介護の派遣とは?正社員雇用との違いやメリット・デメリットについて解説
介護というと、正社員やパートという働き方をイメージする人も多いかもしれません。しかし、最近は派遣社員を求める企業も増えており、派遣の求人数も豊富にあります。そんな介護業界で派遣社員として働くメリット・デメリット、向いている人、その他雇用形態との違いなど気になるポイントを解説します。
目次
介護の派遣とは
現在、介護業界の派遣求人は多く存在しており、介護派遣として働くことは珍しくありません。しかし、実際に働いたことがない人は介護派遣の種類や資格の要否、介護業界の現状など事前に知っておきたいのではないでしょうか。
まずは介護の派遣の種類について紹介します。
介護の派遣の種類
介護の派遣でよくある、登録型派遣・紹介予定派遣の2つを紹介します。
登録型派遣
登録型派遣は、いわゆる派遣や一般派遣と呼ばれる働き方です。3カ月~6カ月などそれぞれに契約期間が定められており、期間を満了して派遣期間を終了するか、継続を依頼され、自分も働きたい気持ちがあれば契約を更新し、勤務を継続するという2つの方法が選べます。
紹介予定派遣
紹介予定派遣は最初に派遣社員として働き、最長6か月の期間を経て直接雇用に切り替えていくことを前提とした働き方です。契約期間終了の1カ月前までに双方が合意しなければ、直接雇用への切り替えはありません。また、派遣期間も満了となりそのまま勤務は終了します。反対に合意した場合は就業先と労働契約を結び、直接雇用へと切り替わります。
介護の派遣は登録型派遣か紹介予定派遣のどちらかで働くケースが多いため、どちらの労働形態を希望するかを考えておきましょう。
資格は必要?
介護職の派遣スタッフとして働く条件として、資格を持つ必要がない介護補助職の求人もあるため、未経験でも始められます。もちろん、経験者を限定とした求人もありますが、未経験を歓迎している求人も存在しますのでよく確認してみてください。
介護業界の現状
介護職の派遣スタッフを目指している人に向けて、介護業界の現状を紹介します。
慢性的な人手不足
厚生労働省の「介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数(2021年7月発表)」によると、2025年度には2019年度の211万人に対して、約32万人追加となる約243万人が必要となり、2040年度には同じく2019年度の人数に対して、約69万人が追加で必要という予測が出ています。
2025年問題ではこの介護人材の必要数増加に伴い、介護人材の不足が指摘されています。また、2023年に内閣府が発表している「令和5年版高齢社会白書」を見ても、2022年の高齢化率29.0%から2037年には33.3%、2070年には38.7%となる予測です。
高齢者の数とそれを支える世代となる若者の数を比較すると、将来的にも深刻な人手不足となるのは明白です。
これらのデータからもわかるように、介護職人材は今後も求められ続ける職業であるため、介護職の派遣は需要が見込めるでしょう。
求人倍率
令和4年版厚生労働白書によれば、介護関係職種の有効求人倍率は令和3年時点で3.65となっており、全職業計の1.03と比較すると、その差は2.62もあることがわかります。現時点で求職者1人当たりに3.65件もの求人がある、売り手市場といえます。
求職者側にとってみれば、売り手市場の状況は多くの求人のなかから自分の希望に合った求人を探しやすく、仕事選びをしやすい点がメリットです。
給与、待遇
介護職員の給与や待遇についても、改善が見られています。
介護職員処遇改善支援補助金を取得(届出)している事業所における介護職員(月給・常勤)の平均基本給を見ると、令和3年12月と令和4年9月という1年未満の期間でも基本給及び決まって毎月支給される手当を合わせた「ベースアップ等」に該当する賃金が9,210円もアップしています。
補助金や支援加算などの働きが影響している可能性もありますが、実際に大きな変化が見えていることを見ると、業界全体の給与の底上げになっていることは間違いないといえるでしょう。
