製造業とは?職種や仕事内容、働くメリット・デメリットを解説

製造業とは?職種や仕事内容、働くメリット・デメリットを解説

製造業は、工場で部品を組み立てたり、機械で切ったり削ったりする仕事だけだと思っていませんか。実は、製品を企画したり、設計したり、不良品がないかチェックしたりするのも製造業の仕事です。また、製造業では、車や家電製品、加工食品や医薬品など、つくる製品も多彩です。本記事では、製造業の種類や職種、仕事の魅力について解説します。

製造業とは

製造業とは、原材料や素材をもとに製品をつくり出す産業のことです。「メーカー」と呼ぶこともあり、テレビやスマートフォン、自動車、冷蔵庫、お菓子、建築物など、あらゆる製品をつくっています。自然界にある農作物や鉄鋼、木材などをつくったり、採取したりする農業・林業・漁業などの産業を「第一次産業」といい、製造業はそれら天然資源などを加工するため「第二次産業」に属します。

製造業は日本のGDP(国内総生産)において約2割を占める産業であり、現在、製造業に従事している人たちは約1,051万人(2024年6月時点)にものぼります。また日本の製造業トップ500社の海外売上比率はリーマンショック後、急激に上昇し増加の一途をたどっています。

製造業でつくられる主な製品

製造業といっても、さまざまなジャンルがありそれぞれ異なる製品をつくっています。具体的にどういうジャンルがあるのか詳しく見てみましょう。

鉄鋼、金属関連

さまざまな機械や建築部品に利用される金属製品をつくっていたり、原料の鉄鉱石や加工前の鋼などを生産しています。ダムや橋梁などの建造物、自動車、電車、船舶などの乗り物、電子レンジや冷暖房機器などの電化製品など、人々の生活を支える製品の部品によく使われています。

機械関連

機械や機械部品の設計・生産をおこなっています。複数の加工作業が自動化された工程を受け持つ産業機械や、金属やガラスなどの素材を切削したり、穴を開けたりして、部品に求められる形状に合わせて加工する工作機械をつくっています。それら機械を活用した最終的な完成製品は、自動車や家電、電子機器など多彩です。

電気機器

主に工業用電気機器(重電機器)と、家電機器(軽電機器)に分かれます。前者はモーターなどの「発電用原動機」、発電機などの「回転電気機械」、変圧器などの「静止電気機械」、配電盤などの「開閉機器」の5つに分類されます。後者は洗濯機や冷蔵庫などの家電製品の電子部品をつくっています。

化学製品

石油や鉱石などを原料に、化学反応の生産プロセスにより製品を生み出している業界です。医薬品、紙、ゴム、合成繊維、肥料、洗剤、接着剤、プラスチック製品など、幅広い製品をつくっている業界です。原料の調達から製品の生産までワンストップでおこなっている企業も多いです。

食料品関連

野菜、果物、穀物、水産物、畜産などの原料を仕入れて、加工し、肉・畜産品、水産、パン・お菓子、調味料、野菜・果物缶詰などさまざまな種類の食品を生産しています。人の生活に欠かせない「食」を担っているため、景気の波に左右されにくい業界の1つでもあります。

建築関連

マンション、戸建て、商業施設、ビルディング、公共施設、道路、橋梁などに使用される建築部材などを生産しています。建築物に使用される窓やサッシ、壁紙、カーテンなどはもちろん、道路やダム、橋梁などの建造物に使用されるコンクリート、ボルト、塗料なども含まれます。

医薬品

患部に効く有効成分のことを指す「原薬」や遺伝子組み換えなどの技術を用いて開発されたワクチンなどの生物学的製剤。そして生薬・漢方に、動物用医薬品があります。また、これら薬品を包装する錠剤や軟膏剤、注射剤などもつくっています。

製造業の主な職種

製造業でつくられる製品が多岐にわたるように、職種も多種多様です。具体的に紹介します。

研究・開発

製品につながる技術開発を検証して、ここで生まれた新たな技術などを製品・素材の開発に活かしています。自社オリジナルの製品などをつくるため、自社の独自技術の特許権を取得することも少なくありません。大学との産学連携での研究開発も行われています。

生産技術

製品を工場で大量生産できるよう、いかに効率的に、高品質かつ低コストでつくれるかを考える仕事です。工場ラインの最適化を図るため、製造スタッフの適切な人員の配置や、製品をつくる産業設備の導入などをプランニングするのも、この生産技術がおこないます。

