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人材の採用戦略の具体的な立て方とポイントを紹介

人材の採用戦略の具体的な立て方とポイントを紹介

採用戦略とは、企業が求める優秀な人材を採用するための戦略です。自社の採用活動を成功させるためには、あらかじめ「どうすれば優秀な人材を採用できるのか」について検討する必要があります。本記事では、採用担当が必要な理由と採用計画を立てる手順、ポイントを紹介します。

採用戦略とは

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採用活動には採用人数の目標値や採用計画、求人広告媒体の選定、面接などのフローがあります。しかし、採用を急ぐあまり個々の採用活動を決めることから考えはじめると、実際の採用において場当たり的な対応となったり、上手くいかなかったときの改善策を講じられなくなったりします。

採用活動をスタートする前に「採用戦略」を立て、採用担当者だけでなく社内でも認識を共有することで、企業が求める優秀な人材を採用しましょう。

採用戦略が必要な理由

少子高齢化に伴う人手不足や事業環境の変化、企業価値向上に対応するために、無計画な採用活動をおこなうのではなく採用戦略の必要性が高まっています。近年の日本では人材への期待値が高まる一方で少子高齢化による人材不足のため、企業が求める人材を獲得しにくくなっています。

一方、企業を取り巻く環境が大きく変化していくなかで、採用するのは求職者であれば誰でも良いわけではありません。事業環境の変化に対応するために、優秀な人材を確保していく必要があります。

最近では人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営として人的資本経営が注目されています。企業価値向上のために、企業は非財務情報である人的資本を活用していかなくてはいけません。人的資本を活用するためのスタートとして、採用戦略の必要性が高まっています。

▼参考:経済産業省「人的資本経営」

採用戦略を立てる手順

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採用戦略を立てる手順は「採用に関わる社員の選定」「採用したい人物像の明確化」「採用計画の策定」「人材募集の手法の決定」「フォロー体制の確立」「入社後の体制を用意」の6段階です。それぞれ詳しく説明しましょう。

①採用に関わる社員の選定


採用戦略では、まず採用に関わる社員の選定から始めます。採用活動というと、人事部内の採用担当者が思い浮かぶかもしれません。しかし、実際のところ採用活動のフローのなかではさまざまな社員が関わります。たとえば、現場の管理職に面接官を依頼したり、選考前におこなうカジュアル面談の担当者を人事部以外の若手にお願いしたりすることもあるでしょう。

採用活動には新卒・中途・キャリア採用などの種類があります。それぞれどの部署のどのような役職の社員が採用に関わるのか、採用活動のフロー全体を見渡して決めておくと良いでしょう。新卒採用なら、以下のような社員が採用活動に関わります。

・会社説明会:人事部採用担当者、現場の社員
・筆記試験:人事部採用担当者
・一次面接:人事部採用担当者、人事課長
・二次面接:人事部採用担当者、現場の管理職
・三次面接:人事課長、人事部長、役員

あらかじめ関わる社員ついて、「採用に関わる社員の選定」の段階では、まずフローごとにおおまかに決めておきます。そして、採用計画を立案した後に、「○○部の管理職」に二次面接の面接官を依頼することを個別に決定することになります。そうすることによって、新卒→中途→キャリア採用と種類が変わっても活用しやすくなるでしょう。

②採用したい人物像の明確化


企業における事業の方向性、事業環境の変化に応じて採用したい人物像を明確化します。つまり企業の将来性を見て、具体的に優秀な人物像を考える必要があるということです。そうしなければ、目の前の求職者を見て「コミュニケーション能力があって何となく優秀そうだから、面接選考を通過させよう」などと判断しがちになる場合もあります。

長期的な視点を持ち、自社にとって優秀な人物像とはどのような人材なのか、年齢や考え方、スキル、経験、キャリアビジョンなどについて細かくペルソナを設計。そして、採用活動に関わる社員間で人物像を共有しておくと良いでしょう。優秀な人物像は採用したい部門によっても異なるため、いくつか用意することになります。

③採用計画の策定

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採用したい人物像を決めた後は、採用計画を策定しましょう。採用計画では、主に採用目標人数やスケジュールを決定します。

