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【令和5年】キャリアアップ助成金とは? 各種コースと支給金額の紹介と支給までの流れを解説

【令和5年】キャリアアップ助成金とは? 各種コースと支給金額の紹介と支給までの流れを解説

あなたの企業では、助成金をうまく活用できていますか? 助成金は大きなメリットのある制度であり、申請条件を満たせるなら積極的に活用したいものです。今回は助成金のなかでも、生産性の向上や優秀な人材の確保につながる、キャリアアップ助成金の全コースについて紹介し、コロナにともなう緩和措置なども合わせて解説します。

※本記事の情報は、令和5年4月1日時点の情報となります。

キャリアアップ助成金とは

【令和5年】キャリアアップ助成金とは? 各種コースと支給金額の紹介と支給までの流れを解説_1

キャリアアップ助成金の対象は非正規雇用労働者で、契約社員・パート・アルバイト、そして、派遣スタッフも含まれます。下記で挙げる正社員化などの取り組みをおこなう企業を支援する制度です。まずは基本的な仕組みから理解していきましょう。

助成金で人材確保と生産性向上を実現

キャリアアップ助成金は、後ほど説明する「キャリアアップ計画」を作成したうえで、計画にしたがった取り組みをおこなうことで、返済不要の助成金が支払われるものです。企業は助成金を受けることで、人材を確保しやすくなり、生産性の向上につなげることができます。

助成を受けるための条件は後述しますが、ポイントは雇用形態や雇用環境を改善することにあります。キャリアアップ助成金の目的は、派遣労働者を含む非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップ支援にあるため、この点を押さえておきましょう。

なお、キャリアアップ助成金の多くは、以下の有期雇用労働者および無期雇用労働者が対象となっています。本記事では、両者をまとめて「有期雇用労働者等」と記載します。

■有期雇用労働者
期間の定めのある労働契約を締結する労働者(短時間労働者や派遣労働者も含む)
■無期雇用労働者
期間の定めのない労働契約を締結する労働者のうち、正社員以外の者

キャリアアップ助成金の各種コースと支給金額

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キャリアアップ助成金の各種コースと支給金額を紹介します。令和5年4月1日時点の情報となります。

①正社員化コース
キャリアアップ助成金のなかでもっとも代表的なコースであり、有期雇用労働者等を賞与または退職金の制度と昇給のある正社員に転換したり、直接雇用したりした場合に助成されるものです。

派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用した場合や、シングルファーザー・シングルマザーの雇用形態を転換した場合など、一定のケースについては助成額の加算措置が設けられています。

・正社員化コースの支給金額

※上記の表は有期雇用から正規雇用へ転換した場合の金額です。無期雇用から正規雇用への転換の場合、助成額が半額になります。

・加算措置

②賃金規定等改定コース
有期雇用労働者等の基本給の賃金規定などを増額改定し、昇給した場合に助成されます。助成額は、対象となる労働者の人数によって増える仕組みとなっています。ただし、1年度・1事業所あたり100人が上限です。

・賃金規定等改定コースの支給金額


③賃金規定等共通化コース
正規雇用労働者と共通の職務等について、有期雇用労働者等の賃金規定等を新たに作成し、適用した場合に助成されます。

・賃金規定等共通化コースの支給金額

④賞与・退職金制度導入コース
就業規則または労働協約の定めるところにより、有期雇用労働者等に関して、賞与・退職金制度を新たに設け、支給または積み立てを実施した場合に助成されます。

・賞与・退職金制度導入コースの支給金額
賞与制度と退職金制度を同時に導入した場合の加算金


⑤短時間労働者労働時間延長コース
正社員の所定勤務時間より短い「短時間労働者」が対象となる助成金です。短時間労働者の所定時間を週3時間以上延長するとともに、処遇の改善を図り、新たに社会保険の被保険者とした場合に助成されます。なお、1年につき1事業所当たり支給申請上限人数は45人までとなっています。

・短時間労働者労働時間延長コースの支給金額
1.短時間労働者の週所定労働時間を3時間以上延長して新たに社会保険に加入した場合
※3時間未満の延長であっても、昇級の状況により助成を受けられる場合があります。

⑥障害者正社員コース
令和3年4月に新設されたコースで、令和2年度に廃止された障害者雇用安定助成金に代わる助成金となっています。有期雇用労働者等である障害者を正規雇用労働者や無期雇用労働者に転換する、あるいは無期雇用労働者である障害者を正規雇用労働者に転換することで、助成金が支給されます。

・障害者正社員コースの支給金額
※上記の表は有期雇用から正規雇用へ転換した場合の金額です。無期雇用から正規雇用への転換の場合、助成額が半額になります。

・加算措置

キャリアアップ助成金の支給条件と支給までの流れ

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キャリアアップ助成金を受けるための条件、受給までの流れ、注意点について紹介します。

支給条件

支給対象事業主となる条件は以下のようになります。
・雇用保険適用事業所の事業主であること
・事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主であること
・事業所ごとに、対象労働者に対し、キャリアアップ計画を作成していること
・管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主であること
・労働条件などを明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明示できる事業主であること
・キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であること

支給までの流れ

助成金の活用にあたっては、下記のようにキャリアアップ計画を作成し提出する必要があります。この計画は、下記図のように取り組み前に提出する必要があります。なお、正社員化コースと、その他のコースでは手続きの流れが異なっています。正社員化コースの場合、正社員化の規定を就業規則に定めたうえで、転換をおこなう必要があります。

