実務経験とは?実務経験がないと就職できない!?
企業が実務経験を求めるのは、何故か?キャリアチェンジにおいて、それはどのくらい求められるのでしょうか?正社員でも派遣でもアルバイトでも、私たちは仕事をとおして、いつの間にか実務経験を身につけ、積上げています。にもかかわらず、それに気づいていない人は多いものです。実務経験とは何かをしっかり理解し、これまでに積上げてきた経験を「棚卸し」し、職務経歴書として「見える化」する習慣を作りましょう。
実務経験とは?
実務経験とは、「即戦力」のものさしです。例えば「受付」の実務経験がある人なら、「受付業務」「接遇」「電話応対」「来訪者別の応対」といった職務(仕事)などを経験してきたということが分かります。
つまり「実務経験がある」とは、ある「職種」に就いたことがあり、その職種に期待される「職務」を特別なトレーニングやOJTを受けなくても、すぐに担当できることを意味しています。
企業が採用にあたって実務経験を問うのは、募集している職種や職場の即戦力として、求職者がすぐに働けるかどうかを見極めたいからです。
実務経験がないと就業できない?
実務経験をどのくらい求めるのかは、職場によってかなり異なります。基本的には、即戦力を期待する職場ほど、実務経験をより強く求める傾向にあります。したがって、期待相応の実務経験を持っていないと、就業はかないません。一方で、他社のやり方を持ち込まず当社のやり方を習得して欲しいという職場や、多少の育成期間を予定している職場などでは、実務経験が不足していても、就業できる可能性があります。
・実務経験を求められるのは…
前任者の代わりを探している職場では、実務経験をそれなりに求める傾向があります。例えば、秘書や経理は資格が人気の職種ですが、新入社員をのぞけば、資格を保有していたとしても実務経験がないと就業は難しくなります。
また、別の職種での似たような職務を経験していたら、それが実務経験として認められることもあります。例えば、保険のバックオフィスで契約書を扱った経験が営業アシスタントとして認められたり、アパレル販売員としてお客様へ商品を提案した経験が自動車ディーラーの営業として認められたりするケースです。
・実務経験を問われないのは…
実務経験を問われないのは、「職種」というより「職務」内容によります。事務職にかぎらず、定型的、補助的な「職務」を任せる場合には、実務経験をそれほど問わないことが多いです。なお、事務職はひとくくりにされやすい職種ですが、高度な専門知識やスキルを求められる分野もあります。法務などはその典型です。事務職=一般事務職を指していらっしゃるのだと思いますが、一般事務職でも非定型的な業務を任せるつもりであれば、実務経験が求められます。
新規学卒者(新卒)では人柄や意欲や適性、将来性などが期待され、実務経験を問われることはほぼありません。
また、紹介予定派遣は数ヶ月の派遣社員としての勤務を経て、正社員へと登用される雇用形態ですが、この場合も、新卒や第ニ新卒では実務経験をそれほど求められません。ただし、中堅では、それなりの実務経験が求められます。
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実務経験が求められやすい職種や業種
実務経験が求められやすい職種や業種はさまざまです。具体的にどのような職種や業種で実務経験が求められるのでしょうか。それが把握できれば、面接や職種経歴書などで積極的にアピールすれば、有利になるでしょう。
ITエンジニア
ITは、専門性が問われる業種であり、職種もアプリやシステムを設計・開発する開発エンジニアや、サーバ・ネットワークの構築・運用などを行うインフラエンジニア。最近では、ビッグデータを活用して、分析を行うデータサイエンティストという職種まで、多岐にわたります。それぞれの領域で高い技術力が必要なため、実務経験が求められてきます。
経理・会計・財務
経理や会計であれば、大手などは新卒・第二新卒のポテンシャル採用を行う企業もありますが、建設や医療のように業界特有の経理ルールがあり、さらに専門知識が求められるため、未経験の人は採用されにくい業種・職種です。
また財務は、戦略立案や実行から資金調達まで行うため、会計(経理)の知識だけでなく、事業戦略などのノウハウも必要になり、実務経験がモノをいいます。
介護
介護職は老人ホームだけでなく、訪問介護事務所やグループホーム、医療機関など、さまざまな場所で求められます。基本的には即戦力が期待されるため、実務経験があればどこでもその経験が活かせます。しかしながら、少子高齢化に伴い介護業界全体での人材不足が大きいため、未経験を歓迎する介護施設や企業も多々あります
介護福祉士など資格を取得する場合には、福祉系の高校や専門学校、大学などに通っていなければ、実務経験3年以上の受験資格が求められます。それだけ専門性が求められる職種といえるでしょう。
デザイナー
デザイナーはPhotoshopやIllustratorなど、さまざまなソフトを使えることが必要です。しかし、それ以上に求められるのが、どういう(テイストの)デザインがつくれるのか、センスを含めた経験です。面接あるいは書類選考の段階で、これまで手がけた作品集(ポートフォリオ)の提出が必須なのも、応募者のデザイナー経験が、自社の求める人材像に合っているかどうか見極めるためです。
派遣での就業経験は実務経験に入る?
