インフラエンジニアとは?仕事内容、SEとの違い、将来性について解説
テクノロジーの進化とともに、企業には常に新しい技術やシステムが導入されているため、専門知識やスキルをもつ技術者が不可欠となっています。なかでも、サーバーやネットワークなどのITインフラを構築、運用、保守をするためには「インフラエンジニア」が欠かせません。
しかしエンジニア職にはさまざまな種類があり、仕事内容や求められるスキルがそれぞれ異なります。そこで今回は、インフラエンジニアについて深掘りし、システムエンジニア(SE)との違いや将来性などについて解説します。
目次
インフラエンジニアとは
インフラエンジニアとは、サーバーやインターネットといったITインフラに携わる技術者のことです。仕事内容は多岐にわたり、クライアントや担当する案件によって実際に担う業務範囲が異なります。一般的にはITインフラの設計・構築をおこない、正しく動作するのかをチェック・保守するのが主な業務です。
システムエンジニア(SE)との違い
インフラエンジニアはシステムエンジニアと混同されがちですが、厳密には担当する領域が異なります。
● インフラエンジニア:サーバーやネットワークなどのITインフラ全般を構築する
● システムエンジニア:要望や課題に適した仕様のソフトウェア、アプリケーションなどを特定し、システム全般の開発・運用にあたる
このように役割や業務の内容が違っていても、実際には明確な区別が難しく、お互いの領域にまたがって業務を遂行するケースもみられます。
未経験でもインフラエンジニアとして働ける?
近年のテクノロジーの進歩はめざましく、インフラエンジニアが活躍できる場は増加しています。しかし、サーバーやネットワークに関する知識やスキルが求められるため、未経験でいきなりインフラエンジニアになるのは簡単なことではありません。
よって、インフラエンジニアとしての就業を考えるなら、事前にシステム全般やサーバーなどに関する学習を進め、スキルを証明できる資格を取得することが理想の職場で就業するカギとなります。
インフラエンジニアの種類
インフラエンジニアを細かく分類すると、主に以下の5つに分けられます。
サーバーエンジニア
主にサーバー構築や運用、保守業務を行おこなうのがサーバーエンジニアです。メールサーバーやファイルサーバーなど、さまざまなサーバーを設計・構築する技術を持っており、トラブル対応もおこないます。近年ではクラウド化が進んでいるため、クラウドの知識を求められるケースも増えています。
ネットワークエンジニア
主にネットワーク環境の設計・構築・運用をおこな行うのがネットワークエンジニアです。コンピュータをサーバーに接続し、データを安定して送受信できる環境を作ります。構築後のネットワークに不具合が見つかった際には修正や微調整などもおこな行うため、トラブルに対する知識やスキルも求められることが多いです。
セキュリティエンジニア
セキュリティエンジニアは、主に企業やクライアントの情報セキュリティに関する業務を担います。異常な通信やログの分析・原因が特定できるスキル技術力や、組織のネットワークやアプリケーションに関する基本的な知識が必要です。
また、企業内のセキュリティに関する方針やトラブル対策を考えたり、一般の従業員に研修をおこない、セキュリティ意識を高められるような取り組みをおこなったりすることもあります。
クラウドエンジニア
クラウドサービスを利用したシステムやアプリケーションに特化しているのが、クラウドエンジニアです。以前はサーバーやネットワーク機器などを自社で保有、管理するオンプレミスが一般的でしたが、最近ではサーバーの拡張性や導入のしやすさ、コストなどの面からクラウドサービスを利用する企業も増えています。
クラウドエンジニアは、所属企業やクライアントが求める要件に合うクラウドインフラを整えるため、多岐にわたるクラウドサービスの知識が必要です。そして実際に設計・実装から運用まで、幅広く対応します。
データベースエンジニア
データベースエンジニアは、膨大なデータを迅速かつ安全に処理できるよう、データベース構築や運用に関するスキルを有するエンジニアです。データ構造や関係性を定義し、使いやすく安全に保管できるよう、データベースの性能を高める役割も担っています。
