参考:厚生労働省「-令和4年雇用動向調査結果の概況-

離職率の算出方法

離職率の算出方法は以下のとおりです。

離職率=離職者÷常用労働者数×100%

一般的に1月1日を期初として、在籍社員数を分母、その後1年間での離職者数を分子とします。例えば、1月1日時点での在籍社員数が100名で5名が離職した場合、離職率は5%です。

新卒の離職率を算出したい場合は、新卒入社人数を分母とし、その中での離職者数を分子として算出します。

離職率の平均

2022年度の日本企業における離職率は15%でした。2021年度の13.9%より上昇したものの、2008年度からの15年間では14%~17%の間で推移していることがわかります。


業界別では「宿泊業、飲食サービス業」が最も高く、「生活関連サービス業、娯楽業」「医療、福祉」「教育、学習支援業」と続いています。


離職率の高さをみる際は、新卒3年以内の離職率も参考になります。厚生労働省が2022年10月に発表した調査結果によると、就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が35.9%、新規大学卒就職者が31.5%でした。

全体の離職率と同様に、就職後3年以内の離職率についても、過去30年間で大きな変動がないことを理解しておきましょう。

厚生労働省「-令和4年雇用動向調査結果の概況-」

厚生労働省「学歴別就職後3年以内離職率の推移」

離職率が高いとどうなる?

離職率が高い会社の特徴とは_2

離職率が高い企業では、以下のような問題に直面することが想定できます。

・   慢性的な人手不足
・   企業のイメージ低下
・   業務効率の悪化

ここでは、それぞれの問題について解説します。

慢性的な人手不足

離職率が高い企業は、慢性的な人手不足になる可能性が高いです。離職が続き、欠員に対する補充が追いつかない場合、これまでの業務量をこなせません。結果的にひとり当たりの業務量が増え、従業員の負担が増加します。

増加した業務量をこなすには、残業が必要です。ひとり当たりの労働時間が増加すれば、さらに離職率を高め、優秀な人材が流出する可能性もあるでしょう。

また、ひとり当たりの業務量が増えれば、教育に使う時間も少なくなります。教育する時間が少なくなれば、人材育成も遅れ、人手不足が慢性化する可能性があるのです。

企業のイメージ低下

離職率が高い企業は、イメージが低下します。企業ごとの離職率は、一般的には公開されません。しかし、離職率が高い事実は、求人情報の掲載頻度や離職者のクチコミ、担当者の交代といった事象によって周囲に伝わります。

これらの事象によって離職率が高いと認識された企業は、職場環境に何かしらの問題を抱えていると思われるでしょう。問題を抱えていると認識された企業は、周囲から良い印象を持ってもらえません。取引や採用活動にも影響する可能性があります。

業務効率の悪化

業務効率の悪化も、離職率が高い企業で発生する問題です。従業員の離職は、労働力が不足するだけではありません。これまで担当していた従業員が離職した場合、新たな担当者がつきます。

しかし、新しい担当者が前任者と同じように業務をこなすことは簡単ではありません。多くの場合は、以前のようには進まず、進捗に影響するでしょう。そうなると、担当者の負担が増加し、さらなる離職者がでてくる可能性があります。

離職者が続いた場合、業務に対するノウハウやスキルが継承されないため、業務効率はさらに低下します。離職者の増加は、業務効率においても悪循環となるのです。

離職率が高くなる原因

離職率が高い会社の特徴とは_3

離職率が高くなる原因には、以下の5つが挙げられます。

・   評価制度が適切ではない
・   長時間労働の常態化
・   給料と業務が見合っていない
・   人間関係の悪化
・   採用のミスマッチ

ここでは、それぞれの原因について解説します。

評価制度が適切ではない

離職率が高くなる原因として、評価制度が適切ではないことが挙げられます。明確な評価基準が公開されていなかったり、上司による主観的な評価をされていたりする場合、従業員からすると「正しい評価をされているのか」と不信感を持ってしまいます。

適切に評価されていないと感じた場合、従業員のモチベーション低下につながり、離職を考える人がでてくるでしょう。

長時間労働の常態化

2つ目の原因として、長時間労働の常態化が挙げられます。離職率が高い企業では、慢性的な人手不足となっているため、長時間労働が常態化する傾向にあります。

長時間労働が続いた場合、従業員は仕事とプライベートのバランスが取れず、心身ともにストレスを感じ、離職を考えるのです。近年では、働き方改革により労働時間の削減が叫ばれ、時間外労働時間の上限規制も強化されました。

労働時間の規制が強化されているのにもかかわらず、長時間労働が常態化している場合、企業体質として染みついている可能性があります。そのような企業体質に嫌悪感を持ち、離職を考える人もいます。

