在宅勤務で増える、新たなハラスメント「リモハラ」って何?
2020年4月の緊急事態によってテレワークを取り入れる企業が増えたことで、新たなハラスメント「リモハラ」「テレハラ」が注目されています。本記事では、「リモハラ」「テレハラ」の意味や対処法について紹介します。
目次
リモハラとは?
リモハラとはリモートハラスメントの略で、リモートワーク中に起こるハラスメントを指します。在宅勤務特有のハラスメントで、「テレワークハラスメント(テレハラ)」、また「オンラインセクハラ・パワハラ」などと呼ばれることもあります。
ウェブカメラを通して見える相手のプライベート(部屋の様子や同居人の生活音、服装など)に関わる事項の指摘、業務遂行に必要な範囲を超えた干渉、そして性的な言動といったハラスメント行為などが挙げられます。このほか、相手の通信インフラへの苦情や私費での改善の強要、過度の監視など、業務時間内外問わず、精神的に過度の圧迫感を与える行為もリモハラに含まれます。
また、相手がその言動によって不快になり、不利益を被ったり尊厳を傷つけられたと感じれば、リモハラに限らずハラスメントに該当することもあります。
リモハラの事例
リモハラとひと言でいっても、ハラスメントは人によって意識の差があります。その事例も多種多様ですが、一般的にリモハラとされている事例をいくつか挙げてみましょう。
■プライベートに言及する
カメラに映る画面からプライベートが垣間見え、そのことについて指摘・指導されるリモハラです。
たとえば、「〇〇さんの部屋は広いね、全体が映るように見せてよ」と言われたり、ミーティング中に「□□の部屋にアイドルのカレンダーがある」と話題にされたり、プライベートへの過度な介入はハラスメントとなり得ます。
■セクハラ的な行為
「女性なんだから、テレワークだからってノーメイクじゃだめだよ」など、化粧の有無や服装について指摘されたり、容姿や体形について言及されたりするのはセクハラにあたります。上司や同僚は、普段と違うプライベートな部分をコミュニケーションのきっかけにするくらいの軽い気持ちで発した言葉でも、受け手側が不快感・嫌悪感を覚えるならハラスメントになります。
■パワハラ的な行為
常にカメラをONにすることを求められたり、業務時間外のチャットなどへの反応を強要されたり、常に上司の監視下に置くような言動は、パワハラにあたります。オンライン飲み会に強く誘われる、相手の通信インフラへの苦情や私費での改善を強要される行為もパワハラに該当します。
リモハラが起こってしまう原因
パソコンを開けば、自宅が職場に様変わりするというシチュエーションは、リモートワークのメリットでもありますが、リモハラはなぜ起こるのでしょうか?
職場と自宅の線引きが難しい
リモハラが起こってしまう大きな要因は、リモートワークでは職場と自宅が明確に切り分けられないことにあります。さらに、Webカメラを使用しての会議やミーティングも、リモハラが誘発されるリスクを高めます。本人の姿や部屋の様子も少なからず垣間見えることになるため、プライベート空間が相手に伝わってしまうのです。その結果、一方的に親近感を募らせコミュニケーションのきっかけのひとつとして、プライベートに過度に介入される、またセクハラ的なリモハラを受けてしまう可能性があります。
管理に不安があり過剰な対応になる
上司にリモートワークの経験がなく、部下の管理方法がわからないなど、そもそも在宅勤務に不慣れなことによるコミュニケーションエラーもリモハラの原因となっていることが考えられます。
ある調査では、「リモハラ対策として何をすればよいかわからず、悩んだことはある?」との質問に、「悩んでいる」と答えた部下が10.0%だったのに対して、上司は40.7%もいました。上司の悩みの内容で多かったのは、「部下への指示出しのタイミング」「部下との距離感」で、「放任でもなく干渉しすぎでもない、絶妙なコミュニケーションの取り方を模索している上司が多いのかもしれない」という分析結果が公表されています。
まじめで責任感が強い管理職ほど、その思いが裏目に出て、リモハラを引き起こしてしまう可能性もあります。
リモハラの防止策
リモハラを防止するためには、リモハラを誘発するようなことを見せないことがポイントとなります。
リモハラの被害者にならないために
Webカメラにプライベートな部分が必要以上に映りこまないように注意するだけで、リモハラの大半を防ぐことができるでしょう。下記の項目を参考に、自分自身や周囲の画像に気を配りましょう。
・服装や身だしなみを整える
・カメラの背景に私生活に関するものを映さない、もしくはバーチャル背景にする
・発言時以外はミュートにして、なるべく生活音が入らないようにする
・必要時以外はカメラをオフにする
定期的な「報告・連絡・相談」をおこなう
また、リモハラが起こってしまう原因でも挙げていますが、部下の管理方法がわからない上司によって、パワハラ的なリモハラが起こるケースもあります。このようなケースでは、「部下は、きちんと仕事を進めているのか?」という上司の不安を取り除くことができれば、リモハラ防止策につながる可能性もあります。
たとえば、定期的に「報告・連絡・相談」をおこなったり、チャットやメールに対しては素早く反応したりするなど、仕事の進捗状況が上司に伝わるよう工夫してみましょう。
厚生労働省のテレワークガイドライン
2021年3月に改訂された厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」には、「事業主は、テレワークの際にも、オフィスに出勤する働き方の場合と同様に、関係法令・関係指針に基づき、ハラスメントを行ってはならない旨を労働者に周知啓発する等、ハラスメントの防止対策を十分に講じる必要がある」といった主旨のことが記載されています。また、「時間外のメール送付抑制」に関わる記述も盛り込まれており、企業側は、適切に労務管理をおこない、労働者が安心して働くことのできる良質なテレワークとすることが求められています。
このようなガイドラインが存在することも把握しておきましょう。そのうえで、リモハラを受けたと感じたら会社の相談窓口へ届け出る、また、派遣スタッフの場合は派遣元の担当者に相談するようにしましょう。
まとめ
リモートワークでは、仕事のオンとオフの境界性が非常に曖昧で、精神的な切り替えも難しくなります。リモートならではの距離感やコミュニケーションの取り方の難しさから、本人は軽い冗談のつもりでも、言われた方は不快感を抱いてしまうなど、誰でも意図せずリモハラをおこなっている可能性があります。
「仕事上の関係であることを意識する」「業務に関わりのないことに言及しない」「プライベートに介入しない」「業務時間外にはメール、チャットを送らない」「過度な連絡は控える」など、リモートワークでは対面でおこなうオフィスワーク以上に、相手の立場に立って考える想像力や、相手を不快にさせないコミュニケーション力が求められます。