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派遣スタッフもテレワークに移行できる!メリットと課題を解説

派遣スタッフもテレワークに移行できる!メリットと課題を解説

新型コロナウイルス感染拡大防止の目的から、政府ではテレワークの導入を強く呼びかけています。実際に2020年6月に東京都が都内企業1万社を対象におこなったアンケートでは、テレワークを導入している企業は57.8%と、前年度(25.1%)から22.7%上昇していることが明らかになっています。

テレワークにはメリットも多いですが、それは社員全員がテレワークに切り替えることで初めて効果が現れます。自社社員はもちろん、派遣スタッフに対してもテレワークを実施したいと考えるも、契約内容の取り決めやテレワークができる環境の整備など、さまざまな課題を感じている方も多いかもしれません。

今回は新型コロナウイルス感染拡大防止はもちろん、さまざまな課題を解決できる派遣スタッフのテレワークについてあらためてメリットを確認するとともに、派遣スタッフのテレワーク勤務に関する課題とポイントを解説します。

テレワークの実現によるメリット

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本来であれば東京五輪がおこなわれるはずだった2020年、東京都は交通混乱を避ける目的から都内の企業に対し、テレワークの導入を促していました。テレワークの導入は、多様な働き方の実現とともに、さまざまな課題を解決できます。

BCP(事業継続計画)


自然災害や大火災、システム障害などの緊急事態は、いつ発生してもおかしくありません。企業はそんな緊急事態を想定し、事業の継続を可能とするための事業継続計画(Business Continuity Plan)を準備しておくことが重要です。

BCPの策定には、従業員の安否確認の手段の確立や事業所の安全性確保、災害保険への加入のほか、テレワークの導入も含まれています。実際に2009年に策定された「新型インフルエンザ対策ガイドライン」でも、在宅勤務はBCP、パンデミック対策として位置付けられています。

新型コロナウイルスだけでなく、台風や首都直下型地震といったリスクから企業と社員を守るためにも、雇用形態を問わずテレワークの導入は重要だといえるでしょう。

人材不足の解消


従来の勤務形態であれば、従業員はオフィスに出社することが基本でした。その反面、時間や場所を選ばないテレワークでの勤務は、柔軟な働き方を可能にします。

今までは地方在住の人、出産・育児と仕事の両立が難しい人、親の介護をしなければならず、長時間自宅を離れられない人など、距離や時間の問題でオフィスへの出社ができないケースも見られました。

どれほど能力が高く、本人に就業意欲があったとしても、オフィスに出社できないことで就業機会を損失してしまっていたのです。

それがテレワークという形であれば、企業側は人材の確保ができ、従業員側は就業機会の獲得と双方にメリットがあります。

交通費(通勤手当)の削減


テレワークはオフィス出社の必要がなくなるため、交通費の削減につながります。一部の大手企業ではテレワークを勤務形態の基本とし、通勤定期券代の支給を廃止するほか、単身赴任を削減するとの発表もされています。

テレワークの導入後に従業員が出社せざるを得ない状況になったとしても、出勤日数に基づいて後から支払いをする形を取ることで、本来の実費弁償に近づけられます。

テレワークに適した職種

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テレワークの導入はさまざまなメリットがあるものの、どんな企業にも適しているとは限りません。業務内容によっては対面やオフィスでの業務が必須であり、かえって不利益が生じる可能性もあります。

テレワークは、どんな職種でも導入ができるとは限りません。以下のようなポイントから、テレワークとの相性を考えて導入を検討する必要があります。

場所


テレワークはネットワーク環境と各種ツールがあれば、どんな場所でも業務を始められます。例えばExcelやWordを用いたデータ入力、請求書や契約書の作成といった事務職は、テレワークでも業務が可能です。

そのほかにも、メールや電話で顧客と連絡を取ることができれば、カスタマーサポートや営業もテレワークで業務に取り組められるでしょう。

一方で、実店舗での販売や工場の稼働など、物理的にその場にいなければ業務に取り組めない職種との相性は良いとはいえません。

成果


テレワークでは従業員の様子がわかりづらく、評価が難しくなります。そのため、成果を基準に評価することが求められます。

完了した業務量が可視化しやすい経理や事務、成果物の内容で判断できるライターやデザイナーはテレワークに適しています。

テレワーク派遣の課題

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新型コロナウイルスの感染防止の観点から、厚生労働省はひとりでも多くのスタッフがテレワークで勤務ができるよう、派遣スタッフや派遣先の企業に対し、テレワークの活用を図るよう呼びかけを行っています。

スタッフサービスグループでも「2025年までに47都道府県において2万人規模でテレワーク派遣の展開」を目指し、テレワーク派遣サービスを展開しています。

しかし事務系、IT系の派遣労働者を中心に一定、テレワークの実施はおこなわれているものの、厚生労働省が労働者派遣事業者団体を通じて把握した状況によれば、実施社数の割合は約3割です。