キャリアアップ助成金の申請までの流れ

「キャリアアップ助成金」の活用に当たっては、
各コースの実施日の前日までに「キャリアアップ計画」の提出が必要です。

※厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)」より引用

キャリアアップ計画とは

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キャリアアップ助成金を受けるためには、取り組みの実施前に「キャリアアップ計画」を用意しなくてはなりません。厚生労働省が定める「有期契約労働者等のキャリアアップに関するガイドライン」 に沿って計画を作成し、その内容を「キャリアアップ計画書」にまとめましょう。
キャリアアップ計画書の記載内容は、以下のようになります。

【記載項目】
・キャリアアップ計画期間
・キャリアアップ計画期間に講じる措置の項目
・対象者
・目標
・目標を達成するために講じる措置
・計画全体の流れ

これらの項目は、有期契約労働者等のキャリアアップに向けた、今後のおおまかな取り組みのイメージを記載するものです。記載する内容については、前述のガイドラインが参考になります。主に以下のような取り組み内容を記載します。


①キャリアアップに向けた管理体制の整備
事業者ごとに「キャリアアップ管理者」を位置付け、従業員に対して周知を図るなど、有期契約労働者等のキャリアアップに向けた管理体制の整備をおこないます。さらに、キャリアアップ管理者の知識やノウハウの向上のために研修などをおこなう場合は、その旨も記載しましょう。

②計画的なキャリアアップの取り組みの推進
社内の人材確保や人材育成の現状を分析したうえで、有期契約労働者等のキャリアアップについて対応方針案を決定します。この方針を計画にまとめ、その計画を着実に進める必要があります。キャリアアップ計画を必要に応じて見直すのであれば、どのように見直すのかを記載します。

③正規雇用労働者等への転換
キャリアアップ助成金の各コースの条件にしたがって、正規雇用や無期労働契約への転換を計画し、その旨を記載します。正規雇用への転換を希望する有期契約労働者などのモチベーションの維持・向上が図られるよう、評価基準を見直すといった取り組みが考えられます。

④人材育成
有期契約労働者等の能力向上のためには、教育訓練を実施することが有効です。希望するキャリアパスに応じて教育訓練の設備やプログラムを充実させる、相談の機会を確保する、といったさまざまな取り組みをおこなうことが大切です。

⑤処遇改善
有期契約労働者等の能力やパフォーマンスに応じた処遇が求められます。評価基準を見直すとともに、賃金などに反映させる仕組みを構築する必要があります。相談窓口の設置や個人面談、キャリア・コンサルタントの活用も、処遇改善に役立つ取り組みです。

キャリアアップ助成金の注意点

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キャリアアップ助成金を受け取るには、条件を満たしたうえで、期限内にきちんと申請をおこなわなくてはいけません。キャリアアップ助成金を申請する際の注意点をいくつか紹介します。

事前の計画策定や就業規則の整備が必要

キャリアアップ助成金は、正社員の雇用を増やしたり、賃金を上げたりしただけで受け取れるわけではありません。実際に正社員への転換や賃金アップをおこなう前にキャリアアップ計画を策定し、届け出る必要があります。また、具体的にどのような労働者の処遇を改善するのかを就業規則などに明記しなくてはいけません。

支給期間中の手続きが必要

キャリアアップ計画どおりに取り組みをおこなっても、期限までに支給申請をしなければ助成金をもらうことはできません。正社員などへの転換または直接雇用した対象労働者に対し、転換・雇用後の賃金を6ヶ月分支給した日の翌日から起算して2ヶ月以内に申請をすることが条件です。

※厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)」より引用

計画変更の届け出を怠ると支給されない
繰り返しになりますが、キャリアアップ計画に変更が生じた場合は、取り組みをはじめる前日までに「変更届」を提出する必要があります。計画書や変更届にない取り組みをおこなうと、本来は支給対象となる取り組みであっても、助成金は支給されません。

申請しても不支給になる可能性がある
支給申請日の前日から過去1年以内に労働基準法違反があった場合や、助成金申請後におこなわれる実地調査に協力しなかった場合、同一の行為に対して複数の助成金を申請した場合などは、キャリアアップ助成金の申請をおこなっても不支給になります。

不正受給に対する罰則がある
虚偽の申請をおこなうなどして不正受給をしたことが発覚した場合、助成金を全額返還しなければなりません。さらに、年3%の延滞金と返還額の20%の違約金を支払う必要があります。不正受給をすると、その後5年間は助成金を受け取ることができないため、絶対に虚偽申請はしないようにしましょう。

まとめ

キャリアアップ助成金は企業にとっては生産性の向上や優秀な人材の確保につながり、従業員にとってはキャリアアップや職務満足度向上につながる、非常にメリットの大きな制度になります。もちろん複数のコースを併用することも可能です。お得なキャリアアップ助成金を賢く正しく利用してみてはいかがでしょうか。
 



《ライタープロフィール》
小林義崇/ライター・元国税専門官
2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、相続税調査や確定申告対応などに従事。2017年にフリーライターに転身。著書に「すみません、金利ってなんですか?」(サンマーク出版)、「元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者」(ダイヤモンド社)などがある。