【2026年最新】労働基準法改正は見送りへ|今後の施行時期と7つの重要ポイント
目次
労働基準法改正が議論されている背景
労働基準法改正が議論されている背景には、働き方の多様化と深刻化する人手不足があります。テレワークやフレックスタイム、副業・兼業の広がりなど、労働者の働き方は大きく変化している一方、労働基準法は昭和22年の制定を基礎とした枠組みが多く残っており、現代の実態と乖離が生じているとの指摘がなされています。特に、労働時間管理や休日の確保、長時間労働への対応については、制度の分かりにくさや運用の硬直性が課題とされています。
また、少子高齢化の進行により、企業は限られた人材をいかに確保し、定着させるかという課題に直面しています。過度な長時間労働や不十分な休息環境は、労働者の健康を損なうだけでなく、人材流出を招く要因にもなります。そのため、労働者の健康確保と企業の持続的な成長を両立させる観点から、労働時間や休息に関するルールを見直す必要性が高まっています。こうした社会環境の変化を受け、労働基準法についても、時代に即した抜本的な見直しが求められるようになっています。
労働基準法改正の最新動向と今後の見通し
労働基準法の改正については、2025年に厚生労働省が設置した「労働基準関係法制研究会」が報告書を公表し、今後の議論の方向性が明確になりつつあります。この報告書は、働き方の多様化や長時間労働の是正などを踏まえ、労働時間や休日、休暇制度を中心に改正すべき論点を整理したものです。具体的には、14日以上の連続勤務を禁止する方向性や、勤務間インターバル制度、法定休日の特定義務化などが挙げられており、実務者が対応すべき主要な論点が提示されています。報告書はあくまで論点整理ですが、改正を見据えた今後の審議の基盤となる重要な資料です。
一方で、当初2025年の通常国会での法案提出が予想されていた労働基準法改正案は、現時点では提出が見送られることとなりました。この背景には、背景には、従来の「規制強化」を中心とした審議内容に対し、新政権による「柔軟な働き方の推進(規制緩和)」を含めた再検討の指示があったことが挙げられます。現状では、最短で2026年の通常国会での法案提出が見込まれており、そこから成立・施行まで進んだ場合、実際の施行は早くても2027年以降となる公算が大きくなっています。
なお、労働基準法改正は社会情勢や労働市場の動向によって内容やスケジュールが変わることもあり得るため、最新の政府発表や報道を確認しながら動向を注視していく必要があります。正式な法案が国会に提出された際には、内容や施行時期などが確定情報として公開されることになります。
参照:「労働基準関係法制研究会」の報告書公表
労働基準法改正で議論されている重要ポイント
労働基準法改正に向けた議論では、労働時間や休日、休息の確保を中心に、現行制度の見直しが検討されています。労働基準関係法制研究会の報告書などでは、次のようなポイントが重要な論点として整理されています。
・14日以上の連続勤務禁止(休日確保の強化)
・勤務間インターバル制度の導入義務化
・副業・兼業時の労働時間通算ルールの見直し
・法定休日の特定義務化
・年次有給休暇の賃金算定ルールの変更
・「つながらない権利」の法制化検討
・週44時間特例措置の廃止と管理職の範囲見直し
・テレワーク時の新たなみなし労働時間制の導⼊
・フレックスタイム制に於けるコアデイの導入
・過半数代表者の適正選出と基盤強化
以下に主な改正点について説明します。
14日以上の連続勤務禁止(休日確保の強化)
現行の労働基準法では、休日は原則「毎週1回」、例外として「4週間に4日以上」を付与すれば足りるとされており、いわゆる4週4休の運用次第では、理論上は長期の連続勤務が発生し得ます。そこで労働基準関係法制研究会の報告書では、労災認定基準も踏まえ「2週間以上の連続勤務」を防ぐ観点から、13日を超える連続勤務を禁止する規定を設けるべきとの方向性が示されています。休日確保の実効性を高め、過重労働や健康障害のリスクを下げるための論点として議論されています。
【参考】厚生労働省|労働基準関係法制研究会報告書
【参考】厚生労働省|第10回 労働基準関係法制研究会 議事録
【参考】e-Gov法令検索|労働基準法(第35条 休日)
勤務間インターバル制度の導入義務化
勤務間インターバル制度とは、1日の終業時刻から翌日の始業時刻までに一定の休息時間を確保する仕組みで、労働者の健康確保や過重労働防止を目的としています。現行では「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」により努力義務とされていますが、導入率は低く、十分に機能しているとはいえない状況です。こうした課題を受け、労働基準関係法制研究会の報告書では、原則11時間程度の休息確保を念頭に、勤務間インターバル制度の義務化を視野に入れた法整備の必要性が示されています。義務化された場合、企業にはシフト管理や勤怠管理の見直しが求められ、働き方改革を進めるうえで重要な論点となります。
【参考】厚生労働省|勤務間インターバル制度
【参考】厚生労働省|労働基準関係法制研究会報告書