また、給与以外に福利厚生などの待遇も用意している企業があります。例を挙げると研修・資格取得助成制度、社員寮、社内託児所、特別休暇制度、慶弔金などさまざまなものがあります。もちろん、どういった待遇があるかは企業・施設によって異なりますが、人材確保のために、さらに好条件が増えてくる可能性も考えられるでしょう。
派遣社員の場合は給与や福利厚生も派遣会社のものが適用になるため、一般的には関係ありません。しかし、業界全体の給与・待遇の改善がされれば、派遣会社の契約内容も今後変わってくる可能性が高まります。今後も介護派遣として働いていくつもりであれば、業界全体の動向を見ておくといいでしょう。
派遣の介護と正社員/パート/アルバイトの介護の違い
介護職員として派遣社員が働く場合と、正社員・パート・アルバイトで働く場合ではどのように違うのか解説します。
雇用主
● 正社員・パート・アルバイトなどの直接雇用
就業先である介護事業を運営する企業が雇用主で、派遣社員の場合は派遣会社が雇用主という違いがあります。
● 派遣
派遣は雇用主が派遣会社で、働いている企業は就業先(派遣先)と呼ばれます。紹介予定派遣は最初の雇用主が派遣会社で、直接雇用となった場合は就業先が雇用主に変わります。
契約期間
正社員・パート・アルバイトは雇用期間が設けられないこともあり、従業員が退職を希望しない限り継続することが多い契約形態です。
派遣社員の場合はもともと契約期間が決まっており、延長をするかしないかで就業の継続有無が変わってきます。双方が合意をすれば継続、そうでない場合は期間満了で派遣勤務は終了となりますので、その心づもりで勤務を開始しましょう。
勤務時間
勤務時間についてはその企業や施設で異なるため、一概にこの雇用形態の場合はこの勤務時間とはいえません。直接雇用である正社員・パート・アルバイトの勤務時間は各企業の就業規則、労働契約に基づき、派遣社員の場合は派遣開始前に結んだ契約内容に書かれている内容が指定の勤務時間となるため、確認しておきましょう。
給与
給与についても直接雇用である正社員・パート・アルバイトも労働契約に書かれている金額がすべてです。その他手当などについては就業規則に書かれていることもあるので確認しましょう。
派遣社員の労働契約は派遣会社と結ばれているため、そこに書かれている金額を参考にしてください。
福利厚生
福利厚生について、直接雇用である正社員・パート・アルバイトは雇用元の福利厚生が受けられ、派遣社員も福利厚生と教育訓練については、就業先と同等のものを受けられます。
しかし、福利厚生は勤めている企業によって異なるため、福利厚生をよく確認しておくことをおすすめします。
資格
最近では業界全体の人手不足から有資格者を補助する仕事において未経験を歓迎している求人も多くありますが、資格の要否については、直接雇用である正社員・パート・アルバイトそれぞれの雇用形態で異なる場合もあります。
派遣社員の場合は求人によって資格の要否が異なるため、内容を確認しておくようにしましょう。これから資格取得を考えている方なら、介護福祉士の資格もおすすめです。ホームヘルパーだけでなく、施設の介護職員にも人気の資格ですので、ぜひ取得を目指してみてはいかがでしょうか。
こうした資格の取得支援についていえば、雇用形態によっては補助がない、あるいは補助の内容が異なるなども考えられます。派遣社員の場合は派遣会社の福利厚生で資格取得支援があれば、支援を受けられます。適用条件を満たしているかどうかを担当者に確認してみると良いでしょう。
介護派遣のメリット・デメリット
ここでは、介護派遣として働くメリット・デメリットを紹介します。
メリット
アルバイトやパートよりも時給が高い
介護派遣として働く場合、アルバイトやパートよりも時給が高く設定されていることも多いため、純粋に収入が増える傾向にあります。
自分の希望条件に沿った勤務先を見つけてくれる
