
派遣会社の営業職ではない?営業職派遣のメリット・デメリットについて解説

派遣にはさまざまな職種があり、その中には「営業職」も存在します。営業職派遣は、他の派遣と同様に、人材派遣会社から派遣スタッフとして派遣され、企業の営業職に該当する業務を担当します。
営業職派遣は、求職者側と企業側双方のニーズとマッチしていれば、効果的な働き方となる雇用形態です。本記事では、営業職派遣の概要や営業代行との違いのほか、求職者側と企業側のメリット・デメリットや営業職派遣の実態について解説します。
目次
営業職派遣とは
営業職派遣とは、営業を担当する人材を派遣先企業に派遣することです。派遣会社の営業と混同するかもしれませんが、派遣会社の営業は、派遣会社の社員として派遣先企業に対する営業を行うことを指します。一方、営業職派遣はあくまでも派遣業務のひとつです。
営業職派遣に近い契約形態として挙げられるのが、営業代行です。ただし、営業職派遣と営業代行では、働き方や業務範囲が異なります。ここでは、営業職派遣と営業代行との違いや、使い分けについて解説します。
営業代行との違い
営業職派遣と営業代行との違いは、契約形態です。営業職派遣は派遣契約で定められた範囲内で営業活動をします。そのため、派遣スタッフに対する指揮命令権は派遣先企業にあります。
一方、営業代行は企業と業務委託契約を締結し、委託された営業業務を遂行する働き方です。業務委託のため、業務の指揮命令権は委託元企業ではなく、営業代行会社にあります。
また、営業職派遣では派遣契約書に記載がない業務には携われません。しかし、営業代行では業務範囲に制限がないため、委託された業務を遂行するために、さまざまな業務に携われる可能性があります。
指揮命令権と業務範囲が大きな違いといえるでしょう。
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営業代行との使い分け
営業職派遣と営業代行は、どちらも社外の人材に営業を任せる仕組みです。しかし、営業職派遣と営業代行は、解決できる課題が異なります。営業職派遣の使い方に適しているのは、人員補充です。
営業職派遣の業務の主体は派遣先企業側にあり、営業職派遣スタッフは、企業側の指示命令にしたがって働きます。
一方、営業代行は業務委託のため、企業側からスタッフへ具体的な指示は出せません。しかし、営業代行会社は、会社として営業スキルやノウハウを保有しているケースが多く、難易度が高い業務にも対応できる傾向があります。
営業の種類
営業にはさまざまな種類があります。主な種類として挙げられるのは、以下の3つです。
● ルート営業
● 新規開拓
● インサイドセールス
ここでは、それぞれの種類について解説します。
ルート営業
ルート営業とは、すでに取引している顧客に対して新商品の提案やニーズのヒアリングを行う業務です。新規顧客の獲得よりも、顧客との信頼関係の構築や、契約の継続を目的としています。
決まった場所や顧客にアプローチする業務のため、新規開拓と比べると難易度は高くありません。アプローチの回数を重ねるにつれ、顧客とも顔なじみになります。難易度や業務内容がルーティン化されているため、営業職派遣に適した職種といえるでしょう。
新規開拓
新規開拓とは、新たな顧客を見つける業務です。新規訪問や電話、メールで、アプローチをするのが一般的です。取引先が一般消費者であれば「個人営業」、取引先が企業であれば「法人営業」と呼びます。
新規開拓には、市場調査や営業戦略などの準備も必要です。そのため、営業職派遣にとっては難易度が高い業務といえるでしょう。
インサイドセールス
インサイドセールスとは、見込み顧客に対しメールや電話などを使用して、非対面でアプローチする営業方法です。反応があった見込み顧客に対して迅速にアプローチをかけたり、見込み顧客の情報整理や分析をしたりといった、商談に至る前段階のプロセスを担当します。
ただし、近年ではオンラインでの業務が浸透し、オンラインで商談することも増えてきました。そのため、インサイドセールスが担当する業務範囲は、企業によって異なるのが現状です。
インサイドセールスは内勤で行える業務が多く、外部人材を活用するケースが多く存在します。ただし、各プロセスによって難易度が異なるため、業務内容によって適した外部人材の使い方が異なります。
リスト化された見込み顧客へのアプローチや、顧客情報の整理といった業務であれば、営業職派遣が適しているでしょう。
営業職派遣の求職者側のメリット

