派遣社員が派遣先企業に転職するメリット・デメリットとは?
派遣社員として働いている派遣先企業から直接雇用の声掛けがあった、あるいは派遣先の人材募集を見かけたけれど、そもそも派遣先への転職が可能なのか気になっている人はいませんか。
派遣先企業へ転職するメリット・デメリットなど、事前に知っておきたいポイントをあわせて紹介します。
目次
派遣社員が派遣先企業へ転職することはOK
結論からいうと、派遣社員として働く人が派遣先企業へ転職することは可能です。ただし、派遣契約期間と直接雇用期間は重複できないため、必ず契約が終了してからの直接雇用となるように調整が必要です。
そもそも労働者派遣法では派遣社員の直接雇用を推進する通称3年ルールと呼ばれるルールが存在します。「同事業所・同一部署にて同じ派遣社員が勤続するのは最大で3年」という決まりです。
労働者派遣制度を利用することで正社員が減ることのないように設けられた制度のため、派遣社員が派遣先で直接雇用を受けるケースは多くなってきています。
そのほか、最初から直接雇用になることを前提に働く紹介予定派遣という形で勤務開始する方法もありますが、紹介予定派遣ではなく派遣社員として勤務をスタートした場合でも、派遣先企業での直接雇用に応じることは可能です。
もちろんこれまでお世話になった派遣会社には、派遣先企業の直接雇用に応募する旨、連絡をしておきましょう。
派遣先企業の求人に自ら応募することも可能
もちろん、派遣期間終了後に派遣先企業で出されている求人に対して、自ら応募することもできますが、派遣期間中は派遣会社との雇用契約がありますので、派遣先への直接雇用を希望する場合は、まず派遣会社の担当者に相談してみましょう。
転職希望先が派遣先グループ企業の場合
仮に転職希望先が派遣先のグループ企業だった場合、派遣先の上司に相談するようにしましょう。グループ企業の場合は情報が伝わりやすく、転職活動を隠すのが難しい場合もあります。また、派遣先が同じような職種を公募していた場合、派遣先ではなくあえてグループ企業に応募するというのはグループ企業・派遣先双方を納得させるような理由を用意する必要があるでしょう。
派遣契約期間中の直接雇用は禁止
もちろん、派遣契約中に直接雇用に切り替えるのは派遣契約を破る行動となりますので、禁止されています。必ず派遣契約期間はまっとうし、その後に契約期間が重ならないようにして直接雇用へと切り替えてもらえるように注意しましょう。
派遣先へ転職するメリット・デメリット
では、実際に派遣先へ転職した場合のメリット・デメリットを紹介します。
メリット
収入・雇用の安定
派遣先に転職する場合は直接雇用となるため、収入・雇用の安定が図れる点がメリットです。派遣社員として働く場合、派遣契約期間が終了すると次の派遣先が見つかるまでの間、空白期間が生まれることもあります。しかし、直接雇用の場合は基本長期で働くことが前提となる傾向があること、正社員となった場合解雇をするのは企業側にとって非常にハードルが高いことを考えると、雇用及び収入が安定しやすい働き方といえるでしょう。
場合によっては昇進・昇給の可能性も
派遣社員として働く場合、基本的には昇進・昇給などは少ないものです。しかし、直接雇用の場合は、能力を発揮できれば昇進・昇給の可能性もあります。キャリアアップが可能になるというだけでも、キャリアに広がりが出るといえるでしょう。
仕事の裁量が増える
派遣社員の場合、派遣契約で結んでいる仕事内容から逸脱しないことが定められていますが、直接雇用の場合は上席者が任せたいと考え、本人が了承すれば仕事の裁量を増やしていくことも可能です。昇進・昇格という範囲で広がることもあれば、単に直接雇用で長く働いてくれるという前提であるため、長期的な仕事を任せられる可能性も高まります。
デメリット
職務上の責任の発生
裁量が増えることの裏返しですが、職務上の責任が発生することもあります。業務上責任をとらざるを得ないものに関しては、長期で働く前提の直接雇用人材に担当してもらうケースが多いです。そのため、職務上責任が発生しやすくなる可能性があるでしょう。
業務負担が増える可能性
業務負担が増える可能性に関しては、それを裁量が増えたとメリットに感じる人もいれば、デメリットと感じる人もいるでしょう。直接雇用=長期で勤める人となるため、長く働く人が担当すべき仕事、責任の重い仕事がこれまでよりも多くなる傾向にあるといえます。
職場での人間関係の変化
派遣社員の場合ある一定の線引きをして社内の人と付き合うことも可能ですが、直接雇用の場合、業務上関わり方がこれまでと変わってくる可能性があります。長く勤務する前提であれば、ある程度近い距離感で仕事をする方が円滑に物事を進められる場合もあるため、派遣社員とは異なる密な人間関係を構築しなければならなくなる可能性があります。
直接雇用で役職の変化がある
役職の変化についても、昇進したことをメリットに感じる人もいればそうでない人もいるでしょう。仮に直接雇用になった後に役職の変化を希望しない人の場合は、直接雇用で役職の変化があるかを確認しておくことをおすすめします。
収入が減少する場合もある
派遣社員から直接雇用になると、収入が減少することもあります。派遣の場合は高い時給を設定しないと派遣してもらえないということで直接雇用よりも時給を高めに設定していることも多いです。時給制の仕事の場合、特に直接雇用になった後の条件面は事前によく確認しておくことをおすすめします。
派遣先へ転職する場合
派遣先に転職活動をする際に、すべきことを3つ紹介します。
派遣会社(派遣元企業)へ直接雇用への切り替え意思を相談する