副業・兼業時の労働時間通算ルールの見直し
現行の労働基準法では、副業や兼業を行う労働者について、本業と副業先それぞれで働いた時間を通算して労働時間を管理する必要があります。これは労働基準法第38条に基づく考え方で、法定労働時間や時間外労働、割増賃金の算定に影響します。一方で、副業・兼業の普及により、複数事業所間での労働時間把握や管理が企業にとって大きな負担となっている点が課題とされてきました。労働基準関係法制研究会の報告書では、こうした実務上の負担を踏まえ、副業・兼業時の労働時間通算ルールの見直しが論点として示されています。今後は、労働者の健康確保を前提としつつ、企業が管理しやすい制度設計が検討される見通しです。
【参考】厚生労働省|副業・兼業における労働時間の通算について
【参考】厚生労働省|副業・兼業の促進に関するガイドライン
法定休日の特定義務化
現行の労働基準法では、法定休日として毎週1回または4週間に4日以上の休日を確保する必要がありますが、どの日を法定休日として扱うかは労使協定や就業規則で定めれば足りるため、事前に明示する義務はありませんでした。しかし、労働基準関係法制研究会の報告書では、法定休日を事前に確実に「特定」させることを義務とするための議論がなされています。これにより休日労働や割増賃金の計算ルールがより明確になり、長時間労働の抑制や労働者の健康保持につながると考えられています。背景には、休日の不明確さが連続勤務や過重労働の温床になっているとの指摘があり、制度の透明性を高める必要性があるためです。
【参考】厚生労働省|労働時間・休日
【参考】厚生労働省|労働基準関係法制研究会報告書
年次有給休暇の賃金算定ルールの変更
現行の労働基準法では、年次有給休暇取得時の賃金算定について「平均賃金」「通常賃金」「標準報酬日額」の三つの計算方法があり、企業はどれを適用するか選択できます(労働基準法第39条)。しかし計算法の違いによって休暇中の賃金額が変わり、従業員間の不公平感を生じさせる要因となってきました。このため、労働基準関係法制研究会の報告書では、より実態に即した賃金算定として「通常賃金方式」の統一や基準の見直しが検討されています。背景には、有給休暇取得促進と待遇の公平性確保、時間外労働との整合性を高める必要性があります。
こうした見直しが進めば、有給休暇取得時の賃金計算が明確化され、企業側の給与計算ルールが統一されやすくなると期待されています。企業は現行の賃金算定ルールを見直しながら、法改正に備えてシステムや就業規則の整備を進める必要があるでしょう。
【参考】厚生労働省|労働基準関係法制研究会報告書
「つながらない権利」の法制化検討
「つながらない権利」とは、労働時間外や休日に仕事関連のメール・電話・チャットなどへの対応を拒否できる権利のことを指します。世界的にはフランスなどで法制化が進んでおり、欧州を中心に勤務時間外の業務連絡に制限を設ける仕組みが普及しています。日本でも働き方改革やテレワークの普及を背景に、勤務時間外の連絡が心身の負担になるとの指摘が増えています。厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会では、勤務時間外の連絡ルールの明確化やガイドライン策定の検討が進んできたことが公表されています。
ただし現時点で、労働基準法そのものに「つながらない権利」を明記した規定はなく、法改正による義務化は確定していません。そのため今後は、労使双方が時間外連絡の範囲や対応基準を整理し、従業規則や社内ルールに反映させる必要性が議論されています。
【参考】厚生労働省|第204回 労働政策審議会 労働条件分科会 議事録
週44時間特例措置の廃止と管理職の範囲
現行の労働基準法では、小売業や飲食業などに対して、週44時間までの労働を認める特例措置があり、法定労働時間の運用に柔軟性を持たせています。また管理監督者については、労働時間・休憩・休日の規定が適用除外となるため、勤務時間の定めがないケースでも労働時間管理の対象外となっています。しかし、厚生労働省の労働基準関係法制研究会の報告書では、週44時間特例の廃止と管理職の適用範囲の再定義が議論されています。これは、業種や職種によらず労働時間の上限や休息時間を平等に確保する観点から、特例措置の見直しが必要との考え方に基づくものです。
特例措置を廃止することで、すべての労働者に対し基本の法定労働時間である週40時間を基準とした労務管理が明確になります。また、管理職の範囲についても、管理監督者であるかどうかの基準を厳格化することで、過度な労働時間管理の不適用を防ぎ、実態に即した労働時間管理を行えるようにする方向性が示されています。こうした議論は、労働者の健康保持や長時間労働の是正に資するとの観点から進められています。
【参考】厚生労働省|労働基準関係法制研究会報告書
【参考】e-Gov法令検索|労働基準法(第32条 労働時間)
【企業・人事向け】法改正が実務に与える影響と準備
労働基準法改正の議論が進むなか、企業の人事・労務部門には実務面での影響が想定されています。特に、勤怠管理や社内ルール、給与計算など、日常業務に直結する領域では事前の準備が重要になります。ここでは、企業が検討・対応しておくべき主なポイントを以下に整理します。