また、データベースへの不正アクセスや情報漏洩を予防するためのセキュリティ対策も、データベースエンジニアが担当する業務のひとつです。
インフラエンジニアに求められる知識・スキル
インフラエンジニアが担う領域や業務内容は多岐にわたるため、求められる知識やスキルにもさまざまなものがあります。
ここでは、主に習得しておきたい知識やスキルを紹介します。すべてを完璧に習得するのは難しいですが、少しでも多くの知識やスキルを身につけておくと、実際に業務を遂行する際に大きな支えになるでしょう。
クラウドに関係する知識
最近ではITインフラをクラウド上に構築・運用するケースも増えています。インフラ構築に関する主なクラウドサービスは以下のとおりです。
・Google Cloud Platform(GCP)
・Amazon Web Services(AWS)
・Microsoft Azure
実務経験がなかったとしても、これらの主要なクラウドサービスの基礎知識を学んでおくとよいでしょう。
セキュリティに関係する知識
情報が漏れたり、不正にアクセスされたりしないよう、ITシステムには強固なセキュリティが必要です。データ流出や破損などの事件が起きると、クライアントやエンドユーザーにも被害が及ぶ可能性があるからです。
一般的なセキュリティシステムとしては、Intrusion Prevention System(IPS)やファイアウォールが知られています。
プログラミングスキル
現在、エンジニア職が業界全体で不足していることもあり、インフラの設計やアプリケーションの開発など複数の技術分野を担当できる「フルスタックエンジニア」が重宝されています。よって、インフラエンジニアの業務内容にプログラミングスキルは必須ではありませんが、対応できると仕事の幅が広がるでしょう。
また、システム障害のログ確認や業務の効率化、システムを利用するエンドユーザーのニーズに合わせた調整や工夫をする際に、プログラミングスキルが役立ちます。
コミュニケーションスキル
インフラエンジニアはチームで役割分担して動くことも多く、コミュニケーション力が必要なスキルのひとつです。チームだけでなく他部署や外部事業者との円滑なやり取りも求められます。
また、上流工程を担うインフラエンジニアは、クライアントからビジネスの展望やニーズを引き出すヒアリングスキルも必要です。
マネジメントスキル
インフラエンジニアとして経験を積んでいくと、エンジニアチームをまとめるためのマネジメントスキルが求められるようになります。新人の育成やプロジェクトの進行管理なども担う機会が増えるでしょう。
インフラエンジニアに活かせる資格
インフラエンジニアになるために取得が必須な資格はありません。しかし業務内容に関連する近い資格を取得しておくと、自身のスキルを客観的に伝えやすくなります。専門性が深まれば活躍できる範囲は広がり、転職の際も有利に働きやすくなるでしょう。
ここでは、インフラエンジニアになるためにおすすめの資格を4つご紹介します。
ITパスポート
ITパスポートとは、ITに関する基礎的な知識を証明できる国家資格です。開発技術からマネジメント、基礎理論、コンピュータシステムなど、IT関連の幅広い分野について学べます。
比較的短期間の学習で取得できる資格のため、ITパスポートだけで就職や転職を有利にするのは難しいですが、インフラエンジニアに限らず、IT関連の仕事に就きたい方が最初にチャレンジする資格としておすすめです。
基本情報技術者
基本情報技術者とは、IT業界で実際に働く人に求められる情報処理の基本的な知識・スキルを証明できる国家資格です。出題範囲はITパスポートよりも専門的になり、論理的に思考できるスキルや経営戦略、プロジェクトを遂行するためのマネジメント知識についても求められます。
応用情報技術者
応用情報技術者は、基本情報技術者の上位にあたる国家資格です。ITの基本的な知識はもちろん、技術から管理、マネジメント、経営まで、ITの現場で応用できる知識を証明できます。システム開発やIT基盤構築など、高いパフォーマンスやキャリアアップを目指す方におすすめです。
