派遣社員の定年とは?年齢制限の有無・60代で働くメリットや留意点

派遣社員の定年とは?年齢制限の有無・60代で働くメリットや留意点

日本では少子高齢化が進み、一般的に定年と言われる60歳を超える労働者が増えています。60代になれば、年齢を理由に働けないと不安を抱く方も少なくありません。本記事では、派遣社員の定年や、60代で派遣社員として働くメリットや留意点を解説します。自分の能力や健康状態を考慮しつつ、働きやすい仕事を見つけていきましょう。

派遣社員には定年がない

派遣社員の定年とは?年齢制限の有無・60代で働くメリットや留意点_1

定年退職は「期間を定めない雇用契約」に適用される制度です。就業期間が決まっている派遣会社は年齢を理由に登録を断ることができないため、年齢制限がなく何歳からでも働けます。
一方、高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)第8条では、就業期間の定めのない企業が従業員の定年を定める場合、原則として60歳以上とされています。定年を決めている企業は、以下の措置が求められます。

・定年の引き上げ
・定年後も引き続き雇用する継続雇用制度
・定年の定めの廃止

企業の定年は必ずしも60歳に固定されておらず、会社ごとに異なります。しかし、登録型の派遣社員は契約が継続すれば一般的な定年退職の年齢を超えても、本人の能力や健康状態によって勤務ができます。

原則、派遣社員の年齢制限はない

現在、企業が求人や採用に年齢制限をかけることは禁止されています。就業の際に、年齢にとらわれず、人柄や能力、適性を判断して採用することで、一人一人に均等に働く機会を与えられるようにするためです。形式的に「年齢を不問」と記載することも禁止されており、年齢に基づく不当な就業制限を防ぐための配慮がなされています。
実際に、厚生労働省の令和4年派遣労働者実態調査の概況によると、65歳以上の派遣労働者の割合は全体の6.1%です。平成29年に調査した内容と比較して、65歳以上の割合は2ポイント上がっており、年齢に関係なく働いているのがわかります。

出典:厚生労働省の令和4年派遣労働者実態調査の概況

派遣社員の定年は派遣元会社の就業規則によって規定される

派遣社員の定年とは?年齢制限の有無・60代で働くメリットや留意点_2

派遣社員の定年は、契約形態や派遣元会社の就業規則に左右されます。有期雇用契約では定年制がなく、無期雇用契約では60~65歳が一般的です。年齢に応じた雇用ルールを確認し、自分にあった働き方を目指しましょう。

派遣社員の年齢制限は派遣元会社の規約によって異なる

派遣社員の定年は、派遣会社との契約形態によって影響を受けることがあります。
派遣会社に登録して仕事の紹介を受ける有期雇用契約(登録型派遣)に、登録条件や年齢制限はなく、定年制は適用されません。あくまで派遣会社と派遣社員が締結している就業期間だけの有期雇用契約になります。
一方で、期限が定められていない雇用契約を交わしている無期雇用契約(常用型派遣)の場合は、働いている派遣会社の定年退職に関する規定が適用されます。定年の年齢は、60歳または65歳であることが多いですが、派遣会社によって異なります。また定年を迎えた後でも、再雇用や契約更新ができる場合があるかもしれません。
また、無期雇用派遣は登録型派遣と比較して、同一の事業所で従事できる期間を3年までと定められるような期間の制限はありません。

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「日雇い派遣の禁止」の対象外

日雇い派遣は原則として禁止されていますが、特定の条件を満たす場合は例外が認められています。対象外となる条件は、以下のとおりです。

・満60歳以上の者
・雇用保険適用外の学生(昼間学生)
・生業収入が500万円以上の人(副業として従事する者)
・世帯年収が500万以上の主たる生計者以外

規定は労働者の安定した生活を確保するために設けられています。満60歳以上の方は年金や退職金などで経済的に安定しているとされ、万が一解雇をされた場合でも生活が困難になるリスクが低いと判断されています。また、日本の労働人口の減少にともない、国の施策としてシニア人材が活躍できる場所を積極的に作り出していきたい意図もあります。

60歳以上の派遣社員には、派遣可能期間の制限がない

日本では少子高齢化が進む中、60歳以上の労働者を労働市場に引き留めることが重視されています。60歳以上の派遣社員が持つ豊富な経験やスキルを活かすため、派遣法では60歳以上の派遣労働者に対して派遣期間の制限を設けない特例ができました。この特例により高齢者を長期間にわたって雇用ができます。
派遣可能期間に年数の制限がなくなり、同一事業所で3年を超えても働けます。この特例は高齢労働者の雇用安定を図るとともに、企業が必要とする人材を確保するための施策として機能しています。

60歳以降も働く労働者は増えている

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少子化と人口減少により、60歳以上の労働参加がますます重要視されています。60歳以上の就業者数は年々増加しており、派遣労働者にも高齢層が増加している状態です。60歳以降も働く労働者が増えている理由を解説します。

少子化による人口の減少

総務省が令和6年11月20日に発表した人口推計によると、総人口は1億2,397万9千人で、15歳未満は全体の11%、65歳以上は29%であることがわかりました。平成27年の総人口である億2,709万5千人から311万6千人も減少しています。少子化が進む中、労働力を確保するには高齢者の雇用促進が不可欠です。今後は60歳以上の高齢者の労働参加が重要な役割を果たすと考えられています。

