苦手な同期や嫌いな先輩がいたってOK!?職場の人間関係の見方が変わるマンガ3選
人間関係には“相性”というものがあると、私たちは昔から学生生活やアルバイトを通して学んできましたよね。
とは言え、社会に出て働くようになると、これまで以上にさまざまな人と関わりを持つことになります。「あの同期の態度、なんか目につくな」「この先輩が言っていること、納得できない」と不満を抱いても、「仕事だから仕方ない」と割り切り、愛想笑いでやり過ごしている方も多いかもしれません…。
でも、いざお互いの手を取ってみたら「想像していたよりも素敵な人だった!」という、嬉しい誤算だって起こりえるはず。今回は、そんな“気付き”を与えてくれるマンガ3作品に注目してみますよ!
目次
『DEATH NOTE』から学ぶ──
お互いの信念を共有すれば、
方針にズレが生じても修正できる
作品データ/『DEATH NOTE』
原作:大場つぐみ
作画:小畑健
『週刊少年ジャンプ』連載、全12巻
(C) 大場つぐみ・小畑健/集英社
はじめに紹介するマンガは『DEATH NOTE』。“このノートに名前を書かれた人間は死ぬ”という極悪な力を持ったノートを巡り、天才たちが知力の限りを尽くすサスペンスです。
死神のリュークが人間界に落とした“デスノート”を拾ったのは、高校の全国共通模試で1位に輝くほどの優等生・夜神 月(やがみ・らいと)でした。
月(らいと)は犯罪者に次々と“正義の裁き”(=死)をくだすことで、「僕が認めた真面目で心の優しい人間だけの世界をつくる」と決心し、Killer(殺し屋)=キラとして、デスノートを使っていきます。
一方、デスノートによる大量殺人事件を解決するべく、L(エル)という謎の名探偵も動き出していました。Lは捜査本部を設立し、月を追っていきます。
さて、その捜査本部の中に松田桃太という天然ボケ体質の捜査員がいました。Lに「松田の馬鹿…」と罵倒されても、決してめげず、事件の重要なヒントをゲットする活躍をすることも!
そんな松田は「僕もいつも弱い立場の方の人間だったから…」と、キラを完全には憎みきれないという複雑な心境を吐露したことも。キラの影響で世界中の犯罪が減っていると会議中に指摘したあと、上司である夜神総一郎に「(あの発言は)まずかったでしょうか?」と不安を打ち明けます。
でも総一郎は、「どんな事でも事実はどんどん発言しろ」「人が言いにくそうな事なら尚更だ」と、松田を励まします。
もしかしたらみなさんも、松田のように「自分は職場のなかで浮いているのでは…」と疑心暗鬼に陥り、まわりに流されそうになってしまう場面が訪れるかもしれません。そんなときこそ「自分は自分だ」という意志を強く持つようにすれば、職場の人間関係のなかで自らが果たすべき役割というものが、ハッキリと鮮明に見えてくるのではないでしょうか。
会議中にみんながあまり意見を出さず、お互いが何を考えているのか探りあっているような職場は、居心地が悪いだけでなく、生産性も低くなりがち。そんな時あなた自身が「自分はこう思う」と勇気を出して先陣を切ったなら、他の人たちも続々と「自分は…」と違う意見を出してくれるようになり、一気に議論が発展することもあるでしょう。
もしくは、会議中は聞き役に回り、そのテーマについてひたすら熟考する…というのもあるでしょう。その代わり、松田にとっての総一郎のように信頼の置ける上司がいるならば、会議中以外のタイミングを見計らって自分の考えを伝えてみてください。
大切なのは、その都度、チームの方針にズレが生じていないかを確かめること。また、ズレが生じていると判明しても、強引に軌道修正しようとはせず、チーム内で議論を重ね対処していくこと。
『DEATH NOTE』というマンガからは、チーム内の対立が必ずしもマイナスに働くというわけではなく、総一郎や松田の言動によって事態が好転したり、チームがより結束するきっかけになるなど、むしろプラスに働くこともあるのだと学ぶこともできますよね。
Lや総一郎の例のように、人間はそれぞれ別々の信念を胸に抱いているため、自分が正しいと思う方法論も異なってくることでしょう。けれど、信念や方法論は違えど、最終目的は同じはず。ですからたとえ、激突してしまっても、お互いの良いところを吸収するようにしていけば、チームの推進力はグングン高まっていくのではないでしょうか。
『H2』から学ぶ──
“雨降って地固まる”…
人と人との結束は、対立を経てこそ頑丈になる
作品データ/『H2』
作者:あだち充
『週刊少年サンデー』連載、全34巻
(C) あだち充/小学館
あだち充さんの野球マンガといえば『タッチ』が有名かもしれませんが、今回紹介する『H2』のほうが連載期間は長く、さらに野球要素の強い作品なのです。
主人公は、中学時代から名投手としての頭角を現していながらも、肘に爆弾を抱えていると診断されていた国見比呂。彼は野球との縁をスッパリ断ち切るべく、わざわざ野球部のない千川高校に入学していました。
ところが後日、比呂を担当していた医師は無免許だったことが発覚!野球を再開しても平気な身体だとわかった比呂は、野球愛好会を正式な野球部へと昇格させ、仲間たちと甲子園を目指すことになります。
比呂が2年生の夏、初出場校として甲子園の予選大会に挑んだ千川は、ダークホース的な活躍で準決勝まで勝ち進みました。そこで春のセンバツ甲子園の優勝校・栄京学園と対戦するのですが、この相手が非常にクセモノ…!
