専門26業務とは?
「派遣スタッフとして登録する前に、派遣についていろいろ調べておこう!」と思ったときに情報収集の一つとして、インターネット検索を利用するかもしれません。その時よく見かける派遣業界で使われる専門用語のひとつに、「専門26業務」というものがありました。
「派遣の歴史」を知る上では、とても大きなポイントである「専門26業務」。基本的な知識として知っておきたい方に向けてご紹介します!
専門26業務とは
例えば、数年前まで派遣スタッフとして働いていた方とこんな会話をしていて、疑問に感じたことはありませんか?
「今は派遣で秘書の仕事をしているんです」
「それなら、契約期間にも3年の上限はないわね」
「……(同じ職場で働けるのは3年が上限って聞いているけど?)」
派遣スタッフが同一事業所で勤務できる期間として、労働者派遣法で「3年」という上限が定められていますが、実は2015年以前はその上限がない特定の業務があったのです。それらの業務を「専門26業務」と呼んでいました。
【専門26業務に分類される仕事】
ソフトウェア開発/機械設計/放送機器等操作/放送番組等演出/事務用機器操作/翻訳・通訳/速記/秘書/ファイリング/調査/財務処理/取引文書作成/デモンストレーション/添乗/建築物清掃/建築設備運転点検・整備/案内・受付・駐車場管理等/研究開発/事業の実施体制等の企画・立案/書籍等の制作・編集/広告デザイン/インテリアコーディネーター/アナウンサー/OAインストラクション/テレマーケティングの営業/セールスエンジニアリングの営業/放送番組等における大道具・小道具スタッフ
2015年の労働者派遣法改正で専門26業務は撤廃に
2015年9月に施行された労働者派遣法改正法の目的は、派遣という働き方や派遣スタッフを雇用することは「臨時的・一時的なものであることを原則とする」という考え方をより強化することでした。
それ以前、専門26業務は「専門知識やスキルが必要な仕事であり、経験の期間で成果が左右される業務である」という理由で派遣期間の制限がありませんでした。
しかし、労働者派遣法が制定された当初と比較して、これらの26業務が他の業務と比べて「専門性が著しく高い」とは言えなくなったこと、半永久的に派遣社員として雇用し続けることが可能な制度が悪用されるケースがあったことから、業務によって派遣期間が異なる仕組みを全廃することになったのです。
26業務撤廃の影響は?
専門26業務撤廃の目的は「派遣スタッフの雇用安定&キャリアアップ」を推進することです。そのため、2015年の改正と同時に、以下のような制度も新たに導入されています。
キャリアアップ措置
派遣スタッフのキャリアアップを図るため、派遣会社には「段階的・体系的な教育訓練」と「希望者に対するキャリア・コンサルティング」を提供することが義務付けられました。
均衡待遇の推進
派遣会社は、「賃金・教育訓練・福利厚生」について、派遣先で派遣スタッフと同じ仕事に就く正社員をはじめ、ほかの労働者との待遇が均衡になるよう「配慮する義務」と「説明する義務」が決められています。均衡状態ではなかった場合、現段階では必ずしも罰則などはありませんが、均衡を目指して調整を働きかける義務と、問い合わせを受けた場合に派遣スタッフに説明することが求められています。
労働契約申込みみなし制度
3年間の期間制限に反して派遣を受け入れ続けた場合など、「違法派遣」状態になった時点で、派遣先企業から派遣スタッフに直接労働契約の申し込みをしたとみなす制度です。
これらの施策によって、派遣会社は派遣スタッフの派遣先への直接雇用を促したり、積極的に紹介予定派遣をすすめたりすることで、派遣スタッフの雇用の安定を目指しているのです。
【まとめ】専門26業務廃止は派遣スタッフの働き方改善への一歩
労働者派遣法が初めて施行されたのは1986年のことです。30年以上が経過する中で、専門26業務の撤廃だけでなく、たくさんの「派遣のルール」が改正されてきました。
今回ご紹介した2015年の労働者派遣法改正に続き、2020年にも新たな改正が予定されています。
今後もさらに正社員と派遣スタッフを含めた非正規雇用者との待遇格差を改善していこうとする流れが続くでしょう。
「派遣の歴史」を知ることで、派遣スタッフとしての働き方を考えるきっかけにもなります。派遣会社からのお知らせや書類には必ず目を通して、最新情報を確認してくださいね。
※当コラムに掲載されている情報は2019年10月時点のものです。
- ライター:沼田絵美
- 求人広告代理店で法人営業経験後、出産で退職。現在はフリーランスライター&キャリアコンサルタント&5店舗のサービス業経営者の妻、3足の草鞋を履いて仕事中の個人事業主。