採用業務で陥りやすい課題と成功に導くポイントを紹介
コロナ禍であっても、多くの企業では採用難が続いています。少子高齢化により生産年齢人口(15歳以上65歳未満の生産活動の中心にいる人口)は減少の一途をたどっている状況。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によれば、2030年には6,773万人と見込まれる生産年齢人口は、2060年には4,418万人にまで減少すると予測されています。本記事では採用市場の現状の解説を踏まえて、採用における課題とオンライン採用の課題、企業の採用活動を成功に導くポイントを紹介します。
目次
採用市場の現状
少子高齢化に伴い生産年齢人口が減少する中で、優秀な人材は採用しにくくなります。たとえば、企業が先端技術エンジニアの採用を考えたとしましょう。「DX白書2021」によると、先端技術エンジニアの人手不足感は47.8%となっています(「大幅に不足している:25.5%」「やや不足している:22.3%」を合算した割合)。ただでさえ人手不足感がある職種で、さらに優秀な人材となると、企業間で人材の取り合いとなることが容易に予想できるでしょう。
こうした背景から、たとえ採用サイトで人材を募集したとしても、応募そのものを集めることが難しい可能性もあるのです。また、せっかく採用できても、すぐ辞められてしまう事態に直面するかもしれません。ですから、人手不足の中において企業は人材を募集・確保し、そして定着させることに施策を講じる必要があります。
採用課題の見つけ方
採用活動が上手く進んでいない原因がわからない場合は、採用活動のフローを洗い出して採用課題を可視化しましょう。たとえば、採用活動として以下の8つのフローを挙げます。
1. 募集
2. 書類選考
3. 筆記試験
4. 一次面接
5. 二次面接
6. 最終面接
7. 内定
8. 定着
このうち選考辞退を指標として考えた際、「7.内定」の辞退が特に多かったとしましょう。すると、自社の採用課題が内定辞退の多さにあることがわかります。このようにフローを洗い出して可視化することで、採用課題を見つけることが可能となります。
それでは実際の採用業務における、「募集」「選考」「入社後」の3つの採用課題について考えてみましょう。まずはそれぞれの課題について、解決策とともにご説明します。
募集における採用課題
応募が集まらない
求人広告や人材紹介を通じて募集をかけても、応募が集まらないことがあります。求人広告の場合は広告の種類によって表示順位が変動し、上位表示させるためには広告費用をかけることが必要です。一方、人材を採用できなくても必ず広告費用が発生してしまうため、費用対効果を考えて広告の種類を選択しなくてはいけません。
求人広告では上位表示される企業に注目が集まります。広告で応募が集めるためには、予算を割いて高いプランの広告を選択する方法もあります。また、求める人材が「働いてみたい」と思えるよう、写真や文章に配慮することも大切です。たとえば、仕事内容や職場の雰囲気がわかる写真・文章を広告に載せることで、応募者の関心を集めやすくなります。
人材紹介で応募が集まらない場合は、求職者が「働いてみたい」と思える魅力が求人票に記載しきれていないことが考えられます。人材紹介会社のアドバイザーの協力を得て、求める人材は求人票のどのようなところに関心を持つのかを問い合わせ、ブラッシュアップして求職者への訴求力を高めていきましょう。
ターゲットではない人材から応募が来る
応募は来るのに、求職者の情報を見ると「求める人材」と違う課題もあります。ターゲットではない人材ばかりから応募が来ても、面接に呼ぶのは難しいでしょう。
この場合、求職者に向けた情報が誤っていることが考えられます。求人票に「求める人材像」を明確に書ききれていないこともあるでしょう。たとえば、即戦力を求めているのに、応募者の間口を広げようとして未経験者歓迎という言葉を入れてしまうと、経験者がエントリーしにくくなります。そのため、自社が「求める人材像」を求人票にハッキリと記載することが重要です。また、月収や仕事内容なども「求める人材像」に合った内容になっているか確認します。
応募が多すぎて対応しきれない
募集に対して応募が多すぎる場合、採用人数に見合った情報開示となっていないことが考えられます。たとえば、1名の募集枠に対して「職種・業界未経験歓迎」という表記であれば、応募が多数になることが予想できます。求人票の段階で厳選できるよう情量を精査することで、応募を限定することが可能となるでしょう。