生産管理

製品のニーズと製品をつくる工場の生産能力を考慮して、生産計画を立てるのが仕事です。製品をつくろうとしたときに、人手が足りない、原材料の在庫がないと生産できません。人員の手配、原材料の調整・発注、原価コストの管理などをおこなうため、マネジメント力が特に求められます。

品質管理

工場でつくった製品が、市場に出せる一定以上の品質に達しているかどうかを「工程管理」「品質検証」「品質改善」の要素でチェックします。「工程管理」は作業工程の正確性、「品質検証」は製品の品質を検査します。「品質改善」は不良品が出た場合の再発防止の施策を検討します。

製造スタッフ

部品やパーツを組み立てたり、加工したりして製品を仕上げていく仕事です。手作業中心の場合、ツールや設備を活用しておこなう場合、材料を設置して産業ロボットが自動でおこなう場合などがあります。どの作業も安全面に注意する必要があります。

営業・販売

自社製品を卸売業や小売業に売り込んでいく営業の仕事、そしてエンドユーザーに直接製品を提供する販売の仕事があります。どちらの仕事も、市場における自社製品の強みや、競合との差別化を念頭において提案することが求められます。

技術職と技能職の違い

「技術職」は一般的によく耳にする言葉ですが、それと混同しやすい職種として「技能職」があります。任される業務内容や範囲が異なるので注意しましょう。
「技術職」とは、工学や化学、数学など理系の専門的な知識を活かして、モノづくりを行う職種のことです。研究・開発、生産技術、生産管理、品質管理、営業などが該当します。
「技能職」は、技術職が開発・設計した製品を実際につくる仕事のことです。製品を加工したり、組み立てたりする製造スタッフが該当します。技能職はマニュアルがあり、製造手順も決まっているので、未経験からでも取り組めます。

製造業の製造工程と仕事内容

製造業とは?職種や仕事内容、働くメリット・デメリットを解説_4

製造工程は上流・中流・下流の3つの工程から構成されています。それぞれどのような特徴があるのか、解説します。

上流工程

製品を生産するベースとなる素材をつくる過程です。具体的には、鉄、紙、農産物、木材、ガラス、ゴム、樹脂、プラスチックなどの製品や部品の原材料となるものをつくっています。この「上流工程」に特化した製造業には、鉄鋼メーカーや、製紙メーカー、アルミ(化学)メーカーなどがあります。

中流工程

素材メーカーがつくった素材をもとに部品をつくる過程が、この「中流工程」になります。代表的なのは、半導体やメモリ、コネクター、バッテリー、液晶デバイスなどがあります。製造業としては、金属部品メーカーや、電子部品メーカー、半導体メーカーなどがこの「中流工程」に当てはまります。

下流工程

部品を加工したり、組み立てたりして完成品をつくる過程が、この「下流工程」になります。製造業としては、自動車メーカーや、家電メーカー、エアコンメーカーなどがあります。メーカーによっては、自動車のように部品(中流工程)から製品をつくる企業もあれば、食品メーカーのように素材(上流工程)から製品をつくる企業もあります。

製造業における現状と今後の課題

高度経済成長期は、ものづくり大国として海外から高評価を受けていた日本の製造業ですが、現在は取り巻くビジネス環境が激変し、変革が求められつつあります。

製造業の現状

製造業は2022年時点で日本のGDP(国民総生産)の約2割を占め、依然として日本の経済を支える中心的な産業であることは間違いありません。しかし、大手主要メーカーは日本の少子高齢化による人口減少での市場縮小の影響で、海外売上比率が製造/非製造ともに増えており、50%を超えています。

さらに社会情勢の変化もあります。日本では2020年から新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受けてきました。その他にも半導体不足や部品不足、そして地域での武装衝突や気候変動によるエネルギーや農作物の価格高騰などが製造業への悪影響を及ぼしています。

製造業における今後の課題

日本の製造業では、今後3つの課題があります。1つ目は、生産年齢人口の減少などによる「労働力不足」です。この課題を解決するために、多くのメーカー企業で業務プロセスを改善しつつ、生産性向上のために現場でのDX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進しています。

2つ目は、脱炭素化の施策です。2020年に菅元総理大臣が所信表明で発表した、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル宣言」を実現するために、製造業全体で取り組んでいます。

