派遣のタイムシートとは? 一般的な書き方も解説
時給で働くことが多い派遣スタッフにとって、タイムシート(タイムカード)などによる日々の勤怠管理は重要です。派遣会社はタイムシートをもとに給与を計算するので、記入ミスや遅延があると、給与が正しく支払われない可能性もあります。記入方法など、しっかり理解しておくことが必要です。ここでは、タイムシートの書き方や、勤怠管理の基本的な考え方について紹介します。
目次
タイムシートとは?
タイムシートは、勤怠管理のひとつの方法です。派遣先でどのくらい働いているかを派遣会社に報告するためのシートで、給与計算に使う重要なもので、派遣スタッフが毎日記入するのが一般的です、
そもそも勤怠管理とは?
従業員が、何時から何時まで働いたか、どのくらい休んでいるかなどを記録するものやシステムのことです。派遣スタッフだけでなく、正社員もこの勤怠管理システムによって、時間外労働や有給休暇の取得状況などがチェックされています。
派遣スタッフのタイムシートは派遣スタッフ本人が派遣元に送る
タイムシートは派遣先に設置され、出勤・退勤時に記入するという場合が多いでしょう。しかし、派遣スタッフの給与は派遣先ではなく派遣元の派遣会社から支払われています。そのため、記載・集計済の派遣スタッフのタイムシートは、派遣先の承認を得た後、派遣スタッフ本人が派遣元に送ります。(派遣元によって異なるケースもありますので、必ず派遣元に確認するようにしましょう)
最近では、PC入力や認証システムによって記録をつけるタイムシートなど、Web上で派遣先の上司の承認を得て、派遣先に共有したりメールで送ったりするシステムも導入されています。
タイムシートの書き方
タイムシートに記入するのは、基本的に始業、終業、休憩の3つ、プラス残業や欠勤です。
始業、終業、休憩の書き方
出勤した時間、退勤した時間、休憩を取得した時間を記入します。
時間通りに出勤して退勤した日は、記入するのはこの3つだけです。
派遣スタッフでも残業が発生することがある
派遣スタッフでも、派遣先の上司(指揮命令者)に残業をお願いされることがあります。ただし、この時、次の2つの条件が満たされていない場合、派遣スタッフは残業のお願い(命令)を断ることができます。
・就業条件明示書(労働条件通知書)に残業に関する規定が明記されている
・派遣スタッフを対象とした労働基準法36条の協定(36協定)が締結されている
就業条件明治書(労働条件通知書)は派遣先で働き始める際に配布されます。例えば、残業は「1日4時間以内、1カ月40時間以内とする」など、残業について記載があるかを必ず確認しましょう。
残業の書き方
派遣スタッフの残業代は、給与と同じく派遣元から支払われます。労働基準法では、労働時間を1日8時間、週40時間(法定労働時間)と定めており、このどちらかを超えると、時間外労働となり割増賃金(※)が発生します。手書きのタイムシートの場合、始業時間と終業時間を記入し、残業に該当する時間数は自動的に計算されます。
なかには、時間外労働の記入欄などに残業時間を記入するタイムシートもあります。書き方については、派遣元に確認しておきましょう。
【割増賃金の割増率】
・時間外労働:25%
・深夜労働(22時~翌5時):25%
※時間外かつ深夜の労働の場合、両方の割増が適用され50%
欠勤・有給休暇の書き方
欠勤する場合、派遣先と派遣元の両方に連絡をするルールとなっているケースが多く、まず、派遣先に連絡をして、その後で派遣元に連絡するのが一般的なマナーとなっています。
タイムシートの記入についてはしなくてもよいケースもありますが、会社によってタイムシートの仕様やルールは異なります。事前に確認しておきましょう。
有給休暇は、6カ月以上同じ職場に勤務し、その6カ月の労働日のうち、8割以上勤務した場合に付与されます。
有給休暇を取得する場合は、事前に、派遣先と派遣元に申請する必要があります。タイムシートには、「有休」「年休」など有給休暇を示す文言などを記入することになります。申請や記入の方法についても、事前に確認するようにしましょう。
タイムシートは管理台帳記載事項のひとつ
派遣先は、受け入れる派遣スタッフごとに「派遣先管理台帳」を作成し、いつ、どのくらい働いたかを正確に把握することが義務付けられています。派遣先管理台帳の記載事項には、「始業、終業時刻、休憩時(実績)」の項目があるため、派遣スタッフは抜け漏れなく、正確な勤務時間を記入するようにしましょう。
タイムシートを提出し忘れた場合は?
うっかり提出を忘れていた、派遣先の上司が出張で承認がもらえなかった…など、タイムシートの提出が遅れる場合もあるでしょう。
タイムシートは派遣先が管理し、それをもとに派遣スタッフの給与を計算するものですから、正確なタイムシートがないと、派遣スタッフの給与の支払いに影響が出てしまいます。そのため、提出が遅れる場合は、必ず派遣元に連絡します。
派遣先の上司が忙しくて承認を忘れていた、など、やむを得ないケースもあるでしょう。場合によっては、提出期限を過ぎても受け付けてくれることもあるので、派遣元の担当者に事情を説明し、相談するようにしましょう。
タイムシートの改ざんや嘘は罪に問われることも
実際とは異なる就業時間を記入してしまったなど、タイムシートの記入を間違えた場合、速やかに訂正しましょう。
間違いに気づいたのが、派遣先の上司の承認を得た後だった場合は、訂正にも上司の承認が必要になるなど、訂正方法は会社によって異なります。間違いに気づいた時点で、派遣元の担当者に相談しましょう。
また、めったにあることではないですが、勤務時間を偽って記入して給与や残業代を多く受け取ると、「人を欺いて財物を交付させた」として詐欺罪に問われる可能性もあります。実際に、過去に従業員がタイムシートを改ざんして、裁判に発展したケースには次のようなものがあります。
・自分は出勤せず、職場の同僚に自分のタイムシートを打刻させた
・退勤時にタイムシートを記入せず、実際の退勤時間より遅い時間を記入した
これも珍しいケースではありますが、実際に、過去に会社側が15分単位で勤怠管理をしており、従業員には始業15分前に出勤させながら、タイムシートは14分前に打刻するよう指示して、その分の賃金を支払わなかったケースがあります。このケースでは、問題発覚後、従業員に未払い賃金が支払われることになりました。
タイムシートは派遣スタッフの給与に直結する、とても大事なもの
頑張って働いた分、給与はしっかりいただきたいもの。派遣スタッフは、出勤した際は忘れずにタイムシートを記入して、スムーズに給与を受け取れるようにしましょう。また、派遣元は正確な給与計算を心がけるよう、国もそれを義務化しています。
会社によって書き方や提出のルールなどは異なるため、分からないことはすぐに派遣先の上司や、派遣元の担当者に相談することも大切です。
- ライター:山本淳(やまもと・じゅん)
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ライター/フリー記者(政治・経済)
早稲田大学中退後、テレビのニュース番組やネットメディアの記者を経験しフリーに。記者歴15年。一次情報をもとにした正確性と、専門家や当事者へのヒアリングをもとにした現場感をモットーに、記事を執筆。