求人内容を確認し応募する意思が固まったら、派遣先の直接雇用の求人に応募するため、派遣会社の担当者に次の更新はせずに直接雇用に切り替えたい旨を相談しましょう。
雇用形態を確認する
直接雇用とはいっても雇用形態については、正社員雇用とは限りません。パート・アルバイト・契約社員なども直接雇用になるため、今回どのような雇用形態での募集になっているのか、よく確認をしておきましょう。
労働条件、仕事内容について確認する
労働条件・仕事内容については求人内容に書かれているはずですが、仮に同じ仕事内容であっても直接雇用になった際は今とは何か異なる部分が出てくるのかなど詳しく確認しておくことをおすすめします。
企業内の別部署やグループ企業など、派遣社員として働いている現部署とは異なる組織への転職を希望している場合は、現部署のつてがある人に相談してみても良いでしょう。
派遣社員から正社員に転職する際の志望動機・面接対策について
派遣社員から正社員に転職する際、転職先企業によっては面接がある可能性もあります。そのため志望動機はどうすればいいのか、面接の対策はどのようにすればいいか知りたい人のために、例を挙げて紹介します。
志望動機
志望動機はこれまで派遣社員としての勤務でどのように貢献してきたのか、それをどの範囲まで広げて貢献したいと感じたのか、またそのきっかけなどを伝えるようにしましょう。他部署や他支店を希望する場合はその部署や支店の特徴を盛り込み、そこでしかできないことで貢献したいという意思とその部署・支店の選考を受けた理由を伝えるようにしましょう。
例えば、下記のように派遣社員としての貢献と、正社員になることで貢献できることを挙げ、正社員になった際にはなぜ今よりも貢献できるのかを明確に伝えることをおすすめします。
志望動機例文
これまで派遣社員として◯年間、営業事務として従事してまいりました。仕事を通じてお客様との関係性も構築され、業務フローの改善についても起案し実施、成果も評価いただき楽しみながら仕事をさせていただいております。
しかし、派遣社員としての勤務の場合、業務上立ち入れない領域があり、すべてを把握した上であればより◯◯事業部全体の業務設計や業務フロー改善に携わり、所属する社員の皆さんの働きやすく成果の上がりやすい環境をつくれるのではと感じる機会が多くありました。
そのため、正社員として責任を持って貴社の業務効率アップに寄与したいと考えております。
面接対策
面接では「なぜ今のタイミングなのか」「派遣社員ではなく正社員でなくてはならない理由」「責任が重くなることへの覚悟感」などを聞かれる可能性があるため、それに対しての理由をいくつかの角度で用意するといいでしょう。
その他、なぜ正社員としてこの企業を選んだのかを改めて聞かれることもあります。その点についても、理由を述べられるように用意しておいてください。
派遣先として勤務してきた企業であるため、どのような姿勢が評価されるのかを体感として持っている人も多いでしょう。まずはそれを言語化してみてください。あまり言語化ができないようであれば、実際に称賛された行動を、理念、行動指針などと絡めて伝えましょう。「派遣社員として働き、現場まで企業理念が浸透していると感じたため、こういった企業で正社員として働きたい」「働くなかで業界でのポジションが上がっていくのを実感し、将来性を感じた」など、働いてみて改めて感じたエピソードなどをピックアップし、志望度の高さを伝えるようにすると良いでしょう。
紹介予定派遣について
紹介予定派遣は最長6カ月までの派遣期間の後に、双方問題なければ正社員として雇用してもらえる働き方です。最初から正社員となる場合はお互いを見て判断する猶予がありませんが、紹介予定派遣の場合は最長6カ月見る期間があるため、安心できると感じる人もいるでしょう。
今後は派遣先企業で直接雇用に切り替えたいと考えている場合は、最初から紹介予定派遣の求人を選んで働き始めるのがおすすめです。もちろん、すべての企業が紹介予定派遣を募集しているわけではないため、求人の内容をよく確認するように注意しましょう。
スタッフサービスの紹介予定派遣サービスについて
スタッフサービスでも、紹介予定派遣サービスを展開しています。派遣期間はスタッフサービスとの雇用契約、派遣先と派遣社員が合意した場合は派遣先となっている企業と派遣社員の直接雇用に切り替わります。興味がある人はまず登録会の予約をいただき、紹介予定派遣を希望していると伝えてもらえれば、ご希望に沿った案件をご紹介します。
参考:オー人事.net
https://www.022022.net/haken/ttp/system_flow.html
まとめ
派遣先から直接雇用の打診が来た場合、あるいは派遣先の公募を見て自分も応募したいと考えている人に向けて、派遣先への転職をする場合、どのようなメリット・デメリットがあるのか、志望動機・面接対策について紹介しました。
派遣先で働いた経験があることで通常の採用選考よりは情報量が多く、企業が好む人材の傾向もわかっている状態であるため、準備も進めやすいと思います。社内の人間関係によっては、さらに具体的なアドバイスをいただけることもあるでしょう。
派遣社員として働いていたアドバンテージとなるものは最大限活用するようにし、自分が目指す転職を実現させてみてください。
<ライタープロフィール>
高下真美 / ライター
新卒で人材派遣、人材紹介企業に入社し、人事・総務・営業・コーディネーターに従事。その後株式会社リクルートジョブズ(現・株式会社リクルート)に転職し、営業として8年勤務後、HR系ライターとしてフリーランスへ転身。現在は派遣・人材紹介・人事系メディアでの執筆、企業の採用ホームページの取材・執筆の他、企業の人事・営業コンサルタントとして活動中。