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今注目のSDGsとは? 企業のメリットや注意点、取り組み事例を紹介

今注目のSDGsとは? 企業のメリットや注意点、取り組み事例を紹介

SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、エス・ディー・ジーズと発音します。企業の関心も高く、昨今、注目されている取り組みですが、「実際に何をするか」は企業に委ねられています。そこで今回は、そもそもSDGsとは何か? どんなメリットや事例があるのか?をわかりやすく紹介します。

SDGsとは?

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SDGsは、環境や雇用の問題など、社会が抱える課題を解決に導くために設定された国際目標です。2015年9月の国連サミットで193ヶ国の全会一致で採択され、2030年を達成期限としています。貧困、教育、健康、労働などさまざまな問題解決を目指す17の大きな目標と、それらを達成するための169の具体的な課題(ターゲット)で構成されています。

企業から注目されている背景


SDGsでは、目標を達成するうえで、企業は重要なパートナーとして位置づけられています。企業が社会課題の解決にビジネスチャンスを見いだすことが重視されており、企業のSDGsへの積極的な取り組みが、国際的な評価などさまざまな利益につながるようになっています。これまでの国際目標の主要なプレーヤーは国やNPO・NGOでしたが、SDGsは企業のビジネスチャンスに主眼を置いたことで、企業から大きな注目を集めることになりました。

SDGsの17の目標と169のターゲット

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17の目標を見てみると、「1.貧困をなくそう」「2.飢餓をなくそう」など、一見すると開発途上国への支援策のように見えますが、目標の多くが、先進国である日本の私たちの身近な生活に関わる問題にも当てはまります。

※参考
日本ユニセフ協会「SDGs17の目標」

いくつかの目標とターゲットを見てみましょう。

たとえば、「1.貧困をなくそう」のターゲットには、次のようなものがあります。
・2030年までに、それぞれの国の基準でいろいろな面で「貧しい」とされる男性、女性、子どもの割合を少なくとも半分減らす

日本でも、子育てする8世帯に1世帯が、手取り127万円以下の「貧困層」といわれます。この貧困層の子どもを支援するための、子ども食堂や無料塾などは、目標1を達成するための取り組みといえます。もっといえば、従業員に対して十分な給料を払うことも、貧困層を生み出さないという取り組みの1つです。

他にも、「5.ジェンダー平等を実現しよう」のターゲットには、次のようなものがあります。
・政治や経済や社会のなかで、何かを決めるときに、女性も男性と同じように参加したり、リーダーになったりできるようにする
・お金が支払われない、家庭内の子育て、介護や家事などは、お金が支払われる仕事と同じくらい大切な「仕事」であるということを、それを支える公共のサービスや制度、家庭内の役割分担などを通じて認めるようにする


女性の管理職の割合を増やしたり、男性の育児休暇取得を推進したりすることも、目標5を達成するための取り組みといえます。

「8.働きがいも経済成長も」のターゲットには、次のようなものがあります。
・商品やサービスの価値をより高める産業や、労働集約型の産業を中心に、多様化、技術の向上、イノベーションを通じて、経済の生産性をあげる
・2030年までに、若い人たちや障害がある人たち、男性も女性も、働きがいのある人間らしい仕事をできるようにする。そして、同じ仕事に対しては、同じだけの給料が支払われるようにする


農業にAIなどを導入したスマート農業など、新技術を活用した産業の創出や、2020年4月から全国で施行された「同一労働同一賃金」(中小企業は2021年4月から)の推進も、目標8を達成するための取り組みといえます。

このように、それぞれの目標とターゲットを細かく見ていくことで、自社が現在取り組んでいたり、今後取り組めそうだったりするものが見えてきます。幅広い社会課題を扱っているのが、SDGsの大きな特徴です。

SDGsに取り組むメリット

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企業がSDGsに取り組むことで得られるメリットを見てみましょう。

企業イメージ・価値の向上


SDGsに積極的に取り組むことで、企業のイメージアップや企業価値の向上につながり、提供する商品やサービスが取引先や消費者から、選択されやすくなります。企業イメージが良くなると、優秀な人材が集まりやすくなるというメリットもあります。

昨今では、国際的な大企業が発注先に対して、SDGsへの取り組みを求めたり、SDGsに積極的に取り組んでいる企業を発注先に指定したりするケースが多いため、サプライヤーとしての競争力を高めたり、新たなビジネスチャンスを創出できたりする可能性があります。
また、投資家や金融機関が、投資先を評価する際の基準にSDGsへの取り組み度合いを含めるケースも増えており、SDGsに取り組むことで資金調達がしやすくなる可能性もあります。

事業機会の創出


SDGsに取り組むことで、同じ課題を解決したい企業のみならず、行政やNPO団体、教育機関といったこれまで関わりのなかった組織とつながりを持つことができます。同じ社会課題を解決するために、さまざまな企業や組織が協力し合い、新しいビジネスを生み出すケースもあります。

