派遣の研究職とは?仕事内容や派遣で働くメリット・デメリットを解説

派遣の研究職とは?仕事内容や派遣で働くメリット・デメリットを解説

研究職を目指しているものの、正社員への採用がうまくいかない方や、知識不足から研究職への道を不安に思う方もいるでしょう。研究職として働く方法のひとつとして、派遣があります。

本記事では、研究職の概要や派遣で働く場合の条件のほか、派遣で働くメリット・デメリットや派遣期間後も同じ職場で働き続ける方法について解説します。

研究職とは?

研究職とは、企業や大学、研究機関などで製品開発や新しい技術の研究をする職種です。研究職には研究段階によって大きく3つの職種があり、職種によって仕事内容も異なります。また、大学と民間企業でも研究内容が異なります。

研究職の職種

研究職の職種は、大きく以下の3つに分けられます。

研究職の職種

概要

基礎研究

・新しい技術や原理原則の発見を目的とした研究
・仮説を立てる力や発想力、忍耐力が求められる

応用研究

・基礎研究で発見された知識や技術をもとに、実用的な技術にすることを目的とした研究
・すでに実用化されている技術の新しい使い道を模索する研究も該当する
・技術の本質を見抜く力と応用力が求められる

開発研究

・基礎研究や応用研究から得た知識や技術をもとに新しい製品、システムの開発を目的とした研究
・市場のニーズを把握する力が求められる

参考:文部科学省「資料3-2 戦略的な基礎研究に関する現状整理

仕事内容

研究職の主な仕事内容は、以下のとおりです。

● 研究計画の立案と実施:新しい技術や製品開発に対する研究計画を立案し、実験や調査を実施する
● データ収集と分析:実験データや市場調査結果などのデータを分析する
● 技術開発と革新:先端技術や革新的なアプローチを研究し、実現の可能性を検討する
● 論文執筆と発表:研究成果を論文や報告書にまとめ、学術誌や学会で発表する
● プロジェクト管理:プロジェクトの進捗や予算を管理する
● 実用化への取り組み:製品開発や業務改善に応用するための提案や支援をおこなう

ただし、研究職の仕事内容は企業の方針やプロジェクト、職種によって異なります。

大学と民間企業の研究職の違い

大学と民間企業の研究職では、目的や仕事内容が異なります。大学の研究は技術に対する探求が目的のため、基礎研究がメインです。一方、民間企業は技術の実用化が目的のため、応用研究や開発研究がメインになります。そのため、大学に比べて研究の成果やコスト、納期に対する意識も強く求められます。

実用化に結びつかない場合は、プロジェクトが中止になることも珍しくありません。新しい技術の発見を追及するのであれば大学、より実用的な技術の研究をしたいのであれば民間企業で従事するのが適しているといえます。

研究職に多い業種

研究職に多い業種として、以下4つが挙げられます。

● 医療/医薬
● 食品
● 化学
● 機械製造

ここでは、それぞれの業種の特徴や仕事内容について解説します。

医療/医薬

病気や怪我に対して処方される薬は、製薬会社で研究が進められ製薬されたものです。製薬する手順は以下のとおりで、研究職はこれらの工程に携わります。

1. 自然素材や天然化合物、人工的化合物などから病気や怪我の治療に有効な成分を発見する
2. 有効な成分を抽出する方法や化学合成する方法を見つけ新薬の候補を作る
3. 動物実験や試験管内試験などで効果や安全性、毒性を確かめる非臨床試験を実施する
4. 非臨床試験に合格したら、人体への効果や安全性、毒性を確かめる臨床試験を実施する
5. 臨床試験に合格したら、厚生労働省に新薬承認の申請をする
6. 厚生労働省から認可が下りれば、製造・販売に移行する

医療/医薬の研究は何もない状態から治療に有効な成分を見つけだす仕事であるため、基礎研究の要素が高い業種です。

食品

日常的に摂取する食品も、食品メーカーで研究が進められ開発されたものです。食品メーカーには食肉や水産加工品、調味料、冷凍食品などさまざまな製品が存在しており、これらの研究開発や生産、品質管理に携わります。