営業職派遣の求職者側のメリットとして、以下の3つが挙げられます。
● 営業職のスキルが身につく
● 担当業務が定められている
● 残業が比較的少ない傾向にある
ここでは、それぞれのメリットについて解説します。
営業職のスキルが身につく
営業職派遣の求職者側のメリットとして、営業職のスキルが身につくことが挙げられます。
営業は業界に関係なく必要な業務です。サービスや商品を売り込んだり、取引先を獲得するスキルは、どの業界でも活かせます。異業種への転職に活かせることも、営業派遣で働く求職者のメリットといえるでしょう。
担当業務が定められている
担当業務が定められていることも、営業職派遣の求職者側のメリットに挙げられます。派遣は、派遣先企業と派遣契約を締結したうえで業務に携わります。派遣契約書に記載されていない業務を担当することはできません。例えば、ルート営業業務として契約しているのであれば、契約期間中に新規開拓業務のような契約外の業務を任されることはありませんが、双方合意の上で契約が見直されるケースもあります。
残業が比較的少ない傾向にある
残業が比較的少ない傾向にあることも、求職者側のメリットです。一般的に、営業職は外回りで帰りが遅くなるイメージがあるかもしれません。実際に、営業職にみなし残業制度を適用している企業も存在します。
しかし、登録型派遣の派遣スタッフは時給制です。残業した場合は、派遣先企業が人材派遣会社に残業分の派遣料金を支払う必要があります。派遣料金を抑えるために、営業職派遣は残業を抑えるようにする傾向があるのです。
営業職派遣の求職者側のデメリット
営業職派遣の求職者側のデメリットとして、以下の2つが挙げられます。
● 管理職へのキャリアアップが難しい
● 営業としての成果が求められる
ここでは、それぞれのデメリットについて解説します。
管理職へのキャリアアップが難しい
営業職派遣の求職者側のデメリットとして、管理職へのキャリアアップが難しいことが挙げられます。営業職派遣はあくまでも派遣スタッフであり、派遣契約書に記載された業務しか携われません。キャリアアップを考えているのであれば、正社員への転換を検討する必要があるでしょう。
営業としての成果が求められる
営業職派遣は事務職派遣と比べると、時給が高い傾向があります。職業柄、一定程度の数字目標があることや、営業先からのクレームと遭遇することも事務職派遣と比べると高い可能性があると、報酬が高い分、成果が求められることも営業職派遣の求職者側のデメリットとなるかもしれません。
営業職派遣の求職者に求められるスキル

営業職派遣の求職者に求められるスキルとして、以下の4つが挙げられます。
● コミュニケーション能力
● 課題発見能力
● 提案力
● ストレスを受け流す力
ここでは、それぞれのスキルについて解説します。
コミュニケーション能力
営業では、ルート営業や新規開拓にかかわらず、顧客とのコミュニケーションが欠かせません。コミュニケーションをとることにより、顧客との信頼関係が構築でき、サービスや商品の購入につながります。
ただし、一方的に自分が話す必要はありません。会話から顧客の悩みやニーズを把握する必要があります。そのために大事なのは「傾聴力」です。
相手の話を聞くことにより、話しやすい雰囲気を作れ、悩みやニーズを引き出せます。傾聴力は、経済産業省が提唱している「人生100年時代の社会人基礎力」の中にも挙げられており、ビジネスに欠かせないスキルでもあるのです。
参考:経済産業省「人生100年時代の社会人基礎力」
課題発見能力
課題発見能力とは、顧客が「何に困っているのか」「何をしてほしいのか」といった課題を見つけ出す力のことを言います。
顧客の課題は、顧客とのコミュニケーションだけではなく、市場や周囲の声からもみつかるケースもあります。顧客の悩みやニーズを把握するためにも、さまざまな情報から顧客の課題を見つけ出す「課題発見能力」が必要なのです。
提案力
提案力とは、顧客の悩みやニーズを把握したうえで、それらを解決できるサービスや商品を提案する仕事です。サービスや商品が、どのように顧客の悩みやニーズを解決できるのかを示さなければなりません。
顧客によって悩みやニーズ、置かれた状況は異なります。同じサービスや商品でも、顧客に合わせた伝え方でアプローチする提案力が求められるのです。
ストレスを受け流す力
営業には、ストレスを受け流す力も必要です。営業は、決められた作業を行えば成果が出るわけではありません。顧客から、厳しいことを言われ、ストレスを感じることもあるでしょう。
しかし、ストレスを感じて落ち込んでいても成果は出ません。ストレスに対処し、前向きに取り組むことが大切です。ただし、ストレスに耐える必要はありません。プライベートで趣味に打ち込んだり、派遣先企業の社員や人材派遣会社の担当者に相談したりするだけでも、ストレスは解消できます。
自分なりのストレス解消法を持っておくことが重要です。
営業職派遣の企業側のメリット

