派遣の掛け持ちはできる?メリット・デメリット・注意点など解説

派遣の掛け持ちはできる?メリット・デメリット・注意点など解説

副業やダブルワークなど、近年、個人のライフスタイルにあった柔軟な働き方を選択する人が増えています。派遣の掛け持ちは、収入を増やしながら様々なスキルを身につけられるメリットがある働き方です。しかし、労働時間やスケジュールの管理には注意が必要で、短時間の掛け持ちでは社会保険や雇用保険に加入できないケースもあります。

本記事では、派遣の掛け持ちをする際におさえておきたいポイントについて詳しく説明しています。派遣の掛け持ちに関心のある方はぜひ参考にしてください。

派遣の掛け持ちはOK

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派遣の掛け持ちは法的に禁止されているわけではないため、契約や内容によっては掛け持ちOKとされています。本章で詳しくみていきましょう。

派遣の掛け持ちに法律的制限はない

派遣の掛け持ちに関して、法律的な制限は特にありません。労働者が複数の派遣先で働くことは基本的には自由です。しかし、派遣会社や派遣先によっては、掛け持ちを禁止していることもあります。派遣の掛け持ちを考えている場合は、まず派遣会社の就業規則や契約内容の確認が重要です。

派遣会社によっては禁止されている

「派遣の掛け持ちの禁止」は常用型派遣で見られることが多くなっています。常用型派遣とは簡単にいうと、派遣会社が労働者と無期の雇用契約を結び、長期で安定した雇用関係を維持する派遣形態です。
常用型派遣では、派遣会社が労働者の就業状況を管理し、フルタイムでの勤務を前提としていることがほとんどのため、必然的に他の派遣との掛け持ちが禁止されるケースが多いのです。
掛け持ちにより派遣スタッフの労働時間が過剰になることを防ぐため、派遣会社がこのような規制を設けていることがあります。
一方で、登録型派遣では、派遣の掛け持ちが許可されているケースが見られます。これは、登録型派遣が、派遣先が決まったときに派遣スタッフに働いてもらう仕組みのためです。必要なときだけ派遣される形態のため、掛け持ちについては禁止されていないことが一般的です。

このように、派遣会社や派遣の形態によっても掛け持ちの可否が異なるため、ご自身の派遣契約を確認し、就業規則や契約書の記載内容に従うことが重要となります。

掛け持ちをするメリット

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派遣を掛け持ちすることによって、収入が増える等のメリットがあります。以下で詳細を確認していきます。

収入が増える

派遣の掛け持ちをすることで、複数の仕事から報酬を得られるため、収入を増やすことができます。特に、登録型派遣の場合、単発の仕事や短期間の仕事が多いため、掛け持ちすることが安定的な収入やより高い収入に繋がります。

令和6年10月に最低賃金が改定され、全国的に時給が上昇しているものの、一般的に派遣はアルバイトに比べて時給が高い傾向にあるため、派遣を掛け持ちすることで効率的に収入を増やすことが可能です。派遣スタッフは専門的なスキルを求められることが多く、労働者の価値が高く評価されることが時給の高さに繋がっているのです。

【参考】
厚生労働省|令和4年派遣労働者実態調査の概況 p.3
厚生労働省|地域別最低賃金の全国一覧

幅広いスキル・経験が身につく

異なる派遣先で働くことで、さまざまな業務内容や環境に対応するスキルが身につきます。同じ職種でも派遣先によって業務の進め方や使用するツールが異なるというのは珍しくありません。
また、派遣会社によって得意分野や紹介する求人の業界が異なるため、複数の派遣会社に登録しておき普段の派遣先と別の業界を経験することで、専門知識やスキルの幅が広がります。
派遣の掛け持ちを通してキャリアの選択肢を増やすだけでなく、さまざまな職場に適応できる柔軟性も養えます。

掛け持ちをするデメリット

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掛け持ちをする場合は、以下のデメリットも慎重に考慮しましょう。これらの負担を上回るメリットがあるかどうかを見極めることが大切です。

スケジュール管理が大変になる

複数の派遣先で勤務日時を調整しなければならず、スケジュール管理が大変です。派遣先ごとに勤務時間や日程が異なっている場合、各派遣先との調整をしながら働くことは負担になります。特に、急なシフト変更や予定外の業務が発生した際に、他の派遣先との勤務スケジュールが重なってしまうことを視野に入れておくことも必要です。うまく管理できないと、どちらの職場にも迷惑がかかり、結果的にトラブルを招くリスクがあります。