採用目標人数は定年退職者数と過去数年間の離職率を鑑みて、どの程度の採用が必要かを新卒・中途採用ごとに検討します。また、事業の方向性や事業環境の変化などにより、今後必要になる人材の数が部門ごとに変わることもあり得るでしょう。そのため、「例年○○人を採用しているから」という採用活動の習慣ではなく、まずは予測される社員数の減少に対応できる人数を決め、次に事業の方向性や事業環境の変化に応じて部門ごとに必要な人数を決めることになります。

具体的に、現在は目立った投資をしていないが、今後、研究開発費や広告宣伝費を投入しようと考えている部門があるとしましょう。しかし、従来の採用活動の習慣を活かそうとすると、「これまで通り採用人数を増やさない」などと判断しがちです。事業の方向性と相反する採用目標人数としないよう、経営陣や部門責任者へ密にヒアリングしておく必要があります。

採用目標人数では、採用にかけられる予算との関係も重視しましょう。部門からの要請に基づいて採用した結果、「実は採用に関わる人件費予算が足りなかった」という事態にならないよう、事前に配分した新卒・中途・キャリア採用ごとで予算に基づき人数を決めます。なお、中途・キャリア採用ではポジションに応じて人件費が高まることが考えられるでしょう。そのため単純な目標人数だけでなく、ポジションに見合った人件費との兼ね合いで採用目標人数を決定することが大切です。

次に、スケジュールを検討しましょう。新卒でも中途でも、求職者は複数社の選考を受けています。スケジュールが曖昧だと求職者に選考を辞退されるリスクが高まるので、選考回数や内定までの期間は求職者に開示します。スケジュールのなかでは、オンライン面接の可否についても求職者に伝えておくと親切です。

④人材募集の手法の決定


人材を募集するためには、採用ホームページや広告媒体、人材紹介、合同説明会などの手法が一般的です。その他、求職者に直接企業がアプローチするダイレクトリクルーティングや、自社に在籍していた人を再雇用するアルムナイ採用という新しい採用手法も出てきています。採用計画を踏まえ、どのような手法が自社に合うか決定しましょう。

少子高齢化に伴う人手不足、事業環境の変化、企業価値向上に対応するための採用戦略ですから、数よりも人材の質を担保するために必要な人材募集の方法を決定しましょう。たとえば、即戦力を確保したいのであれば人材紹介を選び、母数が少ない若手層を集めたいのであれば広告媒体を選ぶといったやり方があります。

⑤フォロー体制の確立


採用活動を進める上で悩ましいのが内定辞退です。自社が良いと思う人材は他社も欲しいと思うもので、優秀な人材は企業間での取り合いになります。内定を出した後のフォロー体制を整え、内定者が自社を選ぶ上での不安を払しょくできるよう、求職者が不安と感じそうな部分を洗い出して対処できるようにしておきましょう。

⑥入社後の体制を用意


採用戦略では入社後の定着も重要です。せっかく入社したのにすぐに離職されては経営効率が悪いですし、社内の人手不足や事業環境の変化にも対応できません。入社後の定着を目指した施策として、優秀な人材に対しての育成強化、1on1による上司と部下の関係性の強化などが挙げられます。

高業績社員が定着し、能力を発揮できるようにするための施策をリテンションマネジメントといいます。リテンションマネジメントの事例として、経営学者の山本寛氏は以下の4点を挙げています。

・現実的職務予告
・雇用の保障
・賃金の高さ
・福利厚生

現実的職務予告とは、入社前の段階で求職者が担当する仕事の詳細を明らかにしておくというものです。担当する仕事内容が求職者の期待とギャップがあると離職しやすくなるので、入社前に仕事内容を伝えておくことで人材の定着を促す施策となります。

参考:山本寛研究室

採用戦略のポイント

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採用戦略を立てる上で必要な4つのポイントを確認します。ポイントを踏まえて採用戦略を立てる手順を実行すると効率的です。

自社の魅力を求職者目線で把握する


採用戦略を立てる上では自社の魅力を把握して、社内で共有することが重要です。ただし、自社目線だけでなく、求職者目線でも自社の魅力を把握しておかなくてはいけません。

たとえば、求人票に自社の魅力として仕事内容や人事制度、福利厚生を挙げる場合、求職者が魅力に感じる視点で記載すると、自社への求職者の志望度が高まる可能性があります。求人票の記載に慣れていなければ社内の第三者に求人票を見せてみて、求職者が魅力的に感じられる視点で求人票が作れているかどうか確認してもらいましょう。

