産休代替派遣制度とは?
「産休代替派遣制度」は、産休に入る社員の代わりに派遣社員が業務を担うことを指します。産休代替で働いたことがない、あるいは産休代替派遣制度があることをご存じない方のために、産休代替で働く場合と一般的な派遣とは何が異なるのか、注意しておくべき点や業務内容、働くメリットなどを紹介します。
目次
産休代替とは?
産休代替派遣制度とは産休育休等で休む社員の代役として、産休育休の期間に別の派遣社員がその仕事を担う働き方を指します。ご存じの通り、労働基準法で出産する女性を就業させてはいけないと決まっている期間があるため、その期間に派遣社員が働くという制度です。
産休育休で休むことは当たり前のことであっても、企業側からすると一定期間社員がいなくなり人手不足になるため、この制度ができるまでは育休中の空白期間の仕事をどうするかが企業にとって大きな問題でした。
しかし、産休代替派遣制度という働き方ができたことによって、派遣社員も企業側もWIN-WINとなる働き方ができるようになりました。
派遣社員は定められた期間のなかで社員と同等の仕事を経験でき、企業側は新たな社員を雇わずに同等の仕事を期間限定で担当してもらえるというメリットをそれぞれ得られます。
どちらにとっても魅力ある制度ですが、一般的な派遣とはどう違うのでしょうか。
産休代替と一般的な派遣の違い
産休代替派遣制度で働く場合、該当社員が戻るまで期間限定で働く助っ人として職場に入るため、一般的な派遣社員とは働き方が異なります。一般の派遣と同じ取り組み方でいると、業務上支障が出てくる可能性があるため注意しましょう。
業務範囲の広さ
一般的な派遣の場合、企業が派遣社員を依頼する場合は、派遣社員にお願いしたい業務をあらかじめ抽出して依頼しているため、仕事がある程度限定されている傾向にあります。しかし、産休代替は社員がおこなっていた仕事をすべて請け負うため、担当する仕事が広範囲になる傾向にあります。
高い業務レベルを求められる
派遣社員のために抽出された一般的な派遣の仕事とは異なり、産休代替の場合は社員の方がおこなっていた業務をそのまま引き継ぐという特徴があります。その際、産休に入った社員と同等の業務レベルを期待されます。
派遣社員として派遣先に勤めることに変わりはありませんが、企業側が求めているのは「産休に入った社員と同等の働き」です。即戦力に近い、高いスキルを求められる可能性が高いことを理解しておきましょう。働き始めてから苦労しないためにも、産休代替の求人に応募するときは自分の経歴と業務内容のギャップがないか確認することを心がけてください。
入念な引き継ぎが必要
一般的な派遣業務の場合、マニュアルなどがあり、それに沿って進めていけば問題なく進む業務もあります。しかし、産休代替の場合は産休に入る社員の仕事全部をおこなうため、マニュアルだけではなく産休に入る社員から細かな業務引き継ぎを受け、後任として働くことになります。
仮にわからないことがあっても、産休育休に入ってからは業務の確認が難しくなります。引き継ぎ期間中に自分が一人で業務をおこなえる状態にしておく必要があるため、入念に引き継ぎをおこないましょう。
また、妊娠期間中は体調の変化が激しいため、余裕を持って早めに引き継ぎを終えておくことも重要です。
派遣先になじむことがより重要に
一般的な派遣に比べ、派遣先企業の社員さんも当企業の社員と同様という認識で接してくる可能性が高いです。派遣社員ではありますが、垣根を作らず正社員と同じ心持ちで相手と接するように心がけましょう。
前任者が社員であるため、後任者としてうまく業務を進めるためにも、派遣先になじめるように業務上のやりとりも意識することが重要です。
産休代替派遣制度について
産休代替派遣制度は、労働者派遣法のいわゆる3年ルール(労働者派遣法第40の2で定められている一般的な派遣期間は3年という決まり)の適用除外業務となっています。
そのため、産休代替の場合は制限なしとなり、産休育休期間に応じて派遣期間が決まります。派遣先企業の就業規則が法令よりも長期取得できるようになっている場合や、次の出産が育休期間に重なった場合などは、派遣期間が通常の育休の1~2年で終了せず、それ以上に延長してほしいと言われる可能性は十分にあります。
産休代替の求人に応募する場合は派遣先の就業規則も確認しておき、どのくらいの派遣期間になるのかを予測しておきましょう。
また、産休育休を取得していた社員が復職せず、そのまま退職することもあります。期間終了間近に、延長を打診されることもあります。自分が契約期間以上長く働く意思がない場合、派遣会社側に契約の延長は受けられない旨を伝えておくと安心です。
業務内容について
産休代替の業務内容は、産休に入る社員の仕事をそのまま引き継ぎます。そのため、正社員の業務と業務範囲をそのまま引き継ぎ、同等のレベルで遂行する必要があります。産休に入る社員の方も産休が初めての場合、こうした引き継ぎに慣れていない可能性があります。社歴が浅い状態でも理解できるレベルで引き継ぎをしてもらえるように、働きかけることが重要です。
また、一般的な派遣とは異なり、該当社員の仕事を一人で受け持つ傾向にあります。派遣社員は自分ひとりという環境で働くこともあるため、誰が該当社員の業務を理解しているのか、誰と仕事をする機会が多いのかなどを把握し、積極的に状況把握をしておくことが重要です。
該当社員との引き継ぎ期間中に関係者との関係性を構築し、困ったときに相談できるようにしておくと孤立感を防げ、働きやすくなるでしょう。
産休代替で働くメリット
高時給な求人が多い
社員がおこなっていた業務を代替する要員、かつ即戦力としての採用であるため、一般的な派遣に比べて高時給な求人が多い傾向にあります。
派遣期間が育休期間に限定される
派遣期間が産休育休期間に限定されているため、契約期間は最初に決まっている期間で延長がない契約になる可能性が高いです。延長の可能性もありますが、事前に断っておけば自分の希望範囲を超えて延長せず、あらかじめ決まった期間で就業することができます。
大手企業の経験を積める可能性がある
産休代替で働いてくれる人を探す企業は、しっかりとした体制で運営している傾向にあるため、大手企業の募集も多いです。なかなか募集が出ない大企業で、かつ社員の代替となる仕事を経験できれば、自分自身のキャリアにも役立つでしょう。
短期間にさまざまな仕事を経験できる
社員の方がおこなっていた業務を期間限定で実施するため、一般的な派遣求人よりも短期間に幅広く高度な業務を経験できる可能性が高いです。
社員がおこなっていた業務を年単位で経験したとなれば、その後の転職に役立つだけでなく自分のキャリアを広げることにもつながります。
まとめ
産休代替派遣制度をあまり知らない方に向けて、一般的な派遣求人との違いや注意点、働くメリットを紹介しました。
産休代替は一般的な派遣に比べて高時給であること、高度なスキルや広範囲な仕事を経験できるなど、多くのメリットを持っている求人です。
自分自身のキャリアに迷われている方、経験を積みたいけれどなかなか経験を積める企業が見つからないと悩んでいる方は、ぜひ産休代替の求人を探してみてください。自分のキャリアアップにつながる仕事を見つけやすくなるはずです。
- ライター:高下真美
- 新卒で人材派遣、人材紹介企業に入社し、人事・総務・営業・コーディネーターに従事。その後株式会社リクルートジョブズ(現・株式会社リクルート)に転職し、営業として8年勤務後、HR系ライターとしてフリーランスへ転身。現在は派遣・人材紹介・人事系メディアでの執筆、企業の採用ホームページの取材・執筆の他、企業の人事・営業コンサルタントとして活動中。