プライベートの時間が減る

掛け持ちによって必然的に労働時間が増えるため、プライベートの時間は減少します。複数の派遣先での勤務に加えて、移動時間や休息時間も確保しなければならないため、家族や友人との時間やリフレッシュのための時間が減ってしまう可能性があります。休息を十分に取れない場合、ご自身の健康に影響を及ぼしかねません。

複数の職場で人間関係の構築が必要

掛け持ちをするとそれぞれの職場で新しい人間関係の構築が必要です。職場ごとに同僚や上司と良好な関係を築くことは、仕事をスムーズに進めるうえで重要ですが、精神的には負担となるケースがあります。
また、職場ごとに異なる企業文化やルールに適応しなければならないことから、こうした人間関係等の調整がストレスとなる場合もあるので注意が必要です。

自分で確定申告をしなければならない

複数の勤務先から所得が発生するため、自分で確定申告をおこなう必要があります。通常、1社のみで働いている場合は、その会社が年末調整を行なうため、特定の条件に該当しない限り確定申告の手続きは不要です。しかし、掛け持ちの場合はそれぞれの所得を合算して申告する必要が出てきます。確定申告の準備として必要な書類や計算をすべて自分で対応しなければなりません。

掛け持ちで働くときの留意点

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掛け持ちをしたいと考えている方は、以下の4点に留意しましょう。
● 事前に派遣会社に相談する
● 同じ派遣会社では掛け持ちできないことがある
● 同業種の場合は情報の取り扱いに注意する
● 年末調整は給料が多い方の派遣会社でおこなう

事前に派遣会社に相談する

派遣の掛け持ちをする際は、事前に派遣会社に相談することが重要です。繰り返しになりますが、派遣会社によっては掛け持ちを禁止している場合があり、契約違反となる可能性もあります。先に述べたように、就業規則や契約内容の確認が必要です。常用型派遣で掛け持ちを考えている場合は、特に契約内容をよく読みましょう。派遣会社と契約を結んだ時点で、他の派遣会社や職場での勤務を制限する規定が含まれている可能性があります。また、複数の仕事が重なってしまうと、労働基準法違反のリスクもあるため、会社との信頼関係を保ちしながら適切な働き方で就労しましょう。

同じ派遣会社では掛け持ちできないことがある

同じ派遣会社で複数の派遣先に掛け持ち勤務をする場合、労働時間の超過となる場合があります。労働基準法では、1日8時間、1週間の労働時間は40時間以内と定められています。同じ派遣会社で複数の派遣先に掛け持ちで働くと、合計の労働時間が上限を超えてしまいかねません。そのため、派遣会社は法令遵守に基づいて、労働時間の管理を適正におこなわなければならないことから掛け持ちを制限しているというケースもあります。法律的な問題だけではなく、1日や1週間に働く時間が増えすぎると、体力的にも精神的にも負担が大きくなり、健康を損ねるリスクも発生します。 

【参考】:厚生労働省|労働時間・休日

同業種の場合は情報の取り扱いに注意する

特に同業種で複数の派遣先に勤務する場合、機密情報の取り扱いはデリケートな問題です。派遣先で扱う情報は企業にとって非常に重要です。競合他社で働いている場合、無意識に情報を共有してしまうリスクが生じます。このような行為は契約違反となる可能性があり、最悪の場合、法的措置が取られることもあります。
また、派遣先によっては、競業避止義務が契約に含まれていることがあります。これは、同業他社で働くことを禁止する条項であり、掛け持ち先が競合する場合、これも契約違反になる可能性があります。派遣会社と事前に相談したうえで掛け持ちを始めることが重要です。

【参考】:厚生労働省|競業避止義務の明確化について

年末調整は給料が多い方の派遣会社でおこなう

派遣の掛け持ちをしている場合、年末調整は給料が多い方の派遣会社でおこなうのが一般的です。年末調整は1社でしかできず、給与が多い方でおこなうことで、正確な所得税の計算や控除の適用がされやすくなります。この場合、給与が少ない方の派遣先からの収入を含めた確定申告をおこなわなければなりません。年末調整では対応できない他の派遣先の収入や控除も含めた正確な税額を申告し、税金の過不足を精算します。掛け持ちをする際は、年末調整と確定申告の役割を正しく理解し、正確な税務手続きを進めましょう。

