派遣スタッフの給料はどう決まる? 平均給料や他の雇用形態との違いを紹介
派遣スタッフとして働く時に気になるのは、やっぱりお給料のことではないでしょうか。本記事では『令和元年度 労働者派遣事業報告書(厚生労働省)』の統計結果をもとに、派遣スタッフの平均給料、正社員・アルバイトとの給料の違いについて解説します。
目次
派遣スタッフの給料の仕組み
まずは、派遣スタッフのお給料の仕組みから見ていきましょう。
給料の算出方法は?
登録型派遣の場合、お給料は仕事内容によって決まります。登録型派遣のお仕事では時給制が多く、お給料は
【時給×1日の労働時間×1ヶ月の働いた日数=1ヶ月のお給料+交通費※各派遣会社の規定による】
となります。
※常用型派遣の場合のお給料は、各社の募集要項を確認ください。
※法定外残業は割増計算となります
たとえば、時給が1,400円と1,500円のお仕事で、一方が勤務時間8時間、もう一方が7時間だとして計算すると、額面は 以下のとおりです。
1,400円×8時間×20営業日・・・22万4千円+交通費
1,500円×7時間×20営業日・・・21万円+交通費
※東京での事務職の例。額面から、社会保険料(加入条件を満たした場合のみ)・所得税などが控除されます。
このように、派遣スタッフの場合、給料の金額が働き方と直結します。そのため、手取り給与でどの程度を希望するのかをあらかじめ想定してから、採用担当との面談に向かうのが理想的です。
お仕事を探す際は、時給だけでなく勤務時間や残業の有無などを確認し、月間でどのくらいのお給料になるかを採用担当と相談しながら選ぶとよいかもしれません。通勤時間を考えると、たとえば『自宅の近く』という条件を最優先で探すという方法もあります。
平均給料はどのくらい?
『令和3年度 労働者派遣事業報告書(厚生労働省)』によると、令和3年4月1日から令和4年3月31日期間の派遣スタッフの平均給与(8時間勤務をした場合の日給)は15,698円になります。 前年度と比較をすると0.7%増加しており、若干ですが派遣スタッフの平均給与は上昇傾向にあります。
【出典】
令和3年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000199493_00017.html
給料を上げるにはどうすればいい?
前述の平均給料は、あくまでも派遣スタッフ全体の平均で、実際の給料は仕事の内容によって異なります。登録型派遣の場合、基本的には何もなく自動的に時給が上がるということはありませんので、給料を上げるためのポイントを紹介します。
■担当の営業に相談してみる
給料アップを要望する理由として、たとえば、担当する業務の幅が広がっている、スキルが上がっている、業務のスピードが上がって効率化できているなどが挙げられます。
もし、お仕事をするうえでの量も質も確実にアップし、周囲から高い評価を得ているにも関わらず、給料が上がらないのではモチベーションに関わります。そんな時は、まずは派遣会社の担当営業に相談してみましょう。相談する際は、契約途中よりも契約更新時の方が、お仕事の内容を見直すためにもよいでしょう。
また、個人的な事情などでどうしてもお給料をアップさせたい場合は、時給だけでなく勤務時間を増やすことも有効です。契約を更新する前に相談をしましょう。
■自身のスキルアップ
後ほど詳しく説明する「同一労働同一賃金」の開始により、派遣スタッフでも業務に求められる専門的な技術やスキルを身に付ければ、正社員と同等の給料をもらえる可能性があります。これから就業しようとする場合も、技術やスキルがあれば良い条件で働ける可能性が高まります。
また、経験を積むことで仕事をする姿に自信が表れて、任される仕事を増やすきっかけになることもあるでしょう。これから派遣スタッフになろうとしている人も、企業が求めるスキルや経験を積めば、条件の良い仕事に就業しやすくなります。
派遣スタッフも給料から税金を引かれる?
派遣スタッフも、正社員など他の雇用形態と同様に、基本給や各種手当が全て手取り給料になるわけではありません。給料が支給される際に、あらかじめ税金などが天引きされます。
天引きされる主な名目は「健康保険」と「厚生年金」「所得税などの税金」です(※)。これらは収入に比例して負担が大きくなりますが、健康保険と厚生年金は派遣会社と保険料を折半して負担します。
(※)週間の所定労働時間が20時間未満の場合など、勤務状況によっては勤務先の社会保険に加入できません。派遣スタッフの社会保険と厚生年金は、下記で詳しく紹介しています。
《関連サイト》
派遣スタッフが社会保険に加入できる条件とは?