入社後の人間関係や職場の雰囲気を重視する求職者に対しては、配属先の社員にヒアリングして人間関係や職場の生の声を求人票に書くと臨場感が出ます。これによって求職者も働くイメージが湧いくため、「ここで働いてみたい」と感じるようになるでしょう。

求人票だけでなく面接においても、自社の魅力は求職者目線で把握して話せるようにしておきます。面接官がいくら一方的に自社の魅力だと思っていても、その魅力が求職者に響かなくては意味がありません。たとえば、ベンチャー企業でたくさん働いてスキルアップしたいと求職者が考えているとします。しかし、面接官は「ベンチャー企業だから休めないと思われると入社してくれないかもしれない」と考え、面接中に休暇がたくさんあることをアピールしたところで求職者には伝わりません。

自社の魅力を求職者目線で把握する際には、そもそも自社が求職者からどのように見られているのか、その上で相手が自社のどんなところに魅力を感じそうかという視点で把握することが大切です。企業の一方通行にならず、求職者が働いてみたいと感じられる魅力を伝えられるよう工夫しましょう。

面接スキルを上げる

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面接官の面接スキルを上げることも、採用戦略の重要なポイントです。採用戦略は少子高齢化に伴う人手不足、事業環境の変化、企業価値向上に対応するためにおこないます。数さえ確保すれば良いのではなく、優秀な人材を採用することが面接官の役割です。

そのためには、求職者が採用したい人物像に見合うかどうか面接官が判断しなくてはなりません。優秀な人材は、高いパフォーマンス力を発揮することができます。つまり、パフォーマンスを再現することができるのです。そして面接官は、パフォーマンスをいかに再現できるか見抜かなくてはなりません。面接スキルを上げて、優秀な人物を見極めて採用できるようにしましょう。

採用戦略を社内で共有する


立案した採用戦略は、少なくとも採用活動に関係する社員には共有しておきましょう。採用戦略は人事部が中心になって立案するものですが、人事部だけでクローズしておくとカジュアル面談の担当者や面接官を務める社員に伝わらず、求めていない人材が面接に進んでしまうかもしれません。

また、人事部の思いが伝わらず、社員が本気で採用活動に取り組んでくれないこともあるでしょう。優秀な人物像とは何か、内定承諾のためのフォロー体制、入社後の体制などについて社内で共有しておき、求める人材を着実に採用できるよう運用しましょう。

定期的に振り返りをおこなう


採用戦略は定期的に振り返りをおこない、必要に応じてブラッシュアップしてください。時間はかかりますが、一度作った採用戦略が完璧とは限りません。採用戦略をもとに採用活動を進めてみた結果、上手くいかなかった点もあるはずです。これを改善し、次に上手くいくようにするためにどうしたら良いか施策を立てておきましょう。また、振り返りをおこなうことでリスクの未然防止にもつながります。

まとめ

少子高齢化や事業環境の変化に対応するために、企業は採用戦略を立てて自社が求める人材を着実に確保する必要が出てきています。優秀な人材は他社も採用したいと思っているものです。企業全体を巻き込んだ採用計画を練ることで、企業のニーズにマッチした優秀な人材の採用につながるでしょう。

スタッフサービスグループでは「一刻も早く優秀な人材が欲しい」と考えている企業様に対して、採用戦略をサポートしています。「ミスマッチや採用負荷を抑えるにはどうしたら良いか」「育成を前提として将来的に基幹人材となる人材をどうやって確保できるか」など、企業様のお悩みに役立つソリューションや事例を多数保有しておりますので、お気軽にお問い合わせください。


《ライタープロフィール》

山崎 英理夫(人事コンサルタント)
人事コンサルタントとして教育研修のプログラム開発、人事制度診断等を提供。また、企業人事として新卒・中途採用に従事し、人事制度構築や教育研修の企画・運用など幅広く活動。この経験を活かし、人材関連の執筆にも数多く取り組む。