また、大前提として、社会課題の解決それ自体が、長い目で見れば、企業にとってメリットであるといえます。CO2排出による気候変動を防ぐことで、自然災害による事業悪化のリスクを減らすことができますし、従業員の労働環境を改善することで、従業員のモチベーションや生産性の向上につながり、ひいては企業の利益になります。これが、SDGsの根底にある思想です。

国もSDGsへの取り組みを後押し

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日本政府も、SDGsを積極的に推進する姿勢を示しています。2016年5月、内閣に「SDGs推進本部」が設置されました。SDGs推進本部が策定した指針では、国と民間企業が連携強化を図り、民間企業によるSDGsを通したイノベーション創出を支援するとしています。

また、産業界の後押しも活発で、日本経済団体連合会(経団連)は2017年11月、「企業行動憲章」改定し、企業に対して、SDGsが定める社会課題の解決に積極的に取り組むことを促しています。

SDGsへの積極的な取り組み事例

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SDGsの取り組み事例のなかから、いくつか具体的に紹介します。

環境に配慮した商品


環境問題は、SDGsの主要課題の1つです。CO2排出による気候変動や、ニュースでも頻繁に取り上げられた海洋プラスチックといった廃棄物は、大きな社会問題となっています。こうした課題解決の取り組みとして、環境や生態系を壊さないように配慮しながら生産された日用品や衣料品、廃棄処分されるはずの食品をリサイクルした雑貨、プラスチックではなく植物由来のレジ袋などを開発したり、優先的に調達したりする事例があります。

なかには、石灰石や廃棄野菜を原料にした名刺などもあり、これを自社で導入するだけでもSDGsへの取り組みとなり、さらに取引先や顧客との会話のネタにもなります。

フードロスへの対策


フードロスとは、飲食店や小売店、食品メーカー、卸売店などで売れ残りや規格外品が廃棄されてしまう問題です。SDGsの目標「12 つくる責任つかう責任」のターゲットには、次のようなものがあります。
・2030年までに小売り・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。

この課題解決のために、自治体や企業、学生の間でも取り組みが活発化しています。なかでも多くおこなわれているのが、食べきり運動やエコレシピの募集です。たとえば、家庭内で料理を作るとき食べきれる量だけを作る、外食をして残してしまったら飲食店協力のもと持ち帰ることができるようにする、料理で廃棄する部分を使って新たなレシピを作るといった取り組みです。
「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」では、このような運動が全国に広がるよう全国の都道府県、市区町村を対象にネットワーク作りをおこなっています。

企業や団体でも、たとえば廃棄するしかなかった規格外のリンゴをアップルパイにして販売したり、食パンの耳をラスクなど他の商品の原料にしたり、パン粉に加工したりするなど、さまざまな取り組みがおこなわれています。

また、鮮度や賞味期限に問題はなくても規格外や包装が痛んでいるなどの理由で廃棄されてしまう食品を、福祉施設などに無償で提供したり、それらを持ち寄った料理イベントを開催したり、通常より安価で消費者が購入できるサービスを展開したりといった事例もあります。

※参考
全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会

SDGsウォッシュに要注意

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SDGsウォッシュとは、簡単にいうと、SDGsに取り組んでいる「ふり」をすることで、SDGsと「ホワイトウォッシュ(うわべを飾る)」を組み合わせた造語です。実態がないにも関わらず、SDGsに取り組んでいるとPRしたり、SDGsに取り組む意思がないのに事業内容を無理やりSDGsに関連付けて告知したりすることです。

具体的には、リサイクル素材の使用をうたった商品を出しながら、実際には少量しか使っていなかったり、環境問題に積極的に取り組んでいないのに取り組んでいると宣伝して、投資家から資金調達をしたりといったケースです。

SDGsのメリットを得るためにSDGsウォッシュをおこなうことは、SDGsの価値を損なうだけではなく、発覚した際には企業のイメージダウンによる経営悪化も考えられます。また、悪意がなくても、SDGsの知識が少ない状態で取り組みを告知してしまったことで、結果的にSDGsウォッシュに該当してしまう場合もあるので、注意が必要です。

まとめ


SDGsは、すでに多くの国や企業が取り組みをおこなっています。SDGsの取り組みによって生まれた新しい商品とサービスが広まり、消費者の意識やニーズも、SDGsに沿ったものに変わりつつあります。

まずは、SDGsの基本的な情報とメリットを押さえて、今できる範囲の取り組みから始めてみてはいかがでしょうか。コツコツと取り組みを重ね、徐々に経営戦略に組み込みながら周りにPRしていくのが近道かもしれません。PRの際は、事実を誇張せず、ありのままを伝えることでSDGsウォッシュを回避しましょう。


《ライタープロフィール》
山本淳(やまもと・じゅん)
ライター/フリー記者(政治・経済)
早稲田大学中退後、テレビのニュース番組やネットメディアの記者を経験しフリーに。記者歴15年。一次情報をもとにした正確性と、専門家や当事者へのヒアリングをもとにした現場感をモットーに、記事を執筆。