栄京では比呂と同学年の広田勝利がエースで4番を担っているのですが、彼は目的のためなら手段を選ばない男。相手バッターにわざとデッドボールをぶつけながらも偶然を装うなど、高校球児らしからぬヒール役なのです。
そんな広田は、なんと千川の野球部に、自分の親戚をスパイとして送り込んでもいました。それは島オサムと大竹文雄という、野球初心者の二人組。彼らは内心では広田のことを嫌っていましたが、島の場合は父親の借金を広田のツテで帳消しにしてもらう話を持ちかけられており、そう簡単には逆らえない事情があったのです。
広田を勝たせようと、島と大竹が試合中にチームメイトたちの足を引っ張るようなことがあったら大問題ですよね。本来は九人VS九人で行うはずの野球が、七人VS十一人になってしまいます。
ですが、彼らのスパイ疑惑を知っても、比呂はさほど動揺しませんでした。「(自分たちが)スパイだったとしたら…?」と恐る恐る尋ねてきた島に対し、比呂は「あれだけまじめに練習してきたら、わざとエラーするのは、一生懸命のエラーよりむずかしいぞ」とフォロー。
きっと比呂は、彼らが悪に徹しきれない性格であることを見抜いていたのでしょう。前の試合で、同じボールを補ろうとした比呂と島が衝突してしまうトラブルが起こったときも、比呂は島を責めませんでした。
これは島が狙ったわけではなく、本当に純粋な事故だったのですが、結果的に比呂は傷を負って、島は広田のスパイとして手柄を立てたことになります。ただ、その直後に再び似たような打球が飛んできたとき、比呂は「野球をなめるな」と、島に対する怒りを露にしました。なぜなら、島は比呂との衝突を避けるためにボールを追うスピードを緩め、相手のヒットを許してしまったからです。
大竹には「別にかばったわけじゃねえ。頭突きのタイミングが合わなかっただけさ」と、自分はあくまでも比呂を妨害するつもりだったと言い訳した島。
しかし、チームメイトたちが野球に熱中する様子を間近で見て改心したのか、やがて島と大竹は広田との協力関係を解消。島は持ち前の俊足を、大竹は並外れた怪力を活かし、千川の勝利に貢献するのでした。
みなさんの職場にスパイが…というのは大げさですが、もし馬が合わない同期や先輩がいても、ふとしたきっかけで同じ方角を向くことだってできるのではないでしょうか。
私たちは誰しも、自分が子供だった頃を振り返ってみれば「なんであんなくだらないことで友達とケンカしちゃったんだろう?」と呆れてしまうようなエピソードを一つや二つ持っていることでしょう。でも、当時はそういう友達とも時間が経てば自然と仲直りできて、「雨降って地固まる」ということわざの意味を、身をもって知ったという方もいるのではないでしょうか。
当然、ビジネスパートナーともなればそう単純にはいかないこともあるかもしれませんが、大抵の揉め事は、後々笑い話に変わるもの。むしろ、仲間同士で本気で対立した経験のある組織のほうが、ひとたび波長が揃ったときに発揮されるチームワークは、より強固になるのかもしれません。
飲み会でのコミュニケーションを“飲みニケーション”と称することもあるぐらいですから、飲み会の場などで普段は避けてしまっている同期や先輩に対してこそ、果敢に話しかけてみてはいかがでしょう?
案の定、お互い気まずくなってしまい会話が膨らまないのか?それとも、仕事上のポリシーを巡って口論になってしまうのか?はたまた、意外と趣味が合うことが発覚し、遊びの約束を取りつけることになるのか?どんな展開が待ち受けているのかは相手と実際に接近してみなければわかりませんし、今の状況をどうチャンスに転換できるかは自分次第です…!