選考における採用課題
続いて、選考の課題について考えてみましょう。
面接に来ない
面接に求職者が来ない場合は、求職者の動機づけが不十分であること、自社が求職者に訴求できていないことなどが原因として考えられます。
一次面接に来ない課題を防ぐには、求人票をブラッシュアップして求職者が魅力的に感じられるような内容に改めましょう。二次、最終面接に来ない場ならば、面接の過程で自社の魅力を求職者に伝えきれていません。採用活動では会社も求職者に「選ばれる」立場にあることを理解し、求職者に自社をアピールできるよう努めましょう。
上司面接、配属部署面接を通らない
上司面接や配属部署面接を通らない課題に対して原因に考えられるのは、採用基準が面接官に浸透していないことです。特に、複数の面接官で面接をおこなう場合、面接官Aは合格とするものの面接官Bは不合格と判断するなど、評価にバラつきが生じやすくなります。
こうしたケースでは、採用基準としてスキルや経験、求める人材像を明確化して情報を共有するようにしましょう。採用基準を人事部内で留めておかず、一次・二次面接官、そして経営層に対しても共有します。採用基準が面接のフェーズごとに共通化していれば、人事部と他の面接官との間で合格・不合格のラインにギャップが生じなくなるはずです。
内定を辞退される
企業から内定を出しても、辞退されてしまうことがあります。求職者が内定を辞退する理由には、主に次の4つが挙げられるでしょう。
1. 他社の選考に合格した
2. 現職を退職できなかった
3. 転職が不安になった
4. その他(家族から転職を反対されたなど家庭の事情)
採用活動には応募・書類選考・筆記試験・複数回の面接と、多くの選考フローがあります。応募から内定まで長い期間がかかり、求職者はさまざまな検討をした上で内定承諾・内定辞退を決めます。求職者の内定辞退を防ぐには、内定までの期間において求職者と良くコミュニケーションを取っておくことが大切です。
たとえば、現職を退職できないことを防ぐために、採用担当者は現職での引き継ぎにどれくらいの時間がかかるかを把握しましょう。求職者は内定を得たいために、「短期間の引き継ぎで退職できる」というかもしれません。しかし、現職の仕事の状況は採用担当者にはわかりません。無理して退職しようとしていないかどうか、引き継ぎにかかる時間を把握しておくようにします。
その他、「他社の選考に合格した」「転職に不安になった」などの理由で内定辞退されることもあります。これを防ぐためにも、求職者とのコミュニケーションは怠らないようにしましょう。
入社後における採用課題
採用活動では、入社後のフォローについても施策を講じる必要があります。入社後の課題について考えてみましょう。
早期に離職してしまう
入社後の課題として挙げられるのが早期離職です。せっかく採用したのに早期離職されてしまうと、採用活動や育成にかけたコストが無駄になってしまい経営効率が悪くなります。人材にかけた投資の効果を最大限に出すためには、早期離職を防ぐことが必要です。
早期離職になる原因は、「入社前後でギャップが生じた」「ミスマッチが起きて活躍できなかった」「入社後のフォロー体制がない」などが考えられます。対策としては、求職者に対して自社を良く見せようとしないことです。また、求職者が自社でも活躍できる人材かどうか、コンピテンシー面接を通じて成果の再現性があるかどうかを確認することにより、ミスマッチが起こりにくくなります。
入社後は現場任せにせず、人事部として必要な教育体制を確立してフォロー体制を整えることが必要です。1on1のように上司・部下間でカジュアルに話せる面談の場を設ければ、会社になじみやすくなり早期離職防止につながるでしょう。
オンライン採用の課題と解決方法
オンライン採用に取り組む企業が増えてきました。遠隔地でも面接できること、そして感染症リスクを軽減できることなどのメリットがあります。一方で、オンライン採用ならではの課題が生じることも少なくありません。オンライン採用の課題と解決方法について確認しましょう。
対面と比べて人柄や雰囲気を読み取りづらい
対面に比べるとオンライン採用は求職者の人柄・雰囲気が読み取りづらいです。オンライン採用では必ず複数人で担当し、1人が話している時はもう一方の面接官に相手の表情や態度を確認してもらうと良いでしょう。
応募者に社内の雰囲気を伝えられない