情報セキュリティマネジメント
情報セキュリティマネジメントとは、ITシステムをサイバー攻撃から守るためのスキルを証明できる資格です。さまざまなケースに対する技術対策の他に、組織のセキュリティレベルを高めるためのプランや資源配分、システム運用なども学びます。近年はサーバー攻撃の手口がより巧妙になっているため、多くの企業で必要とされているスキルです。
インフラエンジニアの主な仕事内容
インフラエンジニアの仕事は、「上流工程」と「下流工程」に分けられます。上流工程には、インフラの要件定義や設計、構築、テスト・確認、下流工程には、保守・運用といった業務が該当します。
①要件定義
②基本設計
③詳細設計
④構築
⑤テスト・確認
⑥保守・運用
各工程について解説します。
①要件定義
要件定義とは、サーバーやネットワークの開発を始める前に、構築するシステムの目的や運用までの設計期間や費用感を確認した上で、必要とされる機能や要求をまとめていく作業のことです。
例えば生活者が使用するようなアプリケーションを開発する場合、多くの生活者がアクセスしても支障のないハードウェアのスペックはどのくらい必要か、データ格納の領域はどの程度用意するのかなど、必要なインフラ環境の概要を定めていきます。
複雑なシステムになるほど要件の組み合わせが多様になるため、幅広い選択肢のなかから最適な方法を提示するためには、幅広いITインフラの知識が求められます。
③基本設計
要件定義が終わったら、開発に関する設計書を作成していきます。そのベースとなるのが基本設計です。使用する機器やOS、メモリの選択など、要件を満たすためにどのような要素や機能を入れていくかを大まかに決めていきましょう。
④詳細設計
詳細設計は、基本設計で定めた概要や方針に沿って、稼働までに必要な要素や設定を、より詳しく決めていく工程です。システム概要の仕様通りに稼働するパラメータ設定やミドルウェア、ソフトウェアの設定を具体的に決めていき、設計書に落とし込んでいきます。
次のプログラミングの工程で誰が担当してもスムーズに進められるよう、わかりやすい設計書を作ることも重要です。
⑤構築
設計書をもとにサーバーやネットワークの構築にとりかかります。クラウドを使用する場合は、ほぼすべてがシステム上で設定可能です。一方、オンプレミスで自社内にサーバーなど必要なハードウェアを保管する場合、必要機器の搬入や設置、ソフトウェアの設定など多岐にわたる工程を現地にて実行していきます。
⑥テスト・確認
実際にサーバーやネットワークを稼働させる前に、問題なく動くか確認するテストを行います。要件通りに動作することはもちろん、負荷が大きくなったときに安定して稼働するのかを確認することも大切です。また修正の必要がある部分を洗い出し、微調整を行います。
⑦運用・保守
システムのリリース後、ハードウェアの故障や想定外のアクセス集中など、何らかのトラブルが発生した際には、早急に対応します。
また、定期的なメンテナンスや、クライアントのフィードバックをもとにした改善など、ITインフラが稼働し続けられるような保守も行います。
インフラエンジニアとして働くメリット・デメリット
インフラエンジニアとして働くメリットとデメリットはどのような点でしょうか。まとめて紹介します。
インフラエンジニアとして働くメリット
インフラエンジニアの仕事では、さまざまなサーバーやネットワークの設計や構築、運用に携わることができます。こうした業務を通して、多くのクライアントやユーザーに貢献できるのは大きなメリットです。
また、テクノロジーがより重要視されている現代では、専門的な知識・スキルを習得しているインフラエンジニアは心強い存在です。世の中にITインフラがある限り、インフラエンジニアは必要とされ続けます。下流工程から経験を積み、上流工程まで担えるようになれば、プロジェクトに一貫して携われるようになり、活躍の場をさらに広げられるでしょう。
インフラエンジニアとして働くデメリット
どれほど念入りにテストを重ねても、サーバーやネットワークにシステム障害が突然発生することはあります。もしトラブルが発生すれば、早急な復旧対応が必要です。いつトラブルが起こるか分からない緊張感や、急な呼び出しがストレスとなりやすい点は、インフラエンジニアとして働くデメリットだといえます。