派遣労働者のテレワーク導入における課題は、以下の通りです。

設備


総務省の調査「令和元年通信利用動向調査の結果」によれば、2019年に日本はインターネット利用者の割合が9割に迫っている一方、インターネット利用機器はスマートフォンがパソコンを上回っている状況にあります。その背景には、パソコンを所有していない、自宅のネットワーク環境が整っていないといった理由が考えられます。

契約内容の変更


派遣契約時、派遣先と派遣元の間では派遣スタッフの就業場所や業務内容を取り決めています。テレワークでは、就業場所を含め、一部契約内容を変更する必要が生じます。

コミュニケーション


テレワークは派遣先からの目が届きにくく、進捗の確認や相談事など、通常の勤務以上にコミュニケーションを取ることが重要となります。電話やメール、チャットなどコミュニケーションの方法を定めておきましょう。

情報セキュリティ


個人が所有するデバイスを業務に活用する「BYOD(Bring Your Own Device)」のように、派遣スタッフが所有しているパソコンをテレワーク時に使えば、企業側の負担が少なくなります。一方で、セキュリティ体制が脆弱の場合ネットワークを介したサイバー攻撃を受けてデバイスがウイルスに感染する、パソコンの紛失や盗難による情報漏えいのリスクが高まるといった問題も生じます。

原則としてセキュリティ対策をしておくだけでなく、万が一トラブルが発生した際の対応も事前に取り決めておくと良いでしょう。

勤怠管理


派遣先のオフィスに出社していたときは、何時まで働いていたのかを派遣先が把握することは難しくありませんでした。しかし、テレワークの状況下では、社員それぞれの明確な勤務時間を直接確認できないため、勤怠管理も、テレワーク導入における課題のひとつとなっています。

勤務時間の把握として始業時にメールや電話で派遣先に連絡する方法もありますが、管理する側が対応に追われ、見落としてしまうことも考えられます。

そんな状況で煩雑になってしまう勤怠管理を一元管理するには、勤怠管理ツールの導入が有効です。他の労務管理システムと連携できるツール、従業員の人数に最適な料金プランが選択できるツールなど、目的や人数によって勤怠管理ツールを選ぶことも可能です。

そのほか、成果物のクオリティをもとに勤怠管理を行うことを検討しましょう。

テレワーク派遣実現のポイント

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派遣スタッフのテレワーク導入を妨げる課題も数多くあります。それでも実現のためのポイントを把握し、対処することで導入は可能となります。

環境の整備


自宅にWi-Fi環境がない、パソコンを所持していないといった派遣スタッフがいれば、企業側で設備を整えることも検討できます。

厚生労働省ではテレワークに取り組む中小企業事業主に対し、実施に要した費用の一部を助成する制度、働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)も定めています。支給対象であるかを確認し、申請を進めれば企業側の負担も軽減されます。

労働者派遣契約の変更


テレワークを実施する際は、契約書に就業場所として「自宅」や「サテライトオフィス」など勤務する場所追加する必要があります。そのほかにも費用負担についてあらかじめ定めることは、留意点として周知しておけば、トラブル防止にも有効です。

また、本来であれば派遣元事業者、派遣先は定期的に派遣スタッフの就業場所の巡回が求められます。しかし厚生労働省は、派遣労働者が自宅などでテレワークを実施する際、電話やメールなどで就業状況を確認できるのであれば、自宅への巡回は実施しなくても良いことを提示しています。

ツールの導入


テレワークの需要が高まったこともあり、コミュニケーションや勤怠管理をはじめ、テレワークに有効なツールが次々と提供されています。

中でも注目を集めているのが、「ハンコ」を電子で処理できる決済ツールです。テレワーク導入後も書類を確認、捺印するだけのために出社を余儀なくされる状況が問題視されるなか、在宅で業務を完結できるツールにはテレワーク化を促進するというメリットがあります。

また、電話やメールなど、リアルタイムで反応が難しい状況であっても、チャットツールであれば即時にリアクションができるほか、勤怠管理ツールの中にはパソコン稼働時間を記録することで従業員の勤務時間を把握できるものもあります。

そしてセキュリティに関しても、厚生労働省では社内のイントラネット(会社内のネットワーク)にアクセスする際のリモートアクセスツールの導入を勧めています。これらのツールをうまく活用できれば、テレワーク派遣の導入も成功できるでしょう。

まとめ


テレワークの導入には、環境やセキュリティをはじめ、さまざまな課題も存在します。それだけでなく、テレワークに適した職種なのか見極めも求められており、安易に導入を検討すれば失敗に終わることも避けられないでしょう。

それでも雇用形態に関わらず、テレワークはBCP対策、人材の確保など今後の働き方に対応できる可能性も秘めています。今一度、企業で有効に活用できるかを踏まえながら検討してみてはいかがでしょうか。