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派遣会社のマージン率について解説

派遣会社のマージン率について解説

派遣業界のマージンとは、派遣先会社が派遣元会社に支払う料金のうち、派遣社員への賃金以外の部分を指します。これの全体に占める割合を「マージン率」と呼んでいます。

2021年の法改正以降、派遣会社にはマージン率等の公開が義務付けられるようになりました。
「マージン率とは具体的に何を指すのか」「マージン率の内訳は?」「自社に適した派遣会社を選ぶためのポイントを知りたい」といったお悩みを抱えていませんか?

マージン率は単に企業の利益を示すものではなく、その内訳にさまざまな要素を含んでいます。一概にマージン率の数字だけでは、派遣会社のことを知ることはできません。

そこで、本記事では以下のポイントについて解説します。

● マージン率の計算方法や内訳
● 企業が派遣会社を利用するメリットとデメリット
● マージン率以外に注目したいポイント

派遣会社を選ぶ際は、マージン率のほかにも重要な着眼点があります。最後まで読んで、ぜひ参考にしてみてください。

派遣会社のマージン率とは

派遣会社のマージン率について解説_1

まずは、派遣会社で使われる「マージン率」の内容について解説します。

概要

マージン率とは、派遣先が派遣元会社に支払う料金のうち、派遣社員へ支払う賃金を除いた部分(マージン)が全体に占める割合のことです。マージン率には、派遣会社の運営に必要なさまざまな要素が含まれており、一概に「マージン率=派遣元会社の利益」とはなりません。
マージン率は派遣会社によって異なるものの、一般社団法人 日本人材派遣協会のデータによると一般的には約30%前後であるとされています。
2021年の労働者派遣法の改正により、原則として派遣会社にはマージン率を含む詳細な運営情報の公開が義務付けられました。現在では、情報提供の法的義務がある全ての情報について、インターネットなどを通じて、常時閲覧が可能になっています。
これにより、企業や派遣就労を希望する人々が、より適切な派遣会社を選択できるようになりました。

【参考】厚生労働省|派遣会社のマージン率等について
    一般社団法人 日本人材派遣協会|派遣料金の構造

派遣会社のマージン率の内訳について

派遣会社のマージン率について解説_2

マージン率には、社会保険料や福利厚生費、教育訓練費など、さまざまな項目が含まれています。本章では具体的な内訳や計算方法をお伝えします。

マージン率の計算方法

マージン率の計算には、以下の2つを用います。

①労働者派遣に関する料金額の平均額 
②派遣労働者の賃金額の平均額

①は派遣会社が派遣先から受け取る料金の平均額で、②は派遣労働者に支払われる賃金の平均額です。このとき、マージン率は以下の計算式(A)で求められます。

(①-②)/①✕100 式(A)

例えば①が12,000円、②が8,000円のとき式(A)は

(12000-8000)/12000✕100=33.33…となり、マージン率は約33.3%となります。

マージン率の計算において、小数点第一位未満の端数が生じたときは、四捨五入する点に注意が必要です。この計算によって、派遣料金と派遣労働者の賃金の差額がどれだけの割合を占めるかが分かります。

【参考】厚生労働省|派遣会社のマージン率等について

マージン率の内訳

マージン率の主な内訳は以下のとおりです。

 <マージン率の主な内訳>
● 法定福利費
● 有給休暇費用
● 事業運営費用
● 広告宣伝費用
● 教育訓練費
● 営業利益

派遣スタッフには健康保険、介護保険、厚生年金、労災保険、雇用保険が適用されます。これら社会保険料のうち、派遣元会社の負担分は法定福利費としてマージンから支払われます。

また、派遣労働者が有給休暇を利用した際の賃金や派遣会社の日常的な事業運営に必要な費用もマージンに含まれます。事業運営費は、オフィスの家賃や電話・インターネットなどの固定回線料金、PC購入費、営業担当者などの人件費などです。

派遣会社は派遣スタッフを集めるために、テレビCMやSNS広告、Web広告などさまざまな広告媒体を利用することがあります。この広告出稿等の費用もマージンに含まれるものです。
上記の経費を全て差し引いた後に残る金額が、営業利益となります。営業利益は、派遣会社が持続的に事業運営をおこなうための重要な資金源です。

労働者派遣法に基づき、派遣元会社の事業主にはマージン率などの重要な情報の公開が義務付けられました。これにより、派遣労働者や派遣先企業は透明性の高い情報に基づいて適切な判断をおこなえるようになっています。

マージン率は、低いから良いというわけではありません。低マージン率の裏には派遣労働者の給与や福利厚生の削減といった状況が隠れている可能性もあります。一方、適切なマージン率のもとで運営されている派遣会社では、派遣労働者に対して待遇に見合った給与や福利厚生の提供や長期的な雇用の安定やキャリアアップの支援を実施していると考えることもできます。