また、24時間稼働するシステムに携わる場合などでは、週末勤務や夜勤が発生するケースもあります。こうした不規則な勤務形態もデメリットといえるでしょう。
インフラエンジニアに向いている人
インフラエンジニアに向いている人の特徴として、以下が挙げられます。
好奇心・探求心がある人
ITに関する技術は日々進化しています。インフラエンジニアが今後も長く活躍していくには、新しい技術や世の中の流行を敏感にキャッチし、スキルアップしていく必要があります。ITインフラやテクノロジー全般への好奇心・探求心がある人は、インフラエンジニアに向いているといえます。
また近年は、データ分析に関するニーズも高まっています。システムトラブルなどが発生した際、要因分析が必要となるため、こうしたデータ分析に関する興味・関心がある人もインフラエンジニアとして活躍できるでしょう。
リーダーシップがある人
リーダーシップがある人は、チームとなって動くことの多いインフラエンジニアに向いています。特に、長期的な目線で全体を把握し、さまざまな役割の人々と円滑にコミュニケーションしながらプロジェクトを進められる人は、重要なポジションを任されるようになり、キャリアアップも見込める可能性があります。
何事にも冷静な対応ができる人
インフラエンジニアには、客観的に状況を判断し、冷静な対応ができる人が向いています。トラブルやエラーが起きた際は、スピーディーに原因を特定し、落ちついて問題を解決できる力が求められるからです。
これは業務経験を積むなかで培われていく力でもありますが、元から冷静さのある人は、インフラエンジニアの仕事で本領を発揮しやすいといえます。
インフラエンジニアの平均月収年収
インフラエンジニアの年収や月収は勤務先などによって異なりますが、以下の平均値が参考になります。
・平均年収:約684.9万円
(令和5年賃金構造基本統計調査の結果より、全国平均)
・月額賃金:約33.4万円
(ハローワーク求人賃金、令和4年全国平均)
※参考:厚生労働省「jobtag」内「システムエンジニア(基盤システム)」
インフラエンジニアの将来性・キャリアパス
インフラエンジニアは近年需要が高まっている職業です。その背景には、急速なテクノロジーの進化や、各企業が新しいインフラの整備・再構築を検討していることが挙げられます。
なかでも、クラウドを利用してインフラの設計や構築、運用保守ができるようなインフラエンジニアは、長期的な活躍が見込めます。システムエンジニアなどの近い職種の人が転職する候補としてもおすすめです。
インフラエンジニアのキャリアパス
インフラエンジニアのキャリアパスとしては、以下が挙げられます。
・プロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーを目指す
・ITコンサルタントを目指す
インフラエンジニアとして上流・下流工程の業務経験を積んでいくと、やがてプロジェクトの全体像が掴めるようになり、リーダーを任される機会が増えていきます。その先に、ITインフラ構築のスペシャリストとして活躍できるキャリアが見込めるでしょう。
また、ITインフラに関する深い知識を活かし、クライアントの経営課題を解決するITコンサルタントとして働く将来を描くことも可能です。
まとめ
インフラエンジニアは、ITインフラに関する深い知識とスキルを持つ職業です。携わる業務は多岐にわたりますが、クライアントやユーザーのニーズをヒアリングし、サーバーやネットワーク構築・運用・保守などを通じて解決することに、やりがいを得られるでしょう。
インフラエンジニアへの興味が湧いた人は、将来の選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。
- ライター:いしかわりの
- フリーライター。元保育士。出産や子育てを経験する中で家計管理や資産運用の大切さに気付き、FP3級を取得。多様な働き方を選択してきた経験も活かし、現在は保育、金融、人材系メディアなど幅広いジャンルの記事に携わっている(編集:株式会社となりの編プロ)