人材派遣会社の正社員型の派遣「常用型派遣」とは?
派遣会社の正社員というと、営業やコーディネーターをイメージする人が多いのではないでしょうか。実はこの他にも、派遣先会社で常駐して働く「常用型派遣」と呼ばれる働き方があります。
「常用型派遣とは?」「どのような求人があるのか知りたい」「常用型の派遣社員として働くためにはどうしたらいいか」といった疑問を持たれている人もいるかもしれません。
常用型派遣は、専門スキルを活かした求人が多く、さまざまな現場で活躍しつつ安定した収入や手厚い福利厚生を期待できるのが特徴です。
本記事では、常用型派遣の特徴や他の派遣形態との違い、メリット・デメリットについて解説します。
目次
派遣会社の常用型派遣とは
派遣会社の正社員には、派遣元会社と無期雇用契約を結び派遣先で勤務する「常用型派遣(無期雇用派遣)」と呼ばれる形態と、派遣会社の社内で勤務する形態の2種類があります。それぞれの特徴について、詳しく解説します。
常用型派遣(無期雇用派遣)
概要
常用型派遣(無期雇用型派遣)は「正社員型派遣」とも呼ばれており、派遣元会社と労働者が無期雇用契約を結ぶ働き方です。
主な勤務場所は人材派遣会社の派遣先企業になり、派遣元会社の社員という立場で、派遣先の会社に常駐します。雇用契約期間の定めがないので、仮に派遣先の仕事が終了したとしても、派遣元会社との雇用関係は継続され、給与も発生します。
常用型派遣で求人が多い職種例
常用型派遣の求人は、高い専門性が必要とされる職種に多いのが特徴です。具体的には、次のような職種が挙げられます。
● エンジニア
● 生産管理
● メーカー開発
● 研究職
● 介護・看護職
● 事務職
専門知識や技術を活かして、即戦力として派遣先で活躍できる人材が求められる傾向があります。
派遣会社に勤務する正社員
派遣会社の中で働く正社員は、一般的な会社の正社員と同じ働き方になります。
概要
派遣会社に勤務する正社員も、派遣会社と無期の雇用契約を結びます。代表的な職種として「営業」や「コーディネーター」などがあります。主な役割は、人手を必要とする企業に人材派遣を提案すること、求人に合う派遣社員をマッチングすること、派遣社員の就業をフォローすることなどです。
常用型派遣と派遣会社に勤務する正社員の違い
常用型派遣と派遣会社の正社員には、共通する点と異なる点があります。
共通する点としては、雇用主が派遣会社であること、無期雇用であること、月給制であることなどが挙げられます。また、賞与や退職金、交通費、福利厚生などについても、会社規定に則って支給されるのが特徴です。
常用型派遣と他の人材派遣の違い
人材派遣には、「常用型派遣」の他に「登録型派遣」や「紹介予定派遣」もあります。ここでは、常用型派遣と他の人材派遣の違いについて解説します。
人材派遣の種類
派遣社員の雇用形態には大きく分けて、常用型派遣と登録型派遣があります。
常用型派遣(無期雇用派遣)
常用型派遣は、前述のとおり派遣元会社に所属する社員が他の会社に派遣される形態です。
登録型派遣との大きな違いは、派遣期間が終わっても派遣元会社との雇用関係は継続する点です。そのため、新たな派遣先が決定するまでの間であっても給与の支払いを受けられます。
登録型派遣
登録型派遣は、一般的に知られている「派遣社員」としての働き方です。まずは求職者が派遣会社に登録し、自分に合う仕事が見つかったら、派遣元会社と期間の定めのある雇用契約(有期雇用契約)を結び、派遣先で働きます。派遣先の仕事が終了すると、派遣元会社との雇用契約も終了するため、給料も発生しなくなります。
紹介予定派遣
紹介予定派遣は、将来的に派遣先で直接雇用されることを前提に、派遣元会社と有期雇用契約を結ぶという働き方です。最長6ヶ月の派遣期間を通して、派遣先と派遣社員はそれぞれ直接雇用にするかどうかを検討し、双方の合意があれば直接雇用を結びます。
「常用型派遣」は派遣元会社の雇用ですが、「紹介予定派遣」の場合は、直接雇用が決まると派遣先会社の雇用となります。
常用型派遣のメリット・デメリット
ここでは「常用型派遣」ついて、それぞれのメリット・デメリットを解説します。派遣での就業を考えている人は、ぜひ参考にしてください。
メリット
常用型派遣のメリットは以下のとおりです。
派遣社員側
● 雇用や収入が安定する
● 専門スキルを磨ける
● 定期的な昇給や賞与、退職金などが期待できる
● 福利厚生が手厚い場合が多い
常用型派遣では、登録型派遣に比べて仕事が途切れるリスクが少なく、収入も安定します。また、現場でクライアントと直接やりとりしながら専門スキルを磨けることもメリットです。場合によっては、直接雇用ではなかなか入社できないような一流企業で仕事ができることもあります。
賞与や退職金、福利厚生などは会社規定にもよりますが、登録型派遣に比べて手厚い傾向にあります。
派遣先企業側
● 受け入れ期間の制限がない
● 登録型派遣に比べて、人の入れ替わりが少ない