給料と業務が見合っていない

3つ目の原因として、給料と業務が見合っていないケースが挙げられます。給与が同業他社の給与水準と乖離している場合や、与えられている責任に対して給与が低いと感じた場合、従業員は不信感を持ちます。

将来的に給与が上がる見込みがあれば、離職を考える従業員は少ないかもしれません。しかし、今後も給与が上がる見込みが薄いと判断された場合、従業員は離職を考えます。

人間関係の悪化

4つ目の原因として挙げられるのは、人間関係の悪化です。上司との関係性だけではなく、部下や同僚との関係性が悪化したことにより、離職するケースもあります。

また、パワーハラスメントやセクシャルハラスメント、モラルハラスメントといった、ハラスメントが横行しているケースもあるでしょう。ハラスメントが横行している場合、被害を受けている従業員の健康に被害を及ぼすだけではありません。

職場全体の雰囲気が悪化し、その問題が明るみにでれば、企業イメージが低下する可能性も考えられます。

採用のミスマッチ

5つ目の原因として挙げられるのは、採用のミスマッチです。入社前に抱いていたイメージと入社後のイメージが乖離している場合や、事前に聞いていた条件と異なっている場合、従業員は企業に対して不信感を持ちます。

また、採用後の教育や業務のサポートが十分ではない場合、従業員がストレスを感じます。採用後に不信感やストレスを受けることにより、離職を考えるでしょう。

離職率を下げる方法

離職率が高い会社の特徴とは_4

離職率を下げる方法として、以下の3つが挙げられます。

・   評価制度の見直し
・   業務量の見直し
・   職場環境の改善

ここでは、それぞれの方法について解説します。

評価制度の見直し

離職率を下げる方法として、評価制度の見直しが挙げられます。前述したように、評価制度が適切ではない場合、従業員が不信感を持つ可能性があります。従業員が納得感を持つ評価制度にするには、客観的かつ定量的な評価基準にすることが大切です。評価基準を見直す場合は、評価者への教育も実施しましょう。

どんなに適切な評価制度でも、従業員が評価制度に対して不信感を持っていては意味がありません。評価制度に対する不信感を払拭するためには、評価基準を従業員に公開することも大切です。

情報の開示を実施するだけでなく、説明会を開催し、経営陣から従業員に直接意図を伝えることにより、納得感を得られるでしょう。

業務量の見直し

業務量の見直しも、離職率を下げる方法に挙げられます。前述したように、長時間労働が離職の原因となるケースがあります。長時間労働による離職を削減するためには、業務効率化により業務量を減らすことが有効です。システムやデジタルツールの導入はもちろん、業務を整理し、無駄な作業や工程をなくすだけでも業務量が削減できます。

人員が不足しているのであれば、外注や派遣を活用するほか、短時間勤務やテレワークを導入し、働く時間が限られている人材や離れた場所にいる人材を活用することも重要です。

職場環境の改善

職場環境の改善も、離職率を下げる方法のひとつです。人間関係に問題があれば、上司や人事担当者との定期的な面談の実施や社内SNSの導入、社内交流イベントの実施により、コミュニケーションの機会を増やすことが有効です。

従業員が相談しやすい環境をつくることも職場環境の改善につながります。別の部署の先輩社員が相談役となる「メンター制度」や、同じ部署の先輩が相談役となる「ブラザーシスター制度」を導入すれば、若手従業員のサポートができるでしょう。従業員を企業がサポートする制度を導入すれば、従業員の責任感を育むことにもつながります。

また、福利厚生の改善も大切です。職場以外で過ごす時間にも目を向け、従業員がどのような働き方を望んでいるのかを理解することにより、より良い職場環境の改善につながります。

まとめ

離職率が高い会社の特徴とは_5

離職率が高い企業は、慢性的な人手不足や企業のイメージ低下、業務効率の悪化といった問題に直面することが想定できます。離職率が高くなる原因として、不適切な評価制度や長時間労働の常態化、給料と業務が見合っていないといったことのほか、人間関係の悪化や採用のミスマッチが挙げられます。

離職率を下げるには、評価制度の見直しや業務量の見直し、職場環境の改善に取り組むことが大切です。近年では働き方に対する考え方も変化しています。職場以外で過ごす時間にも目を向け、従業員がどのような働き方を望んでいるのかを理解することが大切です。
 


《ライタープロフィール》
ライター:田仲ダイ
エンジニアリング会社でマネジメントや人事、採用といった経験を積んだのち、フリーランスのライターとして活動開始。現在はビジネスやメンタルヘルスの分野を中心に、幅広いジャンルで執筆を手掛けている。