『GIANT KILLING』から学ぶ──
組織をまとめるには、
一度壊してみることも有効だという真理
作品データ/『GIANT KILLING』
作者:ツジトモ
原案:綱本将也
『モーニング』連載中、既刊47巻(2018年4月現在)
GIANT KILLING/講談社
野球マンガだった『H2』の次は、サッカーマンガである『GIANT KILLING』を取り上げましょう。
日本のプロサッカーチームであるETU(イースト・トーキョー・ユナイテッド)は、辛うじてリーグの1部に留まっていながらも、毎年のように2部陥落の危機にさらされていました。
そんな状況で新監督に招かれたのが、かつてETUの中心選手だった達海猛(たつみ・たけし)。現役を引退した彼は監督に転身しており、イギリスの弱小アマチュアサッカーチームを、わずか3年でプロと対等に渡り合えるだけの強豪に育て上げていたのです。
そもそも作品名のジャイアント・キリングとは“番狂わせ”の意で、達海自身、「弱いチームが強い奴らをやっつける。勝負事においてこんな楽しいこと他にあるかよ」という熱いサッカー哲学を持つ男。ETUを常勝チームへと導くためなら、ベストな人選に思えますよね。
しかし、彼の現役時代を知るサポーターたちは「達海にETUを率いる資格はねえ!!」と、監督就任に猛反発しました。達海は海外からのオファーが来たとたんETUを見捨てやがった、達海が抜けてチームが滅茶苦茶になった…などと、手厳しい声がいくつも上がります。これは良くも悪くも、達海が絶大な影響力を持っていることの証でしょう。
そして実際、達海は賛否両論を巻き起こす大胆な采配で、ETUの改革に着手します。周囲から“ミスターETU”と呼ばれ親しまれていた村越茂幸をキャプテンから外すこともありましたが、これはほんの一例に過ぎません。達海にとっては明確な理由あっての行動で、村越はキャプテンとして、チームのあらゆる問題を一人で抱え込みすぎだと判断したからでした。
さらに興味深いのはキャンプ中、達海がサッカーボールを1個だけ残して回収してしまったときのこと。選手たちは「意味わかんないっスよ!!」と困惑しますが、達海は「貧しい国の子供達はひとつのボールを皆で仲良く使うんだぜ?プロ選手がその気持ちを失ってどうする」と語ります。
もっとも、達海の狙いはそれだけではありませんでした。選手たちは紅白戦をするか、全員でボール回しをするか、セットプレーの練習をするか…などなど、ボールの活用方法を巡って議論を開始。最後は意見がまとまらず乱闘騒ぎになってしまいましたが、のちに達海は「お前らは(俺が)思ったより勝つための意見を出した」「俺が楽しいのは俺の頭ん中よりスゲーことが起こった時だよ」と、選手たちを褒めるのです。
たとえ同じチームに所属していても、選手同士で個性や考え方が違うのは当たり前。ただ、「相手に勝つ」というゴールだけは、全員が共通して描いているに違いない…。そう確信しているからこそ達海は、あえて一度チームがバラバラに分断されるように仕向けたのでしょう。
仕事でも、同じことが言えそうですよね。「あの人は苦手だ」「あの人は嫌いだ」と身構えてしまうような相手だって、お互いに正直な胸の内をぶつけ合ってみたなら、意外と同じ目線で物事を捉えていることもあるのではないでしょうか。
職場によっては“みんな仲良し”というムードが出来上がっているものの、その実態は誰もがのんびりと仕事をしているだけで、これといった組織全体の目標はない…というケースもあるでしょう。
このご時世、そういうマイペースな働き方も充分にアリだと言えますが、「常に仕事仲間たちと切磋琢磨していたい!」という方には物足りない環境なのかも…。数十年という歳月を仕事に費やしていくことになる人も多いわけですから、せっかくなら仕事を自分の成長につなげたいものですよね。
ETUは達海が選手同士の話し合いの場を設けてくれましたが、みなさんの職場に達海のようにブレーンとなる有能な上司がいるとは限りません。となれば、みなさん自身が苦手な同期や嫌いな先輩にも自分から歩み寄るしかないのです。別に大げさに果たし状を突きつける必要はありません。ランチタイムや退勤後に「食事でもご一緒しませんか?」と誘ってみるなど、本当にシンプルなことから交流を始めてみればいいのです。
だんだんと打ち解けることができたなら、休み時間はもちろん、仕事中にも言葉を交わす機会が増えていくでしょう。そこで大事なのは、相手の意見をときには尊重し、ときには思い切って訂正すること。お互いが衝突を恐れず、よきライバルとしての人間関係を築くことができれば、仕事の質は今までよりもはるかに良くなるかもしれません。
日々の仕事にスパイスを加えたいなら、
相性が合わない人とも躊躇せずに接するべし!?
仕事中はただでさえ人に気を遣うことも多いでしょうし、自分をやさしく受け入れてくれる人ばかりの職場で働けたらどんなに楽か…と思う方もいるかもしれません。
でも、自分とはタイプの違う同期や先輩が近くにいてくれたほうが、仕事で高みを目指すうえでの刺激になるはず。
「これまで避けていたのがもったいない」と後悔するほど意気投合できる可能性だってありますし、一度、職場の人間関係を広い視野で見直してみてもよさそうですね!