・勤怠管理システムの改修とシフト調整の厳格化
・就業規則および36協定の全面的な見直し
・給与計算フローと有給管理の変更対応
・「つながらない権利」への社内ルール策定
勤怠管理システムの改修とシフト調整の厳格化
労働基準法改正で議論されている「14日以上の連続勤務禁止」や「勤務間インターバル制度の義務化」に対応するためには、勤怠管理システムの見直しが不可欠になります。これらの規制が導入された場合、連続勤務日数や終業から始業までの休息時間を人手で管理することは現実的ではなく、システム上での自動チェックやアラート機能の活用が重要となります。例えば、連続勤務が一定日数を超えそうな場合や、インターバル時間が確保できていない場合に警告を表示する設定が求められます。
また、シフト制を採用している職場では、シフト作成時点で法令違反が発生しないよう、事前に調整できる仕組みが必要です。特に繁忙期や人手不足の現場では、無意識のうちに連続勤務や短時間インターバルが発生しやすいため、管理者によるチェック体制の強化も欠かせません。勤怠管理システムと運用ルールをあわせて見直すことで、法令遵守と現場負担の軽減を両立させることが重要になります。
就業規則および36協定の全面的な見直し
労働基準法改正が実施された場合、企業には就業規則や36協定の内容を改めて見直す対応が求められます。特に、「法定休日の特定義務化」や「副業・兼業時の労働時間通算ルールの見直し」が進めば、休日の定義や労働時間の考え方を就業規則上で明確にしておく必要があります。これまで曖昧に運用されていた休日区分や時間外労働の取り扱いについて、条文レベルで整理し直すことが重要になります。
また、36協定についても、時間外・休日労働の上限規制や対象範囲が変わる可能性があるため、協定内容が現行法令や改正後の考え方と整合しているかを確認する必要があります。副業・兼業を認めている企業では、労働時間管理の方法や届出ルールを就業規則に反映させることも欠かせません。法改正を機に、実態に合わない規定を放置せず、運用と規程のずれを解消しておくことが、将来的な労務トラブルの防止につながります。
給与計算フローと有給管理の変更対応
労働基準法改正の議論では、年次有給休暇取得時の賃金算定について「通常賃金」への統一が検討されています。現在は、平均賃金方式や標準報酬日額方式など複数の計算方法が認められており、企業ごとに算定方法が異なるケースも少なくありません。算定方式が統一された場合、給与計算の前提条件が変わるため、計算ロジックやシステム設定の見直しが必要になります。
特に、残業代や各種手当を含めた通常賃金の定義をどのように反映させるかは重要なポイントです。賃金項目の設定を誤ると、有給休暇取得時の支給額に差異が生じ、従業員からの問い合わせやトラブルにつながるおそれがあります。そのため、給与計算システムを利用している場合は、ベンダーと連携し、設定変更やテストを事前に行うことが求められます。また、有給残日数の管理や取得実績の把握についても、賃金算定と連動した運用が必要となるため、制度改正を見据えた管理フロー全体の点検が重要です。
「つながらない権利」への社内ルール策定
「つながらない権利」が法制化または制度として明確化された場合、企業には勤務時間外の連絡に関する社内ルールの整備が求められます。業務時間外にメールやチャット、電話で連絡を受けることが常態化している職場では、労働時間と私生活の境界が曖昧になり、心身の負担や長時間労働につながるおそれがあります。そのため、どの時間帯は連絡を控えるべきか、緊急時の例外対応をどう定めるかなど、具体的なガイドラインを策定することが重要になります。
あわせて、管理職に対するマネジメント教育も欠かせません。管理職自身が時間外連絡の影響を理解し、部下に対して無意識に負担をかけていないかを点検する必要があります。特にテレワーク環境では、即時対応を求める文化が生まれやすいため、連絡手段や対応時間に関する共通認識を持つことが重要です。社内ルールと教育を組み合わせることで、労働者の休息を確保しつつ、円滑な業務運営を維持する体制づくりが求められます。
まとめ
労働基準法改正については、2025年に労働基準関係法制研究会の報告書が公表され、今後の見直しに向けた議論の方向性が示されました。法案提出は現時点で見送られているものの、連続勤務の制限や勤務間インターバル制度、副業・兼業時の労働時間管理、休日や有給休暇の取り扱いなど、企業実務に直結する論点が幅広く検討されています。これらはいずれも、労働者の健康確保と持続的な働き方を実現するための重要なテーマです。企業としては、改正内容が確定してから対応するのではなく、勤怠管理、就業規則、給与計算、社内ルールといった基盤をあらかじめ点検・整備しておくことが求められます。今後の国の動向を注視しながら、段階的に準備を進めることが、法令遵守と安定した労務管理につながります。
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