3つ目は、少子高齢化に伴う若手技術者の減少により技術継承が困難になりつつあることです。そこで、熟練技能者を「ものづくりマイスター」として認定し、各製造業の企業に派遣して若手技能者などの実技指導を実施しています。

参考:首相官邸 グリーン社会の実現
参考:厚生労働省 ものづくりマイスター制度

製造業で働くメリット・魅力

製造業で働くと、どのようなメリットや魅力があるのでしょうか。

未経験からチャレンジできる

製造スタッフなどの仕事は、特別なスキル・経験がなくても始められやすい利点があります。基本的にはマニュアルが用意されていて、仕事の手順が分かるようになっており、先輩の指導のもと、いちから学べる研修期間も整っています。資格なども必要ありません。

手当や福利厚生が整っている

製造業は、一般的には福利厚生が充実している企業が多いです。家族や住宅、皆勤、資格などのさまざまな手当が付与されたり、福利厚生として社宅や寮が完備されていたりします。また、工場内に食堂が設置されていることもあります。食堂がない場合は、ランチを安価に注文できる制度などを導入している企業も見受けらます。

製造業で働くデメリット

製造業で働くデメリットもあります。メリットと合わせて確認しておきましょう。

体力が必要

製造スタッフは基本的には立っておこなう業務が多い仕事です。そのため、長時間立ちっぱなしの業務に自信のない人だと、慣れるまでに時間がかかるでしょう。

集中力が必要

目の前の業務に集中できるかどうかが作業の質を上げるポイントになります。もし少しでも集中力が欠けていたりすると、作業が遅れて後工程に支障がでるだけでなく、不良品を出すことにもつながってしまいます。

機械を扱うため、ケガや事故のリスクがある

工場のライン作業では、一定のスピードで部品が流れてきたり、機械を扱ったりするため、機械の操作や手順を間違うと、ケガや事故のリスクが伴います。そのため、普段から注意して仕事に取り組むことが大切です。

製造業に向いている人

製造業に向いているタイプはいくつかあります。

ものづくりが好きな人

人よりも機械やモノに触れることが好きな人が向いています。ひとりでおこなう作業も多く、他の人と話すことが苦手でも活躍できます。

ルーチンワークをこなすのが得意な人

決まった手順で、同じ作業を繰り返す単純作業が多い仕事です。ルーチンワークであっても、飽きることなく円滑にこなせる人であれば、経験がなくても活躍できるようになるでしょう。

集中力がある人

工場のライン作業では、スピードが求められるだけでなく、細かな業務も多いです。作業中は他のことを考えずに、目の前の業務に集中することが重要です。それができるようになれば、周りからも信頼も得られるようになるでしょう。

製造業の平均年収・時給

製造業で働く、どのくらいの収入が得られるのでしょうか。2023年の厚生労働省「賃金構造基本統計調査(大分類)E.製造業」によると、製造業の全国平均年収は約473万円になっています。またスタッフサービスの人材派遣の募集サイトでの「製造業」の平均時給は1,242円(2024年6月時点)となっています。この数字は、あくまで平均年収ですので、業種や職種、経験・スキルに応じて異なってきます。より経験を重ねたり、夜勤シフトを中心に業務をおこなっていったりすれば、割増手当が付き、さらに収入を増やすことが可能です。

厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」

まとめ

製造業といっても、金属、食品、機械、建築などさまざまな完成品を世に提供している企業が多彩にあります。そして、職種においても、ルーチンワークを主とする製造スタッフ(工場ライン)や、製品をイチからつくり出す研究・開発、製品を売り込んでいく営業・販売にいたるまで、多種多様です。自分に合った仕事を選ぶなら、自分の志向や興味・関心軸などを棚卸しして、自分らしく働ける環境や分野を選ぶことをおすすめします。製造分野の派遣サービスなどを得意とするスタッフサービスグループなら、さまざまな製造分野・職種をご紹介できます。

ライター:西谷 忠和
新卒・中途採用、進学などのメディアにて広告制作ディレクターを経験後、2007年に独立。現在は、フリーのライターとして採用サイト、求人メディアの広告、採用のオウンドメディア、人材サービス企業のインナーコミュニケーションなどのコンテンツ制作に携わっています。またライフワークとして、20~50代のビジネスパーソンやフリーランスのキャリア支援をおこなうキャリアコンサルタントとしても活動中。

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