掛け持ちで働く場合の社会保険・雇用保険の適用条件について

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掛け持ちで働くことを考えている場合は、社会保険や雇用保険は以下のようになります。ぜひ参考にしてください。

雇用保険の適用条件

雇用保険に加入するには、週20時間以上の勤務が必要です。雇用保険は、掛け持ちしている場合でも1つの事業所のみで加入します。労働時間や収入が多い事業所を「主たる事業所」として選び、そこに加入する形です。また、掛け持ちをしていても週20時間以上の勤務となるのが1つの事業所の場合は、その事業所で雇用保険に加入します。
雇用保険において掛け持ちの場合に注意すべきなのは、失業給付です。主たる事業所での勤務が終了し、条件を満たして失業給付の対象となった場合でも、他の事業所で働いていると給付に制限がかかることがあります。

【参考】:厚生労働省|雇用保険の適用拡大について

社会保険の適用条件

社会保険とは健康保険と厚生年金保険のことを指します。社会保険の適用条件は、以下5つです。そのうち5つ目については、2024年10月の改正により従来101人以上だった部分が下記のように51人以上となりました。

<社会保険の加入条件>
1. 週の労働時間が20時間以上 
2. 月額賃金が8.8万円以上 
3. 勤務期間が2カ月を超える予定
4. 学生ではないこと
5. 従業員数が51人以上の企業(または従業員数が50人以下の企業で、労使の合意がある場合)

仮に2つ以上の派遣先で加入条件を満たす場合、「二以上事業所勤務届」という書類を年金事務所に提出しなければなりません。この場合、選択した事業所のみで健康保険証が発行されます。2つの事業所の所在地によりますが、その他の手続きは、主となる事業所か年金事務所を選択する形となります。

【参考】
厚生労働省|社会保険適用拡大対象となる事業所・従業員について
日本年金機構|複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き
厚生労働省|兼業・副業等により2カ所以上の事業所で勤務する皆さまへ

短時間労働者の場合、保険に加入できないことがある

短時間の掛け持ちが続く場合、社会保険や雇用保険に加入できないリスクが生じます。具体的な条件は前述のとおりですが、複数の派遣先で働いても、各々の勤務時間や賃金が雇用保険や社会保険の基準を満たさない場合は加入できません。保険に未加入のまま働くことは、病気や失業時の保険給付を受けられないことに加え、将来的な年金額にも影響します。

掛け持ちにオススメの仕事

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以下に一般的に掛け持ちしやすいと言われている職種を紹介します。特にシフトの柔軟性やリモートワークの可能性がある点で、自分に合った働き方を選べるのが魅力です。

データ入力

比較的特別なスキルがなくても就労可能で、リモートワークや短時間勤務ができる案件もあるため、掛け持ちに向いています。在宅勤務可能な場合、場所を選ばずに時間の調整がしやすいのがメリットです。

営業・販売・接客等

成果ベースで働けるため、時間の融通が利きやすく、掛け持ちがしやすい職種です。販売はシフト制が一般的で、短時間の働き方も可能で、掛け持ちしやすい環境があります。繁忙期や短期の募集も多い傾向です。

ピッキング

物流や倉庫内での軽作業は、早朝、日中や夜間等さまざまな時間帯で働けます。シフトが多様で時間帯を選べるため、掛け持ちがしやすくなっています。

コールセンター

短時間勤務が可能なうえに、在宅対応のコールセンター業務も増えてきているため、掛け持ちに向いています。

まとめ

派遣の掛け持ちには、収入の増加やスキル向上といったメリットがある一方で、いくつかの注意点もあります。派遣会社や契約内容によっては掛け持ちが禁止されているため、希望する場合は事前に確認が必要です。労働時間が増えることから、働き過ぎによる心身への影響も念頭におくとよいでしょう。また、短時間勤務の掛け持ちでは、社会保険や雇用保険に加入できないといった保険未加入のリスクも考慮します。ご自身の健康状態やメリット・デメリットを総合的に判断し、働くことが大切です。

ライター:西本 結喜(監修兼ライター)
結喜社会保険労務士事務所 代表。金融、製造、小売業界を経験し、業界ごとの慣習や社風の違いを目の当たりにしてきたことから、クライアントごとのニーズにあわせ、きめ細やかな対応を心がけている。

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