https://www.staffservice.co.jp/job/column/detail_036.html
派遣スタッフの厚生年金
https://www.staffservice.co.jp/job/column/detail_043.html
また、税金については所得税と住民税という2種類のものが給料から天引きされます。ただし、この点は派遣会社により異なり、スタッフサービスでは所得税が天引き(住民税は各人が納付)となります。
このうち所得税については、給料などを基準に仮計算された金額になっています。そのため「年末調整」を行い、正しい所得税との差額を精算します。年末調整で生命保険料や地震保険料などの所得控除の届け出をすると通常は還付金が発生するので、給料に加算して受け取れます。
他の雇用形態の給料との違い
同じ企業で働く方の中でも、雇用形態によって給料の仕組みが異なります。ここでは正社員・アルバイトと派遣スタッフの給料の違いをご紹介します。
正社員と派遣スタッフの違い
正社員の場合、大半は月給制であり月の労働時間や日数に関係なく、毎月安定した収入を得ることができます。一方、派遣スタッフは雇用契約を結ぶ派遣元企業によって異なりますが、大半が時給制のため、正社員と比較すると給料は不安定になる傾向にあります。
厚生労働省による「令和4年賃金構造基本統計調査」の結果では、「正社員・正職員」と「正社員・正職員以外」の賃金が比較されています。男性の場合、正社員・正職員353.6千円に対し、正社員・正職員以外は247.5千円、女性の場合、正社員・正職員276.4千円に対し、正社員・正職員以外198.9千円となっています。
このように雇用形態により金額面の差はあるものの、現在は労働派遣法の改正によって導入された「同一労働同一賃金」のルールによって、雇用形態のみを理由とする不合理な待遇差が解消されることになりました。
同一労働同一賃金によって、企業などは雇用形態ではなく、業務内容や責任の重さなどの状況によって賃金を決めなくてはなりません。正社員に認められている通勤手当や地域手当といった各種手当についても、勤務先によっては派遣スタッフでも支給を受けられる可能性があります。
つまり、正社員と派遣スタッフの給料の違いは、雇用形態によるものではなく、基本的には業務内容や責任の重さといった要素の差によるものとなっているのです。
派遣元企業はもちろん、派遣先企業も派遣労働者に対する教育訓練を行う機会を増やしています。給料をアップするためにも、教育訓練を積極的に利用し、責任の重い業務を任されるようなスキルを伸ばしていくことが大切です。
【出典】
令和4年賃金構造基本統計調査
ttps://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/
給料に職種や能力、経験などを反映
なお、同一労働同一賃金には、正社員の待遇と合わせる「派遣先均等・均衡方式」と、労使協定で派遣スタッフの待遇を定める「労使協定方式」があります。後者の場合、正社員の待遇と不合理な格差が出ないように、派遣スタッフの給料を決める際に次の2点を満たさなくてはいけません。
1 派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金の額と同等以上の賃金額となるもの
2 派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力または経験等の向上があった場合に賃金が改善されるもの
具体的には、上記の条件を満たすため次の計算式で給料の計算が行われます。
<一般賃金の算出方法>
一般賃金 = 職種別の基準値 × 能力・経験調整指数 × 地域指数
【職種別の基準値】
賃金構造基本統計調査の特別集計により算出した賃金、または職業安定業務統計の特別集計による求人賃金(月額)の下限額の平均をもとに一定の計算方法により賞与込みの時給に換算した額。
【能力・経験調整指数】
勤続年数を0の場合の指数を100として、次の表のとおり設定。ただし、同じ業務を続けている場合にこの指数の割合で賃金が上昇するわけではありません。未経験でもできる仕事の賃金と一定年数の経験が必要な仕事の賃金を比較する際に、目安としてこの指数が用いられます。
【地域指数】
派遣される場所の地域の物価等を反映するため、職業安定業務統計の求人平均賃金をもとに、都道府県及び公共職業安定所の管轄地域別に、全国計を 100 として職業大分類の構成比の違いを除去して算出した指数。
アルバイトと派遣スタッフの違い
同一労働同一賃金は、派遣スタッフだけでなくアルバイトにも適用されます。そのため、能力や経験、業績、成果、勤続年数が同じ場合、アルバイトと派遣スタッフとの待遇に差はありません。
ただし、派遣スタッフの仕事には高い専門性を求められる傾向があり、同じ時給制でも職務の専門性に比例してアルバイトより給料が高くなることが見込まれます。
さらに、福利厚生面では、アルバイトよりも派遣スタッフの方が手厚くなることがあります。これは、派遣スタッフの場合、派遣先だけでなく派遣会社の福利厚生を受けられるからです。たとえば、スタッフサービスでは各種休暇や年1回の健康診断、相談窓口、スキルアップなどの福利厚生制度を用意しています。
なお、同一労働同一賃金には、福利厚生に関するルールも設けられています。たとえば、食堂や休憩室、更衣室に関しては、派遣先は派遣スタッフに利用させる義務を負います。さらに、派遣先に保育所や図書館、診療所、保養所、娯楽室などの施設がある場合、それらを派遣スタッフが利用できるように派遣先は配慮する義務があります。
福利厚生は、働きやすさにつながる大切な要素です。お仕事を探す時は、給料や仕事内容はもちろん、福利厚生が充実しているかも確認するといいでしょう。
まとめ
派遣スタッフのお給料は雇用主である派遣会社がお支払いします。派遣先が万が一、倒産などの危機にあった時でも、お給料は雇用主である派遣会社からの支払いとなるので安心できますね。また、スタッフサービスグループでは地震などの大災害があった場合も、遅延なくスタッフのみなさまにお給料をお支払いできるよう、事務センターの拠点エリアを分散させるなどの対策をとっています。
派遣会社大手だからできる安心の体制で、あなたのお仕事をサポートいたします。
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https://www.staffservice.co.jp/job/column/detail_0160.html
- ライター:小林義崇(ライター/元国税専門官)
- 2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、相続税調査や確定申告対応などに従事。2017年にフリーライターに転身。著書に「すみません、金利ってなんですか?」(サンマーク出版)、「イラスト図解 絶対トクする! 節税の全ワザ」(きずな出版)などがある。