営業職派遣には、企業側にもメリットがあります。以下のメリットを把握し、それらに貢献できるような行動を意識すれば、派遣先企業からの高評価につながります。
● 即戦力人材の獲得が期待できる
● 短期間で人数を集められる
ここでは、それぞれのメリットについて解説します。
即戦力人材の獲得が期待できる
営業職派遣の企業側のメリットとして、即戦力人材の獲得が期待できることが挙げられます。営業には、スキルを示す資格があるわけではないため、戦力となる人材は簡単には獲得できません。
営業に適性がある人材を採用し、中長期的に教育することが必要です。しかし、適性があると思っていても、ミスマッチが発生したり、想定以上に育成に時間がかかったりすることもあるでしょう。教育にはコストもかかります。教育時間やミスマッチのリスクは、多くの企業が抱えている課題です。
派遣であれば、人材派遣会社に営業スキルを持った人材を探してもらえます。営業スキルを持った人材を派遣してもらえれば、中長期的な教育をすることなく、即戦力の人材を確保できるでしょう。
短期間で人数を集められる
短期間で人数を集められることも、企業側のメリットに挙げられます。新しいサービスや商品を売り込む際に、難易度が高くない業務に対し、一時的に人員が不足しているケースがあります。
この場合、増員が必要となるのは一定の期間だけです。一定の期間が終われば人員が必要ではなくなるため、社員を増員すると期間終了後に人件費だけがかさんでしまいます。
しかし、営業職派遣であれば、増員が必要な期間だけ人員を増やすことも可能です。必要な時期に必要な人員を確保できることは、企業側にとって大きなメリットといえるでしょう。
営業派遣の企業側のデメリット
営業職派遣は、企業側にとって即戦力人材の獲得や短期間の増員ができるといったメリットがある一方、以下のデメリットを抱えています。
● 企業側にノウハウが蓄積されにくい
● 長期的な組織構築が難しい
これらのデメリットは派遣の性質上、避けられないものです。そのため、派遣先企業の中には派遣スタッフを「あくまでも作業員のひとり」としてしか認識していないこともあるでしょう。
ただし、対策や派遣スタッフの意思次第では、デメリットを解消できるかもしれません。ここでは、企業側のデメリットとともに、その解決策について解説します。
企業側にノウハウが蓄積されにくい
営業職派遣の企業側のデメリットとして、企業側にノウハウが蓄積されにくいことが挙げられます。派遣は、同じ人材が同じ組織で働ける期間は3年までです。そのため、派遣スタッフにスキルが身についたとしても、3年後にはそのスキルは企業側には残りません。
ただし、スキルを言語化・体系化し、マニュアルとして残せば、個人のスキルが企業側のノウハウとして蓄積されます。目の前の業務をこなすだけでなく、ノウハウの蓄積にも貢献すれば、高評価にもつながるでしょう。
長期的な組織構築が難しい
固定的な組織構築が難しいことも、企業側のデメリットに挙げられます。派遣である以上、所属できる期間は最長でも3年です。そのため、企業側が長期的な視点で組織構築を考えるときに、特定の派遣スタッフを組み込むことはないでしょう。
ただし、派遣スタッフに正社員転換の意思があれば話は別です。企業側も、派遣スタッフが将来的に正社員になることを前提として組織構築を考えるかもしれません。正社員への転換を検討しているのであれば、その意思を示して行動することにより、自身のステップアップだけでなく企業側への貢献につながるでしょう。
営業派遣の実態
営業職派遣には求職者と企業側の双方にとってメリット・デメリットがあることは、前述したとおりです。一方、営業職派遣をした場合の年収や、やりがいについて気になる人もいるでしょう。ここでは、営業職派遣の平均年収ややりがいについて解説します。
平均年収
厚生労働省の調査によると、派遣労働者の1人1日8時間当たりの賃金は、営業・販売事務従事者は12,551円、営業職業従事者は15,809円でした。月に20日勤務として年収を算出すると、それぞれ、以下の年収になります。
営業・販売事務従事者:301.224万円
営業職業従事者:379.416万円
他の職種と比較しても上位に位置しており、スキルが要求されている職種であることがわかります。
参考:厚生労働省「令和4年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」
やりがい
派遣に限らず、営業職のやりがいといえば、成果を出せたときでしょう。営業は、決まった作業をすれば必ず成果が出るわけではありません。顧客の声を聞き、悩みやニーズを把握したうえで、それらを解決できるサービスや商品を提供し、購入してもらえてはじめて成果が出ます。当然、思ったように成果が出ないときもあるでしょう。しかし、試行錯誤したうえで成果が出れば、大きな達成感を得られるでしょう。
また、顧客との関係が構築できたときも、やりがいを感じられます。顧客の悩みやニーズを、自社のサービスや商品が解決できれば、顧客は喜んでくれるはずです。顧客の喜びは、自己満足感や充実感につながるでしょう。
まとめ

営業職派遣とは、営業を担当する人材を派遣先企業に派遣することで、他の派遣と同様に派遣スタッフとして派遣先企業に出社します。
営業職派遣が担当する主な種類には、ルート営業や新規開拓、インサイドセールスがあります。
営業職派遣は、スキルアップや担当業務の制限、残業が少ないといったメリットがある一方、管理職へのキャリアアップが難しいことや事務職派遣に比べて求められるものが多いことはデメリットです。
企業側にとっては、即戦力の確保や短期間での人員確保といったメリットがある一方、企業側にノウハウが蓄積されにくいことや、長期的な組織構築が難しいといった派遣の性質上、避けられないデメリットも抱えています。ただし、マニュアル化に取り組んだり、派遣スタッフから正社員への転換を希望したりした場合は、企業側のデメリット解消につながるかもしれません。
営業職派遣のメリット・デメリットを理解し、自身の希望する働き方にマッチしているのであれば、営業職派遣を検討してみましょう。
- ライター:田仲ダイ
- エンジニアリング会社でマネジメントや人事、採用といった経験を積んだのち、フリーランスのライターとして活動開始。現在はビジネスやメンタルヘルスの分野を中心に、幅広いジャンルで執筆を手掛けている。