スタッフサービスグループでは、以下のリンクよりマージン率等の情報を閲覧することができます。派遣先選びの参考にしてみてください。

スタッフサービスグループ|労働者派遣法に基づく情報公開(マージン率等)

【参考】一般社団法人 日本人材派遣協会|派遣料金の構造

マージン率以外の考慮すべきポイント

派遣会社を選定する際にはマージン率だけを基準にするのではなく、以下のポイントも考慮して、総合的に判断することが重要です。
本章では具体的に以下3つのポイントについて説明します。

● フォロー体制
● 業界における専門性
● 評判や信頼性

フォロー体制
派遣会社が提供するフォロー体制は、派遣労働者のパフォーマンスと直接関連しています。派遣労働者への定期的なサポートやキャリアアップのための教育訓練の機会提供などのフォローが充実しているほど、派遣労働者が長期にわたり企業に貢献できる可能性が高まります。

業界における専門性
派遣会社が持つ業界知識や専門性も、重要な選定要素です。特定の業界に特化した派遣会社は、その分野におけるより適切な人材を提供できる可能性が高くなります。
特定の専門分野での経験が豊富な派遣会社を選ぶことで、求めるスキルを持つ派遣労働者の確保がしやすくなるでしょう。

評判や信頼性
派遣会社の評判や市場における信頼性も大きな判断材料です。他の企業からの評価やレビュー、実績などを参考にして、信頼できる派遣会社を選ぶことが望ましいといえます。透明性の高い運営をおこなっている派遣会社は、信頼性をともなっていることが多く、問題が発生した際の対応が迅速な場合もあります。結果として、長期的な関係性を築ける可能性があります。

企業が派遣会社を活用するメリット・デメリット

派遣会社のマージン率について解説_3

企業が派遣会社を利用する際に想定されるメリットとデメリットを解説します。双方を把握したうえで、自社の状況に合っているかを見極めましょう。

メリット

ここでは3点のメリットをあげて解説します。

採用コストの削減
派遣会社を通じた派遣労働者の採用は、直接雇用の場合と比較し初期コストを大幅に削減できます。派遣労働者を雇う際には、採用に関わる全体的なコストを低く抑えられるのがメリットです。

労務管理負担の軽減
派遣労働者の給与計算や社会保険手続きは派遣元会社が担当するため、派遣先会社側の労務管理負担が軽減されます。また、派遣元がおこなう健康診断や入社時訓練により、通常新たに人材を雇う際に必要な労務業務への対応も必要ありません。

即戦力としての人材確保
特定の期間やプロジェクト限定で、迅速に人材確保ができるのも派遣会社を利用するメリットのひとつです。例えば、社員が産休や育休を取っている間の人材補充、繁忙期の一時的な増員などがあげられます。派遣会社を利用することで、特定のスキルを持つ専門家の短期間の確保といったさまざまなニーズに応じて柔軟な対応が可能です。必要な時に適切な人材を配置できることにより、人件費の効率的な運用につながります。

デメリット

デメリットについては以下の2つの視点からみていきます。

業務内容の制限
派遣労働者は、契約に記載された業務以外をおこなうことが基本的に禁止されています。また、以下の業務は労働者派遣事業をおこなうことができません。

● 港湾運送業務
● 建設業務
● 警備業務
● 医療関係業務(一部業務や条件のもと、派遣対応可能なものもあり)
● 士業(弁護士・税理士・司法書士・社会保険労務士など)

また、直接雇用の社員よりも業務範囲が限定されるため、企業が活動するうえで生産性が低下する可能性があります。

【参考】厚生労働省|労働者派遣事業を行うことができない業務は

派遣スタッフの指名不可
特定のスタッフを指名して派遣を依頼することは、労働者派遣法で禁止されています。派遣元会社はスキルや経験、労働条件に基づいて人材を提供しますが、派遣先の会社が、選考を目的とした面談などをおこなうことはできませんので注意が必要です。

まとめ

マージン率の内容や計算方法を知ることは、派遣会社の運営状況の把握につながります。また、派遣労働者の待遇改善に対応しているかを判断する材料にもなるものです。派遣会社の利用は、採用コストや労務管理の面でメリットがある一方で、継続的な指導コストがかかるなどのデメリットもあげられます。社員が育児休業中であるなど、自社の抱えている状況に合った活用をする体制がポイントです。

 


<執筆監修者プロフィール>
西本 結喜(監修兼ライター)

結喜社会保険労務士事務所 代表。金融、製造、小売業界を経験し、業界ごとの慣習や社風の違いを目の当たりにしてきたことから、クライアントごとのニーズにあわせ、きめ細やかな対応を心がけている。