食品の研究は、すでに存在している食材や調味料を組み合わせたり加工したりして製品を作る仕事であり、応用研究や開発研究の要素が高い業種です。

化学

プラスチックや化学繊維、合成ゴムなどの日常的に使用している製品も、研究が進められ開発されたものです。これらの製品は、原材料から化学反応を利用して製造しています。化学業界では、工程を「川」に例え、「川上・川中・川下」の3つに分類しています。それぞれの工程で作られる製品は以下のとおりです。

● 川上:石油や石炭、天然ガスなどの原材料を精製し、ナフサやエチレン、ベンゼンなどの化学製品を製造する
● 川中:川上で製造された化学製品を加工し、化学繊維や合成ゴムなどの実用製品の素材を製造する
● 川下:川中で製造された素材から衣服や洗剤などの実用できる製品を製造する

化学の研究では、工程によって求められる職種が異なります。例えば、川上であれば基礎研究、川中であれば応用研究、川下であれば開発研究の要素が高くなります。

機械製造

自動車やパソコン、時計などの機械を開発・製造するのも、研究職仕事のひとつです。機械のアイデア出し(要件定義)から設計図を作成し、設計図をもとに部品を組み立てるまでの工程に携わります。

機械製造の研究は、すでにある部品や材料を組み合わせて製品を作る仕事がほとんどです。そのため、開発研究の要素が高い業種といえるでしょう。

研究職の派遣とは

研究職は高度な知識や技術が求められるため、大学や企業で働くのは簡単ではありません。しかし、派遣社員として研究に携わることができる可能性があります。ここでは、研究職派遣の仕事内容や派遣の種類、年収について解説します。

仕事内容はプロジェクトによって異なる

研究職派遣の仕事内容は派遣先企業の方針やプロジェクトによって異なります。一般的には、研究補助者や技能者として研究の業務補助を任されるケースが多いです。研究補助者や技能者の仕事は、以下のとおりです。

● 研究補助者:研究や実験に使用する器具の取り扱いやデータの計測・記録をおこなう
● 技能者:データ分析や研究者から指示を受けたうえで研究作業をする

研究補助者や技能者として派遣された場合、あくまでも研究補助が主な仕事であり、自分が中心となって研究を進められるわけではありません。

研究職派遣の種類

派遣には、大きく分けて登録型派遣と常用型派遣の2種類が存在します。また、派遣先企業と直接雇用することを前提として派遣契約を締結する紹介予定派遣も存在します。

雇用形態

概要

登録型派遣
(有期雇用派遣)

・労働者が人材派遣会社に登録する
・人材派遣会社が労働者派遣契約を締結している企業に、労働者を派遣する
・派遣期間(同一事業所の同一部署で最大3年間まで)が定められており、派遣期間のみ賃金が発生する

常用型派遣
(無期雇用派遣)

・労働者と人材派遣会社が雇用契約を締結する
・人材派遣会社が労働者派遣契約を締結している企業に、労働者を派遣する
・労働者と人材派遣会社で雇用契約があるため、派遣期間に関わらず賃金が発生する

紹介予定派遣

・直接雇用を前提として、人材派遣会社が労働者派遣契約を締結している企業に労働者を派遣する
・派遣期間終了後、企業と労働者の合意があれば、派遣先企業と直接雇用契約を締結する

《関連サイト》
無期雇用派遣とは? メリットやデメリット、雇用条件、正社員との比較を解説

研究職の派遣の年収

令和5年度の賃金構造基本統計調査から算出すると、研究職の平均年収は約740.5万円でした。国税庁の調査では日本全体の平均年収は460万円であり、日本全体の平均と比べても高い水準です。

ただし、年収や時給は、企業規模や地域、スキルによって異なることを覚えておきましょう。

参考:e-Stat「令和5年賃金構造基本統計調査
※「職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」研究職 企業規模計(10人以上) より
「きまって支給する現金給与額」×12か月+「年間賞与」にて算出
参考:国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査