社内の雰囲気がわからないと、求職者が自社を選びにくくなります。オンライン採用と対面の採用を併用する場合は、職場見学を促したり先輩社員との面談の機会を設けたりするなどして、できる限り社内の雰囲気を相手に伝えるように努めてください。一次面接から内定まですべてオンラインでおこなう場合も、先輩社員との面談の機会を取り入れると良いでしょう。
会社の魅力を伝えづらい
会社の魅力を伝えづらい課題に対して、オンライン採用では対面採用よりもひと工夫が必要です。選考前にカジュアル面談を設けたり、面接時間を長めに取ったりするなどして、自社の魅力を求職者に伝える時間を確保しましょう。
通信不良によるトラブルが起きるケースがある
通信不良によって面接ができなくなるリスクは、オンライン採用特有の課題です。通信環境の良いところで面接をおこなう、事前に通信環境を確認するなどの準備を入念におこない、自社の通信環境が原因で面接ができなくなる事態にならないように気をつけましょう。
また、求職者の通信環境が原因で面接ができなくなる事態も想定されます。求職者に対しても通信環境が良いところで面接をおこなうこと、フリーWi-Fiでは面接をおこなわないこと、面接前の通信環境の確認などを伝えましょう。なお、フリーWi-Fiで面接をおこなわない点については、セキュリティ対策としても有効です。
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採用活動を成功に導くポイント
最後に、採用活動を成功に導くポイントを振り返りましょう。
求める人材像を明確にする
採用活動が成功したといえるためには、自社が欲しいと思える人材に必要な数だけ入社してもらうことが必要です。求める人物像を明確にせず、あいまいなまま採用活動を進めてしまうと、「なんとなくコミュニケーション能力が高いから合格にしよう」といった決断をしてしまうケースもあります。そうなると面接の過程で自社の魅力を相手に伝えきれませんし、相手が自社で活躍してくれるかどうか判断できていないことになりかねません。
採用活動の成功のポイントとしてまずは求める人材像を明確化し、そして面接官同士で情報共有することが大切です。
自社の魅力をしっかりと伝える
自社の魅力が求職者に伝わらなければ、内定を承諾してもらえません。
自社の魅力を洗い出し、面接中に伝えられるようにしておきましょう。たとえば、「自社はやりがいがあり、成果に応じて報酬がもらえる」ことが魅力であれば、魅力を体現できる人事制度があることを伝えます。これによって、求職者が「やりがいがあって、努力すれば報酬がもらえる会社なのだ」と自分の言葉で感じてくれるようになるでしょう。
また、求職者は職場の雰囲気や人間関係を重視するものです。カジュアル面談を実施し、先輩社員の言葉を通じて自社の魅力を伝えてもらうと、求職者がリアリティをもって自社の魅力を感じ取ってくれます。面接官は「自社を選んでもらう」という視点を持つことが重要です。
求人広告の載せ方を工夫する
求人広告を掲載する際、前回のまま使い回していないでしょうか。職種や仕事内容、年齢によって求人広告の載せ方を工夫し、求職者に訴求しましょう。
採用方法を定期的に見直す
採用方法を定期的に見直すことも、採用活動の成功ポイントの1つです。求人広告メインの採用活動を「求人広告+人材紹介」に見直したり、自社にとって採用難易度の高い人材を採用するために予算を多めに確保したり。あるいは選考時期を早めるなど、これまでのやり方を変えることで採用活動を成功に導きます。
入社後の教育体制を整える
早期離職を防ぐために、入社後の教育体制の整備も重要なポイントです。特に他社も求める優秀な人材は採用しにくいので、教育体制を整備して人材の定着を図ることが欠かせません。優秀な人材を早期に選抜し、特別な教育制度によって育てることで離職防止につなげましょう。
まとめ
採用課題について、募集・選考・入社後の3つに分けてご説明しました。採用活動は今や多くの企業が抱える課題ですが、自社の魅力を最大限に伝えることで魅力的な人材との出会いにつながります。また、採用後の人材育成の準備も、採用活動を成功に導く大切なポイントです。
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《ライタープロフィール》
山崎 英理夫(人事コンサルタント)
人事コンサルタントとして教育研修のプログラム開発、人事制度診断等を提供。また、企業人事として新卒・中途採用に従事し、人事制度構築や教育研修の企画・運用など幅広く活動。この経験を活かし、人材関連の執筆にも数多く取り組む。