・正社員でも派遣でもアルバイトでも
実務経験は「即戦力」のものさしですから、雇用形態が正社員でも派遣でもアルバイトでも、ある職種や仕事に就いたことがあり、その職種や職務を担当できるならば、その就業経験は実務経験に入ります。大切なことは、どのような雇用形態であっても、どんな職務を担当できるのかを自覚し、これをきちんと伝えられるということです。それには、これまでの実務経験を常に洗い出しておきましょう。
これを「経験の棚卸し」と言います。経験を棚卸ししておけば、実務経験を問われた時に、すぐに伝えることができますし、「自分には実務経験がある」という自信をもつこともできます。
・「経験の棚卸し」の仕方
経験を棚卸しするには、これまでに担当した職務を書き出していきます。
営業アシスタントなら「電話応対」「来客応対」「出張手配」「会議室予約」「会議資料の作成補助」「名刺発注」「請求書作成・発送」など。
コンビニのアルバイトでも「レジ」「接客」「清掃」「品出し」「陳列」という具合にリストアップできます。
ひと言に事務職といっても、例えば「総務事務」と「営業事務」は異なります。大手企業では、「総務」といっても「人事」「人材」「労務」「法務」「経理」などに細分化されており、それぞれの事務や庶務の内容も異なります。
経験の棚卸しにおいては、「職務分析用語」をインターネットで検索し、参考にすると書き出しやすいかもしれません。
・「職務経歴書」としてまとめてみよう
棚卸ししたら、これを「職務経歴書」としてまとめ、実務経験を「見える化」してみましょう。
「職務経歴書を書くほどの経験はない」と言う求職者は多いのですが、上記のコンビニのアルバイトのように、知らず知らずに様々な実務経験を積上げているものです。これを相手に伝わりやすく整理し、文章にすればよいのです。
基本的には、正社員、派遣、アルバイトを問わず所属した職場ごとに担当した職務と実績を時系列にまとめていきます。書き方には、過去から現在へ向かって書く方法と、現在から過去へ遡って書く方法があります。前者は経験の積重ねを見せたい場合、後者は現在の経験を見せたい場合に適しています。
なお、実績とは、その職場での成果のみならず成功体験や上司や顧客などから褒められたこと、喜ばれたことなどです。ポイントは、余分な修飾語はつけずに、事実を具体的に表現します。
また、職務経歴書の冒頭に「略歴」を記述するのもポイントです。何を経験し、何ができるようになり、就業先ではどのように貢献したいのかを要約して、数行で簡潔に分かりやすく書きます。
「職務経歴書の書き方」やひな形は、ハローワークで冊子を入手できますし、様々なサイトからダウンロードもできます。「職務経歴書」「書き方」などのキーワードを入れて検索してみましょう。
求職中でなくても、実務経験を職務経歴書として「見える化」する習慣を作りましょう。そうすれば、突然、転職や異動などのチャンスに恵まれた時にも、実務経験を効果的にPRすることができます。また、将来にむけて、どのような経験を積み重ねたり、増やしたりすればよいのか、見通しを立てやすくなります。
まとめ
正社員として応募するにしても、新しい派遣元に登録するにしても、実務経験をしっかりとPRすることで新しいチャンス、つまり新しい実務経験を手に入れることができます。
これまでに何を経験し、何ができるようになり、これからは何がしたいのかを折々に考え、自分の言葉で表現する習慣を持ちましょう。実務経験の積み上げとしてのキャリアの「見える化」は、将来のキャリアを計画するのにも役立ちます。
- ライター:
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ワークスタイルデザイナー 悠木そのま(ゆうき そのま)
キャリアコンサルタントの草分けとして、2001年に資格取得。翌年から同養成講座インストラクターも務めている。「“働く”ことをとおして“幸せ”になる”羅針盤”を供する」。コンサルタント、講師の実務経験を活かし、現場の分かる著作者として、働く人のキャリアづくりに役立つセオリー、メソッド、持論を紹介し続けています。
西谷 忠和(編集)
新卒・中途採用、進学などのメディアにて広告制作ディレクターを経験後、2007年に独立。現在は、フリーのライターとして採用サイト、求人メディアの広告、採用のオウンドメディア、人材サービス企業のインナーコミュニケーションなどのコンテンツ制作に携わっています。またライフワークとして、20~50代のビジネスパーソンやフリーランスのキャリア支援をおこなうキャリアコンサルタントとしても活動中。