研究職の派遣で働くメリット

派遣の研究職とは?仕事内容や派遣で働くメリット・デメリットを解説_4

研究職派遣で働くメリットとして、以下の3つが挙げられます。

● 正社員に比べて研究職に携わりやすい
● 柔軟なワークライフバランスを実現しやすい
● さまざまな研究に携われる可能性がある

ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

正社員に比べて研究職に携わる機会が得やすい

研究職は、大手企業でも1卒年あたりの採用枠が10名以下というケースは珍しくありません。大学の研究室からの推薦やクローズドな募集で採用されるケースもあります。大手メーカーの新卒採用では「大学院修士課程または博士課程を修了予定の方」が応募資格となっていることもあり、高い知識や技術が求められていることがわかります。

厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「jobtag」によると、以下の職種ごとの有効求人倍率は以下のとおりでした。

● 営業(IT):3.88
● システムエンジニア(Webサイト開発):3
● 電子機器技術者:2.69
● 医療事務:2
● 地方公務員(行政事務):0.82
● バイオテクノロジー研究者:0.48

研究職に該当する「バイオテクノロジー研究者」の有効求人倍率をみても、正社員で働くのは簡単ではないことがわかります。しかし、派遣であれば研究補助ではあるものの、研究に関わる仕事には携われる可能性があります。

若い年齢や未経験の人材を募集している企業もあり、正社員と比べても研究職に携わりやすいといえるでしょう。研修制度が充実している派遣会社もあり、段階を踏んで知識や技術を身に付けていくこともできます。知識や技術を身に着け、研究補助の実務経験を積んだ、紹介予定派遣の機会があれば、直接雇用も目指せるでしょう。

参考:jobtag「ホームページ

柔軟なワークライフバランスを実現しやすい

厚生労働省の調査によると、研究者に該当する「学術研究等」の研究職の正社員の「所定外労働時間」は14.5時間/月でした。これはあくまでも平均時間であり、企業や職位によっては平均以上の人もいるでしょう。

一方、派遣は勤務時間や勤務地、勤務日数などの働く条件を選びやすい働き方です。出産や育児、介護などの事情がある場合や、プライベートを重視したい場合など、各事情に合わせた派遣先を選択できます。

ワークライフバランスやライフスタイルに合わせて働けることは、派遣の大きなメリットです。

厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和6年7月分結果確報
※第2表 月間実労働時間及び出勤日数「学術研究等」より

さまざまな研究に携われる可能性がある

派遣社員として働く場合、派遣法により派遣期間が定められているため、原則3年を超えて同じ部署での勤務はできません。しかし、考えようによってはこのルールはメリットと捉えられます。

正社員として研究職に就いた場合、新しい仕事にチャレンジしたくても、会社の都合により同じ部署で働き続けなければならないケースがあるでしょう。しかし、派遣であれば派遣期間が終了すれば別の派遣先で働くことになるため、必然的にさまざまな分野の研究に携わることができます。多様な経験を積めば、スキルアップにもつながるでしょう。

研究職の派遣で働くデメリット

研究職の派遣で働くデメリットとして、以下の3つが挙げられます。

● 補助的な仕事が多い
● 雇用が安定しない
● 正社員と比較すると給与が安い傾向にある

ここでは、それぞれのデメリットについて解説します。

補助的な仕事が多い

前述したように、研究職派遣の仕事内容は、研究補助のが一般的です。特に「未経験可」の募集や相場よりも低い時給での募集の場合、補助的な仕事である可能性が高いため、派遣会社に相談してみましょう。

その場合、研究のメイン作業や責任の大きな仕事を担当する可能性も低いため、研究に深く関わりたい人にとってはデメリットと言えるでしょう。

雇用が安定しない

登録型派遣の場合、派遣会社と雇用契約を締結しているのは派遣期間だけです。派遣期間が終了すれば次の仕事を探す必要があり、求職期間中に賃金は支払われません。

また、派遣は時給制のため、働いた時間のみ賃金が発生します。病気や怪我で休んだときや、GWや年末年始のような休日が多いときは勤務時間が減るため収入も下がります。雇用が安定しないことは、派遣で働くうえで避けられないデメリットといえるでしょう。

研究職が派遣期間後も同じ職場で働く方法

派遣の研究職とは?仕事内容や派遣で働くメリット・デメリットを解説_6

登録型派遣には派遣期間の制限があり、同一事業所の同一部署で働ける期間は原則として最大3年間までとなっています。このルールは雇用が安定しない派遣社員を守るためのルールです。