出典:総務省 人口推計

日本の60歳以上の労働者は増加傾向

日本の総人口が減少する中で、65歳以上は3,625万人と過去最多を記録しています。65歳以上の就業者数は20年連続で増加して914万人です。国は労働力を確保するために、60歳以上の雇用を促進しています。
実際に、年金だけでは生活が困難な場合も多く、収入を得るために働き続ける必要がある60歳以上が増えています。他にも、社会とのつながりを求める気持ちや生きがいを感じるために働きたいと考える側面も少なくありません。企業としても、国の政策により企業が高齢者を雇用することで、助成金を受けられるメリットがあります。

出典:総務省 統計からみた我が国の高齢者

60歳以上の派遣も増加傾向

厚生労働省の派遣労働者調査によると、派遣労働者は40~44歳が16.7%と最も高く、60歳以上でも全体の10.5%にあたる人が働いています。60歳以上の男女別でみれば、男性では15.4%、女性では5.7%の割合です。
女性は30代後半から50代前半の子育て世代が多く、男性は60歳以上に多い傾向があります。

出典:厚生労働省の派遣労働者調査

70歳就業法による影響

令和3年4月1日より高年齢者雇用安定法の改正で、70歳までの就業機会の確保が努力義務となりました。対象となる措置は以下のとおりです。

・70歳までの定年引き上げ
・定年制の廃止
・70歳までの継続雇用制度の導入
・70歳までの業務委託契約を締結
・社会貢献事業への従事を可能にする制度の導入

高齢者が持つ経験やスキルを活かして、働き続けることができる環境を整えることで、経済の活力を維持することが期待されています。

60代で派遣社員として働くメリット

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60歳以上の派遣社員は「3年ルール」の対象外で長期勤務が可能です。さらに、60代ではこれまでの豊富なスキルや経験を活かして即戦力として活躍できます。60代が派遣で働くメリットを解説します。

派遣期間の制限がなく長く働ける

通常、派遣社員は「3年ルール」と呼ばれる法律により、同一の派遣先で連続して働ける期間が3年に制限されています。60歳以上の派遣社員は3年ルールの対象外になり、同じ派遣先で長期間働くことが可能です。
派遣期間の制限がなくなり、長期目線が必要なプロジェクトの運用サポートなど継続的に活躍が期待できます。

今までのスキルや経験を活かせる

60代の派遣社員は、スキルが高く実務経験を積み重ねた方が多くおり、正社員を定年退職・早期退職した優秀な人材を即戦力として確保できるメリットがあります。これまでに築いてきた人間関係や経験から得られた知識で、新しい分野を開拓したり、仕事の進め方を改善したり、効果的に活用できる可能性も高くなります。
また、長期間同じ職場で働けば、業務に慣れて、高いパフォーマンスを発揮できるため、企業側も長期的な雇用を望めて安心です。

60代で派遣社員として働く際の留意点

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60代で派遣社員として働く際は、健康管理や体力に配慮した仕事選びが重要です。また、未経験の業務や体力を必要とする仕事への就業が難しい場面も出てくるでしょう。自身の体調に合った働き方で無理なく続けるためのポイントを解説します。

体力や健康面での体調管理に気をつける

年齢を重ねるにつれて、体力や健康状態は個人差が大きくなります。60代は筋力や持久力が低下しやすく、若い時のように働くことが難しくなるでしょう。
また、心疾患や糖尿病、関節の問題など、健康リスクを抱えることも少なくありません。定期的な健康診断はもちろん、業務範囲や勤務時間の調整を適宜していきます。自分の体調や体力に合った仕事を選び、無理のない働き方を心がけましょう。

未経験の仕事や身体に負担の大きい仕事への就業は難しい

未経験の仕事をする場合、必要なスキルや知識の習得が求められます。新しいことを学ぶことに対する抵抗感や、学習能力の低下を感じることがあるため、未経験の仕事に挑戦することが難しいと感じる人もいます。
また、体に負担の大きい仕事も体力的に厳しい場合があり、60代から派遣で働く際は、精神的・身体的な負担を考慮して、仕事をしていきましょう。

希望の求人条件を絞りすぎない

希望の求人条件を絞りすぎれば、応募できる求人が限られてしまいます。応募するときは、業界や職種にこだわりすぎずに、希望条件を広げることで、新たなスキル習得や就業機会を増やすことができます。
求人の選択肢を広げ、労働市場のニーズに柔軟に対応し、経済的な安定を図るためにも、幅広い条件で応募をするとよいでしょう。新たなキャリアの可能性を探るためにも、柔軟な姿勢が大切です。

関連記事:「50代からの派遣」派遣で働くメリット・おすすめの職種を解説

まとめ

派遣社員の定年とは?年齢制限の有無・60代で働くメリットや留意点_6

派遣社員には原則的に定年がなく、60歳以上でもこれまでのスキルや経験を活かして活躍できます。法律により派遣期間の制限がないため、同じ職場で長期間働けることが可能です。一方で、体力や健康面を考慮した仕事選びをしながら、自分に合った働き方を見つけていきましょう。

ライター:小山真奈
ITパスポート、日商簿記2級を保有。学生時代はパソコンのサポートスタッフ、その後中小企業の経理を経験して、フリーライター兼オンライン秘書へ。SEOやLPを中心にした集客のライティングと経理で培った強固な財務体制づくりで、お客様の事業加速のサポートをしている。

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