いわゆる「派遣社員」の登録型派遣の場合、同一の派遣社員を同じ部署で受け入れられるのは、法律上原則3年までと定められています。一方、常用型派遣では期間の制限が無く、正社員として雇われている人が派遣されるため、人員の入れ替わりが少なく、引継ぎや教育の手間が省けます。
デメリット
常用型派遣のデメリットは以下のとおりです。
派遣社員側
● 登録型派遣に比べて採用のハードルが高い
● 派遣先は選べないことが多い
常用型派遣は無期雇用なので、よほどのことがない限り正社員として雇用の継続が保障されています。ただし、その分企業側も働いている中で、スキル面や人物面を厳しく評価する傾向があります。また、登録型派遣の場合は紹介された派遣先を見て判断することもできますが、常用型派遣の場合は基本的に指示された派遣先に行くことになるのがデメリットです。
企業(派遣先)側
● 人件費が高い
● 帰属意識が低い
● ノウハウが社内に蓄積されにくい
常用型派遣は直接雇用に比べて人件費が高くなりがちです。これは、派遣料金に採用費や社会保険料、福利厚生費などが含まれているためです。また、派遣社員はあくまで派遣会社の社員なので、自社への帰属意識やノウハウの蓄積はあまり期待できません。
派遣会社の常用型派遣として働く方法
派遣会社の常用型派遣として働く方法を解説します。本章では、就業までの流れとともにスタッフサービスグループの求人を中心に紹介していきます。
常用型派遣として働く場合は、派遣会社の選考に合格する必要があります。派遣会社によって多少の違いはありますが、一般的な流れは以下のとおりです。
1. 派遣会社に登録する
2. 常用型派遣(無期雇用)になるための選考を受ける
3. 常用型派遣(無期雇用)として内定
4. 入社研修を受ける
5. 紹介された派遣先で勤務を開始する
無期雇用契約となる常用型派遣は、前述のメリットでもお伝えしたように雇用の安定が保障されることが大きなポイントです。求人は高い専門性が求められる職種に多く、スタッフサービスグループでは「エンジニア職系」「事務職系」「製造分野」での常用型派遣の募集があります。
お持ちのスキルをさまざまな職場で発揮し、幅広い経験を積んでみたいとお考えの方におすすめです。
常用型派遣以外で正社員として働く場合
派遣社員として働きながら、正社員の道を目指す人もいらっしゃるかもしれません。ここでは主に「派遣先企業で正社員になりたい場合」と「派遣先企業以外で正社員になりたい場合」の2つのパターンにわけて解説します。
派遣先企業で正社員になりたい場合
派遣先での直接雇用を希望する場合、まずは派遣元企業に相談しましょう。派遣期間を満了した直後に、勝手に派遣先会社に就職すると「派遣先が派遣社員を引き抜いた」とみなされ、企業間トラブルに発展してしまう可能性があります。
派遣先企業以外で正社員になりたい場合
派遣先企業以外で正社員になりたい場合には、次のような方法が考えられます。
正社員の求人に応募する
一般の就職活動同様、正社員として募集されている求人に応募する方法です。具体的には、求人サイトを見る、ハローワークを利用する、転職エージェントを利用するなどの手段があります。企業選びや選考対策に自信が無い人は、プロに相談するのもおすすめです。
紹介予定派遣を利用する
紹介予定派遣を利用することでも、正社員の道が開けます。メリットでも解説したとおり、紹介予定派遣なら実際の仕事内容や職場の雰囲気を確かめられるため、ミスマッチを避けられます。ただし、必ずしも直接雇用が成立するとは限らないことや、契約社員・アルバイトとしての直接雇用の可能性もあることには注意しましょう。
無期転換ルールの申請をする
長く働いている場合は、「無期転換ルール」を申請することで常用型の派遣社員になれる可能性があります。無期転換ルールとは、有期雇用契約が更新されて通算5年を超えたときに、本人から「無期雇用になりたい」という申し出があった場合、企業は受け入れなければならないというルールです。
派遣社員の場合、派遣元企業との間にこのルールが適用されることになります。一定の条件にあてはまる人が申請した場合は、派遣元企業との有期契約が無期雇用契約に転換となり、上限3年を超えて働けるようになります。
【参考】厚生労働省|有期契約労働者の無期転換ポータルサイト
まとめ
常用型派遣は、派遣元企業と無期雇用契約を結ぶため、雇用や福利厚生が安定していることがメリットです。高度な専門性が求められる職種がほとんどですが、その道のプロとしてさまざまな職場で経験を積みながら能力を発揮していくことができます。
派遣形態には、登録型派遣や紹介予定派遣などさまざまな種類があり、一概に常用型派遣が最適というわけではありません。ご自身のスキルや理想の働き方と照らし合わせて、希望にあった派遣形態を選択することをおすすめします。
- ライター:西本 結喜(監修兼ライター)
- 結喜社会保険労務士事務所代表。金融、製造、小売業界を経験し、業界ごとの慣習や社風の違いを目の当たりにしてきたことから、クライアントごとのニーズにあわせ、きめ細やかな対応を心がけている。