しかし、このルールが、1つの企業でのキャリアアップやスキルアップをすることを難しくしています。研究職が派遣期間後も同じ職場で働くのであれば、以下の方法をとる必要があります。

● 派遣先企業に直接雇用に切り替えてもらう
● 紹介予定派遣で勤務する
● 常用型派遣(無期雇用派遣)に切り替えてもらう

ここでは、それぞれの方法について解説します。

参考:厚生労働省「派遣先の皆さまへ

派遣先企業に直接雇用に切り替えてもらう

研究職が派遣期間後も同じ職場で働く方法として挙げられるのは、派遣先企業で直接雇用されることです。企業によっては、派遣社員から正社員になれる「正社員転換制度」を設けているケースがあります。派遣会社と派遣先企業から直接雇用を認められれば、派遣先企業の社員として派遣期間後も働き続けられます。

しかし、厚生労働省の調査によると、正社員転換制度があると回答した企業は54.6%で、そのうち66.8%が正社員に転換した実績があると回答しました。有期雇用派遣から正社員になった実績のある企業は約36%であり、決して多くはありません。

正社員ではなく契約社員として雇用契約を締結するケースもあります。直接契約=正社員というわけではないことを理解しておきましょう。

参考:厚生労働省「令和2年有期労働契約に関する実態調査(事業所調査)

紹介予定派遣で勤務する

直接雇用を見越したうえで派遣を選ぶのであれば、紹介予定派遣を利用する方法もあります。紹介予定派遣とは、派遣期間後に派遣先企業と直接の雇用契約を締結することを前提として派遣契約を締結する制度です。

紹介予定派遣を利用すれば、最長6か月間の派遣期間終了後、企業と労働者の合意があれば派遣先企業と直接雇用契約を締結できます。厚生労働省の調査によると、令和4年度に紹介予定派遣で派遣された労働者数は26,313人でした。

そのうち、直接雇用に結びついた労働者数は14,865人と、半数以上の56.5%が紹介予定派遣から直接雇用に結びついています。ただし、正社員転換と同様に、契約社員として雇用契約を締結するケースもあるため、事前に雇用形態を確認しておくことが大切です。

参考:厚生労働省「令和 4年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)

常用型派遣(無期雇用派遣)に切り替えてもらう

派遣会社との契約を無期雇用に切り替えることも、研究職が派遣期間後も同じ職場で働く方法のひとつです。登録型派遣の場合、派遣社員は派遣会社と有期の雇用契約を締結しています。この契約を無期雇用に切り替えれば派遣期間の制限がなくなるため、3年を超えても同じ派遣先で働くことが可能です。

参考:e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律

まとめ

派遣の研究職とは?仕事内容や派遣で働くメリット・デメリットを解説_7

研究職で働く選択肢のひとつに、派遣があります。研究職の派遣で働くメリットとして、正社員よりも研究職に携わる機会が得やすいことやワークライフバランスを重視して働けること、多様な研究に携われることが挙げられます。

ただし、登録型派遣で働く場合、同一事業所の同一部署では最大3年までしか働けません。派遣期間後も同じ職場で働きたいのであれば、直接雇用や無期雇用派遣に切り替えたり、紹介予定派遣で勤務したりする必要があります。

研究職の仕事内容や派遣で働く場合のメリット・デメリットを理解し、自分の将来と向き合ったうえで、働き方を選択しましょう。

スタッフサービス・エンジニアリングでは、誰もがエンジニアを目指せる世界を目指し、化学系エンジニアなど、さまざまなエンジニア派遣サービスを展開しています。登録型派遣だけでなく、正社員として雇用契約を交わしたうえで企業に派遣する「常用型派遣(無期雇用派遣)」もあります。

研究職に興味を持ったのであれば、ぜひお問い合わせください。

化学系エンジニアの派遣求人一覧の紹介
https://www.staffservice.co.jp/productengineer/kagaku/
スタッフサービス・エンジニアリングの紹介
https://www.staffservice-engineering.jp/

ライター:田仲ダイ
エンジニアリング会社でマネジメントや人事、採用といった経験を積んだのち、フリーランスのライターとして活動開始。現在はビジネスやメンタルヘルスの分野を中心に、幅広いジャンルで執筆を手掛けている。

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