派遣社員の場合、直接雇用とは異なり、自らさまざまなサイトで希望条件に合う求人を探さなくても、担当者が自分の条件にあった勤務先を紹介してくれます。市場にない希望条件を出しすぎなければ、希望にあった勤務先に巡り会えるでしょう。
複数の施設で働けるためスキルアップできる
派遣社員の場合は契約が満了していれば別の施設で働きやすいため、希望する施設の環境を選んで働くことができます。
「小規模な施設での経験はあるけれど、将来は大きな介護施設の責任者をしたい」という志向がある人であれば、まず大きな施設での経験を積み、動き方を覚えるなどのキャリア形成も可能です。
直接雇用よりもフレキシブルにキャリア形成ができる点はメリットといえるでしょう。
デメリット
反対に、介護派遣として働くデメリットを紹介します。
定期昇給が得られにくい
派遣社員の場合、定期昇給が得られにくい点がデメリットとして挙げられます。派遣社員は短い契約期間で働く前提であるためそこまで気にしない人もいるかもしれませんが、どういった昇給の仕組みがあるかは今一度確認しておきましょう。
介護派遣に向いている人・おすすめポイント
介護派遣に向いている人とおすすめポイントを紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
人の役に立つことが好きな人
介護は高齢者の方をサポートし、幸せに生きるお手伝いをするお仕事です。そのため、高齢者の方やそのご家族から、感謝の言葉などをいただく経験が何度もできます。
また、目の前にいる方に対して業務をおこなうため、直接感謝や笑顔に触れる機会も多いです。そういった活動にやりがいを感じるタイプの方は、介護派遣に向いているでしょう。
人と会話することが好きな人
介護をしながら高齢者の方のお話し相手をするのも介護職員の重要な仕事です。人と会話することが好きな人や、年配の方から多くのことを学べることに喜びを感じる人であれば、介護派遣には向いているといえるでしょう。
派遣の登録から就業の流れ
ここまで読んできて介護派遣として働きたいと考えている人のために、派遣の登録から就業までの流れを解説します。
登録型派遣の場合
登録型派遣の場合はまず派遣会社に登録した後、電話・オンライン・対面等で面談をおこない担当者に希望条件を伝えて希望に合った求人を担当者から紹介してもらいます。
求人を選定後、就業開始前に派遣会社と労働契約を結び、派遣としての勤務開始となります。
紹介予定派遣の場合
紹介予定派遣の場合も派遣会社への登録、面談、希望条件を伝えるところまでは同じです。希望条件を伝えた後は、担当者からの紹介をもらって応募意思を伝えてください。
その後、紹介予定派遣の場合は直接雇用が前提となっているため、就業先企業との面接が必要となるケースがあります。
無事勤務が決定したら派遣会社と労働契約を結びますが、派遣の期間は最長6か月です。派遣期間中に派遣スタッフと派遣先企業の双方が直接雇用にするかどうかを判断し、双方が合意すれば直接雇用へと切り替わります。
紹介したように派遣の形式によって流れが少々異なるため、手続きをよく理解して進めていくことが重要です。
まとめ
人手不足といわれ続けている介護業界の今後はどうなるのか、介護派遣として働くことで開けるキャリアがあるのか、実際働いてみたときのメリット・デメリットにはどんなものがあるのかなど、気になることをまとめて紹介しました。
需要が高まり続ける予測が立っている介護業界に飛び込むべきかどうか悩んでいる人は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。
- ライター:高下真美
- 新卒で人材派遣、人材紹介企業に入社し、人事・総務・営業・コーディネーターに従事。その後株式会社リクルートジョブズ(現・株式会社リクルート)に転職し、営業として8年勤務後、HR系ライターとしてフリーランスへ転身。現在は派遣・人材紹介・人事系メディアでの執筆、企業の採用ホームページの取材・執筆の他、企業の人事・営業コンサルタントとして活動中。